(公開 2026/01/27) / 憲法

職業選択の自由と規制目的二分論|薬局判決を解説

職業選択の自由(憲法22条1項)の保障内容と営業の自由、規制目的二分論(消極目的規制・積極目的規制)を解説。薬局距離制限事件と小売市場事件の判旨を比較し、行政書士試験の出題ポイントを整理します。

はじめに|職業選択の自由は経済的自由権の中核

職業選択の自由は、憲法第22条第1項に規定される経済的自由権の一つです。行政書士試験では、職業選択の自由の保障内容、営業の自由の位置づけ、そして規制目的二分論に基づく違憲審査基準が繰り返し出題されています。

特に、薬局距離制限事件(最大判昭和50年4月30日)と小売市場事件(最大判昭和47年11月22日)は、規制目的二分論の代表的判例であり、正確な理解が求められます。本記事では、これらの判例を中心に、職業選択の自由を体系的に解説します。

経済的自由権は、表現の自由などの精神的自由権と対比される人権です。精神的自由権が「優越的地位」を有し厳格に保障されるのに対し、経済的自由権は社会経済政策の観点から比較的広い制約に服しうると説明されます(二重の基準論)。職業選択の自由はこの二重の基準論を理解するうえでも欠かせない論点であり、財産権(29条)と並んで経済的自由権の中核を構成します。本記事を通じて、条文の趣旨、規制類型、判例の射程、そして二分論の限界までを一気通貫で押さえていきましょう。

職業選択の自由の保障(22条1項)

条文の確認

何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
― 日本国憲法 第22条第1項

22条1項は、「居住・移転の自由」と「職業選択の自由」をあわせて規定しています。両者がひとつの条文にまとめられているのは、封建時代において人々が土地(住所)と職業に緊縛されていた歴史があり、近代社会の成立とともに、人が自由に移動し自由に職を選べることが資本主義経済の前提として重視されたためと説明されます。職業選択の自由は、単なる経済活動の保障にとどまらず、人が自らの生き方を実現するための人格的価値とも結びついている点に特徴があります。

なお、22条2項は「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない」と規定し、外国移住・国籍離脱の自由を保障しています。海外渡航(旅行)の自由は、判例上、22条2項の「外国移住の自由」に含まれるものとして保障されると解されています(帆足計事件・最大判昭和33年9月10日)。職業選択の自由(22条1項)と区別して整理しておきましょう。

「公共の福祉に反しない限り」の意味

22条1項は、人権条項のなかでも、29条2項(財産権)とともに「公共の福祉」による制約が条文上明示されている点に特徴があります。13条の「公共の福祉」が人権一般に対する内在的制約原理であるのに対し、22条・29条の「公共の福祉」には、内在的制約に加えて、社会経済政策の観点から積極的に加えられる政策的制約も含まれると解するのが通説・判例の立場です。この点が、後述する規制目的二分論(積極目的規制を許容する根拠)につながります。

保障の範囲

職業選択の自由は、以下の内容を含みます。

  1. 職業選択の自由: 自己の従事する職業を自由に選択する権利
  2. 職業遂行の自由(営業の自由): 選択した職業を自由に遂行する権利

条文上は「職業選択の自由」のみが明記されていますが、判例・通説は、選択した職業を遂行する自由(営業の自由)も22条1項により保障されると解しています。

職業を「選ぶ」自由が保障されても、選んだ職業を「遂行・継続する」自由が保障されなければ、職業選択の自由は画餅に帰します。そこで、選択した職業を遂行する自由(職業遂行の自由=営業の自由)も、職業選択の自由の不可欠の前提として22条1項に含まれると解されています。

営業の自由

営業の自由とは、事業を営む自由であり、事業活動の内容・方法・規模などを自由に決定する自由を含みます。

薬局距離制限事件において、最高裁は次のように述べています。

職業は、(中略)各人が自己のもつ個性を全うすべき場として、個人の人格的価値とも不可分の関連を有するものである。(中略)このように、職業は、それ自体において社会的機能分担の活動たる性質を有し、(中略)その選択、遂行の自由は、各人の生活の基本的条件の充足に欠くことのできないものである。
― 最大判昭和50年4月30日(薬局距離制限事件)

