記述式の時間配分と解答テクニック|40字の書き方
行政書士試験の記述式問題の時間配分と解答テクニックを解説。1問15分の時間管理、40字の文字数感覚の養い方、キーワード抽出法、部分点の狙い方、行政法と民法の記述の違いまで実践的に紹介します。
はじめに|記述式は「書ける力」が得点を左右する
行政書士試験の記述式問題は、3問で60点という高配点を持つ重要なパートです。300点満点中60点、つまり全体の20%を占めます。択一式で180点(合格ライン)を取ることは容易ではないため、記述式でいかに得点を上乗せできるかが合否を分けます。
しかし、記述式は「知識がある」だけでは得点できません。40字前後という限られた文字数の中で、問いに対して正確に答え、必要なキーワードを漏らさず書く技術が求められます。
本記事では、記述式3問の時間配分の目安、40字の文字数感覚の養い方、キーワード抽出法、部分点を確実に取る書き方など、本番で使える実践的なテクニックを解説します。
記述式3問の時間配分を設計する
記述式に割ける時間を逆算する
行政書士試験は180分(3時間)で全60問を解きます。記述式3問に充てる時間は、試験全体の時間配分から逆算して決めましょう。
一般的な時間配分の例は以下の通りです。
記述式には40〜50分を確保したいところです。1問あたり約13〜17分の計算になりますが、問題の難易度によって柔軟に配分を変えましょう。
1問15分の時間管理術
記述式1問を15分で解くための時間配分を以下に示します。
最初の3分:問題文の精読と要件の整理
問題文を丁寧に読み、何を聞かれているかを正確に把握します。特に以下の点を確認しましょう。
- 問われているのは「誰が」「何を」「どうするか」のどれか
- 法的根拠(条文や制度)の指定があるか
- 具体的な事実関係のうち、解答に必要な要素はどれか
次の5分:キーワードの抽出と解答の骨格づくり
解答に盛り込むべきキーワードを洗い出し、解答の骨格を考えます。この段階ではまだ文章にせず、メモ書きでキーワードを並べるだけで構いません。
次の5分:40字の解答文を作成する
キーワードを組み合わせて40字前後の解答文を作成します。文字数を数えながら、過不足のない表現を選びましょう。
最後の2分:見直しと文字数の確認
書き上げた解答の誤字脱字、文字数、論理の整合性を確認します。特に文字数が極端に少ない場合(30字以下)は、キーワードの抜け落ちがないか再確認しましょう。
3問の解答順序の戦略
記述式3問は、行政法が1問、民法が2問という構成が定番です。解答順序は以下の戦略を推奨します。
戦略1:得意な分野から解く
行政法が得意なら行政法から、民法が得意なら民法から解きましょう。得意分野で確実に得点を確保してから苦手分野に取り組むことで、精神的な余裕が生まれます。
戦略2:書けそうな問題から解く
問題文を3問すべてざっと読み(1分程度)、解答の方向性が見えた問題から着手します。難しい問題に先に時間を使ってしまうと、簡単な問題に充てる時間がなくなるリスクがあります。
戦略3:時間が足りない場合の対処
3問目に時間が足りなくなった場合でも、白紙で提出するのは絶対に避けましょう。キーワードだけでも書けば部分点が期待できます。不完全でも何か書くことが、記述式の鉄則です。
40字の文字数感覚を養う方法
40字はどれくらいの分量か
記述式の解答は「40字程度」と指定されています。実際の解答欄は45字分のマス目が用意されており、36〜45字程度が目安です。
40字という文字数は、日常的な文章で言えば以下のような分量です。
- 「AはBに対して、Cという理由に基づいてDの請求をすることができる。」(33字)
- 「Xが行った処分は、手続上の瑕疵があるため、Yは審査請求をすることができる。」(37字)
- 「当該契約は、錯誤により取り消すことができるが、重大な過失があるときはこの限りでない。」(42字)
見ての通り、1つの法的論点を簡潔に述べるのにちょうどよい文字数です。2つ以上の論点を盛り込もうとすると文字数が足りなくなるため、問いに対して最も核心的な回答を1文で書く力が求められます。
文字数感覚を養う3つの練習法
練習法1:40字要約トレーニング
テキストの各論点を40字で要約する練習をしましょう。たとえば「取消訴訟の原告適格」についてテキストを読んだ後、「取消訴訟の原告適格は、処分の取消しを求める法律上の利益を有する者に認められる。」(40字)のように要約します。
この練習を毎日3〜5回行うことで、40字の感覚が自然に身につきます。最初は文字数を数える必要がありますが、慣れてくると書きながら「これは40字くらいだな」と感覚でわかるようになります。
練習法2:マス目を使った記述練習
市販の記述式問題集には、本番と同じマス目の解答欄が用意されています。このマス目を使って実際に手書きで解答する練習を重ねましょう。パソコンやスマートフォンでの練習では、手書きのスピードや文字数感覚が身につきません。
練習法3:過去問の模範解答を写経する
