外国人支援業務の実務ガイド|需要拡大の注目分野
行政書士による外国人支援業務の実務を解説。在留資格の種類と申請手続、申請取次制度、技能実習と特定技能の違い、外国人雇用の実務フローまで、需要拡大が続く入管業務の全体像を網羅的に整理します。
はじめに|外国人支援業務は需要拡大が続く注目分野
日本に在留する外国人の数は年々増加しており、2024年末時点で約380万人に達しました。少子高齢化による労働力不足を背景に、外国人材の受入れは国策として推進されており、行政書士による外国人支援業務の需要はますます拡大しています。
外国人支援業務は、在留資格の取得・変更・更新をはじめ、外国人の生活全般にわたるサポートを含む幅広い分野です。本記事では、在留資格の種類と申請手続、申請取次制度、技能実習と特定技能の違い、外国人雇用の実務フローを体系的に解説します。
入管業務は、他士業との重複が少なく、行政書士の独占的な実務領域として確立されている数少ない分野の一つです。弁護士を除き、有償で在留資格申請の書類作成・申請取次を業として行えるのは申請取次の届出をした行政書士に限られます。そのため、適切な研修を修了し正確な制度知識を身につければ、参入障壁が高く競合の少ない安定した業務基盤を築くことができます。本記事は、制度の根拠条文・要件・実務上の注意点を網羅的に整理し、これから入管業務に取り組む行政書士が全体像を把握できることを目的としています。
在留資格制度の基本
在留資格とは
在留資格とは、外国人が日本に在留するために必要な法的地位(ステータス)です。出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づき、日本に在留するすべての外国人は、いずれかの在留資格を有していなければなりません。
入管法は、外国人の入国・在留・出国を一元的に規律する基本法です。在留資格の根拠は、次の規定に置かれています。
本邦に在留する外国人は、出入国管理及び難民認定法及び他の法律に特別の規定がある場合を除き、それぞれ、当該外国人に対する上陸許可若しくは当該外国人の取得に係る在留資格…をもつて在留するものとする。
― 出入国管理及び難民認定法 第2条の2第1項
在留資格はしばしば「ビザ(査証)」と混同されますが、正確には異なる概念です。
- 査証(ビザ): 外国にある日本の大使館・領事館が発給する入国推薦の証明
- 在留資格: 日本に上陸・在留するための法的地位(出入国在留管理局が管轄)
査証は外務省(在外公館)が所管し、入国前の推薦という性格を持ちます。これに対し在留資格は出入国在留管理庁(法務省の外局)が所管し、上陸審査を経て付与され、日本に滞在し続ける根拠となります。実務上、依頼者が「ビザを取りたい」と言う場合の多くは在留資格の取得を指しており、両者の違いを正確に説明できることが入管業務の第一歩です。
在留資格の分類
在留資格は、入管法別表に列挙されており、大きく以下のように分類できます。別表第一が「活動に基づく在留資格」、別表第二が「身分又は地位に基づく在留資格」に対応します。
活動に基づく在留資格(活動類型資格)
日本で行う活動の内容に基づいて付与される在留資格です。原則として、許可された活動以外の就労活動はできません。
「就労が認められない資格」であっても、後述する資格外活動許可を受ければ、本来の在留目的を阻害しない範囲で就労が可能になる場合があります(留学生のアルバイト等)。
身分又は地位に基づく在留資格(身分・地位類型資格)
日本人との身分関係や特別な地位に基づいて付与される在留資格で、就労活動に制限がありません。
- 永住者: 法務大臣から永住の許可を受けた者
- 日本人の配偶者等: 日本人の配偶者、特別養子、日本人の子として出生した者
- 永住者の配偶者等: 永住者・特別永住者の配偶者等
- 定住者: 法務大臣が特別な理由を考慮して一定の在留期間を指定して居住を認める者
身分・地位類型資格は活動内容に制限がないため、単純労働を含むあらゆる職種に就くことができます。実務では、国際結婚に伴う「日本人の配偶者等」の申請や、日系人の「定住者」、難民・人道配慮による「定住者」など、家族法・国際私法とも交錯する論点が多く現れます。
在留資格に該当する活動と「該当性」
