多肢選択式で確実に得点する攻略法
行政書士試験の多肢選択式(3問24点)の特徴と攻略法を解説。判例・条文の穴埋め対策、20の選択肢からの絞り込みテクニック、科目別の対策法を紹介します。
はじめに|多肢選択式は「高配点・高効率」の得点源
行政書士試験の多肢選択式は、全3問で合計24点を占めます。1問あたり8点という配点は、5肢択一式の1問4点と比べて2倍です。つまり、多肢選択式で1問正解することは、択一式2問分の価値があります。
多肢選択式は出題形式に慣れれば安定して得点しやすい分野です。にもかかわらず、「なんとなく難しそう」と敬遠して対策が手薄になっている受験者が少なくありません。
本記事では、多肢選択式の出題形式・傾向を正確に理解したうえで、確実に得点するための具体的なテクニックと学習法を解説します。
多肢選択式の出題形式を正確に理解する
基本ルール
多肢選択式の問題は、以下のような形式で出題されます。
- 長文の中に4つの空欄(ア・イ・ウ・エ)がある
- 20個の選択肢(1〜20)の中から、各空欄に当てはまるものを1つずつ選ぶ
- 1問につき4つの空欄×2点=8点
- 全3問で24点満点
問題文は、判例の判旨や条文の内容を引用・要約した文章であることがほとんどです。空欄には法律用語や判例のキーフレーズが入ります。
配点の仕組みと部分点
多肢選択式では、4つの空欄それぞれに2点ずつ配点されています。つまり、4つすべてを正解できなくても、1つ正解するごとに2点が得られます。
重要:白紙で提出すれば0点が確定しますが、4つの空欄すべてに何らかの番号を入れれば、部分点を得られる可能性があります。わからなくても必ず解答しましょう。
出題科目と傾向
多肢選択式の出題科目は例年ほぼ固定されています。
この出題パターンは近年安定しているため、憲法1問+行政法2問を前提に対策を進めるのが効率的です。
行政書士試験の多肢選択式は、30個の選択肢から4つの空欄に当てはまるものを選ぶ形式である。
判例の穴埋め対策
判例が出題される理由
多肢選択式で最も多いのは、最高裁判例の判旨を引用した穴埋め問題です。判例は行政書士試験において極めて重要な出題素材であり、特に多肢選択式では判例のキーフレーズがそのまま空欄になることが頻繁にあります。
キーフレーズの暗記法
判例対策のポイントは、判旨全体を丸暗記するのではなく、頻出のキーフレーズを正確に覚えることです。
例えば、薬事法違憲判決(最大判昭50.4.30)であれば、以下のようなキーフレーズが出題対象です。
- 「職業の自由に対する規制措置は、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容および制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで慎重に決定されなければならない」
- 「許可制は、単なる職業活動の内容および態様に対する規制を超えて、(ア)狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課する」
このように、判旨の中で法的に重要な意味を持つフレーズが空欄として出題されます。
効果的な判例学習の手順
- 重要判例の事案の概要を理解する(どんな事件か)
- 判旨の結論を確認する(合憲か違憲か、適法か違法か)
- 判旨の中のキーフレーズをマーカーで印をつける
- キーフレーズを隠して穴埋め形式で自己テストする
- 過去問で実際の出題形式に慣れる
条文の穴埋め対策
条文問題の特徴
行政法の多肢選択式では、条文の重要な部分が空欄になることがあります。特に以下の法律の条文は頻出です。
- 行政事件訴訟法(取消訴訟の要件、原告適格、訴えの利益など)
- 行政手続法(聴聞、理由の提示、行政指導など)
- 行政不服審査法(審査請求の要件、審理員制度など)
条文対策のポイント
条文を一字一句暗記する必要はありませんが、法律用語・キーワードを正確に覚えることが重要です。
例えば、行政事件訴訟法第9条2項(原告適格の判断基準)であれば、以下のキーワードが出題対象になりやすいです。
- 「法律上の利益を有する者」
- 「当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく」
- 「当該法令の趣旨及び目的」
- 「当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質」
条文学習の実践法
- 重要条文を音読する:耳から覚えることで記憶が定着しやすい
- 条文の穴埋めドリルを自作する:重要なキーワードを空欄にして繰り返し解く
- 条文の趣旨を理解する:なぜこの規定があるのかを理解すると、キーワードを思い出しやすくなる
20の選択肢からの絞り込みテクニック
多肢選択式では20個もの選択肢が提示されるため、一見すると難しく感じます。しかし、実際にはいくつかのテクニックを使うことで大幅に絞り込むことができます。
テクニック①:品詞で絞る
空欄の前後の文脈から、そこに入る語の品詞を推定できます。
- 空欄の直後に「する」「される」がある → 動詞の連用形やサ変名詞が入る
- 空欄の直後に「の」「に関する」がある → 名詞が入る
- 空欄の直後に「な」「的」がある → 形容動詞の語幹が入る
例えば、「(ア)な審査」という空欄があれば、20個の選択肢のうち形容動詞の語幹(「実質的」「合理的」「慎重」など)に該当するものだけに絞ることができます。
テクニック②:文脈から意味を推定する
空欄の前後の文章を丁寧に読むと、そこに入るべき語の意味がある程度推定できます。
- 対比構造に注目する:「Aではなく(ア)である」という文脈なら、Aの対概念が入る
