行政書士試験の模試活用法|効果的な復習術も解説
行政書士試験の模試を最大限に活用する方法を徹底解説。模試の選び方・受け方のコツ・復習の3ステップを具体的に紹介し、本番得点アップにつなげます。
はじめに:模試は「受けるだけ」では意味がない
行政書士試験の合格を目指すうえで、模擬試験(模試)は欠かせない学習ツールです。しかし、模試を受けただけで満足してしまい、復習を十分にしない受験生が少なくありません。
模試の真の価値は「受けた後」にあります。本番と同じ環境で3時間を通して解く経験、自分の弱点の発見、時間配分の検証など、模試から得られる情報を最大限に活用することで、本試験の得点力は大きく向上します。
本記事では、模試を受ける意義から、予備校模試の比較、受け方のコツ、そして最も重要な復習の3ステップまでを体系的に解説します。模試を「合格への武器」に変えるための実践的なノウハウをお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
なお、行政書士試験は令和6年度(2024年度)から出題構成が一部改正され、従来の「一般知識等」が「基礎知識」へと再編されました。模試・本試験の対策はこの新しい枠組みを前提に行う必要があるため、本記事でも改正後の制度を踏まえて解説します。改正点の詳細は後述の「基礎知識(旧一般知識)の足切りパターン」で扱います。
行政書士試験の配点と合格基準を確認する
模試を活用する前提として、行政書士試験の得点構造を正確に把握しておく必要があります。模試の点数を読む目も、ここを理解しているかどうかで大きく変わります。
3つの合格基準(足切り)の整理
行政書士試験は300点満点で、合格には次の3つの基準をすべて満たす必要があります。一つでも欠ければ、総得点がどれだけ高くても不合格です。
つまり「総得点で180点取れているか」だけでなく、「法令で122点以上か」「基礎知識で6問以上か」という二つの足切りを同時にクリアしているかを、模試のたびに確認する必要があります。総合点が180点を超えていても基礎知識が5問正解(5問×4点=20点)にとどまれば不合格です。模試の成績表を見るときは、まずこの3基準を一つずつチェックする習慣をつけましょう。
出題形式別の配点
この表から分かるとおり、配点の中心は法令択一式(160点)と記述式(60点)です。模試で「どの形式に時間を奪われ、どの形式で得点を落としているか」を形式別に分析することが、復習の出発点になります。
なぜ模試を受けるべきなのか
本番シミュレーションとしての模試
行政書士試験は180分(3時間)で60問を解く試験です。この「3時間通しで問題を解く」という経験は、過去問の科目別演習だけでは得られません。
模試を受けることで、本番と同じ時間的プレッシャーの中で問題を解く感覚を養うことができます。普段の学習では30分で集中力が途切れるという受験生でも、模試を繰り返し受けることで3時間の集中力を維持する訓練ができます。
また、会場受験の模試であれば、周囲に他の受験生がいる環境で問題を解く練習にもなります。本番では、隣の受験生の鉛筆の音や、途中退室する人の気配など、自宅学習では想定できない要素があります。そうした環境に慣れておくことは、本番でのパフォーマンス向上に直結します。
弱点発見ツールとしての模試
模試は「今の自分の実力」を客観的に測定するツールです。普段の科目別演習では気づきにくい弱点が、模試という通し演習によって浮き彫りになります。
たとえば、行政法の択一式で普段は7割取れている受験生が、模試では5割しか取れないことがあります。これは、科目別に時間をかけて解けばできるが、時間制限の中で他の科目と並行して解くと正答率が下がるという問題を示しています。この情報は模試を受けなければ得られません。
また、科目間の得点バランスの偏りも模試で確認できます。「行政法は得点できるが民法が弱い」「基礎知識で足切りラインぎりぎり」といった課題を発見し、残りの学習期間での優先順位を決めることができます。
時間配分の練習としての模試
