(公開 2026/01/17) / 行政法

行政計画と計画裁量|土地利用規制との関係

行政計画の意義・種類、計画裁量の法理、土地利用計画の仕組みを解説。小田急高架訴訟等の重要判例とともに、行政書士試験で問われるポイントを体系的に整理します。

はじめに|行政計画は現代行政の要

現代の行政活動は、個別の処分を行うだけでなく、将来の目標を設定し、それを実現するための総合的な計画を策定することによって遂行されています。都市計画、環境基本計画、国土利用計画など、行政計画は私たちの生活に深く関わっています。

行政書士試験では、行政計画の意義と種類、計画裁量の概念、計画と処分性の関係、そして土地利用規制における行政計画の位置づけが問われます。特に計画裁量に関する判例は重要な出題対象です。

本記事では、行政計画の基本概念を整理した上で、計画裁量の法理と重要判例を解説します。読み進める際は、(1) 行政計画は「行政の行為形式の一つ」であり処分とは異なること、(2) 計画には広い裁量(計画裁量)が認められること、(3) しかし計画の種類によって処分性の有無が分かれること、という3つの軸を意識すると、知識が整理しやすくなります。

行政計画は、行政行為(行政処分)・行政立法・行政契約・行政指導・行政上の強制措置などと並ぶ「行政の行為形式」の一つとして位置づけられます。行政計画固有の論点は、(1) 計画裁量という特殊な裁量論、(2) 計画の処分性、(3) 計画策定手続の3つに集約されると考えてよいでしょう。

行政計画の意義

行政計画とは

行政計画とは、行政主体が一定の公の目的のために目標を設定し、その目標を達成するための手段を総合的に提示する行為をいいます。

行政計画は、複数の政策目標を総合的に調整し、長期的・体系的な視点から行政活動の方向性を定めるものであり、個別の処分とは異なる特徴を持ちます。

行政計画には、行政行為のような統一的な定義規定を置いた一般法は存在しません。「行政計画」という言葉自体は講学上(学問上)の概念であり、実定法上は「都市計画」「土地区画整理事業計画」「環境基本計画」など個別の名称で現れます。試験では、こうした個別の計画が「行政計画の一種である」という前提で出題されるため、抽象的な定義と具体例を結びつけて押さえておくことが重要です。

行政計画の機能

行政計画が現代行政で多用される背景には、次のような機能があります。

  • 目標設定機能: 将来達成すべき到達点(都市像・環境目標など)を明示する
  • 手段の総合調整機能: 個別バラバラの施策を体系的に統合し、相互の整合性を確保する
  • 誘導・指針機能: 国民や下位行政機関の行動を一定方向へ誘導する
  • 予測可能性の付与機能: 将来の規制内容を事前に示し、私人の活動の見通しを立てやすくする

行政計画の特徴

  1. 将来志向性: 将来の目標を設定し、その実現に向けた方策を定める
  2. 総合性: 複数の政策目標を総合的に調整する
  3. 広範な裁量: 専門技術的判断と政策的判断が複合的に必要
  4. 多様な法的効果: 拘束的な計画から指針的な計画まで、法的効果の程度はさまざま

これらの特徴のうち、試験で特に問われるのは「3 広範な裁量」と「4 多様な法的効果」です。前者は計画裁量論につながり、後者は処分性の有無の判断につながります。

行政計画の種類

行政計画は分類の視点によって複数の切り口があります。試験では、それぞれの分類軸が混同しやすいため、下表で整理しておきましょう。

分類の軸区分具体例ポイント法的拘束力拘束的計画都市計画(用途地域指定等)、土地区画整理事業計画国民の権利義務に影響法的拘束力非拘束的計画各種基本計画、実施計画内部指針にとどまる根拠の有無法定計画都市計画、環境基本計画法律に根拠あり根拠の有無非法定計画行政内部の指針計画法律の根拠によらない階層構造上位計画国土利用計画(全国計画)下位計画を拘束階層構造下位計画国土利用計画(都道府県・市町村計画)上位計画に適合

