多肢選択式の判例穴埋め攻略テクニック|得点源にする方法
行政書士試験の多肢選択式(判例の穴埋め問題)を攻略するテクニックを徹底解説。出題パターン分析と、判例キーワードの効率的な暗記法を紹介します。
はじめに|多肢選択式は「お得な」得点源
行政書士試験において、多肢選択式は合計24点(3問×8点)の配点を持つ出題形式です。300点満点中の24点というと全体の8%に過ぎないように見えますが、この24点は正しい対策をすれば安定して得点できる「お得な」パートです。
多肢選択式の特徴は、完全な五肢択一式と異なり、判例の判旨の中に設けられた4つの空欄に対して、20個の選択肢から適切な語句を選んで埋めるという形式にあります。つまり、判例の文言をある程度知っていれば正解にたどり着きやすいのです。
5肢択一式では「5つの選択肢のうち正しいもの(誤っているもの)を1つ選べ」という形式のため、各選択肢の正誤をすべて判断しなければなりません。一方、多肢選択式は判例の文章という「文脈」がヒントとして与えられているため、判例のキーワードを覚えていれば確実に得点できます。
本記事では、多肢選択式の出題パターンを分析し、判例キーワードの暗記法、文脈からの推理法、消去法の活用など、実践的な攻略テクニックを徹底解説します。さらに、行政法・憲法の頻出判例キーワード一覧もまとめていますので、試験直前の確認にも活用してください。
多肢選択式の基本情報を押さえる
出題数・配点・出題科目
多肢選択式は、行政書士試験の問題番号41〜43の3問で出題されます。各問が8点(空欄1つあたり2点×4箇所)で、合計24点です。出題科目の内訳は、憲法から1問、行政法から2問というのが例年の傾向です。
この24点という配点は、択一式の商法・会社法(20点)や基礎法学(8点)を上回っており、合格ラインの180点に対して大きなウェイトを占めています。多肢選択式で16点以上(8割以上)を安定して取れるようになれば、合格にかなり近づくことができます。
出題形式の詳細
多肢選択式の問題は、以下のような構成になっています。
- 判例の判旨(裁判所の判決文)が引用される
- その文章中に4つの空欄(ア・イ・ウ・エ)が設けられている
- 空欄に入る語句の候補として20個の選択肢が提示される
- 受験者は20個の中から4つを選んで空欄を埋める
20個の選択肢の中には、正解の4つに加えて、紛らわしい語句が多数含まれています。たとえば「裁量権の範囲をこえ」が正解の場合、「裁量権の限界をこえ」「裁量権の逸脱」といった類似表現が選択肢に含まれることがあります。判例の正確な文言を覚えていなければ、こうした紛らわしい選択肢に惑わされてしまいます。
5肢択一式・記述式との違い
多肢選択式は、5肢択一式と記述式の中間に位置する出題形式といえます。5肢択一式のように選択肢から選ぶ点では客観式ですが、記述式のように正確な法律用語の知識が問われる点では主観式に近い性質を持っています。
5肢択一式では、選択肢全体の文脈を読んで正誤を判断しますが、多肢選択式では「特定の語句」を正確に知っている必要があります。ただし、記述式のように自分で一から文章を組み立てる必要はなく、20個の候補の中から選べばよいため、「ヒントがある記述式」とも表現できます。
この特性を理解することが、多肢選択式攻略の第一歩です。
攻略テクニック1:判例キーワードを暗記する
「決めフレーズ」暗記法とは
多肢選択式の最も確実な攻略法は、頻出判例の「決めフレーズ」を暗記することです。決めフレーズとは、各判例の判旨の中で最も重要な文言、つまり出題者が空欄にしやすい核心的なキーワードのことです。
判例の全文を覚える必要はありません。出題者が穴埋めにする箇所はパターン化されており、判例ごとに2〜3個の決めフレーズを押さえておけば、多くの問題に対応できます。
たとえば、マクリーン事件(最大判昭和53年10月4日)の決めフレーズは以下のとおりです。
「裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り」違法となる。
――マクリーン事件(最大判昭和53年10月4日)
この判例が出題された場合、「裁量権の範囲をこえ」「濫用」「違法」などが空欄にされる可能性が高いのです。
憲法の決めフレーズ例
憲法分野で頻出の判例とその決めフレーズを具体的に見ていきましょう。
薬局距離制限事件(最大判昭和50年4月30日)は、職業の自由の規制に関する重要判例です。
「より制限的でない他の選びうる手段」の有無を検討すべきである。
――薬局距離制限事件(最大判昭和50年4月30日)
この「より制限的でない他の選びうる手段」(LRAの基準)は、多肢選択式でそのまま空欄にされることが多い典型的な決めフレーズです。