過去問の模範解答を実際に手書きで写す練習は、解答の書き方のパターンを体に覚えさせる効果的な方法です。「AはBに対してCの請求をすることができる」「XはYを相手方としてZの訴えを提起すべきである」といった定型表現が自然に書けるようになります。
文字数の調整テクニック
解答を書いた後に文字数を調整する場合のテクニックを紹介します。
文字数が多すぎる場合(50字以上)
- 修飾語を削る:「直ちに」「すみやかに」「ただちに」などの副詞は、意味が変わらなければ省略可能
- 言い換えで短くする:「することができる」→「できる」、「することが必要である」→「する必要がある」
- 重複表現を削る:「AでありかつBである」→「AかつBである」
文字数が少なすぎる場合(30字以下)
- キーワードの抜け落ちを確認する:問題が求める要素がすべて含まれているか再確認
- 根拠条文や制度名を追加する:「○○法○条に基づき」「○○の制度により」
- 具体的な効果を書き加える:「請求できる」だけでなく「損害賠償を請求できる」
記述式の解答で文字数が極端に少ない(30字以下)場合、キーワードの抜け落ちがある可能性が高いため、解答要素を再確認すべきである。○か×か。
キーワード抽出法|得点に直結する要素を見抜く
記述式の採点はキーワード方式
記述式の採点は、解答に含まれるキーワード(法的に重要な用語や要件)の有無で得点が決まると考えられています。1問20点の配点に対して、3〜5個のキーワードが設定され、各キーワードに4〜8点程度の配点がされていると推測されます。
つまり、美しい文章を書く必要はありません。問われているキーワードを漏れなく盛り込むことが最も重要です。
問題文からキーワードを読み取る方法
問題文には、解答に含めるべきキーワードのヒントが隠されています。以下の読み取り方を実践しましょう。
ヒント1:問題文中の法律用語に注目する
問題文に「瑕疵ある行政処分」「善意の第三者」「債務不履行」といった法律用語が含まれている場合、解答にもそれに対応する法律用語を使う必要があります。
ヒント2:「どのような〜か」の形式に注目する
「Aはどのような請求をすることができるか」と聞かれたら、解答には具体的な請求の内容(損害賠償請求、返還請求、取消請求等)を書く必要があります。
ヒント3:事実関係の中のキーポイントを見極める
問題文に長い事実関係が書かれている場合、すべての事実が解答に関係するわけではありません。法的に重要な事実(契約の成立、期間の経過、過失の有無等)を見極めて、解答に反映させましょう。
キーワードの優先順位をつける
40字の制約の中で、すべてのキーワードを盛り込めない場合があります。そのときは、以下の優先順位でキーワードを選びましょう。
- 結論(法的効果): 「取り消すことができる」「損害賠償を請求できる」「無効である」等
- 主体と相手方: 「AはBに対して」「XはYを相手方として」等
- 根拠(要件・理由): 「錯誤により」「債務不履行に基づき」「違法な処分として」等
- 補足的要件: 「善意かつ無過失の場合」「期間内に限り」等
結論を書かない解答は、どれだけ要件を並べても得点が低くなります。まず結論を書き、その上で根拠を補足するという書き方を心がけましょう。
部分点を確実に取る書き方
部分点の仕組みを理解する
記述式は1問20点の配点ですが、完璧な解答でなくても部分点が得られます。過去の合格者の得点開示データから推測すると、記述式の得点は0点・4点・8点・12点・16点・20点のように4点刻みで採点されていると考えられます。
3問すべてで完璧な解答を書けなくても、各問題で8〜12点の部分点を取れれば、記述式全体で24〜36点を確保できます。この得点があれば、択一式の得点と合わせて合格ラインに到達する可能性が大きく高まります。
部分点を取るための5つのルール
ルール1:白紙で出さない
どんなに難しい問題でも、何か書きましょう。正解がわからなくても、関連するキーワードを含む文を書けば部分点の可能性があります。
ルール2:結論を必ず書く
解答の最低限の要素は「結論」です。「〜を請求できる」「〜は無効である」「〜を提起すべきである」といった結論部分は、必ず書きましょう。結論が正しければ、それだけで数点の得点が期待できます。
ルール3:法律用語を正確に使う
「時効の援用」を「時効の主張」と書いたり、「取消訴訟」を「取り消しの裁判」と書いたりすると、キーワードとして認められない可能性があります。法律用語は正確に使いましょう。
ルール4:問われていることに答える
問題が「Aはどのような訴えを提起すべきか」と聞いているのに、「Aには権利がある」と書いても得点になりません。問われている形式に合った解答を書くことが重要です。
ルール5:一般論ではなく具体的に書く
「Bの行為は違法である」という一般的な記述よりも、「Bの行為は信義則に反し、権利の濫用として無効である」のように、具体的な法的根拠を示す記述の方が得点につながります。