活動類型資格の審査では、申請人が行おうとする活動が、当該在留資格に対応する別表上の活動に当てはまるか(在留資格該当性)と、法務省令で定める上陸許可基準に適合するか(基準適合性)の双方が問われます。たとえば「技術・人文知識・国際業務」では、職務内容が学術上の素養を背景とする業務である必要があり、単純作業中心の業務は原則として該当しません。
実務上、最も判断が難しいのがこの該当性です。大学・専門学校での専攻と職務内容との関連性、業務に占める専門性の割合、給与水準が日本人と同等以上であることなどが総合的に審査されます。該当性の判断を誤ると不許可に直結するため、業務内容を具体的に聴き取り、申請理由書で説得的に立証する力が求められます。
在留期間
各在留資格には在留期間が定められています。在留資格によって異なりますが、一般的には3か月、1年、3年、5年などが設定されています。永住者の在留期間は無期限です。
在留期間は、本人のこれまでの在留状況や雇用先の安定性などを踏まえて個別に決定されます。同じ在留資格でも、初回は1年が付与され、更新を重ねて在留状況が良好と認められると3年・5年と延びていくのが一般的です。在留期間が長いほど更新の手間が減るため、長期の在留期間を得るための立証も実務上の重要なテーマです。
主要な在留資格の申請手続
在留資格認定証明書交付申請
日本に入国しようとする外国人が、事前に在留資格の認定を受けるための手続です。通常、日本にいる代理人(雇用主や親族等)が地方出入国在留管理局に申請します。
在留資格認定証明書(COE)は、上陸のための条件のうち在留資格該当性・基準適合性を法務大臣が事前に審査し、適合していることを証明する文書です。これを在外公館に提示することで査証審査が円滑化され、上陸審査もスムーズになります。
手続の流れ
- 日本の代理人が出入国在留管理局に在留資格認定証明書交付申請を行う
- 審査(通常1〜3か月)
- 認定証明書の交付
- 認定証明書を外国人本人に送付
- 外国人本人が在外公館で査証(ビザ)を申請
- 査証の発給
- 日本に入国(上陸審査で在留カードの交付)
在留資格認定証明書には有効期間があり、従来は交付日から3か月以内に上陸する必要があるとされてきました。電子化(メール送付)にも対応が進んでおり、近年は紙の証明書に代えて電子メールでの受領も選択できるようになっています。
在留資格変更許可申請
日本に在留する外国人が、現在の在留資格から別の在留資格に変更する場合の手続です。例えば、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への変更(留学生の就職時)が典型例です。
変更許可は法務大臣の裁量に委ねられており、申請があれば必ず許可されるものではありません。根拠規定は次のとおりです。
在留資格の変更の許可は、…当該外国人が提出した文書により在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。
― 出入国管理及び難民認定法 第20条第3項
「相当の理由」の有無は法務大臣の広範な裁量に属するとされ、後述するマクリーン事件判決の枠組みが基礎となります。実務では、留学生の卒業時期と就職活動の時系列、卒業(見込)証明書、採用企業の事業規模・安定性などを丁寧に立証します。
在留期間更新許可申請
在留期間が満了する前に、引き続き同じ在留資格で在留するための手続です。在留期間の満了する日の3か月前から申請が可能です。
更新許可も変更許可と同様、法務大臣の裁量に属します。
法務大臣は、…在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。
― 出入国管理及び難民認定法 第21条第3項
更新の審査では、これまでの在留状況(納税・社会保険・素行・活動実績)が重視されます。本来の在留目的に沿った活動を継続しているか、税金や年金の未納がないかなどが問われるため、継続的な顧問契約のなかで日頃から在留状況を整えておく支援が価値を持ちます。
永住許可申請
永住者の在留資格を取得するための申請です。最も安定した在留資格であり、申請者本人が直接申請します。永住許可は他の在留資格変更と異なり、独立した特則として規定されています。
法務大臣は、外国人が永住許可を申請した場合には、その者が次の各号に適合し、かつ、その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り、これを許可することができる。
