多肢選択式で確実に得点する攻略法
行政書士試験の多肢選択式(3問24点)の特徴と攻略法を解説。判例・条文の穴埋め対策、20の選択肢からの絞り込みテクニック、科目別の対策法を紹介します。
はじめに|多肢選択式は「高配点・高効率」の得点源
行政書士試験の多肢選択式は、全3問で合計24点を占めます。1問あたり8点という配点は、5肢択一式の1問4点と比べて2倍です。つまり、多肢選択式で1問正解することは、択一式2問分の価値があります。
多肢選択式は出題形式に慣れれば安定して得点しやすい分野です。にもかかわらず、「なんとなく難しそう」と敬遠して対策が手薄になっている受験者が少なくありません。
本記事では、多肢選択式の出題形式・傾向を正確に理解したうえで、確実に得点するための具体的なテクニックと学習法を解説します。記述式や択一式と異なり、多肢選択式は「ゼロから書く力」ではなく「正しい語句を選び出す力」が問われます。この性質を逆手に取れば、知識が不完全でも文章構造の分析だけで得点できる場面が数多くあります。本記事は、その「知識×解法テクニック」の両輪で18点以上を狙うことをゴールに据えています。
多肢選択式の出題形式を正確に理解する
基本ルール
多肢選択式の問題は、以下のような形式で出題されます。
- 長文の中に4つの空欄(ア・イ・ウ・エ)がある
- 20個の選択肢(1〜20)の中から、各空欄に当てはまるものを1つずつ選ぶ
- 1問につき4つの空欄×2点=8点
- 全3問で24点満点
問題文は、判例の判旨や条文の内容を引用・要約した文章であることがほとんどです。空欄には法律用語や判例のキーフレーズが入ります。
選択肢が20個と多いことから一見すると難解に映りますが、実際には4つの空欄に対して使われる正解はわずか4個であり、残り16個は「ダミー(誤答選択肢)」です。このダミーには、正解とよく似た語(合理的/相当/必要 など)や、明らかに文脈に合わない語が混在しています。出題者がダミーをどう仕込むかを知っておくと、後述する絞り込みが一段とやりやすくなります。
配点の仕組みと部分点
多肢選択式では、4つの空欄それぞれに2点ずつ配点されています。つまり、4つすべてを正解できなくても、1つ正解するごとに2点が得られます。
重要:白紙で提出すれば0点が確定しますが、4つの空欄すべてに何らかの番号を入れれば、部分点を得られる可能性があります。わからなくても必ず解答しましょう。
部分点方式は、記述式と並んで多肢選択式の最大の特徴です。択一式は「5肢のうち1つを選び、当たればフル得点・外せばゼロ」というオール・オア・ナッシングですが、多肢選択式は1問の中で得点が4分割されています。したがって、「この問題は判例も条文もよく知らない」という場合でも、4つのうち1〜2つは品詞や文脈だけで当てられることが多く、結果としてゼロ点に終わるリスクが極めて低い形式です。この「下振れしにくさ」を理解すると、多肢選択式に時間を投資する価値が見えてきます。
マークシートの記入ミスに注意
多肢選択式は1問につき「ア・イ・ウ・エ」の4箇所をマークします。択一式が1問1マークなのに対し、マーク数が4倍になるため、マークのズレ(行ずれ)が起きやすい形式です。せっかく正解を選んでも、解答用紙上で「イ」の欄に「ア」の答えをマークしてしまえば0点になります。
- 各空欄の番号を問題用紙に大きく書き込み、最後にまとめて転記する
- 「ア=12、イ=5、ウ=18、エ=3」のように4つを一覧化してから一気にマークする
- 見直し時には、必ず問題用紙のメモとマークシートを照合する
知識の精度を上げる前に、こうした事務的な失点を潰しておくことが、得点の底上げに直結します。
出題科目と傾向
多肢選択式の出題科目は例年ほぼ固定されています。
この出題パターンは近年安定しているため、憲法1問+行政法2問を前提に対策を進めるのが効率的です。
なお、憲法の問題41は人権分野の判例が定番ですが、統治機構(国会・内閣・裁判所)や憲法の基本原理に関する学説・判例が題材になる年もあります。行政法の問題42・43は、年度によって「条文の穴埋め2問」「判例の穴埋め2問」「条文1問+判例1問」と配分が変動します。どちらに偏っても対応できるよう、条文・判例の双方を仕上げておくのが安全です。
行政書士試験の多肢選択式は、30個の選択肢から4つの空欄に当てはまるものを選ぶ形式である。
判例の穴埋め対策
判例が出題される理由
多肢選択式で最も多いのは、最高裁判例の判旨を引用した穴埋め問題です。判例は行政書士試験において極めて重要な出題素材であり、特に多肢選択式では判例のキーフレーズがそのまま空欄になることが頻繁にあります。
