行政書士試験の記述式採点基準を分析|部分点戦略
行政書士試験の記述式の採点基準を徹底分析。部分点の仕組みを理解し、確実に得点を積み上げるための戦略とテクニックを解説します。
はじめに|記述式60点が合否を決める
行政書士試験において、記述式はわずか3問でありながら合計60点もの配点を持つ、極めて重要な出題形式です。300点満点中の60点、つまり全体の20%がたった3問に集中しているのです。この配点の大きさが意味するのは、記述式の出来が合否を直接左右するということです。
択一式で170点前後を取る受験生は毎年数多くいます。しかし、そこから合格の180点に到達できるかどうかは、記述式でどれだけ得点できるかにかかっています。択一式170点+記述式10点=180点で合格する人もいれば、択一式170点+記述式6点=176点で不合格になる人もいます。わずか数点の差が合否を分けるのが、記述式の怖さであり重要性です。
しかし、記述式の採点基準は公式には非公開です。受験生は「何を書けば何点もらえるのか」を正確に知ることができません。本記事では、予備校の分析や合格者の体験談から推測される採点基準を解説し、部分点を確実に積み上げるための戦略とテクニックを提示します。記述式が苦手な受験生も、この記事を読めば「最低限の得点を確保する方法」が見えてくるはずです。
記述式の基本を確認する
出題数・配点・出題科目
記述式は、問題番号44〜46の3問で出題されます。内訳は行政法1問(問題44)、民法2問(問題45・46)で、各問20点の合計60点です。
行政法が1問、民法が2問という構成は、例年ほぼ固定されています。まれに出題科目の変動があるのではないかと心配する受験生もいますが、近年の傾向からして、この構成が変わる可能性は低いでしょう。
解答の形式
記述式の解答は、所定の解答欄に40字程度で記述します。解答欄には45字分のマス目が用意されており、その中に収まるように書く必要があります。
ここで重要なのは、「40字程度」はあくまで目安であるという点です。35字でも45字でも、内容が正しければ減点されないと考えられています。ただし、解答欄のマス目を大幅に超えて書くことはできないため、必要な情報を簡潔にまとめる力が問われます。
記述式で問われる内容の傾向
行政法の記述式(問題44)では、主に以下のテーマが問われます。
- 取消訴訟の被告・出訴期間などの訴訟要件
- 行政手続法の手続き(聴聞・弁明の機会の付与)
- 行政不服審査法の手続き(審査請求の対象・期間)
- 義務付け訴訟・差止訴訟の要件
民法の記述式(問題45・46)では、主に以下のテーマが問われます。
- 意思表示の瑕疵(詐欺・錯誤・虚偽表示)
- 代理(無権代理・表見代理)
- 債務不履行・不法行為に基づく損害賠償請求
- 契約の解除・取消し
- 物権変動と対抗要件
これらのテーマは択一式でも頻出であり、択一式対策の延長線上で記述式対策を行えるという利点があります。
採点基準の分析:何を書けば点がもらえるか
公式見解と推測される基準
行政書士試験の記述式の採点基準は、行政書士試験研究センターからは公式に公表されていません。しかし、予備校各社の分析、合格者の自己採点と実際の得点の照合、模試での採点基準などを総合すると、おおよその採点方法を推測することができます。
最も有力な推測は、キーワード採点方式です。これは、解答に含まれるべき重要なキーワード(法律用語・条文番号・法的結論)に対して配点が振られており、そのキーワードが正確に記述されていれば加点されるという方式です。
キーワード採点方式の仕組み
1問20点の配点に対して、主要キーワードが4〜5個設定され、各キーワードに4〜5点が配分されていると推測されます。
たとえば、「Aは国を被告として、取消訴訟を提起すべきである」という問題の場合、以下のようなキーワードと配点が想定されます。
上記はあくまで推測ですが、「正確なキーワードを含む解答」が高得点につながることは間違いありません。
減点方式か加点方式か
採点方式には「加点方式」と「減点方式」の2つの考え方があります。