― 出入国管理及び難民認定法 第22条第2項
主な要件
- 素行が善良であること: 法令に違反していないこと
- 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
- 国益に合致すると認められること: 原則として引き続き10年以上日本に在留していること(うち就労資格で5年以上)
- 公的義務(納税、社会保険料の支払い等)を適正に履行していること
なお、上記1(素行善良要件)および2(独立生計要件)は、日本人・永住者・定住者の配偶者や子については適用されないとされています。
高度専門職の在留資格を有する者については、在留期間の要件が緩和される場合があります。高度専門職のポイント計算で一定点数以上に達した者は、在留歴が1年または3年でも永住申請が認められうるとされています。
実務上の注意点として、近年は公的義務の履行(とりわけ年金・健康保険の納付状況や納期内納付の有無)が厳格に審査されています。一度でも納付遅れがあると不許可となる例もあるため、申請前に納付履歴を確認し、必要に応じて在留期間を整えてから申請するのが定石です。
在留資格をめぐる重要判例
マクリーン事件 ― 外国人の在留に関する基本判例
入管業務・憲法(外国人の人権)の双方で最重要とされるのがマクリーン事件です。在留期間更新の不許可処分が争われ、外国人の人権保障の限界と法務大臣の裁量について判断が示されました。
事案:在留中に政治活動(ベトナム反戦運動等)を行った外国人について、法務大臣が在留期間更新を不許可とした。本人がその取消しを求めて争った。
判旨:最高裁は、外国人に対する憲法の基本的人権の保障は権利の性質上日本国民のみを対象とするものを除き及ぶとしつつ、在留の許否は国の裁量に委ねられるとした。
憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん、…在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもない…
― 最大判昭和53年10月4日(マクリーン事件)
そのうえで、外国人に対する憲法の人権保障は、外国人在留制度の枠内で与えられているにすぎず、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間更新の際に消極的な事情として斟酌されないことまでの保障は与えられていない、とした。
意義:本判決は、(1) 外国人にも権利の性質上可能な限り人権保障が及ぶこと(性質説)、(2) しかし入国・在留の自由は保障されず、在留の許否は法務大臣の広範な裁量に属すること、を確立した点で重要です。在留資格の変更・更新・永住の各処分が裁量処分であることの理論的基礎となっており、行政書士試験でも憲法・行政法の双方で頻出です。
森川キャサリーン事件 ― 再入国の自由
わが国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものでない…
― 最判平成4年11月16日(森川キャサリーン事件)
定住外国人の再入国(一時出国して再び戻る自由)が憲法上保障されているかが争われ、最高裁はこれを否定しました。マクリーン事件の射程を再入国の場面にも及ぼした判例として整理されます。
申請取次制度
申請取次とは
在留資格に関する申請は、原則として外国人本人が出入国在留管理局に出頭して行う必要があります。しかし、申請取次制度により、所定の届出を行った行政書士等が、外国人本人に代わって申請書類を出入国在留管理局に提出することができます。
申請取次は「代理」ではなく「取次」である点に注意が必要です。申請の意思決定は外国人本人が行い、行政書士はその申請書類を出入国在留管理局の窓口に提出する行為を取り次ぐ立場です。
この「取次」の効果は、本来必要とされる本人の出頭義務が免除される点にあります。取次により本人は窓口に出向く必要がなくなり、就労中の外国人や遠方に住む外国人の負担が大きく軽減されます。一方で、申請内容に虚偽があれば取り次いだ行政書士も責任を問われうるため、本人の意思確認と事実関係の確認を怠らないことが極めて重要です。
申請取次行政書士になるには
申請取次の届出を行うためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 行政書士として登録していること