津地鎮祭事件(最大判昭和52年7月13日)は、政教分離の判例として頻出です。
当該行為の「目的が宗教的意義をもち」、その「効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉」等になるような行為をいう。
――津地鎮祭事件(最大判昭和52年7月13日)
「目的」と「効果」という目的効果基準の枠組みが、空欄に設定される典型パターンです。
行政法の決めフレーズ例
行政法の判例も決めフレーズの宝庫です。
呉市公立学校施設使用不許可事件(最判平成18年2月7日)では、以下の表現が重要です。
「重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠く」場合に、裁量権の逸脱濫用となる。
――呉市公立学校施設使用不許可事件(最判平成18年2月7日)
個人タクシー事件(最判昭和46年10月28日)では、手続的統制の考え方が示されています。
内部的にせよ「審査基準を設定」し、これを「公正かつ合理的に適用すべき」である。
――個人タクシー事件(最判昭和46年10月28日)
これらの決めフレーズは、テキストの判例解説を読む際に蛍光ペンでマーキングし、暗記カードにまとめておくと効率的に覚えられます。
攻略テクニック2:文脈から推理する
文法的なつながりを利用する
判例のキーワードを完全に覚えていなくても、文脈から正解を推理できることがあります。特に効果的なのが、文法的なつながりを利用する方法です。
日本語の文章には、助詞や接続詞によって前後の語句が制約されるという特性があります。たとえば、「〇〇を(ア)し、△△を(イ)する」という文において、空欄(ア)と(イ)には動詞が入ることが文法的に確定します。20個の選択肢のうち動詞に該当するものだけに絞り込めば、正解にたどり着ける確率が飛躍的に高まります。
具体的な例を見てみましょう。
「国民の権利を不当に(ア)するものではなく、(イ)的な制約として許容される」
この文では、(ア)には「制限」「侵害」「制約」などの否定的な動詞が入り、(イ)には「合理」「合憲」「正当」などの肯定的な形容動詞の語幹が入ると推理できます。選択肢の中からこの条件に合うものを探せばよいのです。
対比構造を見抜く
判例の文章には「〇〇ではなく、△△である」「〇〇のみならず、△△も含む」といった対比構造が頻繁に使われます。この対比構造を見抜くことで、空欄に入る語句の方向性を絞り込むことができます。
たとえば、「単に(ア)のみならず、(イ)をも考慮すべきである」という文では、(ア)と(イ)には対になる概念が入ります。選択肢の中から対になり得る語句のペアを探し、文脈に合うものを選べば正解にたどり着けます。
また、「〇〇を(ア)する場合であっても、(イ)を逸脱してはならない」という文では、(ア)が積極的・肯定的な行為を示す語句、(イ)が限界・制約を示す語句であることが推理できます。
前後の文意から論理的に推測する
判例の文章は論理的に構成されているため、前後の文脈から空欄の内容を論理的に推測することも有効です。
判例の判旨は通常、以下のような論理構造を持っています。
- 一般論(原則の提示)
- あてはめ(事案への適用)
- 結論(判断の結果)
この構造を意識して読むことで、空欄が「原則」を述べている部分なのか、「例外」を述べている部分なのか、「結論」を述べている部分なのかを判断できます。たとえば、「もっとも」「ただし」の後に来る空欄には例外的な内容が入り、「したがって」「以上によれば」の後には結論が入ると推測できます。
攻略テクニック3:消去法を活用する
明らかに違う選択肢を先に消す
多肢選択式の20個の選択肢には、文脈や文法に明らかに合わない選択肢が含まれていることがあります。まずはそうした選択肢を消去し、候補を絞り込むことが重要です。
消去の手がかりとなるポイントは以下のとおりです。
- 品詞の不一致: 空欄に名詞が入るべきところに動詞の選択肢がある場合は消去
- 分野の不一致: 行政法の判例なのに民法特有の用語が選択肢にある場合は消去
- 論理の矛盾: 前後の文脈と論理的に矛盾する選択肢は消去
- 時代の不整合: 問題文の判例の時代と明らかに合わない用語は消去
たとえば、行政法の裁量統制に関する判例の穴埋めで、選択肢に「善意の第三者」「瑕疵担保責任」など民法特有の用語があれば、それらはほぼ確実に不正解です。こうした選択肢を先に消去することで、検討すべき選択肢の数を減らし、正答率を高めることができます。
類似選択肢の処理法
