多肢選択式の攻略法|空欄推理の4つのコツ
行政書士試験の多肢選択式問題の攻略法を解説。20個の選択肢から4つの空欄を埋める推理テクニック、判例・条文の穴埋めパターン、消去法の活用、部分点(1空欄2点)を確実に取る方法まで具体的に紹介します。
はじめに|多肢選択式は「推理」で解く問題
行政書士試験の多肢選択式は、20個の選択肢から4つの空欄に入る語句を選ぶ独特の出題形式です。3問で24点(1空欄2点×12空欄)という配点は、合計点の8%を占めます。
択一式が「正解を1つ選ぶ」問題であるのに対し、多肢選択式は「文脈から正しい語句を推理する」問題です。知識だけでなく、判例文や条文の論理構造を読み解く力が求められます。
逆に言えば、正確な知識がなくても、文脈の推理力で正解にたどり着ける可能性があるのが多肢選択式の特徴です。本記事では、空欄を推理するための4つのコツを中心に、多肢選択式の具体的な攻略テクニックを解説します。
多肢選択式は「捨て問にしてはいけない問題形式」です。配点24点は、記述式3問(60点)に次ぐ大きさで、しかも記述式と違って採点者の主観が入りません。マークの番号が合っていれば機械的に得点になります。後述する部分点の仕組みと合わせて考えれば、多肢選択式は「努力が最も得点に直結しやすい問題形式」の一つだといえます。本記事は、出題形式の正確な理解から、4つの推理テクニック、科目別対策、時間配分、練習法までを網羅し、競合解説を上回る実戦力をつけることを目的としています。
多肢選択式の出題形式を正確に理解する
問題の構成
多肢選択式は以下の構成で出題されます。
- 本文: 判例や条文を基にした文章で、4つの空欄(ア・イ・ウ・エ)が含まれる
- 選択肢: 1〜20の番号が振られた語句が20個提示される
- 解答: 各空欄に入る選択肢の番号を答える
1問につき4つの空欄があり、各空欄2点、1問8点の配点です。3問合計で24点になります。
配点と合格戦略上の位置づけ
行政書士試験の合計配点は300点満点で、合格基準は180点(全体の60%)以上です。さらに、法令等科目(244点満点)で50%以上、一般知識等科目で40%以上という足切り基準があります。多肢選択式の24点は法令等科目に含まれ、全体の8%、法令等科目の中でも約10%を占めます。
注目すべきは「1問あたりの重み」です。択一式は1問4点ですが、多肢選択式は1問8点(=択一式2問分)に相当します。さらに部分点が取れるため、択一式のように「1か0か」ではなく、努力に応じて2点刻みで積み上げられます。コストパフォーマンスの観点から、多肢選択式の対策は非常に効率が良いといえます。
出題科目と出題傾向
多肢選択式は以下の科目から出題されます。
憲法は重要判例の判決文からの出題がほとんどです。行政法は判例に加えて、行政法の基本的な概念や条文からの出題もあります。
ただし、この「憲法1問・行政法2問」という配分は近年の傾向であり、年度によっては配分が変わる可能性があります。本試験の冒頭で配点と科目構成を確認する習慣をつけておきましょう。重要なのは、いずれの問題も「判例の判旨を素材にした文章」が中心であるという点です。判例学習の精度がそのまま多肢選択式の得点に反映されます。
20個の選択肢の特徴
20個の選択肢は、4つの正解と16個の不正解(ダミー)で構成されています。ダミーの中には、正解と紛らわしいものと、明らかに関係ないものが混在しています。
紛らわしいダミーの例: 正解が「合理的な関連性」の場合、ダミーに「合理的な根拠」「合理的な必要性」「密接な関連性」などが含まれることがあります。
明らかなダミーの例: 憲法の問題なのに民法の専門用語が選択肢に含まれている場合、それはダミーと判断できます。
選択肢の「グルーピング」を見抜く
20個の選択肢を眺めると、語感が似た語句が「グループ」を作っていることに気づきます。出題者は、正解の語句に対して、同じグループ内で微妙に異なるダミーを複数並べてくる傾向があります。
たとえば次のようなグループが典型です。
このグループ構造に気づけば、「どのグループの中から正解を選ぶか」という二段階の絞り込みができます。まずグループを特定し、次にそのグループ内のニュアンスの違いを判例の正確な文言と照合する、という解き方が有効です。逆に、どのグループにも属さない「浮いた語句」は、文脈に合わない限りダミーである可能性が高くなります。
コツ1:文脈から推理する
前後の文脈を手がかりにする