行政書士試験で合格するためには、限られた180分をどの科目にどれだけ配分するかが極めて重要です。模試では、実際に時間を測りながら解答することで、自分にとって最適な時間配分を見つけることができます。
「記述式に40分確保するつもりだったが、択一式に時間がかかって20分しか残らなかった」といった反省は、模試でしか得られない貴重なフィードバックです。本番で同じ失敗をしないよう、模試の段階で時間配分の調整を行いましょう。
出題予想・的中という副次的価値
予備校の模試は、その年の法改正や時事をふまえて作問されます。改正論点や新しい判例は本試験で狙われやすく、模試で一度触れておくことで、本試験会場で「模試で見た論点だ」と落ち着いて対応できることがあります。これは模試を受ける副次的なメリットですが、実利は小さくありません。とくに令和6年度改正で新設された「行政書士法等」の分野は、過去問の蓄積が乏しいため、各社の模試で出題傾向を補うことの価値が高くなっています。
模試の種類と選び方
主要予備校の模試比較
行政書士試験の模試は、各予備校が実施しています。それぞれに特徴があるため、自分の目的に合った模試を選ぶことが大切です。
LEC東京リーガルマインド
LECの模試は受験者数が多く、全国順位や偏差値による客観的な実力判定が可能です。到達度確認模試(7〜8月)と全国公開模試(9〜10月)の2段階構成で、学習の進捗に合わせて受験できます。問題の質も本試験に近く、多くの合格者が受験している定番の模試です。
TAC(Wセミナー)
TACの模試は、基本事項の定着度を確認できる問題が多く、基礎力の確認に適しています。全国公開模試は例年9〜10月に実施され、受験者数も比較的多いため、信頼性の高い成績判定が得られます。
アガルートアカデミー
アガルートは近年受験者が増加している通信系予備校です。模試はオンラインで受験できるため、会場に行く時間がない社会人にとって利便性が高いのが特徴です。解説講義が充実しており、復習のしやすさも魅力です。
伊藤塾
伊藤塾の模試は、法律学習の老舗として培われた出題ノウハウが反映されています。記述式の採点が丁寧で、部分点の基準も明示されるため、記述式対策を重視する受験生におすすめです。
自分に合う模試の選び方(目的別)
「おすすめの模試はどれか」という質問に唯一の正解はなく、自分が模試に何を求めるかで選ぶべきものが変わります。目的別の選び方を整理すると次のとおりです。
迷ったら「1社の公開模試(順位が出るもの)+市販模試で量を補う」という組み合わせが、費用と効果のバランスがよく、多くの受験生に適しています。
市販模試と予備校模試の違い
模試には、予備校が実施する「公開模試」と、書店で販売されている「市販模試」の2種類があります。
予備校の公開模試のメリットは、受験者数が多いため成績判定の信頼性が高いこと、会場受験であれば本番の雰囲気を体験できること、そして最新の出題傾向を反映した問題が出題されることです。
市販模試のメリットは、費用が安いこと(1冊1,500〜2,500円程度)、自宅で好きなタイミングに受験できること、そして複数回分がセットになっているため練習量を確保しやすいことです。
理想的には、予備校の公開模試を2〜3回、市販模試を2〜3回の合計4〜6回受験することで、十分な本番練習ができます。ただし「受験回数=実力」ではありません。後述するとおり、復習に十分な時間を割けない量を受けるのは逆効果です。
受ける時期と回数の目安
模試を受ける時期は、おおむね7月から10月が適切です。以下にスケジュールの目安を示します。
7月〜8月:到達度確認模試を1回
この時期は基礎固めの仕上げ段階です。到達度確認を目的に1回受験し、残りの学習期間で補強すべき分野を特定します。この時点で合格ラインに届いていなくても問題ありません。
9月:全国公開模試を1〜2回
本格的な模試シーズンです。各予備校の全国公開模試を1〜2回受験しましょう。この時期の模試は本試験の難易度に近い問題が多く、本番の予行演習として最適です。
10月:直前模試を1〜2回
最後の仕上げとして、10月に1〜2回の模試を受けます。ここでの結果は本番の得点にかなり近くなるため、最終的な戦略の調整に活用します。本試験(例年11月第2日曜日)の直前1週間は、新しい模試を受けるより、これまで受けた模試の復習ノートを総ざらいする時間に充てるほうが効果的です。