この判示は、職業が「自己のもつ個性を全うすべき場」「個人の人格的価値とも不可分の関連を有する」と述べ、職業選択の自由が経済的自由権でありながら人格的価値とも結びつくことを示した点で重要です。試験では、職業選択の自由を純粋な財産的・経済的利益のみと捉える選択肢は誤りとなりうるため、「人格的価値との関連」というキーワードを押さえておきましょう。

なお、「営業の自由」については、それを職業選択の自由として22条で保障するのか、それとも財産権(29条)で保障するのか、あるいは両者の複合として保障するのかについて学説上の議論があります。判例(薬局距離制限事件)は、営業の自由を職業選択の自由に含めて22条1項で論じており、行政書士試験対策としては「営業の自由は22条1項で保障される」という判例・通説の理解を基準に学習すれば足ります。

職業の自由に対する規制の類型

職業の自由に対する規制を理解するうえでは、「規制の態様(強度)による分類」と「規制の目的による分類(規制目的二分論)」という2つの軸を区別することが重要です。混同しやすいため、両者を分けて整理します。

規制の態様による分類

職業の自由に対する規制は、規制の態様(強度)によって以下のように分類されます。

規制の態様内容具体例職業遂行(活動)の規制職業活動の方法・態様を規制営業時間の制限、広告の規制主観的要件による規制(許可制)個人の能力・資格を要件とする規制医師免許、弁護士資格、行政書士登録客観的要件による規制個人の意思・努力で左右できない要件距離制限、需給調整に基づく数量制限

規制の強度は、職業遂行(活動)の規制が最も弱く、客観的要件による規制が最も強いとされます。職業選択そのものを制約する許可制・資格制は、選択した職業の遂行方法を制約するにとどまる規制よりも強度が高く、なかでも本人の努力では充足できない客観的要件(距離制限・需給調整)は最も制約が強いと位置づけられます。

薬局距離制限事件で最高裁は、許可制について次のように述べています。

一般に許可制は、(中略)職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べてより緩やかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要する。
― 最大判昭和50年4月30日(薬局距離制限事件)

この判示は、許可制という「強度の高い規制」であることと、消極目的規制であることを組み合わせて、より緩やかな手段(職業活動規制)で目的を達成できる場合には許可制は許されないという、いわゆる「より制限的でない他の選びうる手段(LRA)」の発想を示している点に意義があります。

規制の目的による分類(規制目的二分論)

規制目的二分論とは、職業の自由に対する規制を、その目的に応じて消極目的規制と積極目的規制に分け、それぞれ異なる違憲審査基準を適用する考え方です。

規制の目的内容審査基準代表判例・結論消極目的規制(警察的規制)国民の生命・健康・安全に対する危険の防止厳格な合理性の基準(立法事実に基づく審査)薬局距離制限事件(違憲)積極目的規制(政策的規制)社会・経済的弱者の保護など社会経済政策の実現明白性の原則(緩やかな審査)小売市場事件(合憲)

二分論の核心は、「裁判所がどの程度立法府の判断を尊重するか(審査の密度)」が規制目的によって変わるという点にあります。消極目的規制は、生命・健康への危険防止という、裁判所にも判断可能な事実(立法事実)に立脚するため、裁判所は立法事実の有無を厳格に審査します。これに対し積極目的規制は、複雑な社会経済政策上の判断を含み、政策の当否は本来政治部門(立法府)が決すべき事柄であるため、裁判所は立法裁量を広く尊重し、「著しく不合理であることが明白」な場合に限って違憲とします。

審査基準の整理

二重の基準論のもとで、職業の自由(経済的自由権)に適用される審査基準は次のように整理できます。

審査基準内容適用される場面明白性の原則著しく不合理であることが明白な場合に限り違憲積極目的規制厳格な合理性の基準立法事実に基づき、目的の重要性・手段の必要性と合理性を審査。より緩やかな手段で足りないことを要する消極目的規制