- 出入国在留管理庁が認める研修を修了していること
- 効果測定(テスト)に合格していること
研修は日本行政書士会連合会が実施しており、通常2日間の日程で行われます。研修修了後、地方出入国在留管理局に届出を行い、届出済証明書(ピンクカード)の交付を受けます。
届出済証明書には有効期間(おおむね3年程度とされる)があり、更新のためには改めて研修(管理研修等)を受講する必要があります。資格を維持するには継続的な研鑽が前提となっている点も押さえておきましょう。
申請取次ができる範囲
申請取次行政書士が取り次ぐことができる主な申請は以下のとおりです。
- 在留資格認定証明書交付申請
- 在留資格変更許可申請
- 在留期間更新許可申請
- 永住許可申請
- 在留資格取得許可申請
- 資格外活動許可申請
- 再入国許可申請
- 就労資格証明書交付申請
ここで注意したいのは、申請取次はあくまで入管法上の手続に関するものであり、帰化申請(国籍法に基づく手続)は申請取次の対象外である点です。帰化申請は法務局が窓口で、本人出頭が原則のため、行政書士は書類作成・添付書類の収集を支援できても、取次という形で本人に代わって申請を提出することはできません。両者を混同しないことが実務・試験の双方で重要です。
技能実習制度と特定技能制度の比較
技能実習制度の概要
技能実習制度は、開発途上国への技術移転を通じた国際貢献を目的とする制度です。外国人技能実習生が日本の企業等で技能を修得し、帰国後に母国の経済発展に貢献することを趣旨としています。
技能実習の区分
技能実習には、受入れ方式として、企業が直接受け入れる「企業単独型」と、事業協同組合等の監理団体が受け入れて傘下企業で実習させる「団体監理型」があります。実態としては団体監理型が大半を占めます。
技能実習制度は、劣悪な労働環境や人権侵害の問題が指摘されており、2024年6月に「育成就労制度」への移行を定めた改正法が成立しました。育成就労制度は、外国人の人材育成と確保を正面から目的に掲げた新たな制度です。育成就労では、これまで原則禁止されてきた転籍(転職)が、一定の要件と分野・期間の制限のもとで本人意向による転籍も認められる方向で見直されたとされています。施行は公布から数年後が予定されており、移行期の制度設計が今後も注目されます。
特定技能制度の概要
特定技能制度は、2019年4月に創設された制度で、深刻な人材不足に対応するため、一定の専門性・技能を有する外国人材を即戦力として受け入れることを目的としています。
特定技能の区分
特定技能1号の対象分野は、介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の16分野です。
特定技能1号の取得には、原則として技能試験と日本語試験(日本語能力判定テストまたはN4相当以上)の合格が必要です。ただし、技能実習2号を良好に修了した者は、これらの試験が免除され、関連する分野の特定技能1号へ移行できるという接続関係があります。この「技能実習2号修了→特定技能1号」のルートは実務上きわめて重要で、頻出ポイントです。
技能実習と特定技能の主な違い
両制度の根本的な違いは「目的」にあります。技能実習はあくまで国際貢献(技術移転)が建前であり労働力確保を目的としない、という点から転職禁止や家族帯同不可といった制約が説明されます。これに対し特定技能は労働力確保を正面から目的とするため、即戦力の技能水準を求める代わりに同一分野内での転職を認めています。この「目的の違いが各制約に反映している」という構造を理解すると、細かな違いも整理しやすくなります。
外国人雇用の実務フロー
企業が外国人を雇用するまでの流れ
企業が外国人を新規に雇用する場合の一般的な実務フローは以下のとおりです。
ステップ1: 採用計画と在留資格の確認
外国人に従事してもらう業務内容を明確にし、該当する在留資格があるかを確認します。すべての業務で外国人を雇用できるわけではなく、在留資格の活動範囲に該当する業務でなければなりません。
ステップ2: 募集・選考
海外現地での採用、国内の留学生からの採用、人材紹介会社の利用など、複数の採用ルートがあります。
ステップ3: 在留資格の申請
- 海外から招へいする場合: 在留資格認定証明書交付申請
- 国内在住の外国人を採用する場合: 在留資格変更許可申請(必要な場合)