合計で3〜5回が模試の受験回数の目安です。多すぎると復習の時間が確保できず、少なすぎると本番慣れが不十分になります。
模試の受け方のコツ
本番と同じ環境を再現する
模試の効果を最大化するためには、できる限り本番と同じ条件で受験することが重要です。
時間帯を合わせる:行政書士試験の試験時間は13時00分〜16時00分です。模試を自宅で受験する場合も、この時間帯に合わせて受験しましょう。午前中に受けると、午後の集中力の落ちやすさを体験できません。
机の上を本番仕様にする:本試験で持ち込めるのは、鉛筆(シャープペンシル)、消しゴム、鉛筆削り、時計(計時機能のみ)です。模試の際もこれらだけを机の上に置き、スマートフォンやテキストは別の場所に移しましょう。
3時間を通して解く:途中でトイレ休憩を入れたり、おやつを食べたりせず、3時間を通して解きましょう。ただし、本試験では途中退室やトイレ退室が認められている場合もありますので、試験実施機関の指示に従ってください。
解答順序と時間配分を試す
模試は、解答順序と時間配分を検証する絶好の機会です。本番で採用する戦略を模試で試し、自分に合った方法を見つけましょう。
一般的におすすめされる解答順序は、基礎知識から始めて、行政法、民法、憲法、商法・会社法、基礎法学の順に択一式を解き、その後に多肢選択式、最後に記述式を解くパターンです。しかし、これはあくまで一つの例であり、受験生によって最適な順序は異なります。
模試を複数回受験する中で、異なる解答順序を試してみてください。1回目は上記の順序で、2回目は行政法から始めるパターンで、というように変えることで、自分に最も合った方法を発見できます。
時間配分の目安(180分・60問)
時間配分も模試で実地に検証すべき要素です。以下はあくまで一つのモデルですが、自分の解答時間を測る際の基準として役立ちます。
合計でちょうど180分に収まる配分です。記述式は配点60点と大きいため、最低でも30〜40分は確保したいところです。「択一に時間を使い切って記述が手薄になる」のが最も典型的な失敗なので、模試では記述に入る時刻(たとえば15時20分には記述に着手する)をあらかじめ決めておき、その時刻が来たら未了でも記述に移る練習をしておきましょう。
マークシートの記入方法を練習する
意外と見落としがちなのが、マークシートの記入練習です。模試では本番と同じマークシートが使われるため、以下の点を確認しましょう。
まず、マークの濃さです。薄すぎると機械が読み取れない可能性があります。HBまたはBの鉛筆で、しっかりと塗りつぶす練習をしましょう。
次に、解答欄のズレ防止です。問題番号と解答欄の番号が一致しているかを5問ごとに確認する習慣をつけましょう。模試の段階でこの確認作業を習慣化しておけば、本番でのマークミスを防ぐことができます。
また、問題を飛ばした場合のマーク処理も練習しておきましょう。分からない問題を後回しにする際に、マークシートの該当欄に小さく印をつけておくなどの工夫が必要です。
行政書士試験の模試は、直前の10月に1回だけ受ければ十分である。○か×か。
復習の3ステップ
ステップ1:当日中に正誤確認と感覚の記録
模試の復習で最も重要なのは、受験した当日中に行う「即日復習」です。時間がたつと、問題を解いているときの感覚(迷った、自信があった、時間が足りなかった等)が薄れてしまうため、記憶が鮮明なうちに復習を始めましょう。
当日中にやることは以下の3つです。
第一に、解答解説を見て全問の正誤を確認します。正解した問題も含めてすべて確認し、以下の4つに分類します。
- 自信を持って正解した問題:復習の優先度は低い
- 迷ったが正解した問題:要復習(たまたま正解しただけの可能性)
- 迷って不正解だった問題:要重点復習
- まったく分からず不正解だった問題:基礎からの学び直しが必要
この4分類は、問題用紙を解いている最中に「迷った問題には△、勘で答えた問題には?」など印をつけておくと格段に正確になります。受験中の一手間が、当日復習の質を決めます。