- 加点方式: 白紙を0点とし、正しいキーワードが含まれるごとに加点していく
- 減点方式: 模範解答を20点とし、不足・誤りがあるごとに減点していく
予備校の分析では、行政書士試験の記述式は加点方式が採用されていると考えられています。つまり、完璧な解答でなくても、正しいキーワードが1つでも含まれていれば部分点を得られる可能性があるのです。これは受験生にとって大きな救いです。
部分点を取るための5つのテクニック
テクニック1:キーワードを確実に入れる
記述式で最も重要なのは、採点の対象となるキーワードを解答に含めることです。具体的には、以下の3種類のキーワードを意識しましょう。
1. 条文番号
問題で問われている法律の根拠条文が明確な場合、条文番号を記載することで加点される可能性があります。「行政事件訴訟法3条2項に基づき」「民法709条により」といった形で、根拠を明示しましょう。
ただし、条文番号を間違えると減点の可能性もあるため、自信がない場合は無理に書かなくてもよいです。
2. 法律用語
「取消訴訟」「無効等確認訴訟」「審査請求」「債務不履行」「不法行為」「解除」など、法律上の正式な用語を正確に記述することが重要です。
たとえば、「取り消し」ではなく「取消し」、「時候」ではなく「時効」など、正確な表記を心がけましょう。法律用語の1字の違いが得点に影響する可能性があります。
3. 法的結論
「〜することができる」「〜を請求することができる」「〜しなければならない」など、法的な結論を明確に記述することも重要なキーワードです。問題が「Aはどのような主張をすることができるか」と問うている場合、「AはBに対し、〇〇を請求することができる」と結論を明示する必要があります。
テクニック2:白紙で出さない
記述式の最大のNGは、白紙で提出することです。白紙であれば確実に0点ですが、何か書けば部分点を得られる可能性があります。
仮に正確な解答がわからなくても、問題文から読み取れる情報をもとに、関連する法律用語や結論を記述しましょう。たとえば、行政法の記述式で具体的な訴訟類型がわからなくても、「Aは裁判所に訴えを提起すべきである」と書くだけで、何らかの加点を得られる可能性があります。
合格者の体験談でも、「記述式の1問が全くわからなかったが、とにかく知っている法律用語を並べて書いたら4〜6点もらえていた」というケースは珍しくありません。1問で4〜6点を拾えれば、3問合計で12〜18点になり、合否を左右する得点になります。
テクニック3:字数制限を意識する
記述式の解答は「40字程度」が目安ですが、この字数に過不足なく収めることも重要です。
字数が少なすぎる場合のリスクは、必要なキーワードが不足することです。20字程度の短い解答では、採点対象のキーワードが1〜2個しか含まれず、得点が伸びません。
字数が多すぎる場合のリスクは、解答欄に収まらないことです。解答欄は45字分のマス目が用意されていますが、これを大幅に超えることはできません。また、不必要な情報を詰め込むことで、かえって論点がぼやけてしまう恐れもあります。
目安として、35〜45字の範囲で、必要なキーワードを漏れなく含む解答を心がけましょう。練習の段階で、実際にマス目に書く練習をしておくと、本番での字数感覚が身につきます。
テクニック4:法律用語は正確に書く
記述式では、法律用語の正確さが得点に直結します。以下によくある間違いの例を挙げます。
法律用語の正確な表記は、日頃の学習で条文の文言に忠実に覚えることで身につきます。テキストを読む際も、「取消訴訟」「義務付け訴訟」「差止め訴訟」など、正式名称を意識して覚えましょう。
テクニック5:結論を明確に書く
記述式の問題は、「Aはどのような訴えを提起すべきか」「Aはどのような主張をすることができるか」といった形で問われます。この問いに対して、結論を明確に書くことが重要です。
よい解答の例:
「AはBに対し、民法709条に基づき、損害賠償を請求することができる。」
悪い解答の例:
「Bの行為は不法行為にあたり、Aには損害が生じている。」