多肢選択式の選択肢には、意味の近い語句が複数含まれていることがあります。このような場合の対処法を知っておくことが重要です。
たとえば、選択肢に「逸脱」と「超越」がある場合、両者は意味が近いですが判例上の正確な用語は「逸脱」であることが多いです。また、「濫用」と「乱用」は法律上は「濫用」が正しい表記です。このような微妙な違いを見分けるためには、日頃から法律用語の正確な表記に注意を払っておく必要があります。
一方で、完全に同じ意味の選択肢が2つ含まれている場合、論理的にはどちらか一方しか正解にならないため、両方とも不正解である可能性を検討すべきです。4つの空欄に入る語句はすべて異なるため、同義語が2つあれば、原則としてどちらも正解ではないと考えるのが合理的です。
「自信のない空欄」の対処法
4つの空欄のうち、2つは判例の知識から確信を持って答えられるが、残り2つは自信がないという状況は珍しくありません。このとき重要なのは、確信を持って選んだ2つの選択肢を先に確定させ、残りの18個から2つを選ぶという戦略です。
18個の中から2つを選ぶのは依然として難しいですが、前述の文法的つながりや対比構造のヒントを活用すれば、候補をさらに絞り込むことができます。多肢選択式は1つの空欄あたり2点ですので、4つのうち3つ正解すれば6点、2つ正解でも4点を確保できます。完璧を目指すよりも、確実な得点を積み上げる意識が大切です。
頻出判例キーワード一覧:行政法
行政裁量に関する判例
行政法の多肢選択式で最も出題されやすいのが、行政裁量に関する判例群です。以下に主要な判例と決めフレーズをまとめます。
行政手続・不服審査に関する判例
行政手続法や行政不服審査法に関連する判例も、多肢選択式の出題対象です。
行政事件訴訟に関する判例
これらの判例の決めフレーズは、繰り返し声に出して読むことで効率的に暗記できます。通勤・通学時間などのスキマ時間を活用して、毎日5〜10分の音読を続けると効果的です。
頻出判例キーワード一覧:憲法
人権総論の判例
憲法の多肢選択式では、人権に関する重要判例が頻出です。
精神的自由に関する判例
政教分離に関する判例
これらの判例は、単に語句を暗記するだけでなく、判例の事案と結論を理解したうえで決めフレーズを覚えることが重要です。判例の全体像を理解していれば、空欄に入る語句を文脈から推理しやすくなるからです。
多肢選択式の配点戦略と目標設定
「全問正解は難しいが6〜7割は確保」の意味
多肢選択式の24点満点を獲得することは、現実的には難しい目標です。20個の選択肢から4つを選ぶという形式上、1〜2個はどうしても迷う空欄が出てきます。しかし、4つの空欄のうち3つを正解すれば1問あたり6点、3問で18点を獲得できます。これは24点の75%であり、十分な得点です。
目標としては、3問中2問は3つ以上正解(6点以上)、残り1問は2つ正解(4点)という配分で、合計16〜18点を確保することを目指しましょう。この得点は、択一式の2〜3問分に相当し、合否を左右する重要な得点源となります。
多肢選択式の得点が合否を分ける場面
合格基準の180点ギリギリの攻防において、多肢選択式の得点が合否を分けることは少なくありません。
たとえば、択一式で156点、記述式で12点、合計168点の受験生が2人いたとします。多肢選択式で16点取った受験生は合計184点で合格、8点しか取れなかった受験生は合計176点で不合格です。わずか8点の差が合否を分けるのです。
多肢選択式は、択一式ほど運の要素が大きくなく、記述式ほど採点の不確定要素も少ない形式です。正しい対策をすれば、安定して得点できる「堅い」得点源といえます。
学習時間の配分
多肢選択式対策にどの程度の学習時間を割くべきかは、受験生の状況によって異なります。しかし、独立した「多肢選択式対策」として特別な時間を設ける必要は必ずしもありません。
多肢選択式の出題素材は判例の判旨であり、これは択一式の判例学習と重なる部分が大きいからです。択一式対策として判例を学習する際に、判旨の重要フレーズを意識して覚えるようにすれば、多肢選択式対策を兼ねることができます。
ただし、過去問演習としては、多肢選択式の問題を実際に解く練習が必要です。週に1〜2問のペースで過去問を解き、解説を読んで判例のキーワードを確認する習慣をつけましょう。
効果的な練習法と実践アドバイス
過去問を使った実践練習
多肢選択式の過去問は、直近10年分を最低1回は解いておきたいところです。過去問を解く際のポイントは以下のとおりです。
- まず時間を測って解く: 1問あたり5〜7分を目安に解く
- 判例の出典を確認する: 答え合わせの際に、どの判例からの出題かを確認
- 正解の選択肢だけでなく不正解の選択肢も確認: なぜその語句が不正解なのかを理解