第二に、各科目の得点と正答率を記録します。合格ラインの180点に対して、各科目でどれだけ得点できたかを表にまとめましょう。
第三に、時間配分の振り返りを記録します。「行政法の択一に想定より10分多くかかった」「記述式の時間が足りなかった」など、時間に関する反省点をメモしておきます。
ステップ2:1週間以内に根拠を条文・判例で確認
当日の正誤確認が終わったら、1週間以内に間違えた問題と迷った問題を深掘りします。この段階の復習が、知識の定着に最も大きく寄与します。
具体的には、間違えた問題ごとに以下の作業を行います。
条文の確認:その問題の正解の根拠となる条文を特定し、条文の原文を読みます。たとえば、行政手続法の不利益処分に関する問題を間違えた場合は、行政手続法第12条〜第31条を通読し、聴聞と弁明の機会の付与の違いを整理します。
聴聞と弁明の使い分けは頻出論点です。条文上、いずれの手続によるかは原則として処分の重さで決まります。
行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、次の各号のいずれかに該当するときは、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。
一 次のいずれかに該当するとき 聴聞
イ 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき(略)
二 前号イからニまでのいずれにも該当しないとき 弁明の機会の付与
― 行政手続法 第13条第1項
つまり、許認可の取消しなど名あて人に重大な不利益を及ぼす処分には原則「聴聞」、それ以外の比較的軽い処分には「弁明の機会の付与」が用いられる、という骨格を条文から押さえることが復習の核になります。
判例の確認:判例が根拠となる問題については、判例の事案・争点・判旨を確認します。特に最高裁判例は、判旨のキーフレーズを正確に覚えることが重要です。
たとえば行政法では、処分性の有無がたびたび問われます。模試で処分性に関する問題を落とした場合は、判旨の言い回しまで確認しておきましょう。
行政事件訴訟特例法一条にいう行政庁の処分とは、(略)公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によつて、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう
― 最判昭和39年10月29日(大田区ごみ焼却場設置事件)
このような定義判例は、択一式だけでなく多肢選択式や記述式でも問われる素材になります。模試で出会ったら、定義のキーワード(「公権力の主体」「直接」「権利義務を形成し、又はその範囲を確定」)を正確に再現できるかを確認しましょう。
テキストへの書き込み:確認した内容は、普段使っているテキストの該当箇所に書き込みましょう。模試の復習で得た情報をテキストに集約することで、直前期の復習効率が格段に上がります。
復習ノートの作成:間違えた問題について、「問題番号」「科目」「テーマ」「間違えた理由」「正解の根拠」をまとめた復習ノートを作成します。このノートは、ステップ3やその後の模試、本試験直前の復習に活用します。
「間違えた理由」を5つに分類する
復習の精度を上げる鍵は、「なぜ間違えたか」を一段深く分類することです。同じ不正解でも、原因によって取るべき対策が異なります。
不正解の半分以上が「読み間違い」や「時間切れ」に分類されるなら、必要なのは知識の追加ではなく解き方の改善です。模試を受けるたびにこの分類の比率を記録すると、自分が伸ばすべきは知識か技術かが明確になります。
ステップ3:1ヶ月後に弱点克服の確認
最後のステップは、1ヶ月後に行う定着度の確認です。ステップ2で作成した復習ノートを見返し、弱点が克服されているかをチェックします。
このとき、復習ノートに書いた「正解の根拠」をカバーして、自分の力で根拠を言えるかを確認しましょう。すらすらと言える問題は克服済み、まだ怪しい問題は再度テキストに戻って確認します。