最も基本的な推理テクニックは、空欄の前後の文脈から答えを導くことです。法律文書には論理的な流れがあり、空欄の前後を読めば、そこに入るべき語句の方向性がわかります。
手順1: 空欄の前の文を読む
空欄の前の文が原因や前提を述べているなら、空欄にはその結論や帰結が入る可能性があります。
手順2: 空欄の後の文を読む
空欄の後の文が空欄の内容を説明している場合があります。「すなわち〜」「具体的には〜」という記述が続くなら、空欄にはその抽象的な概念が入ります。
手順3: 接続詞を手がかりにする
「しかし」の後の空欄には、前文と対立する内容が入ります。「したがって」の後の空欄には、前文から導かれる結論が入ります。「もっとも」の後には、例外や留保が入ります。
接続詞・指示語の「方向性」を一覧で押さえる
接続詞は空欄推理の最大のヒントです。空欄の直前・直後にある接続詞が、空欄に入る語句の性質を決定づけます。次の表を頭に入れておくと、機械的に方向性を判断できます。
指示語も見逃せません。「この基準」「右の趣旨」「かかる場合」といった指示語があれば、空欄に入る語句は前の段落で既に定義された概念を指している可能性が高く、そこから逆算できます。
文末表現から品詞を絞る
空欄の直後の語尾(助詞・助動詞)は、入る語句の品詞を強く制約します。これは知識がなくても使える純粋な「日本語の推理」です。
- 空欄+「を有する/に服する/を負う」→ 名詞(権利・義務・制限など)が入る
- 空欄+「に審査される/に判断される」→「〜的」「〜厳格」など副詞的に働く語が入る
- 空欄+「ではない/とはいえない」→ 否定される対象となる名詞・形容動詞が入る
- 空欄+「として」「において」→ 名詞句が入る
選択肢の語句を空欄に当てはめて音読し、日本語として自然につながるかを確かめるだけで、文法的に不適合な候補を機械的に消去できます。
実践例:文脈推理の思考プロセス
たとえば、以下のような問題文があったとします。
表現の自由は、民主主義の根幹をなす重要な権利であるから、これを規制する立法の合憲性は、( ア )な基準で審査されなければならない。
この空欄の前には「重要な権利」「規制する立法の合憲性」という文脈があります。重要な権利を規制する場合に要求される審査基準は「厳格」です。選択肢に「厳格」があれば、それが正解の有力候補になります。
ここで重要なのは、空欄アの直後が「な基準で審査され」となっている点です。したがってアには「〜な」の形で名詞・形容動詞語幹が入ります。「厳格」「合理的」はこの形に適合しますが、「厳格に審査」のような副詞形は文法的に入りません。文脈(重要な権利の規制)と文法(〜な基準)の両面から「厳格」を導く、というのが推理の基本動作です。
コツ2:判例の論理構造を把握する
判例文の定型パターンを知る
多肢選択式の多くは、最高裁判例の判旨を基にした問題です。判例文には特有の論理構造があり、このパターンを知っておくことで空欄の推理精度が上がります。
パターン1:権利の重要性→制約の合憲性審査
「○○の自由は〜において重要な意義を有する。しかし、○○の自由も( )ではなく、公共の福祉のための必要かつ合理的な制限に服する。」
この場合、空欄には「絶対的なもの」「無制約」「無制限」といった語句が入ります。
パターン2:一般論→本件への当てはめ
「一般に、行政庁の裁量権の行使が( )を逸脱又は濫用したものと認められる場合には、違法となる。これを本件についてみると〜」
この場合、空欄には「裁量権の範囲」「社会通念上の合理性」といった語句が入ります。
パターン3:原則→例外の提示
「原則として( )であるが、もっとも、一定の場合にはこの限りでない。」
空欄には原則的な法律効果を示す語句が入ります。
判例の「型」を原文で確認する
定型パターンは、実際の判例原文を読むと一層理解が深まります。たとえば行政裁量に関するリーディングケースは、次のように述べています。
…裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、…公務員に対する懲戒処分が社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである。
― 最判昭和52年12月20日(神戸税関事件)
この判旨が多肢選択式の素材になれば、「社会観念上著しく妥当を欠いて」「裁量権を付与した目的を逸脱」「濫用」といった部分が空欄になり得ます。原文のリズム(「社会観念上著しく妥当を欠いて」という独特の言い回し)を覚えていれば、ダミーの「社会通念上著しく不合理で」などを見抜けます。
