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行政書士の繁忙期カレンダー|年間の業務計画

行政書士の繁忙期カレンダーと年間業務計画の立て方を徹底解説。月別の繁忙期一覧(建設業決算変届・在留資格更新・相続関連等)、閑散期の有効活用法(営業・勉強・コンテンツ作成)、売上の平準化戦略まで事務所経営に必要な知識を網羅します。

はじめに|年間の業務リズムを把握する重要性

行政書士として安定した事務所経営を実現するためには、年間を通じた業務の波を理解し、それに合わせた計画を立てることが不可欠です。行政書士の業務には、特定の時期に集中する「繁忙期」と、比較的余裕がある「閑散期」が存在します。

繁忙期には案件が集中するため、効率的な業務処理体制を整えておく必要があります。一方、閑散期は単に暇な時期ではなく、営業活動、自己研鑽、事務所の改善に充てることで、翌年以降の業績向上につなげる重要な期間です。

本記事では、行政書士の主要業務ごとの繁忙期を月別に整理し、年間スケジュールの立て方と閑散期の活用法について具体的に解説します。

月別の繁忙期カレンダー

1月〜3月:年度末に向けた繁忙期

1月から3月は、多くの業務分野で繁忙期を迎えます。年度末に向けた手続の集中と、確定申告時期が重なるため、行政書士にとって1年で最も忙しい時期の一つです。

1月

  • 在留資格の更新・変更申請:4月の新年度に向けた在留資格の変更(留学→技術・人文知識・国際業務など)の準備が本格化
  • 建設業の経営事項審査:決算期が9月の建設業者の経審申請が集中
  • 相続関連:年末年始に親族が集まったことをきっかけに、遺言や相続の相談が増加する傾向

2月

  • 在留資格の申請ラッシュ:4月入社・入学に間に合わせるための申請が最盛期を迎える
  • 確定申告の準備:個人事業主の確定申告(2月16日〜3月15日)に向けた書類整理
  • 建設業許可の更新:年度内に更新期限を迎える建設業者の対応

3月

  • 在留資格の申請:引き続き4月向けの申請が続く。認定証明書交付申請の結果通知と、それに基づくビザ発給手続
  • 建設業の決算変更届:9月決算の建設業者は1月末が期限だが、遅延分の対応も発生。3月決算の建設業者は翌年度に向けた準備
  • 法人設立:4月の事業開始に向けた法人設立手続の集中
  • 年度末の許認可更新:さまざまな許認可の更新期限が年度末に設定されているケースが多い

4月〜6月:新年度の対応

新年度が始まり、法改正の施行や新たな制度への対応が求められる時期です。

4月

  • 法改正の施行対応:4月1日施行の法改正への対応(書式変更、新制度への対応等)
  • 新規開業支援:4月から新たに事業を始める依頼者の許認可申請
  • 在留資格の変更:4月入社・入学者の在留資格変更手続の残件対応
  • 建設業の入札参加資格申請:新年度の入札参加資格の申請

5月

  • 建設業の決算変更届:12月決算の建設業者の提出期限(4月末)の残件対応。1月決算の建設業者の期限が5月末
  • 自動車関連手続:ゴールデンウィーク前後は自動車の売買が活発化し、車庫証明・名義変更の依頼が増加
  • 宅建業の免許更新:宅地建物取引業者の免許更新(5年ごと)

6月

  • 産業廃棄物収集運搬業の許可更新:5年ごとの更新が6月前後に集中する傾向
  • 建設業の決算変更届:2月決算の建設業者の期限(6月末)
  • 株主総会関連:3月決算法人の株主総会に伴う役員変更届等の対応

7月〜9月:夏季の業務

夏季は全体的にやや落ち着く時期ですが、特定の業務分野では繁忙期を迎えます。

7月

  • 建設業の決算変更届:3月決算の建設業者の提出期限(7月末)。3月決算の法人は非常に多いため、この時期は建設業業務を主力とする事務所にとって最大の繁忙期
  • 酒類販売免許の申請:秋冬の需要期に向けた準備としての免許申請
  • 風俗営業許可の申請:夏季のイベントや新規開店に合わせた申請

8月

  • 比較的落ち着く時期:お盆休みもあり、新規の相談件数は減少傾向。行政機関も休暇期間があるため、審査スピードが遅くなる場合も
  • 在留資格の更新準備:10月・11月に期限を迎える在留資格の更新準備
  • 帰化申請の書類収集:本国の機関が夏季休暇に入る場合があるため、早めの書類収集が必要