また、この1ヶ月の間に別の模試を受験していれば、同じテーマの問題が出題されていないかを確認します。同じテーマで再び間違えていた場合は、理解が不十分な可能性が高いため、テキストの該当箇所を精読し直す必要があります。
1ヶ月後の確認作業は15〜30分程度で終わりますが、この一手間が記憶の定着率を大きく引き上げます。エビングハウスの忘却曲線によれば、1ヶ月後には学習内容の約80%を忘れるとされていますが、適切なタイミングでの復習によって忘却を防ぐことができます。
模試で正解した問題は復習する必要がない。○か×か。
記述式の復習法
記述式は3問で60点と配点が大きく、合否を分ける最重要パートです。択一式と同じ復習法では不十分なため、独立した節として復習のポイントを整理します。
「書けたつもり」を防ぐ採点の視点
記述式の復習で陥りやすいのが、「だいたい合っていたから○」と甘く自己採点してしまうことです。記述式の採点は、出題趣旨が求めるキーワード(得点ポイント)が答案に含まれているかを基準に部分点が積み上がります。復習では、模範解答を眺めるのではなく、解答に含めるべきキーワードを3〜4個に分解し、自分の答案にそのキーワードが入っていたかを一つずつ照合しましょう。
たとえば行政法の記述式で「誰を相手に、どのような訴訟を、どの要件のもとで提起すべきか」を問われた場合、(1)被告、(2)訴訟類型、(3)要件、という3要素が揃って初めて満点になります。一つでも欠ければ減点であり、復習ではどの要素を落としたのかを特定することが重要です。
40字制限への対応を訓練する
記述式は40字程度でまとめる必要があります。知識があっても、要素を盛り込みすぎて字数が足りなくなる、逆に冗長な表現で肝心のキーワードが入らない、というケースが頻発します。模試の復習では、自分の答案を「主語・要件・効果(または結論)」の骨組みに削り直し、40字に収める書き直しの練習をしましょう。この「書き直し」こそが記述式の最も効果的な復習です。
白紙・部分点の扱い
記述式は部分点が与えられるため、白紙(無回答)は最も避けるべき対応です。模試で白紙のまま提出してしまった場合は、知識そのものが無かったのか、知識はあるが40字にまとめられなかったのかを区別します。前者なら対応する択一論点の学習に戻り、後者なら書く練習を重ねることで、本番では「部分点でも取りにいく」姿勢を作っておきましょう。
模試の点数との向き合い方
模試の点数に一喜一憂しないことが大切
模試を受けると、どうしても点数が気になります。合格ラインの180点を超えていれば安心し、大きく下回っていれば落ち込む。これは自然な感情ですが、模試の点数に振り回されることは学習にとってマイナスです。
模試の点数は、あくまで「その時点での」「その問題セットに対する」実力を反映したものです。本試験とは問題の難易度も出題傾向も異なるため、模試で180点を超えたからといって合格が保証されるわけではなく、模試で150点だったからといって不合格が確定するわけでもありません。
模試の点数で一喜一憂するのではなく、「間違えた問題をどれだけ復習して次に活かせるか」に集中しましょう。極端な話、模試で120点しか取れなくても、そこから50問分の復習を徹底し、同じテーマが本番で出題されたときに正解できれば、模試を受けた価値は十分にあります。
模試と本番の難易度差を理解する
予備校の模試は、本試験よりもやや難しめに作られていることが一般的です。これは、模試で高得点を取って油断することを防ぐためと、本試験レベル以上の問題に慣れておくことで本番での対応力を高めるためです。
したがって、模試の点数が合格ライン(180点)に少し届かない程度であれば、実力的には合格圏内にいると考えてよいでしょう。逆に、模試で200点を超えていても、本番で安易に考えて時間配分を誤れば合格ラインを下回る可能性はあります。
重要なのは、模試の点数そのものよりも、点数の推移と弱点の変化です。複数回の模試で点数が上昇傾向にあり、以前間違えたテーマを克服できているのであれば、学習は順調に進んでいると判断できます。
成績表の活用方法
予備校の模試では、成績表(成績通知書)が発行されます。成績表には、科目別の得点、正答率、全体順位、偏差値などが記載されています。
成績表を見る際に注目すべきポイントは3つです。