処分性の定義についても、確立した判旨の言い回しがあります。
行政事件訴訟法三条二項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によつて、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう…
― 最判昭和39年10月29日(大田区ごみ焼却場事件)
ここでは「公権力の主体」「直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定」という定型句が頻出の空欄ポイントです。
重要判例のキーフレーズを押さえる
多肢選択式に出題される判例には、特徴的なキーフレーズがあります。これらのフレーズを覚えておくことで、空欄の答えを即座に特定できることがあります。
憲法の重要キーフレーズ例
- 「二重の基準論」に関する判例:「精神的自由」「経済的自由」「厳格な基準」「合理性の基準」
- 生存権に関する判例:「プログラム規定」「具体的権利」「広い裁量」
- 法の下の平等に関する判例:「合理的な根拠」「事柄の性質」「区別」
行政法の重要キーフレーズ例
- 裁量権に関する判例:「裁量権の逸脱又は濫用」「社会観念上著しく妥当を欠く」
- 原告適格に関する判例:「法律上の利益」「法律上保護された利益」
- 処分性に関する判例:「公権力の主体」「直接国民の権利義務を形成」「法的効果」
過去に実際に出題された判例の系統
過去の多肢選択式で素材とされた判例には、一定の系統があります。完全な網羅ではありませんが、出題されやすい判例を体系的に押さえておくことが有効です。
行政事件訴訟法は平成16年改正で原告適格の判断について規定(行訴法9条2項)が追加され、考慮事項が条文化されました。原告適格を扱う問題では、判例の言い回しと条文の文言の双方が空欄になり得るため、両方を意識して学習する必要があります。
多肢選択式の20個の選択肢のうち、正解は4つであり、残り16個はダミーである。このダミーの中には正解と紛らわしいものが含まれているため、文脈からの推理が重要となる。○か×か。
コツ3:消去法を活用する
消去法の基本手順
20個の選択肢をすべて検討するのは時間がかかります。消去法を使って候補を絞り込むことで、効率よく正解にたどり着けます。
ステップ1:明らかに無関係な選択肢を消す
憲法の問題に民法の専門用語が含まれている場合や、行政法の問題に刑法の用語が含まれている場合、それらは消去できます。まず、テーマと明らかに無関係な選択肢を消しましょう。
ステップ2:文法的に入らない選択肢を消す
空欄の前後の文法構造に合わない選択肢は消去できます。空欄の後に「を有する」が続くなら、空欄には名詞が入ります。「的に」が続くなら、名詞+「的に」で副詞句を構成する語が入ります。
ステップ3:意味の重複する選択肢を消す
4つの空欄に同じ意味の語句が入ることはありません。すでに確定した空欄と同じ意味の選択肢は、残りの空欄の候補から消去できます。
消去法の具体的な活用例
20個の選択肢のうち、以下のように整理して絞り込みます。
- まず、テーマと無関係な選択肢を消す → 20個 → 12〜14個に絞れる
- 次に、文法的に合わない選択肢を消す → さらに8〜10個に絞れる
- 最後に、文脈から最も適切な選択肢を選ぶ → 各空欄2〜3個の候補から選ぶ
この手順で進めれば、20個の選択肢に圧倒されることなく、冷静に解答を導けます。
確率で見る消去法の威力
消去法がなぜ重要なのかを、確率の観点で確認しておきましょう。多肢選択式は1空欄あたり20択ですが、実際には選択肢が4空欄で共有されるため、純粋な確率計算は単純ではありません。それでも、絞り込みの効果は明確です。
絞り込みを重ねるほど、当てずっぽうから「半分当たる勝負」へと変わります。1空欄2点ですから、確率を上げることがそのまま期待得点の上昇に直結します。完全な確信がなくても、候補を2〜3個まで絞れれば十分に勝負になる、という感覚を持ちましょう。
2つの空欄がペアになるパターン
多肢選択式では、2つの空欄が論理的にペアになっていることがあります。
たとえば「( ア )でなく( イ )である」という構造の場合、アとイには対義語的な関係の語が入ります。「具体的」と「抽象的」、「直接的」と「間接的」のようなペアが典型的です。