悪い例は、法律的な分析としては間違っていませんが、「Aがどのような主張をするか」という問いに直接答えていません。結論(「請求することができる」)が明示されていないため、キーワード得点を逃す可能性があります。
問題文の問いかけの形式に合わせて、「〜すべきである」「〜することができる」「〜しなければならない」という結論を明確に記述することを心がけましょう。
記述式の配点戦略:何点を目標にすべきか
60点満点中30〜40点を目標に
記述式60点のうち、現実的な目標は30〜40点です。1問あたり10〜14点を取ることを目指しましょう。
多くの合格者は記述式で30〜40点を獲得しています。完璧な解答(満点)を目指す必要はなく、部分点の積み上げで十分です。
記述式の得点が合否を分ける具体例
記述式の得点がいかに合否を左右するか、具体的な例で見てみましょう。
ケース1: 択一式の得点は同じだが記述式で差がつく
受験生Aと受験生Bの択一式・多肢選択式・一般知識の得点はまったく同じですが、記述式で14点の差があり、結果が分かれています。
ケース2: 択一式が低くても記述式でカバーできる
受験生Cは択一式で96点と低めですが、記述式44点で補い合格しています。一方、受験生Dは択一式が104点と受験生Cより高いものの、記述式12点が響いて不合格です。
記述式で「守り」の戦略を取る場合
択一式に自信がある受験生であれば、記述式は「守り」の戦略で20〜24点を確保すれば十分です。白紙を避け、わかる範囲でキーワードを書き込むことで、1問あたり7〜8点の最低限の得点を確保できます。
一方、択一式が不安な受験生は、記述式で「攻め」の戦略を取り、35〜45点を目指す必要があります。この場合、記述式に特化した演習を多く積み、主要論点の解答パターンを身体に覚え込ませることが重要です。
よくある失点パターンとその対策
論点ズレ
最も痛い失点パターンが「論点ズレ」です。これは、問題で問われていることと異なることを書いてしまうケースです。
たとえば、「Aはどのような訴訟を提起すべきか」と問われているのに、「Aは審査請求をすべきである」と書いてしまうケースがこれに当たります。訴訟(行政事件訴訟法)について問われているのに、審査請求(行政不服審査法)について答えてしまっているため、キーワードがすべてズレてしまい、0点に近い得点になります。
対策: 問題文を3回読む。特に「何を問われているか」を正確に把握する。「訴えを提起」「主張」「請求」「手続」など、問いのキーワードに下線を引いてから解答を書き始める。
キーワード不足
解答の方向性は合っているが、必要なキーワードが不足しているケースです。たとえば、「AはBに損害賠償を請求できる」とだけ書いた場合、「不法行為に基づき」「民法709条」などのキーワードが欠けており、得点が伸びません。
対策: 解答を書く前に、含めるべきキーワードを問題用紙の余白に箇条書きで書き出す。「根拠法令」「要件」「効果(結論)」の3要素を必ず含めることを意識する。
字数オーバー
必要以上に詳しく書きすぎて、解答欄に収まりきらないケースです。限られたマス目の中に情報を詰め込もうとして、文字が小さくなったり、解答欄からはみ出したりすると、読みにくいだけでなく採点の対象外となる可能性があります。
対策: 解答を書く前に、含めるべき要素を取捨選択する。優先順位の高いキーワードから書き始め、字数が余ったら補足情報を追加する。練習段階から実際のマス目を使って書く訓練を行う。
白紙提出
記述式の最悪のパターンは白紙提出です。難しい問題であっても、何か書けば部分点を得られる可能性があります。白紙は確実に0点です。
対策: 「わからなくても何か書く」というルールを自分に課す。問題文から読み取れる法律関係を整理し、関連する法律用語を使って文章を組み立てる練習を日頃から行う。
効果的な練習方法
過去問の模範解答を分析する
記述式対策の第一歩は、過去問の模範解答を分析することです。予備校が提供する模範解答を入手し、以下の点を確認しましょう。
- 含まれているキーワードは何か: 模範解答に含まれる法律用語・条文番号・結論を抽出する
- 文章の構成はどうなっているか: 「要件→効果」「根拠→結論」の流れを確認する