第一に、科目別の正答率です。合格者の正答率と自分の正答率を比較し、差が大きい科目を重点復習の対象にします。
第二に、問題別の正答率です。多くの受験生が正解している問題(正答率60%以上)を自分が間違えている場合は、基礎知識に穴がある可能性があります。逆に、正答率が低い難問を間違えていても、それほど気にする必要はありません。
第三に、全体順位と偏差値です。複数の模試で順位や偏差値がどう推移しているかを確認します。上昇傾向であれば学習の方向性は正しいと判断でき、下降傾向であれば学習方法の見直しが必要です。
受験生がやりがちな誤解
模試の点数の読み方には、定番の誤解がいくつかあります。
- 「模試A判定だから安心」という誤解:模試の判定は問題セットと母集団に依存します。判定よりも、3つの足切りを毎回クリアできているか、苦手科目が改善しているかを見るべきです。
- 「難問を落としたのが悔しい」という誤解:正答率の低い難問(捨て問)を落とすことは合否にほとんど影響しません。むしろ正答率60%以上の問題を落としていないかが重要です。
- 「点数が下がった=実力が落ちた」という誤解:模試ごとに難易度が違うため、素点の比較には意味が薄く、偏差値や順位で推移を見るのが適切です。
模試で見つかりやすい弱点パターンと対策
時間不足パターン
模試で最も多く見られる弱点は「時間不足」です。3時間で60問を解ききれず、最後の数問を適当にマークしてしまったり、記述式に十分な時間を割けなかったりするケースが典型的です。
このパターンの原因は、1問あたりの所要時間が長すぎることです。択一式の場合、1問あたり2〜3分が目安ですが、迷って5分以上かけてしまう問題があると、後半の時間が圧迫されます。
対策は、迷ったら3分で区切って次に進む習慣をつけることです。分からない問題に時間をかけても正答率は大きく上がりません。それよりも、確実に解ける問題に時間を使い、余った時間で迷った問題に戻るほうが全体の得点は高くなります。
基礎知識(旧一般知識)の足切りパターン
行政書士試験では、基礎知識で14問中6問以上正解しないと、法令科目の成績に関係なく不合格(足切り)となります。模試で足切りラインを下回った場合は、早急な対策が必要です。
ここで注意したいのが、令和6年度(2024年度)からの制度改正です。従来「一般知識等」と呼ばれていたこの科目は「基礎知識」に再編され、出題分野が次のように整理されました(問題数は年度によって変動します)。
改正前は「政治・経済・社会」が中心でしたが、改正により「行政書士法等」が新たな出題分野として加わった点が最大の変化です。行政書士法・戸籍法・住民基本台帳法といった法令は、条文をきちんと学習すれば得点しやすく、足切り回避の新たな得点源になります。過去問の蓄積が少ない分野なので、模試で出題形式に慣れておく価値が特に高い分野です。
足切り回避の基本戦略は従来と変わりません。文章理解の3問は読解の練習で安定して得点でき、ここを全問正解できれば、残りの分野で3問正解するだけで足切り(6問)をクリアできます。
対策としては、文章理解の演習を重点的に行うこと、個人情報保護法・行政書士法の条文を確認すること、そして時事問題のチェックを日常的に行うことが効果的です。模試で基礎知識が5問以下になった回が一度でもあれば、本試験での足切りリスクが現実的にあると考え、優先的に手当てしましょう。
記述式の白紙パターン
記述式は3問で60点と大きな配点を占めますが、模試で白紙(無回答)のまま提出してしまう受験生が少なくありません。記述式は部分点が与えられるため、白紙は最も避けるべき対応です。
模試で記述式が書けなかった場合は、そもそも記述式で問われるテーマの知識が不足しているのか、知識はあるが40字でまとめる技術がないのかを区別して対策を講じましょう。知識不足であれば択一式の学習を強化し、表現技術の問題であれば記述式の問題集を使った書く練習を重ねましょう。前述の「記述式の復習法」の節も併せて活用してください。
特定科目の取りこぼしパターン