なお、既に就労可能な在留資格を持つ外国人を採用する場合でも、新しい職務がその在留資格の活動範囲に含まれるか不安なときは、就労資格証明書交付申請を活用すると、企業・本人双方が安心して雇用関係に入れます。就労資格証明書は、現に有する在留資格で従事できる活動を法務大臣が証明する文書で、転職時のリスク回避に有効です。
ステップ4: 雇用契約の締結
労働基準法に基づく労働条件の明示を行い、雇用契約を締結します。外国人労働者にも日本人と同等の労働法規が適用されます。
ステップ5: 入国・就労開始
在留カードの受領、住民登録、社会保険・税務手続など、就労開始に必要な手続を行います。
ステップ6: 届出
企業は、外国人を雇い入れた場合及び離職した場合に、ハローワークに届け出る義務があります(外国人雇用状況の届出、労働施策総合推進法に基づく義務)。
加えて、外国人本人にも、契約機関(雇用先)の変更・消滅等があった場合に出入国在留管理庁へ届け出る義務(所属機関等に関する届出)があります。企業側のハローワーク届出と本人側の入管届出は別制度なので、両者を取り違えないよう整理しておきましょう。
行政書士がサポートする業務
外国人雇用に関して、行政書士は以下の業務をサポートできます。
- 在留資格の該当性の判断・助言
- 在留資格認定証明書交付申請の書類作成・申請取次
- 在留資格変更許可申請の書類作成・申請取次
- 在留期間更新許可申請の書類作成・申請取次
- 雇用契約書の作成支援
- 外国人労働者の受入れ体制構築に関するコンサルティング
外国人の生活支援
行政書士ができる生活支援
外国人支援業務は、在留資格の申請手続だけにとどまりません。日本で生活する外国人が直面するさまざまな手続について、行政書士がサポートできる場面があります。
- 住民登録: 転入届の手続支援
- 銀行口座の開設: 必要書類の準備支援
- 運転免許の切替え: 外国免許の切替手続に関する助言
- 各種届出: 在留カードの住居地届出、所属機関の届出
- 帰化申請: 日本国籍の取得に関する書類作成支援
帰化申請は国籍法に基づく手続で、住所要件(引き続き5年以上居住)、能力要件、素行要件、生計要件、重国籍防止要件などの帰化条件を満たす必要があります。前述のとおり申請取次の対象外で本人出頭が原則ですが、必要書類が膨大で本国書類の取得も伴うため、書類作成・収集支援の需要が大きい分野です。永住と帰化の違い(永住は外国籍のまま日本に永住、帰化は日本国籍を取得)を依頼者に正確に説明できることが大切です。
登録支援機関
特定技能1号の外国人を受け入れる企業(受入れ機関)は、外国人に対して生活オリエンテーション、住居の確保、日本語学習の機会の提供など、法定の支援を行う義務があります。受入れ機関が自ら支援を行えない場合、登録支援機関に支援を委託できます。
法定の支援には、事前ガイダンス、出入国する際の送迎、住居確保・生活に必要な契約支援、生活オリエンテーション、公的手続等への同行、日本語学習機会の提供、相談・苦情への対応、日本人との交流促進、転職支援(受入れ側の都合で雇用契約を解除する場合)、定期的な面談・行政機関への通報などが含まれます。これらの支援を適切に実施できる体制が登録の要件となっています。
行政書士が登録支援機関として登録し、特定技能外国人への支援業務を行うケースも増えています。在留資格申請の代行と支援業務をワンストップで提供できる点が、行政書士が登録支援機関を兼ねる強みです。
入管業務で注意すべきポイント
コンプライアンスの重要性
入管業務は、外国人の在留に直結する業務であり、コンプライアンスの遵守が極めて重要です。虚偽の申請や不正な書類の作成は、入管法違反として処罰されるだけでなく、行政書士としての信用を失墜させます。
入管法には、不正に在留資格を取得させる行為や、それを助長する行為に対する罰則が設けられています。行政書士が依頼者と通謀して虚偽の書類を作成すれば、行政書士法上の懲戒だけでなく刑事責任を問われる可能性もあります。依頼者から不実の記載を求められた場合は、毅然と断る姿勢が職業倫理上も不可欠です。
不許可・不交付への対応
申請が不許可・不交付となった場合、出入国在留管理局で不許可理由の説明を受け、要件を満たすための対策を検討します。再申請が可能な場合は、不許可理由を踏まえて書類を修正・補強して再度申請を行います。