精神的自由権に適用される「厳格審査基準(LRAの基準・明白かつ現在の危険など)」と比べると、いずれも一段緩やかな基準である点が、経済的自由権が精神的自由権より広い規制に服するという二重の基準論の帰結です。

小売市場事件(最大判昭和47年11月22日)

事案の概要

小売商業調整特別措置法が、小売市場の開設について都道府県知事の許可を要するものとし、かつ、既存の小売市場との距離制限を設けていたことについて、職業選択の自由を侵害するかが争われた事件です。許可なく小売市場を開設して建物を貸し付けたとして起訴された被告人が、同法による許可制が22条1項に違反すると主張しました。

判旨

最高裁は、本件規制を積極目的規制と位置づけ、以下のように判示しました。

個人の経済活動に対する法的規制措置については、立法府の政策的技術的な裁量判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、立法府の裁量的判断を尊重するのを建前とし、ただ、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限つて、これを違憲として、その効力を否定することができる。
― 最大判昭和47年11月22日(小売市場事件)

最高裁はさらに、国の社会経済政策の実施手段として、社会経済的な弱者である中小企業の保護のために一定の規制措置を講ずることは、憲法が予定し許容するところであるとも述べ、積極目的規制(社会経済政策的規制)の合憲性を支える論理を示しました。

審査基準:明白性の原則

積極目的規制については、立法府の裁量を広く認め、規制が著しく不合理であることが明白である場合に限り違憲とするという、緩やかな審査基準(明白性の原則)が適用されます。

結論

最高裁は、小売市場の距離制限は中小小売商の保護という社会経済政策上の目的に基づくものであり、著しく不合理であることが明白とはいえないとして、合憲と判断しました。

この判例の意義

小売市場事件は、規制目的二分論のうち「積極目的規制=明白性の原則」という枠組みを確立した先例として位置づけられます。試験では、(1)規制目的が「中小小売商の保護」という社会経済的弱者の保護=積極目的であること、(2)審査基準が「明白性の原則」であること、(3)結論が合憲であること、の3点をセットで覚えることが重要です。「著しく不合理であることの明白である場合に限つて」というフレーズは選択肢でそのまま引用されることがあるため、文言レベルで押さえておきましょう。

薬局距離制限事件(最大判昭和50年4月30日)

事案の概要

薬事法(当時)が薬局の開設について都道府県知事の許可を要するものとし、その許可基準として既存薬局との距離制限(配置の適正基準)を設けていたことについて、職業選択の自由を侵害するかが争われた事件です。薬局開設の不許可処分を受けた者が、距離制限を定める薬事法の規定が22条1項に違反すると主張しました。

判旨

最高裁は、本件規制を消極目的規制と位置づけ、以下のように判示しました。

規制目的二分論の明確化

一般に許可制は、(中略)それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要する。
― 最大判昭和50年4月30日(薬局距離制限事件)

規制手段の必要性・合理性(立法事実の審査)

最高裁は、薬局の距離制限の目的を、薬局の偏在・乱立によって過当競争が生じ、その結果として一部業者の経営不安定をまねき、不良医薬品の供給など国民の生命・健康に対する危険を生じさせるおそれを防止することにあると整理しました。そのうえで、こうした因果関係(立法事実)が認められるかを厳格に審査し、過当競争による不良医薬品供給の危険は、行政上の取締りの強化など、より緩やかな手段によって防止できるのであって、距離制限という強力な規制を必要とするだけの合理的根拠(立法事実)は認められないと判断しました。

最高裁は、規制の必要性・合理性について次のように述べています。

薬局の開設等の許可基準の一つとして地域的制限を定めた薬事法(中略)の規定は、不良医薬品の供給の防止等の目的のために必要かつ合理的な規制を定めたものということができないから、憲法二二条一項に違反し、無効である。
― 最大判昭和50年4月30日(薬局距離制限事件)

