不利益処分と聴聞手続き|要件と流れを完全解説
行政手続法の不利益処分と聴聞手続きを完全解説。不利益処分の定義(2条4号)、処分基準(12条)、聴聞と弁明の振り分け(13条)、聴聞手続きの詳細(15条〜28条)まで、記述式対策にも対応した正確な条文知識を整理します。
行政手続法の不利益処分に関する規定(第3章、12条〜31条)は、行政書士試験の択一式・記述式の両方で出題される超重要分野です。特に聴聞手続きの詳細は記述式でも問われることがあり、条文の正確な理解が不可欠です。本記事では、不利益処分の定義から、聴聞と弁明の機会の付与の振り分け基準、聴聞手続きの流れまで、試験に必要な知識を体系的に解説します。
不利益処分の定義(2条4号)
不利益処分とは、行政庁が特定の者に対して不利益を課す処分をいいます。
行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。
― 行政手続法 第2条4号本文
不利益処分の4つの要素
不利益処分から除外されるもの(2条4号ただし書)
以下の処分は、不利益処分の定義から除外されます。
特にロの除外事由は重要です。申請に対する拒否処分は、名あて人にとって不利益ですが、「不利益処分」ではなく「申請に対する処分」として第2章が適用されます。
処分基準(12条)
処分基準に関する12条は、審査基準の5条との比較で出題されます。
行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。
― 行政手続法 第12条1項
行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
― 行政手続法 第12条2項
審査基準(5条)と処分基準(12条)の比較(最重要)
この比較表は、行政書士試験で最も出題頻度が高い論点の一つです。処分基準の設定・公表がいずれも努力義務である点は必ず暗記しましょう。
行政手続法12条1項により、行政庁は処分基準を定め、かつ公にしておかなければならない。○か×か。
聴聞と弁明の機会の付与の振り分け(13条)
不利益処分をする場合、行政庁はあらかじめ意見陳述のための手続を執らなければなりません。その手続として、聴聞と弁明の機会の付与の2種類があり、13条で振り分け基準が定められています。
行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、次の各号の区分に従い、この章の定めるところにより、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。
― 行政手続法 第13条1項
聴聞が必要な場合(13条1項1号)
以下の不利益処分をしようとする場合は、聴聞手続が必要です。
弁明の機会の付与が必要な場合(13条1項2号)
聴聞が必要な場合以外の不利益処分をしようとする場合は、弁明の機会の付与で足ります。
つまり、聴聞が原則ではなく、弁明の機会の付与が原則です。聴聞は、特に重大な不利益処分(許認可等の取消し、資格・地位のはく奪等)の場合にのみ必要とされます。
聴聞と弁明の機会の付与の比較
意見陳述手続の適用除外(13条2項)
以下の場合は、聴聞・弁明の機会の付与のいずれも不要です。
聴聞手続きの流れ
聴聞手続は、以下の流れで進行します。各段階の条文を正確に理解しましょう。
1. 聴聞の通知(15条)
行政庁は、聴聞を行うに当たっては、聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
― 行政手続法 第15条1項
通知すべき事項は以下のとおりです。
- 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項(15条1項1号)
- 不利益処分の原因となる事実(15条1項2号)
- 聴聞の期日及び場所(15条1項3号)
- 聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地(15条1項4号)
また、通知書には以下の教示事項を記載しなければなりません(15条2項)。
- 聴聞の期日に出頭して意見を述べ、及び証拠書類等を提出し、又は聴聞の期日への出頭に代えて陳述書及び証拠書類等を提出することができること
- 聴聞が終結するまでの間、不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができること
2. 代理人の選任(16条)
前条第一項の通知を受けた者(以下「当事者」という。)は、代理人を選任することができる。
― 行政手続法 第16条1項
当事者は代理人を選任して聴聞手続に参加させることができます。代理人は、本人のために聴聞に関する一切の行為をすることができます(16条3項)。
3. 参加人(17条)
第十九条の規定により聴聞を主宰する者(以下「主宰者」という。)は、必要があると認めるときは、当事者以外の者であって当該不利益処分の根拠となる法令に照らし当該不利益処分につき利害関係を有するものと認められる者(同条第二項第六号において「関係人」という。)に対し、当該聴聞に関する手続に参加することを求め、又は当該聴聞に関する手続に参加することを許可することができる。
― 行政手続法 第17条1項
参加人は主宰者の判断で認められるものであり、利害関係人が当然に参加できるわけではありません。
4. 文書等の閲覧(18条)
当事者及び当該不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人(以下この条及び第二十四条第三項において「当事者等」という。)は、聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時までの間、行政庁に対し、当該事案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。この場合において、行政庁は、第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことができない。
― 行政手続法 第18条1項
文書閲覧権の重要ポイント:
- 閲覧を求めることができるのは「当事者等」(当事者及び不利益処分により自己の利益を害される参加人)
- 閲覧の期間は「聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時まで」
- 行政庁が閲覧を拒むことができるのは「第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるとき」のみ
- 閲覧権は聴聞手続に特有の制度であり、弁明の機会の付与にはない