- 言い換え表現に注目する:空欄の前後に同じ意味の別の表現がある場合、それがヒントになる
- 論理のつながりを追う:「したがって」「もっとも」「そして」などの接続表現から、空欄の内容を推測する
テクニック③:選択肢のグルーピング
20個の選択肢を内容的にグループ分けすると、絞り込みがしやすくなります。
- 法律用語グループ:「取消訴訟」「無効等確認訴訟」「義務付け訴訟」など
- 要件・基準グループ:「合理性」「必要性」「相当性」など
- 権利・利益グループ:「財産権」「職業の自由」「表現の自由」など
空欄に入る語の種類(訴訟類型なのか、権利の種類なのか、要件なのか)を特定できれば、20個の選択肢のうち該当するグループの数個に候補を絞ることができます。
テクニック④:確実なものから先に埋める
4つの空欄すべてを順番に解く必要はありません。自信のある空欄から先に埋めていくのが効率的です。
- まず4つの空欄をざっと確認し、知識で即答できるものを埋める
- すでに使った選択肢番号を除外する(同じ番号は原則使わない)
- 残った選択肢の中から、次に自信のある空欄を埋める
- 最後に残った空欄は、消去法で候補を絞り込む
ポイント:多肢選択式では、同じ番号の選択肢を2つの空欄で重複して使うことは通常ありません。1つ埋めるごとに選択肢が1つ減るため、後の空欄ほど絞り込みやすくなります。
多肢選択式では、4つの空欄すべてを正解しなければ得点にならない。
科目別対策:憲法(問題41)
出題の特徴
憲法の多肢選択式は、人権分野の重要判例の判旨から出題されるのが定番パターンです。最高裁判所の判決文の一部が引用され、キーフレーズの部分が空欄になります。
重点的に対策すべき判例テーマ
憲法対策の学習法
- 判例百選レベルの重要判例を30〜50件リストアップする
- 各判例の判旨からキーフレーズを抜き出す
- キーフレーズを穴埋め形式にして繰り返し確認する
- 最新の判例にも注目する(近年は新しい最高裁判決からの出題も増加傾向)
科目別対策:行政法(問題42・43)
出題の特徴
行政法の多肢選択式は、条文の穴埋めと判例の穴埋めの両方が出題されます。2問出題されるため、配点は16点と大きく、しっかり対策する価値があります。
条文系の頻出テーマ
判例系の頻出テーマ
行政法の判例では、以下のテーマからの出題が多い傾向にあります。
- 処分性:行政処分に該当するかどうかの判断基準
- 原告適格:取消訴訟を提起できる者の範囲
- 裁量権の逸脱・濫用:行政裁量の司法審査の基準
- 国家賠償法:公務員の違法行為と国の責任
行政法対策の学習法
- 重要条文を繰り返し読む:特に行政事件訴訟法と行政手続法の主要条文
- 条文の穴埋めテストを自作する:キーワードを空欄にして反復練習
- 判例のキーフレーズを暗記カードにまとめる:通勤時間などのスキマ時間に確認
- 過去問の多肢選択式を繰り返し解く:出題パターンに慣れることが重要
配点効率から見た多肢選択式の重要性
多肢選択式がいかに効率の良い得点源であるかを、他の出題形式と比較してみましょう。
各形式の配点効率
多肢選択式は1問8点ですから、3問中2問を完答するだけで16点が得られます。これは択一式4問分に相当します。
また、多肢選択式は出題範囲が比較的限定されている(憲法の人権判例+行政法の条文・判例)ため、対策がしやすいという特徴があります。記述式ほど高度な表現力は不要で、あくまで適切な語句を選ぶ形式です。
戦略:多肢選択式3問で18点以上(4つの空欄のうち3つ以上を各問で正解)を安定的に取ることを目標にしましょう。これだけで合格ラインの180点のうち10%を確保できます。
多肢選択式の3問で合計24点中18点以上を得点することは、5肢択一式で4問以上正解することに相当する得点効果がある。
具体的な練習法
ステップ1:過去問を年度別に解く
まずは過去5〜10年分の多肢選択式の問題を解いてみましょう。以下の手順で取り組みます。
- 時間を計って解く(1問5分以内が目安)
- 解答後に判例・条文の出典を確認する
- 知らなかった判例・条文をノートにまとめる
- 1週間後に再度解いてみる
ステップ2:穴埋めドリルを自作する
過去問だけでは問題数が限られるため、自分で穴埋めドリルを作るのが効果的です。
- 判例集のキーフレーズにマーカーを引く
- マーカー部分を隠して穴埋め形式で解く
- 条文の重要キーワードを空欄にして確認する
ステップ3:模擬試験で時間感覚を養う
本番と同じ条件で多肢選択式を解く練習も重要です。
- 3問連続で解く(15分以内が目標)
- わからない空欄は消去法で解く練習をする
- 時間切れでも必ず全空欄を埋める習慣をつける
まとめ|多肢選択式で差をつける
多肢選択式の攻略ポイントをまとめると、以下のとおりです。
- 出題形式を正確に理解する:20個の選択肢から4つの空欄を埋める、部分点あり
- 出題科目は固定的:憲法1問+行政法2問を前提に対策する
- 判例のキーフレーズを暗記する:丸暗記ではなく、重要フレーズを重点的に
- 条文のキーワードを押さえる:行政事件訴訟法・行政手続法が最頻出
- 絞り込みテクニックを駆使する:品詞・文脈・グルーピング・確実なものから先に
- 部分点を確実に取る:完答できなくても1つでも多く正解する意識を持つ
- 配点効率を意識する:3問24点は費用対効果が非常に高い
多肢選択式は、対策すればするほど成果が出やすい分野です。判例と条文のキーフレーズをしっかり覚え、絞り込みテクニックを実践する。この2つを徹底するだけで、3問中2問以上の完答は十分に達成可能です。択一式や記述式の対策と並行して、多肢選択式の対策にも十分な時間を割きましょう。