審査基準:厳格な合理性の基準

消極目的規制については、規制の必要性と合理性について立法事実に基づく厳格な審査が行われます。具体的には、以下の点が審査されます。

  1. 規制目的の正当性: 消極目的(国民の生命・健康への危険防止)が正当な目的として認められるか
  2. 規制手段の必要性: より緩やかな規制手段では目的を達成できないか(LRAの発想)
  3. 手段と目的の合理的関連性: 規制手段が目的達成のために必要かつ合理的であるか

結論

最高裁は、距離制限は必要性・合理性を欠くとして、違憲と判断しました。なお、最高裁が法令を違憲と判断した数少ない事例の一つであり、違憲判決を問う問題でも登場します。

この判例の意義

薬局距離制限事件の意義は、(1)職業選択の自由について規制目的二分論の枠組みを正面から採用したこと、(2)消極目的規制について「厳格な合理性の基準」を適用し、立法事実の有無を裁判所が踏み込んで審査したこと、(3)その結果、距離制限を違憲と判断したこと、にあります。小売市場事件(積極目的・合憲)と対をなす判例として、必ずセットで理解しておきましょう。

薬局距離制限事件と小売市場事件の比較

項目小売市場事件薬局距離制限事件規制の内容小売市場の許可制・距離制限薬局の許可制・距離制限規制の目的積極目的(中小小売商の保護)消極目的(国民の生命・健康の保護)審査基準明白性の原則厳格な合理性の基準立法府の裁量広く尊重限定的(立法事実を厳格審査)結論合憲違憲判決年昭和47年(1972年)昭和50年(1975年)

なぜ結論が異なるのか

同じ「距離制限」という規制手段であっても、規制の目的が異なることで適用される審査基準が変わり、結論も異なります。

  • 小売市場: 中小小売商の保護という社会経済政策(積極目的)のための規制であり、立法府の政策的・技術的裁量が広く認められる。よって明白性の原則のもと合憲。
  • 薬局: 国民の健康保護という消極目的のための規制であり、より厳格な審査(厳格な合理性の基準)が行われ、距離制限を正当化する立法事実(過当競争→不良医薬品供給という因果関係)の不存在が指摘された。よって違憲。

ここが本論点の最大の山場です。「規制の目的→適用される審査基準→結論」という流れを、両判例について逆方向(結論から目的をたどる)にも説明できるようにしておくと、応用問題に対応できます。

規制目的二分論の限界と補足

二分論の批判

規制目的二分論は判例理論として重要ですが、学説上は次のような批判があります。

  1. 目的の分類困難: 一つの規制が消極目的と積極目的の両方の性格を持つ場合があり、二分論では割り切れない(後述の公衆浴場・酒類販売がその例)。
  2. 積極目的規制への緩やかな審査: 積極目的規制について立法府の裁量を広く認めすぎると、違憲審査が形骸化し、人権保障が空洞化するおそれがある。
  3. 規制態様の軽視: 規制の目的だけでなく、規制の態様(許可制か届出制か、客観的要件か主観的要件か)も審査基準に大きく影響するべきであり、目的のみによる二分は単純にすぎるとの批判がある。

近年の判例(後述の薬類関連や郵便法、あるいは平成期の諸判例)では、規制目的二分論を機械的に当てはめるのではなく、規制の目的・態様・必要性などを総合的に考慮する傾向もみられると指摘されます。試験対策としては、二分論を基本枠組みとしつつ、二分論で割り切れない判例があることを押さえておくのが安全です。

酒類販売免許制事件(最判平成4年12月15日)

酒類の販売について免許制を採用し、経営の基礎が薄弱と認められる場合に免許を与えないことができるとする規制について、最高裁は、酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという財政目的のための規制として、その合憲性を審査しました。最高裁は、租税法の定立に関する立法府の政策的・技術的な裁量を尊重しつつ、規制目的が正当であり手段が著しく不合理でない限り違憲とはいえないとして、合憲と判断しました。