在留資格の許否処分に対しては、行政不服審査法に基づく審査請求や、行政事件訴訟法に基づく取消訴訟といった争訟手段も理論上は存在します。もっとも、前述のマクリーン事件のとおり法務大臣の裁量が広く認められているため、裁量権の逸脱・濫用を立証するのは容易ではありません。実務では訴訟よりも、不許可理由を解消して再申請する方が現実的な解決になることが多い点を押さえておきましょう。
在留資格の取消し制度
偽りその他不正の手段により上陸許可等を受けた場合や、正当な理由なく在留資格に該当する活動を行わないで在留している場合(例: 3か月以上正当な理由なく就労していない場合)、在留資格が取り消されることがあります。顧客にこうしたリスクについても適切に説明することが重要です。
取消事由は入管法第22条の4に列挙されています。代表的なものとして、虚偽の届出をして在留した場合や、所属機関の届出を行わない場合なども含まれます。取消しは退去強制とは別の制度ですが、取消しにより在留資格を失えば最終的に退去強制につながりうるため、依頼者には日頃から届出義務の遵守を促すことが重要です。
よくある誤解と整理ポイント
実務・試験で誤りやすい論点を整理しておきます。
- 「ビザ=在留資格」ではない:査証は外務省、在留資格は出入国在留管理庁の所管で別概念。
- 申請取次は「代理」ではない:本人の出頭義務を免除する取次であり、意思決定は本人が行う。
- 帰化申請は申請取次の対象外:国籍法に基づく手続で本人出頭が原則。入管法上の取次とは別系統。
- 永住と帰化は別物:永住は外国籍のまま、帰化は日本国籍取得。
- 技能実習と特定技能は目的が異なる:前者は国際貢献(建前)、後者は人材確保。この違いが転職可否等に反映する。
- 外国人にも人権保障は及ぶが在留の権利は保障されない:マクリーン事件の枠組み。
行政書士試験での出題ポイント
外国人支援は実務分野ですが、その基礎となる論点は行政書士試験でも問われます。とくに次の角度は頻出です。
- 憲法(人権の享有主体):外国人の人権保障につきマクリーン事件(最大判昭和53年10月4日)の性質説と、在留の許否が裁量に属するという結論。再入国の自由を否定した森川キャサリーン事件もあわせて押さえる。
- 行政法(裁量処分):在留期間更新・変更・永住の許否が法務大臣の裁量処分であること。裁量権の逸脱・濫用があれば司法審査が及ぶという基本枠組み。
- 行政手続・行政争訟:処分に対する理由提示、不服申立て・取消訴訟との関係。
- 一般知識:在留外国人数や受入れ制度(特定技能・技能実習・育成就労)の動向は、時事的な一般知識として問われうる。
過去問では、マクリーン事件の判旨(「在留制度の枠内で人権保障が与えられる」という言い回し)を正確に理解しているかが繰り返し問われています。判旨の核心フレーズを暗記しておくと、正誤判断が安定します。
まとめ
外国人支援業務は、在留資格の申請手続を中心に、外国人の雇用支援から生活支援まで幅広い業務を含む分野です。少子高齢化に伴う労働力不足を背景に、市場は拡大を続けており、行政書士にとって将来性の高い専門分野といえます。
実務のポイントとして、在留資格制度の体系的理解、申請取次制度の活用、技能実習制度と特定技能制度の違いの把握、外国人雇用の実務フローの習得が重要です。育成就労制度への移行など制度の変化も大きいため、最新の法改正情報を常にフォローし、正確な知識に基づいた業務遂行を心がけましょう。また、マクリーン事件に代表される判例理論は、実務での説明力にも試験対策にも直結するため、判旨まで踏み込んで理解しておくことをおすすめします。
関連分野もあわせて学ぶことで理解が深まります。
- 建設業許可申請の実務|要件・手続を徹底解説/許認可実務の代表分野を体系的に整理
- 行政書士の独占業務と業際問題/他士業との境界線を正確に理解する
- マクリーン事件と外国人の人権/憲法の人権享有主体性を判例から学ぶ
申請取次行政書士は、外国人本人の「代理人」として在留資格の申請を行う。
特定技能1号の在留期間は通算5年が上限であり、特定技能2号には在留期間の上限がない。
技能実習制度では、技能実習生は自由に転職(実習先の変更)を行うことができる。
マクリーン事件において最高裁は、外国人にもわが国に引き続き在留することを要求しうる権利が憲法上保障されていると判断した。
帰化申請は、申請取次行政書士が本人に代わって法務局に申請を取り次ぐことができる手続である。