「わからない問題」への対処法
完全に正解を書けない問題に出会った場合の対処法です。
パターン1:結論はわかるが理由がわからない
結論を書き、理由の部分は自分の知識で推測して書きましょう。結論が正しければ、理由が不完全でも部分点が得られます。
パターン2:関連する条文や制度は思い出せるが、正確な解答が組み立てられない
関連するキーワードを使って、できるだけ問いに沿った文章を書きましょう。「〜に基づき」「〜の要件を満たす場合」といったフレーズとともにキーワードを盛り込むことで、部分点を狙えます。
パターン3:まったく見当がつかない
問題文に登場する法律用語や事実関係から、関連しそうな制度や条文を推測し、一般的な法的判断を書きましょう。0点よりも4点、4点よりも8点を目指す姿勢が大切です。
行政法の記述と民法の記述の違い
行政法の記述式の特徴
行政法の記述式は、例年1問が出題されます。以下の特徴があります。
出題パターン
行政法の記述式では、行政事件訴訟法や行政手続法に関する問題が頻出します。具体的には以下のようなパターンが多いです。
- 「Aはどのような訴えを提起すべきか」(訴訟類型の選択と要件)
- 「この処分にはどのような違法事由があるか」(違法性の指摘)
- 「Bはどのような手続を取るべきか」(行政手続の説明)
書き方のポイント
行政法の記述では、訴訟類型の正確な名称(取消訴訟、義務付け訴訟、差止訴訟等)と、被告の特定(処分庁が所属する行政主体)が重要なキーワードになります。
「Aは、B市を被告として、本件処分の取消訴訟を提起すべきである。」のような定型表現を身につけておきましょう。
民法の記述式の特徴
民法の記述式は、例年2問が出題されます。行政法とは異なる特徴があります。
出題パターン
民法の記述式は、具体的な事例(当事者間のトラブル)について法的判断を求める問題が中心です。
- 「AはBに対してどのような請求ができるか」(請求権の内容と根拠)
- 「この契約の効力はどうなるか」(法律行為の有効性判断)
- 「Cはどのような主張をすることができるか」(抗弁の内容)
書き方のポイント
民法の記述では、「誰が」「誰に対して」「何に基づいて」「何を請求できるか」の4要素を明確に書くことが重要です。
「AはBに対して、債務不履行に基づく損害賠償として○○万円の支払いを請求できる。」のように、請求の主体・相手方・根拠・内容を漏れなく書きましょう。
行政法と民法で共通する書き方の基本
行政法・民法に共通して、記述式の解答は以下の構造で書くと整理しやすいです。
基本構造: 「[主体]は、[相手方]に対して、[根拠]に基づき、[法的効果]。」
この構造に従って要素を埋めていけば、論理的で読みやすい解答になります。
直前期の記述式対策
試験1ヶ月前からの集中練習
記述式対策は、知識のインプットが一通り終わった後、直前期に集中的に行うのが効果的です。試験1ヶ月前からは、以下の練習を毎日行いましょう。
- 過去問の記述式を10年分×3問=30問を繰り返し解く: 出題パターンと解答の書き方を体に覚えさせる
- 予備校の記述式問題集を活用する: 過去問だけでは演習量が不足するため、予備校が出版する記述式対策本を1冊仕上げる
- 模範解答を音読する: 模範解答を声に出して読むことで、解答の定型表現が頭に定着する
頻出テーマの最終確認
記述式で出題されやすいテーマは限られています。直前期には以下のテーマの解答パターンを確認しておきましょう。
行政法の頻出テーマ
- 取消訴訟の提起(被告の特定、出訴期間、原告適格)
- 義務付け訴訟の要件(申請型・非申請型の区別)
- 行政手続法上の手続(聴聞・弁明の機会の付与)
- 国家賠償法1条・2条の要件
民法の頻出テーマ
- 債務不履行に基づく損害賠償請求
- 不法行為に基づく損害賠償請求
- 契約の取消し(詐欺・錯誤・強迫)
- 物権変動と対抗要件(登記)
- 相続(法定相続分、遺留分侵害額請求)
- 賃貸借契約の法律関係
記述式問題で完全に正解がわからない場合でも、関連するキーワードを含む文を書くことで部分点が期待できるため、白紙で提出すべきではない。○か×か。
まとめ|記述式は練習量で伸びる
記述式対策のポイントを改めて整理します。
- 時間配分: 1問15分を目安に、問題文の精読→キーワード抽出→解答作成→見直しの流れで解く
- 40字の感覚: 毎日の40字要約トレーニングとマス目を使った手書き練習で文字数感覚を養う
- キーワード抽出: 問題文から解答に含めるべきキーワードを読み取り、優先順位をつけて盛り込む
- 部分点の確保: 白紙で出さない、結論を必ず書く、法律用語を正確に使う
- 行政法と民法の違い: 行政法は訴訟類型の選択、民法は請求権の構成が中心
記述式は練習すればするほど得点力が上がるパートです。択一式の知識が十分にあっても、記述の練習が不足していれば本番で書けません。直前1ヶ月は毎日最低1問の記述練習を欠かさず行い、「書ける力」を確実に身につけましょう。