- 字数はどの程度か: 模範解答の字数を数え、40字に収めるための表現技術を学ぶ
自分で書く練習を繰り返す
分析だけでは記述力は身につきません。実際に自分で書く練習を繰り返すことが必須です。
練習の手順は以下のとおりです。
- 過去問の問題文を読む
- 解答を見ずに、自力で40字以内の解答を書く
- 模範解答と比較し、不足しているキーワードや表現のずれを確認する
- 模範解答を暗記するのではなく、「なぜそのキーワードが必要か」を理解する
- 1週間後に同じ問題を再度解き、改善を確認する
この練習を1日1問、3ヶ月間続ければ、約90問分の記述式演習ができます。過去問の記述式は各年度3問で10年分あれば30問ですので、予備校の模試や予想問題集も活用しましょう。
時間を測って解く練習
本番では、記述式3問に使える時間は限られています(全体180分のうち25〜35分程度)。1問あたり8〜12分で解答する練習を、時間を測りながら行いましょう。
時間配分の目安は以下のとおりです。
行政書士試験の記述式は、行政法1問・民法2問の計3問で、各問20点の合計60点である。○か×か。
記述式の採点基準は行政書士試験研究センターから公式に公表されている。○か×か。
記述式の解答で、正確な答えがわからない場合は白紙で提出するのが最善である。○か×か。
まとめ
記述式は3問60点という大きな配点を持ち、合否を直接左右する出題形式です。本記事のポイントを整理します。
- 採点はキーワード方式と推測され、正確な法律用語・条文番号・法的結論を含む解答が高得点につながる。1問20点の中に4〜5個のキーワードが設定されていると考えられる
- 部分点を積み上げる戦略が有効。完璧な解答を目指すよりも、確実にキーワードを含めて1問10〜14点を確保することが合格の近道
- 白紙提出は絶対に避け、わからなくても関連する法律用語で文章を組み立てる。何か書けば部分点の可能性があり、3問合計で10〜20点の差を生む
記述式対策は、択一式対策と並行して早い段階から始めることが重要です。「書く」練習は、「読む」「解く」練習とは質が異なるため、意識的に時間を確保しましょう。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 記述式対策はいつから始めるべきですか?
択一式の基礎知識がある程度固まった7〜8月頃から始めるのが理想的です。ただし、択一式の学習と完全に分離する必要はありません。択一式で学んだ論点を「40字で書く」練習を並行して行うことで、知識の定着と記述力の向上を同時に図れます。
Q2. 記述式の模範解答を丸暗記するのは有効ですか?
丸暗記は推奨しません。同じ問題が出題されることは基本的にないため、丸暗記した解答をそのまま使える場面は限られます。それよりも、「なぜその解答になるのか」の論理構造(要件→効果)を理解し、類似の問題に応用できる力を身につけることが重要です。
Q3. 記述式の解答で漢字を間違えた場合、減点されますか?
法律用語の漢字を間違えた場合、減点の可能性があります。特に「取消」「差止」「濫用」など、法律特有の表記は正確に書く必要があります。一方、一般的な漢字の軽微な間違い(たとえば「賠」の字の部首が若干不正確など)については、文脈から判断できる範囲であれば大きな減点にはならないと考えられます。
Q4. 記述式で条文番号は必ず書くべきですか?
条文番号は、正確に覚えている場合は書くべきです。根拠条文の記載はキーワードとして加点される可能性があります。ただし、条文番号を間違えて書くと減点の可能性があるため、自信がない場合は無理に書かず、法律用語と結論で得点を確保する方が安全です。
Q5. 記述式の答案を誰かに添削してもらう必要はありますか?
可能であれば、予備校の答練や模試で添削を受けることを強く推奨します。自分では正しいと思っている解答でも、キーワードの不足や論点のずれに気づけないことがあるためです。独学の場合は、予備校が公表する模範解答と自分の解答を丁寧に比較し、差分を分析することで、ある程度の自己添削が可能です。