この判例は、規制目的が典型的な消極目的・積極目的のいずれにも単純には分類しにくい「財政目的」のための規制について、立法裁量を尊重する緩やかな審査を行った点で、規制目的二分論の射程と限界を考えるうえで重要です。

公衆浴場距離制限事件

公衆浴場の距離制限については、最高裁の判例の評価が時代とともに変遷した点に注意が必要です。古い判例(最大判昭和30年1月26日)は公衆衛生(消極目的)の観点から合憲としていましたが、平成期の判例(最判平成元年1月20日、最判平成元年3月7日など)では、公衆浴場業者の経営の安定をはかり、自家風呂を持たない国民の入浴の利益を確保するという積極目的(社会政策的目的)の側面を重視して合憲とするなど、根拠づけが多様化しています。一つの規制が複数の目的を併せ持ちうることを示す例として整理しておきましょう。

その他の経済的自由権関連判例

職業選択の自由そのものではありませんが、関連して問われやすい判例として、財産権の規制について規制目的二分論を否定したとも評される森林法共有林事件(最大判昭和62年4月22日)があります。財産権(29条)の規制では、必ずしも消極・積極の二分論が前面に出ず、規制の目的・必要性・態様などを総合衡量する枠組みが用いられる点で、職業選択の自由の審査枠組みと比較されます。

その他の職業規制に関する判例

司法書士法違反事件(最判平成12年2月8日)

司法書士でない者が登記に関する手続の代理業務などを行うことを禁止し、これに違反した者を処罰する規制について、最高裁は、登記制度が国民の権利義務などに重大な影響を及ぼすものであることから、登記手続の専門家として一定の資格を有する者にこれを取り扱わせ、もって国民の権利を保護するための合理的な規制であるとして、22条1項に違反しない(合憲)と判断しました。

タクシー事業の参入規制

タクシー事業など旅客自動車運送事業への参入について免許制(許可制)を採用する規制は、利用者の安全確保(消極目的的側面)と輸送秩序の維持・需給調整(積極目的的側面)の両方の性格を持つとされ、一般に合理的な規制と解されています。複数の目的が併存する例として、二分論の限界とあわせて理解しておくとよいでしょう。

よくある誤解と注意点

  • 「営業の自由は条文に明記されている」は誤り: 22条1項が明文で保障するのは「職業選択の自由」であり、「営業の自由」は判例・通説の解釈によって22条1項に含まれるとされるものです。
  • 「消極目的=明白性の原則」「積極目的=厳格な合理性」と逆に覚えてしまう誤り: 正しくは「消極目的=厳格な合理性の基準」「積極目的=明白性の原則(緩やか)」です。「消極(健康・安全)は裁判所が踏み込んで厳しく審査」「積極(政策)は立法府を尊重して緩やか」と、目的の性質から方向性を導けるようにしておくと混同を防げます。
  • 「薬局事件は合憲」「小売市場事件は違憲」と結論を取り違える誤り: 薬局距離制限事件は違憲、小売市場事件は合憲です。
  • 「規制の態様による分類」と「規制目的による分類」の混同: 前者は許可制・職業遂行規制などの強度の分類、後者は消極目的・積極目的の分類であり、別の軸です。
  • 海外渡航の自由を22条1項に位置づける誤り: 海外渡航(外国移住)の自由は22条2項の問題です。22条1項は居住・移転の自由と職業選択の自由です。

試験での出題ポイント

  1. 営業の自由も22条1項で保障: 条文上は明記されていないが判例・通説で認められる(人格的価値との関連にも言及)。
  2. 規制目的二分論: 消極目的規制は厳格な合理性の基準、積極目的規制は明白性の原則。方向を逆に覚えない。
  3. 薬局距離制限事件(違憲): 消極目的規制として厳格に審査し、過当競争→不良医薬品供給という立法事実を否定。違憲判決の代表例。
  4. 小売市場事件(合憲): 積極目的規制(中小小売商の保護)として明白性の原則で緩やかに審査。
  5. 規制の態様の分類: 職業遂行(活動)の規制・許可制(主観的要件)・客観的要件による規制の強度の違い。
  6. 両判例の比較: 同じ距離制限でも規制目的の違いにより審査基準・結論が異なる。
  7. 二分論の限界判例: 酒類販売免許制(財政目的・合憲)、公衆浴場距離制限(目的の評価の変遷)など。
  8. 条文の体系: 22条1項(居住移転・職業選択)と22条2項(外国移住・国籍離脱)の区別。
確認問題