9月

  • 下半期に向けた許認可申請:10月の事業開始に向けた各種許認可の申請
  • 建設業の経営事項審査:3月決算の建設業者の経審申請が集中
  • 補助金の申請:秋の公募に向けた補助金申請の準備

10月〜12月:年末に向けた対応

年末に向けて、さまざまな手続が集中し始めます。

10月

  • 建設業の許可更新:年度後半に更新期限を迎える建設業者の対応
  • 在留資格の更新:年末〜年明けに期限を迎える在留資格の更新申請
  • 法改正の情報収集:翌年4月施行の法改正に関する情報の収集と対応準備

11月

  • 在留資格の申請:翌年4月の新入社員や留学生の受入れに向けた在留資格認定証明書交付申請の開始
  • 相続・遺言関連:年末に向けて遺言書の作成相談が増加する傾向
  • 年末調整関連:依頼者への各種届出のリマインド

12月

  • 年末の駆け込み相談:年内に手続を完了させたいという依頼の集中
  • 建設業の決算変更届:8月決算の建設業者の期限(12月末)
  • 翌年の業務計画策定:翌年の営業戦略、研修計画、設備投資計画の策定
  • 年末のご挨拶:依頼者への年末の挨拶回り、挨拶状の送付

通年で発生する業務

相続・遺言業務

相続は人の死亡により開始するため、季節を問わず発生します。遺言書の作成相談も通年で入りますが、年末年始やお盆の帰省をきっかけに相談が増える傾向があります。

相続手続には期限があるものもあります。

  • 相続放棄:相続の開始を知った時から3か月以内
  • 所得税の準確定申告:相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内
  • 相続税の申告:相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内
  • 相続登記の義務化:2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内の登記が必要

在留資格関連業務

在留資格の更新・変更は、各外国人の在留期間に応じて通年で発生します。ただし、4月の入社・入学シーズンに向けた1〜3月と、10月入社に向けた7〜9月に集中する傾向があります。

自動車登録・車庫証明

自動車の売買は通年で行われますが、以下の時期に特に増加します。

  • 3月:年度末の決算セール
  • 9月:中間決算のセール
  • ボーナス時期:6月・12月

閑散期の活用法

営業活動の強化

閑散期は、新規顧客の開拓に時間を充てる絶好の機会です。以下の営業活動を計画的に行いましょう。

既存顧客へのフォローアップ

  • 過去の依頼者への近況確認の連絡
  • 許認可の更新時期が近い顧客へのリマインド
  • 法改正による影響がある顧客への情報提供

新規営業

  • 異業種交流会への参加
  • 商工会議所や商工会の会合への出席
  • 他士業(税理士、司法書士、社労士等)への挨拶訪問と連携の提案
  • ディーラーや不動産会社への営業

セミナー・勉強会の開催

  • 専門分野に関するセミナーを開催し、見込み客との接点を作る
  • 既存顧客向けの法改正説明会を実施

自己研鑽

閑散期は、スキルアップのための学習に集中できる貴重な時間です。

  • 新しい業務分野の学習:これまで取り扱っていなかった業務分野の勉強
  • 研修への参加:単位会や外部団体が主催する研修・セミナーへの参加
  • 資格の取得:特定行政書士の考査対策、関連資格(宅建、FP等)の学習
  • 実務書の読書:専門分野の最新実務書を読み込む

コンテンツ作成

閑散期に作成したコンテンツは、長期的に事務所の集客に貢献します。

  • ブログ記事の執筆:専門分野に関する解説記事を作成し、SEOを強化
  • YouTubeの動画制作:手続の流れや注意点を動画で解説
  • SNSの投稿ストック:繁忙期に備えて、SNS投稿をまとめて作成
  • パンフレット・チラシの作成:事務所の案内パンフレットやサービス別チラシの制作・改訂

事務所の改善

事務所の運営体制を見直し、改善する時間としても活用しましょう。

  • 業務フローの見直し:非効率な作業がないかを点検し、改善策を実施
  • ツールの導入・見直し:新しいクラウドツールの試用、既存ツールの設定見直し
  • 書式・テンプレートの整備:よく使う書式やテンプレートの更新・改良
  • ウェブサイトのリニューアル:デザインの刷新、コンテンツの追加、料金表の更新