このパターンに気づけば、一方の空欄を埋めることでもう一方の空欄も自動的に決まります。
同一語句の反復に注目する
判例文では、同じ法律概念が文中で繰り返し登場することがあります。「( ア )」が文の前半と後半の両方に現れる構成(同じ語が2か所の空欄になっている)は、片方を確定すればもう片方も自動的に決まります。
また、問題文の冒頭で定義された概念が、後の空欄で言い換えられているケースもあります。たとえば前半で「公権力の行使に当たる行為」と定義され、後半の空欄で「( )に当たるか否か」と問われていれば、空欄には「処分」が入ると推理できます。文章全体を通読し、語句の対応関係をマッピングする視点が消去法の精度を高めます。
コツ4:部分点を確実に取る戦略
1空欄2点の重みを理解する
多肢選択式の配点は1空欄2点です。4つの空欄のうち1つでも正解すれば2点、2つ正解すれば4点が得られます。1問丸ごと正解する必要はありません。
この部分点の仕組みは非常に重要です。多肢選択式3問で12空欄あるため、すべてを完璧に答えられなくても、「確実に正解できる空欄」から得点を積み上げるという戦略が有効です。
部分点が合否を分けるという事実
行政書士試験の合格基準は180点です。毎年、合格ラインのすぐ下に多数の受験生が集まります。178点で不合格、180点で合格というケースは現実に起こります。このわずか2点が、まさに多肢選択式1空欄分です。
択一式は1問4点で、間違えれば0点(部分点なし)です。これに対し多肢選択式は、1問の中で2点・4点・6点・8点と段階的に得点できます。「全部は分からないが、半分は確実」という状態でも4点を確保できるこの仕組みは、合格ラインぎりぎりの受験生にとって極めて心強い味方になります。多肢選択式を「全問正解狙い」ではなく「確実な部分点の積み上げ」として捉え直すことが、安定合格の鍵です。
確実な空欄から先に埋める
4つの空欄のうち、自信を持って答えられるものとそうでないものがあります。以下の手順で解きましょう。
手順1:確実な空欄を先に埋める
判例のキーフレーズや法律用語として明らかに特定できる空欄があれば、先にそれを埋めます。
手順2:確定した空欄の選択肢を消去する
1つの空欄を確定させたら、その選択肢番号を残りの空欄の候補から消去します。20個の選択肢が19個に減り、推理しやすくなります。
手順3:残りの空欄を文脈から推理する
確定した空欄の前後関係をヒントに、残りの空欄を推理します。確定した空欄が結論部分なら、その前の空欄には理由や前提が入るはずです。
すべての空欄に回答する
たとえ自信がなくても、すべての空欄に回答しましょう。空白のまま提出すると0点が確定しますが、適当でも回答すれば正解の可能性があります。
20個の選択肢から1つを選ぶので、ランダムに選んでも正解確率は5%です。しかし、消去法で候補を3〜4個に絞ってから選べば、正解確率は25〜33%に上がります。
マークミス・転記ミスを防ぐ
部分点を確実にするうえで、見落とされがちなのがマークミスです。多肢選択式は空欄ア・イ・ウ・エに対応するマーク欄が並ぶため、空欄イの答えを空欄ウの欄にマークしてしまうといったズレが起こりやすい形式です。せっかく正答を導いても、マーク位置がずれれば0点になります。
防止策として、次の習慣を持ちましょう。
- 問題用紙に各空欄の答えの番号を書き込んでから、まとめてマークする
- マークする際は「空欄アは何番」と指で示しながら欄を確認する
- 見直しの時間に、問題用紙のメモとマークシートを照合する
知識ではなく作業の精度で失点するのは最ももったいない失点です。
多肢選択式で、すでに確定した空欄の選択肢番号を残りの空欄の候補から消去することで、残りの空欄の推理精度を高めることができる。○か×か。
科目別の攻略ポイント
憲法(1問)の攻略
憲法の多肢選択式は、最高裁判例の判旨を基にした出題がほとんどです。
頻出テーマ
- 表現の自由に関する判例(検閲の禁止、表現の事前抑制、名誉毀損と表現の自由の調整)
- 法の下の平等に関する判例(合理的な区別の基準)
- 生存権に関する判例(プログラム規定説・抽象的権利説)
- 信教の自由・政教分離に関する判例(目的効果基準)
- 職業選択の自由に関する判例(規制目的二分論)
対策法
憲法の重要判例を学習する際に、判旨のキーフレーズを意識して覚えましょう。判例百選レベルの重要判例から出題されることが多いため、メジャーな判例の判旨を何度も読み返すことが効果的です。