判例が好んで出題される理由は、判旨の中に「合憲性判定基準」「審査の枠組み」「権利の性質」といった、法的に意味を持つキーワードが凝縮されているからです。出題者はこの「動かせない核心語」を空欄にすることで、受験者が判例の論理構造を理解しているかを試します。逆に言えば、判例の「結論」と「結論を導いた枠組みの呼び名」を押さえれば、多くの空欄に対応できます。
キーフレーズの暗記法
判例対策のポイントは、判旨全体を丸暗記するのではなく、頻出のキーフレーズを正確に覚えることです。
例えば、薬事法違憲判決(最大判昭50.4.30)であれば、以下のようなキーフレーズが出題対象です。
- 「職業の自由に対する規制措置は、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容および制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで慎重に決定されなければならない」
- 「許可制は、単なる職業活動の内容および態様に対する規制を超えて、(ア)狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課する」
このように、判旨の中で法的に重要な意味を持つフレーズが空欄として出題されます。
重要判例の「事案→判旨→意義」整理(憲法)
判例は「結論」だけでなく、その結論を導いた「判断枠組み」とセットで覚えると、空欄が枠組みのどの段階を問うているかを見抜けます。代表的な判例を、事案・判旨・出題上の意義の三段で整理します。
薬事法違憲判決(最大判昭和50年4月30日)
一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要する。
― 最大判昭和50年4月30日(薬局距離制限事件)
- 事案:薬局開設の距離制限を定めた薬事法の規定が、職業選択の自由(憲法22条1項)に反しないかが争われた。
- 判旨:距離制限は不良医薬品供給の防止という消極目的のためで、必要かつ合理的とはいえず違憲。消極目的規制には厳格度の高い審査(必要かつ合理的な措置か)が及ぶとした。
- 出題上の意義:「消極目的/積極目的」「必要かつ合理的」「狭義における職業の選択の自由」などが空欄候補。規制目的二分論の典型判例として最頻出。
小売市場距離制限事件(最大判昭和47年11月22日)
- 事案:小売市場の開設許可に距離制限を設けた規制の合憲性が争われた。
- 判旨:中小企業保護という積極目的の規制であり、立法府の裁量を尊重し「著しく不合理であることの明白である場合」に限り違憲となるとした(明白性の原則)。合憲。
- 出題上の意義:薬事法判決と対比される。「積極目的」「明白の原則」「立法裁量」が空欄候補。両判決を必ずセットで押さえる。
森林法共有林事件(最大判昭和62年4月22日)
- 事案:共有森林について持分2分の1以下の共有者には分割請求を認めない森林法の規定が、財産権(憲法29条)に反しないかが争われた。
- 判旨:規制目的との関連で合理性・必要性を欠くとして違憲。財産権の規制は目的・規制態様に応じて合理性が判断されるとした。
- 出題上の意義:「財産権の内容形成」「合理性・必要性」が空欄候補。29条2項の理解とあわせて出題される。
「宴のあと」事件/プライバシー、北方ジャーナル事件(最大判昭和61年6月11日)
- 事案(北方ジャーナル):公職選挙の候補者を批判する記事の出版を、名誉毀損を理由に事前に差し止められるかが争われた。
- 判旨:出版物に対する事前差止めは検閲には当たらないが「事前抑制」として原則許されず、例外的に許容される厳格な要件を示した。
- 出題上の意義:「事前抑制」「検閲」の区別、表現の自由の優越的地位が空欄候補。
効果的な判例学習の手順
- 重要判例の事案の概要を理解する(どんな事件か)
- 判旨の結論を確認する(合憲か違憲か、適法か違法か)
- 判旨の中のキーフレーズをマーカーで印をつける
- キーフレーズを隠して穴埋め形式で自己テストする
- 過去問で実際の出題形式に慣れる
この手順で特に重要なのが2の「結論」です。多肢選択式では結論を直接問わないことも多いのですが、結論(合憲/違憲、適法/違法)を知っていれば、空欄に入るのが「合憲を導く語」か「違憲を導く語」かが文脈から判断でき、ダミーをはじけます。たとえば違憲判決の判旨であれば、「必要かつ合理的」「著しく不合理」など、違法評価につながる語が入りやすくなります。
条文の穴埋め対策
条文問題の特徴