憲法第22条第1項は、職業選択の自由と営業の自由の両方を明文で保障している。

○ 正しい × 誤り
解説
憲法第22条第1項は「職業選択の自由」を明文で保障していますが、「営業の自由」は条文上明記されていません。ただし、判例・通説は、職業選択の自由には選択した職業を遂行する自由(営業の自由)も含まれると解しており、22条1項によって保障されるとしています(最大判昭和50年4月30日・薬局距離制限事件参照)。
確認問題

薬局距離制限事件において、最高裁は薬局の距離制限を積極目的規制として合憲と判断した。

○ 正しい × 誤り
解説
薬局距離制限事件(最大判昭和50年4月30日)において、最高裁は薬局の距離制限を消極目的規制(国民の生命・健康への危険を防止するための警察的規制)と位置づけ、厳格な合理性の基準を適用しました。そして、薬局の偏在・過当競争が不良医薬品の供給をもたらすという因果関係(立法事実)が認められないとして、違憲と判断しました。
確認問題

小売市場事件において、最高裁は積極目的規制に対して「著しく不合理であることが明白である場合に限り違憲とする」という審査基準を適用した。

○ 正しい × 誤り
解説
小売市場事件(最大判昭和47年11月22日)において、最高裁は、社会経済政策上の積極目的のための規制については、立法府の裁量的判断を尊重し、「当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限つて、これを違憲としてその効力を否定することができる」という明白性の原則を適用し、合憲と判断しました。
確認問題

消極目的規制(警察的規制)には明白性の原則が、積極目的規制(政策的規制)には厳格な合理性の基準が適用される。

○ 正しい × 誤り
解説
規制目的二分論では、消極目的規制(国民の生命・健康・安全の保護)には厳格な合理性の基準が、積極目的規制(社会経済政策の実現)には明白性の原則(緩やかな審査)が適用されます。本問は審査基準が逆になっており誤りです。消極目的は裁判所が立法事実を踏み込んで審査し、積極目的は立法府の裁量を広く尊重する、と方向で覚えましょう。
確認問題

酒類販売の免許制について、最高裁は酒税の適正・確実な賦課徴収という財政目的のための規制として、立法府の裁量を尊重し合憲と判断した。

○ 正しい × 誤り
解説
酒類販売免許制事件(最判平成4年12月15日)において、最高裁は、酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという財政目的のための規制について、租税法に関する立法府の政策的・技術的裁量を尊重し、規制が著しく不合理でない限り違憲とはいえないとして合憲と判断しました。典型的な消極・積極目的に分類しにくい例として整理されます。

まとめ

職業選択の自由(22条1項)は、職業の選択のみならず営業の自由(職業遂行の自由)も保障する経済的自由権です。条文上「公共の福祉に反しない限り」と規定され、内在的制約に加えて社会経済政策上の政策的制約も許容されうる点が、規制目的二分論の前提となります。

その規制に対する違憲審査では、規制目的二分論が重要な判断枠組みとなります。消極目的規制には厳格な合理性の基準が適用され立法事実の存否が厳密に審査される一方、積極目的規制には明白性の原則が適用され立法裁量が広く認められます。薬局距離制限事件(消極目的・違憲)と小売市場事件(積極目的・合憲)の判旨・結論の違いを、規制目的の違いと結びつけて正確に理解しておきましょう。あわせて、酒類販売免許制や公衆浴場距離制限など、二分論で割り切れない判例の存在も押さえておくと、応用問題に対応できます。

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