行政法は配点の中心(多肢選択・記述を含めれば約110点)であり、ここでの取りこぼしは致命的です。模試で行政法の正答率が低い場合は、行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法の手続の違い(聴聞と弁明、審査請求と取消訴訟の関係、出訴期間など)を横断的に整理し直すと、複数の失点を一度に手当てできます。民法が弱い場合は、出題が安定している総則・物権・債権の基本論点から固め、家族法は深追いしすぎないなど、配点に対して費用対効果の高い順に復習することが大切です。
行政書士試験の基礎知識(旧一般知識等)科目では、14問中6問以上正解しなければ、法令科目の得点に関係なく不合格となる。○か×か。
行政手続法上、許認可等を取り消す不利益処分をしようとする場合には、原則として「弁明の機会の付与」の手続を執らなければならない。○か×か。
まとめ
本記事では、行政書士試験における模試の活用法と効果的な復習術について解説しました。要点を3つにまとめます。
- 模試は3〜5回受験する:7月〜10月にかけて、予備校公開模試と市販模試を組み合わせて3〜5回受験し、本番シミュレーション・弱点発見・時間配分の検証を行う
- 復習は3ステップで行う:当日中の正誤確認、1週間以内の条文・判例確認、1ヶ月後の定着度チェックの3段階で復習し、知識を確実に定着させる。間違えた理由を分類し、記述式は別建てで復習する
- 点数ではなく弱点の克服に集中する:模試の点数に一喜一憂せず、3つの足切り基準(法令122点・基礎知識6問・総得点180点)を毎回確認し、間違えた問題の分析と復習に全力を注ぐことが、本番での得点アップにつながる
令和6年度改正で再編された「基礎知識」(行政書士法等を含む)への対応も含め、模試を最大限に活用して、本試験での合格を勝ち取りましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 模試は会場受験と自宅受験のどちらがよいですか?
可能であれば、少なくとも1回は会場受験をおすすめします。他の受験生がいる環境で3時間を通して解く経験は、自宅受験では得られません。ただし、仕事の都合などで会場受験が難しい場合は、自宅でも本番と同じ時間帯に、テキスト等を遠ざけた環境で受験すれば十分な効果があります。
Q2. 模試で合格ラインに届かない場合、試験を受けるべきではないですか?
そんなことはありません。模試は本試験よりもやや難しめに作られていることが多く、模試で160〜170点程度であれば本番で180点を超える可能性は十分にあります。また、模試後の復習による伸びしろもあります。模試の結果だけで受験を諦めず、残りの期間で弱点を補強して本番に臨みましょう。
Q3. 模試の復習にどれくらい時間をかけるべきですか?
目安として、模試1回分の復習に3〜5時間をかけましょう。当日の正誤確認に1〜2時間、1週間以内の深掘り復習に2〜3時間が標準的です。復習の時間が確保できないほど多くの模試を受けるのは逆効果なので、復習時間を考慮したうえで受験回数を決めてください。
Q4. 複数の予備校の模試を受けるべきですか?
できれば2〜3社の模試を受けることをおすすめします。予備校によって出題傾向が異なるため、複数の模試を受けることで幅広い出題パターンに対応できる力が身につきます。ただし、復習の質を優先し、消化不良にならない範囲にとどめましょう。
Q5. 市販模試を自宅で受けるときのコツはありますか?
市販模試を自宅で受ける際は、スマートフォンの電源を切り、家族に3時間は話しかけないよう伝え、本番と同じ13時〜16時の時間帯で受験しましょう。途中で解答解説を見たり、テキストを確認したりする誘惑に負けないことが重要です。タイマーをセットし、3時間厳守で解きましょう。
Q6. 令和6年度の改正で、これまでの一般知識対策はやり直しが必要ですか?
すべてやり直す必要はありません。文章理解・情報通信・個人情報保護の対策は引き続き有効です。変わったのは「行政書士法等」(行政書士法・戸籍法・住民基本台帳法等)が新たに加わった点で、ここは条文学習で得点しやすい分野です。過去問の蓄積が少ないため、各社の最新の模試で出題形式に慣れておくことが、改正への最も実践的な対応になります。