行政法の多肢選択式では、条文の重要な部分が空欄になることがあります。特に以下の法律の条文は頻出です。
- 行政事件訴訟法(取消訴訟の要件、原告適格、訴えの利益など)
- 行政手続法(聴聞、理由の提示、行政指導など)
- 行政不服審査法(審査請求の要件、審理員制度など)
条文対策のポイント
条文を一字一句暗記する必要はありませんが、法律用語・キーワードを正確に覚えることが重要です。
例えば、行政事件訴訟法第9条2項(原告適格の判断基準)であれば、以下のキーワードが出題対象になりやすいです。
- 「法律上の利益を有する者」
- 「当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく」
- 「当該法令の趣旨及び目的」
- 「当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質」
該当条文を正確に引用すると、次のとおりです。
裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。
― 行政事件訴訟法 第9条第2項
この条文は平成16年改正で追加されたもので、原告適格の判断資料を拡大した規定です。空欄になりやすいのは「文言のみによることなく」「趣旨及び目的」「利益の内容及び性質」といった、判断の指針を示す語句です。条文の趣旨(原告適格を広く認める方向で判断する)を理解しておくと、対概念のダミー(「文言のみによって」など)を排除できます。
行政法の頻出条文と空欄になりやすいキーワード
行政事件訴訟法第3条(抗告訴訟の定義)は、各訴訟類型の定義文がそのまま空欄になることがあります。
この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次号に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
― 行政事件訴訟法 第3条第2項
執行停止の要件も頻出です。平成16年改正で「回復の困難な損害」から「重大な損害」へと要件が緩和された点は、改正論点として押さえておきましょう。
処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止…をすることができる。
― 行政事件訴訟法 第25条第2項
条文学習の実践法
- 重要条文を音読する:耳から覚えることで記憶が定着しやすい
- 条文の穴埋めドリルを自作する:重要なキーワードを空欄にして繰り返し解く
- 条文の趣旨を理解する:なぜこの規定があるのかを理解すると、キーワードを思い出しやすくなる
20の選択肢からの絞り込みテクニック
多肢選択式では20個もの選択肢が提示されるため、一見すると難しく感じます。しかし、実際にはいくつかのテクニックを使うことで大幅に絞り込むことができます。
テクニック①:品詞で絞る
空欄の前後の文脈から、そこに入る語の品詞を推定できます。
- 空欄の直後に「する」「される」がある → 動詞の連用形やサ変名詞が入る
- 空欄の直後に「の」「に関する」がある → 名詞が入る
- 空欄の直後に「な」「的」がある → 形容動詞の語幹が入る
例えば、「(ア)な審査」という空欄があれば、20個の選択肢のうち形容動詞の語幹(「実質的」「合理的」「慎重」など)に該当するものだけに絞ることができます。
品詞による絞り込みは、判例も条文も知らない問題でこそ威力を発揮します。出題者は文法的に成立しない選択肢を必ず数個まぜているため、それらを機械的に除外するだけで20個が10個前後まで減ります。空欄の前後2〜3語を音読し、「ここに名詞が入るのか、述語が入るのか」を最初に判定する癖をつけましょう。
テクニック②:文脈から意味を推定する
空欄の前後の文章を丁寧に読むと、そこに入るべき語の意味がある程度推定できます。
- 対比構造に注目する:「Aではなく(ア)である」という文脈なら、Aの対概念が入る
- 言い換え表現に注目する:空欄の前後に同じ意味の別の表現がある場合、それがヒントになる
- 論理のつながりを追う:「したがって」「もっとも」「そして」などの接続表現から、空欄の内容を推測する
特に判例の判旨は「原則→例外」「目的→手段」という対比・対応の構造を持つことが多く、片方が空欄でも残り半分から逆算できます。たとえば「事前抑制は原則として許されないが、(イ)の場合には例外的に許容される」という文では、(イ)に「厳格かつ明確な要件を満たす」系の語が入ると推測できます。
テクニック③:選択肢のグルーピング