行政手続法上、弁明の機会の付与の手続においても、当事者は不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。○か×か。
聴聞の主宰者と聴聞の進行
聴聞の主宰者(19条)
聴聞は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰する。
― 行政手続法 第19条1項
主宰者になることができない者(19条2項):
- 当該聴聞の当事者又は参加人
- 当事者又は参加人の配偶者、四親等内の親族又は同居の親族
- 当事者又は参加人の代理人又は補佐人(過去にこれらであった者を含む)
- 当事者又は参加人の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人
- 当該不利益処分の根拠となる法令の規定に基づき当該不利益処分について審議を行う議を経て行うこととされている場合のその議に参加する者
- 関係人
聴聞の期日における審理(20条)
聴聞の期日における審理は、行政庁の職員が不利益処分の原因となる事実を聴聞の期日に出頭した者に対し説明した上で行われます(20条1項)。
当事者又は参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、及び証拠書類等を提出し、並びに主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができます(20条2項)。
当事者の不出頭の場合(20条3項・4項)
当事者又は参加人が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、陳述書又は証拠書類等も提出しない場合、主宰者は聴聞を終結することができます(20条3項前段により準用される15条3項の趣旨)。ただし、正当な理由がある場合には、主宰者は改めて期日を定めることになります。
聴聞調書と報告書(24条)
主宰者は、聴聞の審理の経過を記載した調書を作成し、当該調書において、不利益処分の原因となる事実に対する当事者等の主張に理由があるかどうかについての意見を記載しなければならない。
― 行政手続法 第24条1項
当事者等は、前項の調書及び前条第一項の報告書の閲覧を求めることができる。
― 行政手続法 第24条4項
主宰者は聴聞調書を作成し、当事者等の主張に理由があるかどうかの意見を記載します。行政庁は、この聴聞調書と報告書に十分に参酌して不利益処分の決定をしなければなりません(26条)。
聴聞の終結後の手続と不利益処分の決定
不利益処分の決定(26条)
行政庁は、不利益処分の決定をするときは、第二十四条第一項の調書の内容及び同条第三項の報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌してこれをしなければならない。
― 行政手続法 第26条
行政庁は聴聞調書・報告書の内容を「十分に参酌」しなければなりませんが、主宰者の意見に拘束されるわけではありません。最終的な処分の決定権限は行政庁にあります。
聴聞を経てされた不利益処分に対する不服申立ての制限(27条)
この法律の規定に基づき聴聞を経てされた不利益処分については、当事者及び参加人は、行政不服審査法による審査請求をすることができない。
― 行政手続法 第27条1項(2014年改正後は削除)
重要: 2014年(平成26年)の行政不服審査法の全部改正に伴い、旧27条2項の審査請求制限規定は削除されました。現行法では、聴聞を経てされた不利益処分についても審査請求が可能です。ただし、聴聞の再開については27条1項で規定されています。
不利益処分の理由の提示(14条)
行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
― 行政手続法 第14条1項
行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。
― 行政手続法 第14条2項
不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならない。
― 行政手続法 第14条3項
理由の提示に関する8条と14条の比較
試験での出題ポイント
択一式での頻出論点
- 審査基準と処分基準の義務の性質の比較: 設定・公表がそれぞれ法的義務か努力義務かを正確に区別する
- 聴聞と弁明の機会の付与の振り分け基準: 13条1項1号イ〜ニに該当するものが聴聞、それ以外が弁明
- 文書閲覧権の有無: 聴聞にはあり、弁明の機会の付与にはない
- 聴聞の主宰者の欠格事由: 19条2項の各号を正確に覚える
- 理由の提示: 8条と14条の比較、特に例外規定の違い
記述式での出題可能性
記述式では、以下のようなパターンが想定されます。
- 「行政庁がAに対して営業許可の取消処分をしようとする場合、行政手続法上どのような手続を執らなければならないか。40字程度で述べよ。」
- 解答例: 許認可等の取消しは聴聞が必要であり、聴聞の期日までに相当な期間をおいて書面により通知しなければならない。
- 「不利益処分をする場合の処分基準の設定・公表義務について、審査基準と対比して40字程度で述べよ。」
- 解答例: 審査基準の設定・公表は法的義務であるのに対し、処分基準の設定・公表はいずれも努力義務にとどまる。
行政手続法13条1項1号により、許認可等を取り消す不利益処分をしようとする場合は、弁明の機会の付与ではなく聴聞を行わなければならない。○か×か。
まとめ
不利益処分と聴聞手続きに関する重要ポイントを整理します。
- 不利益処分の定義: 行政庁が法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に義務を課し又は権利を制限する処分(2条4号)。申請拒否処分は不利益処分に該当しない
- 処分基準: 設定・公表ともに努力義務(12条1項)。審査基準(5条)が法的義務であるのと対比する
- 聴聞と弁明の振り分け: 許認可等の取消し・資格のはく奪等は聴聞(13条1項1号)、それ以外は弁明の機会の付与(13条1項2号)
- 聴聞の通知: 聴聞の期日までに相当な期間をおいて書面で通知(15条1項)。予定される処分の内容、原因事実、期日・場所等を記載
- 文書閲覧権: 聴聞手続にのみ認められ、弁明の機会の付与にはない(18条)
- 聴聞調書・報告書: 行政庁は十分に参酌するが拘束はされない(26条)
- 理由の提示: 不利益処分をする場合、処分と同時に理由を示す(14条1項)。差し迫った必要がある場合は事後でも可
聴聞手続は条文数が多く、15条〜28条の各規定の正確な理解が求められます。特に13条の振り分け基準と18条の文書閲覧権は必ず覚えましょう。