年間スケジュールの立て方

四半期ごとの計画

年間スケジュールは、四半期(3か月)ごとに大まかな計画を立て、月ごとに具体的なアクションに落とし込むのが効果的です。

第1四半期(1月〜3月):繁忙期の業務対応が中心。年始に年間目標を設定。確定申告の対応。

第2四半期(4月〜6月):新年度の対応。法改正への対応。前年度の業績振り返り。新規営業の強化。

第3四半期(7月〜9月):建設業決算変更届の繁忙期(7月)を除けば比較的落ち着く時期。自己研鑽やコンテンツ作成に充てる。下半期の戦略見直し。

第4四半期(10月〜12月):年末に向けた対応。翌年の業務計画策定。顧客への年末挨拶。確定申告の準備開始。

売上の平準化戦略

繁忙期と閑散期の売上の差を小さくする「平準化」は、安定した事務所経営の重要なテーマです。

複数の業務分野を組み合わせる:繁忙期が異なる業務分野を組み合わせることで、年間を通じた受注の安定化を図ります。例えば、建設業(7月が繁忙期)と在留資格(1〜3月が繁忙期)を組み合わせると、繁忙期が分散します。

顧問契約の獲得:月額固定の顧問契約を増やすことで、毎月の基本収入を確保します。建設業者との年間顧問契約、法人の定期的な届出業務の受託などが該当します。

サブスクリプション型サービスの導入:毎月の書類作成や届出を定額で引き受けるサブスクリプション型のサービスを提供することで、安定的な収入を確保できます。

目標管理の方法

年間スケジュールの実効性を高めるために、以下の目標管理手法を活用しましょう。

  • 年間売上目標の設定:前年の実績を踏まえ、達成可能かつ挑戦的な目標を設定
  • 月別の売上目標の配分:繁忙期と閑散期の特性を踏まえ、月ごとの目標を設定(例:繁忙期は高め、閑散期は低めに設定)
  • KPIの設定:売上以外にも、新規問い合わせ件数、受任件数、ウェブサイトのアクセス数などのKPIを設定
  • 月次の振り返り:毎月末に目標の達成状況を振り返り、翌月の計画を調整

繁忙期に備えるための準備

業務効率化の仕組みづくり

繁忙期に備えて、業務効率を最大化する仕組みを閑散期のうちに整えておきましょう。

  • テンプレートの整備:よく作成する書類のテンプレートを最新の状態に更新
  • チェックリストの作成:業務ごとの手順チェックリストを作成し、漏れを防止
  • 外注先の確保:繁忙期に業務の一部を外注する場合に備え、信頼できる外注先を事前に確保
  • スタッフの育成:補助スタッフやパートタイムの人員の採用・育成

体調管理

繁忙期は長時間労働になりがちですが、体調を崩すと業務に大きな支障が出ます。日頃からの体調管理はもちろん、繁忙期前にしっかり休養を取っておくことも大切です。

  • 規則正しい生活リズムの維持
  • 適度な運動の習慣化
  • 繁忙期前のリフレッシュ休暇の確保

まとめ|計画的な事務所経営で安定成長を実現する

行政書士の業務には明確な繁忙期と閑散期が存在します。繁忙期には効率的な業務処理体制で対応し、閑散期には営業活動、自己研鑽、コンテンツ作成、事務所の改善に時間を充てることで、年間を通じた事務所の成長を実現できます。

年間スケジュールを策定し、四半期ごとの計画と月次の振り返りを実践することで、行き当たりばったりの経営から脱却し、計画的な事務所運営が可能になります。繁忙期の負荷を予測し、閑散期に先手を打つ経営姿勢が、安定成長の鍵です。

確認問題

3月決算の建設業者の決算変更届(事業年度終了届)の提出期限は、毎年7月末日である。

○ 正しい × 誤り
解説
建設業法11条2項により、決算変更届は毎事業年度終了後4か月以内に提出する必要があります。3月決算の場合、事業年度終了日の3月31日から4か月後の7月末日が提出期限です。3月決算の法人は非常に多いため、7月は建設業業務を主力とする行政書士にとって繁忙期となります。
確認問題

行政書士の業務において、閑散期は営業活動を控え、業務の受注を待つのが一般的である。

○ 正しい × 誤り
解説
閑散期は営業活動を控える時期ではなく、むしろ積極的に営業活動(既存顧客へのフォロー、新規営業、セミナー開催等)、自己研鑽、コンテンツ作成、事務所の改善に充てるべき重要な期間です。閑散期の過ごし方が翌年以降の業績に大きく影響します。
確認問題

行政書士の売上を平準化するための方法の一つとして、繁忙期が異なる複数の業務分野を組み合わせることが有効である。

○ 正しい × 誤り
解説
繁忙期が異なる業務分野を組み合わせることは、売上の平準化に効果的な戦略です。例えば、建設業(7月が繁忙期)と在留資格(1〜3月が繁忙期)を組み合わせると、年間を通じて受注が安定しやすくなります。これに加えて、顧問契約の獲得やサブスクリプション型サービスの導入も平準化に有効です。
#キャリア #業務計画 #経営

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