- 決めフレーズを暗記カードに記録: 出題された判例のキーワードをストック
- 2週間後に再度解く: 暗記の定着を確認
暗記カードの作り方
判例の決めフレーズを効率的に覚えるには、暗記カードの活用が効果的です。表面に判例名と論点、裏面に決めフレーズを記載します。
表面の例:
- 判例名: マクリーン事件
- 論点: 外国人の在留更新と裁量
裏面の例:
- 「裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り」違法
- 「基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」
スマートフォンのフラッシュカードアプリを使えば、通勤・通学時間にも手軽に復習できます。1日10分の反復学習を1ヶ月続ければ、主要判例30〜40件の決めフレーズを定着させることが可能です。
試験本番での解き方の手順
試験本番で多肢選択式を解く際は、以下の手順を推奨します。
- 問題文(判旨)を通読する: まず問題文全体を読み、どの判例からの出題かを特定する
- 知っている判例ならキーワードで解答: 決めフレーズが頭にあれば、それに対応する選択肢を選ぶ
- 知らない判例なら文脈から推理: 文法的つながり・対比構造・前後の文意をヒントにする
- 消去法で候補を絞る: 明らかに不適切な選択肢を先に除外する
- 最後に全体を見直す: 4つの空欄を埋めた状態で文章を通読し、意味が通るか確認する
特に重要なのは手順5の見直しです。4つの語句を入れた状態で文章を通読すると、1つでも間違っている場合に文意の不自然さに気づくことがあります。時間に余裕があれば、必ず見直しを行いましょう。
多肢選択式は、行政書士試験で3問出題され、憲法1問・行政法2問の構成である。○か×か。
多肢選択式の空欄1つあたりの配点は4点である。○か×か。
薬局距離制限事件の判旨で用いられた違憲審査基準は「より制限的でない他の選びうる手段」(LRAの基準)である。○か×か。
まとめ
多肢選択式は、正しい対策をすれば安定した得点源にできる出題形式です。本記事のポイントを改めて整理します。
- 判例の「決めフレーズ」を暗記することが最も確実な攻略法。頻出判例のキーワードを暗記カードにまとめ、繰り返し復習する
- 文脈からの推理と消去法を組み合わせる。判例を知らなくても、文法的つながり・対比構造・消去法で正答率を高められる
- 24点中16〜18点(6〜7割以上)を安定確保することが目標。完璧を目指すよりも、確実な得点の積み上げを意識する
多肢選択式対策は、択一式の判例学習と並行して進めることで効率的に行えます。判例を学習する際に「この判旨のどこが穴埋めにされそうか」という視点を持つだけで、対策の質が大きく変わります。
行政書士ブートラボで実践演習 →
よくある質問(FAQ)
Q1. 多肢選択式の対策はいつから始めるべきですか?
多肢選択式に特化した対策は、基本的な判例学習が一通り終わった8〜9月頃から始めるのが効果的です。ただし、択一式対策として判例を学習する段階から、判旨のキーワードを意識しておくと、多肢選択式対策へスムーズに移行できます。
Q2. 過去問に出ていない判例が出題されることはありますか?
はい、過去に出題されていない判例が出題されることはあります。しかし、最重要判例(マクリーン事件、薬局距離制限事件、津地鎮祭事件など)からの出題頻度が高いことは事実です。まずは頻出判例を確実に押さえたうえで、余裕があれば出題範囲を広げていきましょう。
Q3. 判例の全文を暗記する必要がありますか?
判例の全文を暗記する必要はありません。各判例の「決めフレーズ」(空欄に設定されやすい核心的なキーワード)を2〜3個覚えるだけで十分です。ただし、キーワードの前後の文脈を理解しておくと、試験本番で文脈から推理する際にも役立ちます。
Q4. 多肢選択式の問題を解く時間の目安は?
1問あたり5〜7分が目安です。3問合計で15〜20分を想定しておきましょう。判例を知っている問題であれば3〜4分で解ける場合もありますが、知らない判例の場合は文脈推理に時間がかかります。時間を使いすぎると記述式に影響するため、最大でも1問8分以内で解き終えるようにしましょう。
Q5. 多肢選択式と5肢択一式、どちらを先に解くべきですか?
一般的には、5肢択一式を先に解き、その後に多肢選択式に取り組む受験生が多いです。ただし、多肢選択式は判例の知識があれば短時間で解ける問題でもあるため、自分の得意・不得意に応じて順番を調整してください。大切なのは、記述式に十分な時間を確保できるスケジュールを組むことです。