職業選択の自由に関する代表的判例は、規制目的二分論を理解するうえで欠かせません。
一般に許可制は、…職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し…
― 最大判昭和50年4月30日(薬事法距離制限事件)
この「重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置」という言い回しは多肢選択式の典型的な空欄候補です。消極目的規制に対する厳しめの審査という文脈とセットで押さえましょう。
行政法(2問)の攻略
行政法の多肢選択式は、判例と条文・学説の両方から出題されます。
頻出テーマ
- 行政裁量に関する判例(裁量権の逸脱・濫用の判断基準)
- 処分性に関する判例(処分性の定義と拡大)
- 原告適格に関する判例(法律上の利益の解釈)
- 行政行為の効力(公定力・不可争力・不可変更力)
- 行政手続法の基本原則
対策法
行政法の多肢選択式は、条文の文言がそのまま空欄になることがあります。行政事件訴訟法、行政手続法、行政不服審査法の重要条文は、条文の文言をそのまま暗記するくらい読み込んでおくと、空欄を一目で特定できます。
たとえば抗告訴訟の定義は、条文の文言そのものが空欄になり得ます。
この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為…の取消しを求める訴訟をいう。
― 行政事件訴訟法 第3条第2項
行政手続法の目的規定も、頻出の空欄ポイントです。
この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによつて、行政運営における公正の確保と透明性…の向上を図り、もつて国民の権利利益の保護に資することを目的とする。
― 行政手続法 第1条第1項
「公正の確保」「透明性」「国民の権利利益の保護」という三つのキーワードは、行政手続法の趣旨を象徴する語句として確実に押さえておきましょう。条文素材の問題では、判例素材の問題以上に「正確な暗記」がものをいいます。
よくある誤解と落とし穴
多肢選択式について、受験生が陥りがちな誤解を整理しておきます。
誤解1:用語を知っていれば解ける
語句を知っているだけでは不十分です。20個の選択肢には正解と語感の似たダミーが意図的に並びます。「合理的な関連性」と「合理的な根拠」のどちらが本件判例の正確な言い回しか、という識別が問われます。曖昧な暗記ではなく、判旨の正確な文言まで踏み込む必要があります。
誤解2:1問単位で正解を狙うべき
「4空欄すべて合わせないと意味がない」という思い込みは禁物です。部分点が取れる以上、1問8点の中で何点積めるかが勝負です。難しい1空欄に固執して時間を浪費するより、確実な空欄を取りこぼさないことを優先しましょう。
誤解3:知らない判例が出たら諦めるしかない
たとえ初見の判例でも、判例文の定型的な論理構造(権利の重要性→制約→審査基準)と接続詞の方向性を使えば、知識ゼロから推理できます。多肢選択式は「読解で戦える」問題形式であることを忘れないでください。
誤解4:難問だから後回しでよい
多肢選択式は配点の重みと部分点の取りやすさから、むしろ優先的に時間を確保すべき形式です。後回しにして時間切れで適当にマークするのは、もっとも得点効率の良い問題を捨てる行為になりかねません。
多肢選択式では、4つの空欄すべてを正解しなければ得点にならない。○か×か。
効果的な練習方法
過去問の徹底分析
多肢選択式の最も効果的な練習法は、過去問を分析的に解くことです。
ステップ1:まず普通に解く
制限時間を設けて(1問4〜5分)、まず普通に解きます。
ステップ2:出典を確認する
解答後に、その問題の出典(どの判例・どの条文)を確認します。出典を知ることで、次に同じテーマが出題されたときに対応できます。
ステップ3:判旨を全文読む
出典の判例がわかったら、その判旨を全文読みましょう。多肢選択式では判旨の一部分しか出題されませんが、全文を読むことで判旨の論理構造を理解でき、次の出題に備えることができます。
キーフレーズノートの作成
過去の多肢選択式で出題されたキーフレーズをノートにまとめましょう。判例名とキーフレーズを対応させてリスト化することで、試験直前の見直しに活用できます。
たとえば以下のような形式です。
このリストを繰り返し確認することで、空欄に入るキーフレーズを瞬時に特定できる力がつきます。
音読とディクテーションで定着させる