20個の選択肢を内容的にグループ分けすると、絞り込みがしやすくなります。
- 法律用語グループ:「取消訴訟」「無効等確認訴訟」「義務付け訴訟」など
- 要件・基準グループ:「合理性」「必要性」「相当性」など
- 権利・利益グループ:「財産権」「職業の自由」「表現の自由」など
空欄に入る語の種類(訴訟類型なのか、権利の種類なのか、要件なのか)を特定できれば、20個の選択肢のうち該当するグループの数個に候補を絞ることができます。
グルーピングの実践では、問題文を読む前に20個の選択肢を眺め、似た語を線でくくっておくと効率的です。出題者はしばしば、同じグループ内の紛らわしい語(例:「必要性」「相当性」「合理性」「妥当性」)を並べて受験者を迷わせます。どのグループの語が空欄に入るかさえ確定すれば、最後はグループ内の数語の比較に集中できます。
テクニック④:確実なものから先に埋める
4つの空欄すべてを順番に解く必要はありません。自信のある空欄から先に埋めていくのが効率的です。
- まず4つの空欄をざっと確認し、知識で即答できるものを埋める
- すでに使った選択肢番号を除外する(同じ番号は原則使わない)
- 残った選択肢の中から、次に自信のある空欄を埋める
- 最後に残った空欄は、消去法で候補を絞り込む
ポイント:多肢選択式では、同じ番号の選択肢を2つの空欄で重複して使うことは通常ありません。1つ埋めるごとに選択肢が1つ減るため、後の空欄ほど絞り込みやすくなります。
テクニック⑤:同一語の繰り返しに注目する
判例・条文では、同じ語が文章中で複数回登場することがあります。1つの空欄と別の箇所(空欄でない部分)に同じ語が入るべきと気づければ、後者を手がかりに前者を確定できます。たとえば、判旨の前半に「職業の自由」という語が明示されていれば、後半の空欄にも「職業の自由」が入る、という具合です。文章全体を一度通読し、繰り返されるキーワードに印をつけておきましょう。
多肢選択式では、4つの空欄すべてを正解しなければ得点にならない。
よくある誤解と失点パターン
多肢選択式で得点を取りこぼす受験者には、共通する誤解や行動パターンがあります。事前に知っておけば回避できます。
誤解①「判例を完璧に覚えないと解けない」
実際には、判旨を丸暗記していなくても、品詞・文脈・対比構造の分析で2〜3個は正解できる問題が多くあります。「知識が完璧でないから捨てる」という発想は最も損です。
誤解②「選択肢は1度しか使えないと決まっている」
原則として同じ番号は重複しませんが、これは「絶対のルール」として明記されているわけではありません。あくまで実務上の経験則として、まず重複しない前提で解き、矛盾が出たら見直す、という運用が安全です。
失点パターン①「難問に時間をかけすぎる」
20個から4つを選ぶ作業は、深追いすると無限に時間を溶かします。多肢選択式は3問で15分前後を目安にし、1問に5分以上かけそうなら部分点を確保して次へ進む判断が必要です。
失点パターン②「空欄を残す」
時間切れや「わからない」を理由に空欄を残すと、正解の可能性をゼロにします。残り時間がわずかでも、必ず全空欄に番号を記入しましょう。同じグループの未使用選択肢から選ぶだけでも、当たる確率は0ではありません。
失点パターン③「マークのズレ」
前述のとおり、ア・イ・ウ・エの転記ミスは致命的です。問題用紙にメモ→一括転記→照合、の手順を徹底しましょう。
科目別対策:憲法(問題41)
出題の特徴
憲法の多肢選択式は、人権分野の重要判例の判旨から出題されるのが定番パターンです。最高裁判所の判決文の一部が引用され、キーフレーズの部分が空欄になります。
重点的に対策すべき判例テーマ
政教分離の「目的効果基準」は超頻出
信教の自由・政教分離は、判旨に独特のキーフレーズが多く、多肢選択式で繰り返し問われています。津地鎮祭訴訟(最大判昭和52年7月13日)で示され、愛媛玉串料訴訟(最大判平成9年4月2日)で適用された「目的効果基準」がその核です。
憲法二〇条三項により禁止される宗教的活動とは…その行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうものと解すべきである。
― 最大判昭和52年7月13日(津地鎮祭訴訟)
ここで空欄になりやすいのは「目的」「効果」「援助、助長、促進」「圧迫、干渉」といった語です。愛媛玉串料訴訟ではこの基準を適用して県の公金支出を違憲としており、「結論が違憲」である点まで押さえると文脈判断がしやすくなります。
憲法対策の学習法
- 判例百選レベルの重要判例を30〜50件リストアップする
- 各判例の判旨からキーフレーズを抜き出す
- キーフレーズを穴埋め形式にして繰り返し確認する
- 最新の判例にも注目する(近年は新しい最高裁判決からの出題も増加傾向)
憲法分野の体系的な学習法は憲法の全体像と学習戦略/憲法を効率的に攻略する方法を解説も参考にしてください。表現の自由・法の下の平等・生存権といった頻出テーマの深掘りは各論記事で補強できます。
科目別対策:行政法(問題42・43)
出題の特徴
行政法の多肢選択式は、条文の穴埋めと判例の穴埋めの両方が出題されます。2問出題されるため、配点は16点と大きく、しっかり対策する価値があります。
条文系の頻出テーマ
判例系の頻出テーマ
行政法の判例では、以下のテーマからの出題が多い傾向にあります。
- 処分性:行政処分に該当するかどうかの判断基準
- 原告適格:取消訴訟を提起できる者の範囲
- 裁量権の逸脱・濫用:行政裁量の司法審査の基準
- 国家賠償法:公務員の違法行為と国の責任
行政法判例の「事案→判旨→意義」整理
処分性のリーディングケース(最判昭和39年10月29日・大田区ごみ焼却場事件)
行政処分(抗告訴訟の対象となる「処分」)の定義は、多肢選択式で判旨がそのまま引用されることがあります。
行政庁の処分とは…公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によつて、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
― 最判昭和39年10月29日(大田区ごみ焼却場設置事件)
空欄候補は「公権力の主体」「直接国民の権利義務を形成」「範囲を確定」など。処分性の有無を判断する基本フレーズとして必修です。
裁量審査(行訴法30条)
裁量処分に対する司法審査の枠組みは、条文と判例の双方から問われます。
行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。
― 行政事件訴訟法 第30条
「裁量権の範囲をこえ」「濫用」が空欄になりやすい語句です。裁量権の逸脱・濫用の審査基準(社会通念上著しく妥当を欠くか等)とあわせて整理しましょう。
国家賠償(国賠法1条1項)
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
― 国家賠償法 第1条第1項
「公権力の行使」「職務を行うについて」「故意又は過失」「違法」が要件として空欄になりやすい部分です。国賠法の詳細は国家賠償法1条の要件を完全整理/公権力の行使による賠償責任を解説で深掘りできます。
行政法対策の学習法
- 重要条文を繰り返し読む:特に行政事件訴訟法と行政手続法の主要条文
- 条文の穴埋めテストを自作する:キーワードを空欄にして反復練習
- 判例のキーフレーズを暗記カードにまとめる:通勤時間などのスキマ時間に確認
- 過去問の多肢選択式を繰り返し解く:出題パターンに慣れることが重要
行政事件訴訟の全体像は行政事件訴訟の基礎/取消訴訟を中心とした訴訟類型を解説、行政手続法は行政手続法の全体像/処分・行政指導・届出のルールを解説で体系的に整理できます。
行政事件訴訟法第30条は、裁量処分について「裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り」裁判所が取り消すことができると定めている。
配点効率から見た多肢選択式の重要性
多肢選択式がいかに効率の良い得点源であるかを、他の出題形式と比較してみましょう。
各形式の配点効率
多肢選択式は1問8点ですから、3問中2問を完答するだけで16点が得られます。これは択一式4問分に相当します。
また、多肢選択式は出題範囲が比較的限定されている(憲法の人権判例+行政法の条文・判例)ため、対策がしやすいという特徴があります。記述式ほど高度な表現力は不要で、あくまで適切な語句を選ぶ形式です。
戦略:多肢選択式3問で18点以上(4つの空欄のうち3つ以上を各問で正解)を安定的に取ることを目標にしましょう。これだけで合格ラインの180点のうち10%を確保できます。
学習資源の「使い回し」が効く
多肢選択式の最大のコストメリットは、専用の暗記をほとんど必要としない点にあります。憲法の人権判例も行政法の条文・判例も、択一式・記述式の対策と完全に重複します。つまり、択一式や記述式の勉強をしっかり進めれば、多肢選択式の素材知識は自動的に蓄積されます。あとは本記事の解法テクニックを上乗せするだけで、追加の学習負担はわずかです。これが「高効率」と言われる本当の理由です。