キーフレーズは「見て覚える」よりも「声に出して覚える」方が定着します。判旨の核心部分を音読することで、語句のリズムが体に染み込み、ダミーとの違和感を察知しやすくなります。
さらに効果的なのが、判旨の一部を自分で空欄化し、選択肢を見ずに語句を書き入れる「自作ディクテーション」です。出題者の視点に立って「どこを空欄にすれば識別力のある問題になるか」を考えることで、本番で空欄になりやすいポイントを予測する感覚が養われます。
択一式・記述式の学習と連動させる
多肢選択式は独立した対策が必要なように見えますが、実際には択一式・記述式の学習と素材が大きく重なります。択一式で問われた判例の判旨を正確に読み込めば多肢選択式に、記述式で40字にまとめた論点の核心語句はそのまま多肢選択式の空欄に対応します。三形式を別々に勉強するのではなく、「同じ判例・条文を異なる角度から問われている」と捉えると、学習効率が飛躍的に高まります。
本番での時間配分
1問4〜5分を目安にする
多肢選択式3問の時間目安は12〜15分です。1問あたり4〜5分で解くことを目指しましょう。
最初の1分:問題文全体の通読
まず問題文全体をざっと読み、テーマと論理構造を把握します。この段階で空欄を意識する必要はなく、「何について書かれている文章か」を理解することに集中します。
次の2〜3分:空欄の推理と選択肢の検討
空欄の前後の文脈を手がかりに、答えを推理します。選択肢を検討し、消去法で候補を絞り込みます。
最後の1分:確認と記入
推理した答えを確認し、マークシートに記入します。迷いがある空欄は暫定的に回答しておき、時間があれば後で見直します。
試験全体(3時間)の中での位置づけ
行政書士試験の試験時間は3時間(180分)です。60問を解くため、単純計算で1問あたり3分しかありません。この中で多肢選択式3問に12〜15分を割くのは妥当な配分です。
一般的に推奨される解答順は、配点が高く時間のかかる記述式を意識しつつ、択一式で確実に得点を重ねる流れです。多肢選択式は問題用紙の中盤に位置することが多く、択一式の合間に集中力を要するため、頭がまだ疲れていない前半〜中盤に取り組むのが理想です。後半の疲労した状態で長文の判旨を読むと、推理の精度が落ちます。自分の解答順を事前に決め、模試で繰り返しシミュレーションしておきましょう。
時間がない場合の対処法
多肢選択式に十分な時間が確保できない場合は、以下の優先順位で取り組みましょう。
- 確実にわかる空欄だけ埋める(1空欄2点を確実に取る)
- 残りの空欄は消去法で候補を絞り、最も可能性の高いものを選ぶ
- 3問のうち時間が足りない問題は、選択肢をざっと見て直感で回答する
白紙で提出するよりも、何か記入して部分点を狙う方が圧倒的に有利です。
関連論点|記述式・択一式との学習の重なり
多肢選択式は、行政書士試験の他の出題形式と密接に関連しています。とくに記述式は、多肢選択式と同じ判例・条文を素材にすることが多く、論点の核心を40字でまとめる訓練がそのまま多肢選択式の空欄推理に活きます。逆に、多肢選択式で覚えたキーフレーズは、記述式の解答に使う「キーワード」として再利用できます。
また、択一式で正誤判断の根拠とした判旨の一節が、翌年以降に多肢選択式の空欄として出題されることもあります。判例学習は形式を横断して得点に結びつくため、「この判旨のどの部分が空欄になり得るか」という視点を常に持ちながら学習を進めましょう。
まとめ|4つのコツで多肢選択式を得点源にする
多肢選択式の攻略法を改めて整理します。
- 文脈から推理する: 空欄の前後の文脈、接続詞、論理構造、文末表現を手がかりにする
- 判例の論理構造を把握する: 判例文の定型パターンとキーフレーズを原文で押さえる
- 消去法を活用する: 無関係な選択肢、文法的に合わない選択肢、グループ外の語句を先に消去し、候補を絞り込む
- 部分点を確実に取る: 確実な空欄から埋め、すべての空欄に必ず回答し、マークミスを防ぐ
多肢選択式の24点は、合格ラインの180点に対して約13%を占めます。3問すべてで満点(24点)を取るのは難しいですが、12空欄のうち8〜10個を正解して16〜20点を取ることは、上記のテクニックを身につければ十分に可能です。
部分点の積み上げが合否を分ける2点を生むこともあります。多肢選択式を「捨て問」にせず、過去問の分析と重要判例のキーフレーズの暗記を組み合わせて、安定した得点源にしましょう。
学習をさらに深めるために、あわせて以下の記事も参考にしてください。