択一式の解法テクニックは5肢択一式を攻略する解答テクニック/消去法と難問の見極め方を解説、記述式は記述式問題の完全攻略ガイド/40字記述で部分点を取る書き方を解説を参照してください。3形式を横断的に対策することで、同じ判例・条文知識を最大限に活かせます。
多肢選択式の3問で合計24点中18点以上を得点することは、5肢択一式で4問以上正解することに相当する得点効果がある。
本番での時間配分と解答手順
多肢選択式は知識だけでなく、本番の立ち回りで差がつきます。試験全体(180分・60問)の中で、多肢選択式にどう時間を配分するかを設計しておきましょう。
全体スケジュールの中での位置づけ
行政書士試験は3時間で60問を解きます。多肢選択式3問には、合計15分前後を割り当てるのが一つの目安です。1問あたり5分で、内訳は「文章通読+選択肢のグルーピング1分」「確実な空欄を埋める2分」「残りを消去法で詰める2分」というイメージです。
1問内の解答手順(推奨フロー)
- 問題文を最後まで通読し、何の判例・条文かを把握する(結論・枠組みの当たりをつける)
- 20個の選択肢を眺め、品詞・意味でグルーピングする
- 知識で即答できる空欄から番号を埋める
- 使った番号を選択肢から消し、残りで次の空欄を詰める
- 最後の空欄は文脈・品詞・消去法で決め、必ず番号を入れる
- 問題用紙のメモ(ア=○、イ=○…)をマークシートに転記し、照合する
解く順番の工夫
多肢選択式を試験のどのタイミングで解くかは人によりますが、択一式の行政法を解いた直後など、関連知識が頭に残っているうちに行政法の問題42・43を処理すると効率的です。憲法の問題41も同様に、憲法の択一式とまとめて処理する戦略があります。文章理解の解法と時間配分は文章理解で満点を狙う読解テクニック/3問を確実に得点する解き方を解説も参考になります。
具体的な練習法
ステップ1:過去問を年度別に解く
まずは過去5〜10年分の多肢選択式の問題を解いてみましょう。以下の手順で取り組みます。
- 時間を計って解く(1問5分以内が目安)
- 解答後に判例・条文の出典を確認する
- 知らなかった判例・条文をノートにまとめる
- 1週間後に再度解いてみる
ステップ2:穴埋めドリルを自作する
過去問だけでは問題数が限られるため、自分で穴埋めドリルを作るのが効果的です。
- 判例集のキーフレーズにマーカーを引く
- マーカー部分を隠して穴埋め形式で解く
- 条文の重要キーワードを空欄にして確認する
自作ドリルでは、正解語だけでなく「紛らわしいダミー候補」も一緒に書き出すと本番に近い訓練になります。たとえば「合理的」を正解に設定したら、「相当」「妥当」「必要」を選択肢に並べ、なぜそれらが入らないのかを文脈で説明できるようにしておきましょう。
ステップ3:模擬試験で時間感覚を養う
本番と同じ条件で多肢選択式を解く練習も重要です。
- 3問連続で解く(15分以内が目標)
- わからない空欄は消去法で解く練習をする
- 時間切れでも必ず全空欄を埋める習慣をつける
まとめ|多肢選択式で差をつける
多肢選択式の攻略ポイントをまとめると、以下のとおりです。
- 出題形式を正確に理解する:20個の選択肢から4つの空欄を埋める、部分点あり
- 出題科目は固定的:憲法1問+行政法2問を前提に対策する
- 判例のキーフレーズを暗記する:丸暗記ではなく、重要フレーズと結論を重点的に
- 条文のキーワードを押さえる:行政事件訴訟法・行政手続法が最頻出
- 絞り込みテクニックを駆使する:品詞・文脈・グルーピング・確実なものから先に・同一語の繰り返し
- 部分点を確実に取る:完答できなくても1つでも多く正解する意識を持つ
- 配点効率を意識する:3問24点は費用対効果が非常に高く、専用暗記がほぼ不要
- 事務ミスを潰す:マークのズレや空欄放置という「もったいない失点」をなくす
多肢選択式は、対策すればするほど成果が出やすい分野です。判例と条文のキーフレーズをしっかり覚え、絞り込みテクニックを実践する。さらに本番の時間配分とマーク手順を固めておけば、3問中2問以上の完答は十分に達成可能です。択一式や記述式の対策と並行して、多肢選択式の対策にも十分な時間を割きましょう。
関連記事として、同じく解法テクニックが鍵となる5肢択一式を攻略する解答テクニック/消去法と難問の見極め方を解説、記述式問題の完全攻略ガイド/40字記述で部分点を取る書き方を解説、素材知識を支える憲法の全体像と学習戦略/憲法を効率的に攻略する方法を解説、行政事件訴訟の基礎/取消訴訟を中心とした訴訟類型を解説もあわせて学習を進めてください。