拘束的計画と非拘束的計画

拘束的計画(外部的効力を持つ計画): 計画の名宛人や利害関係者に法的拘束力を及ぼす計画。

  • 都市計画: 都市計画法に基づく用途地域の指定、都市施設の決定等
  • 土地区画整理事業計画: 土地区画整理法に基づく事業計画

非拘束的計画(内部的計画・指針的計画): 行政機関の内部指針にとどまり、直接には国民に法的拘束力を及ぼさない計画。

  • 基本計画: 各種基本法に基づく基本計画
  • 実施計画: 行政機関の事業実施のための内部計画

拘束的計画か非拘束的計画かの区別は、後述する処分性の判断に直結します。もっとも、拘束的計画であっても直ちに処分性が認められるわけではない点に注意が必要です(用途地域の指定は拘束的計画に近い性質を持ちつつ処分性が否定されています)。「拘束的=処分性あり」と短絡しないようにしましょう。

法定計画と非法定計画

法定計画: 法律に根拠を持つ計画(都市計画、環境基本計画など)

非法定計画: 法律の根拠によらず、行政の内部的指針として策定される計画

国民の権利を制限したり義務を課したりする拘束的計画については、法律の根拠(法律の留保)が必要と解されています。一方、行政内部の指針にとどまる非拘束的計画については、必ずしも個別の法律の根拠を要しないと考えられています。

上位計画と下位計画

行政計画は階層構造を持つことがあります。

  • 全国計画: 国土利用計画(全国計画)
  • 都道府県計画: 国土利用計画(都道府県計画)
  • 市町村計画: 国土利用計画(市町村計画)

下位計画は上位計画に適合するように定められなければなりません。この適合義務によって、国レベルから市町村レベルまでの計画体系の整合性が確保されています。

計画裁量の法理

計画裁量とは

計画裁量とは、行政庁が行政計画を策定する際に認められる広範な裁量のことです。行政計画は、将来予測に基づく総合的・専門技術的判断が必要であるため、一般の行政行為と比較してより広い裁量が認められます。

通常の行政裁量が「法律の要件・効果のどこに裁量があるか」という枠組みで論じられるのに対し、計画裁量は「目標の設定」から「手段の選択」まで判断の幅が極めて広く、しかも考慮すべき要素が多元的である点に特徴があります。この点で計画裁量は「最も広い裁量」と説明されることがあります。

計画裁量が広い理由

  1. 多様な利益の総合調整: 行政計画は複数の公益と私益を総合的に調整する必要がある
  2. 将来予測の必要性: 将来の社会経済状況を予測した上で計画を策定する必要がある
  3. 専門技術的判断: 都市工学、環境科学等の専門知識に基づく判断が必要
  4. 政策的判断: どのような都市像を目指すかといった政策判断が含まれる

計画裁量の統制

計画裁量が広いといっても、裁量権の逸脱・濫用があれば違法となります。計画裁量の統制に関しては、ドイツ法の影響を受けた衡量命令(Abwagungsgebot)の法理が議論されています。

衡量命令とは、行政計画の策定において、関係する諸利益を正当に衡量(比較衡量)しなければならないという原則です。衡量に瑕疵がある場合(衡量の欠落、衡量の不足、衡量の誤認、衡量の不均衡)には、計画は違法となります。

  1. 衡量の欠落: 考慮すべき事項をまったく考慮しなかった場合
  2. 衡量の不足: 考慮すべき事項の評価が不十分であった場合
  3. 衡量の誤認: 事実認定に誤りがあった場合
  4. 衡量の不均衡: 諸利益間の比較衡量が著しく均衡を欠く場合

衡量命令の法理は、結論の当否そのものを審査するのではなく、計画策定に至る「判断の過程」に着目して統制する点に特徴があります。これは、後述する小田急高架訴訟が採用した判断過程審査と発想を同じくするものです。広い裁量を尊重しつつ、その判断の「やり方」が合理的だったかを審査することで、計画裁量に対する司法統制を実効化しようとする枠組みだと理解しておきましょう。

行政裁量一般の統制方法(社会観念審査・判断過程審査・裁量基準の合理性など)については、行政裁量とは|裁量権の逸脱・濫用の判断基準で体系的に解説しています。計画裁量はその応用として位置づけられます。

行政計画と処分性

処分性の問題

行政計画に取消訴訟等の抗告訴訟で争えるかどうか(処分性の有無)は、行政法上の重要問題です。

取消訴訟の対象となる「処分」とは、判例上「公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているもの」(最判昭和39年10月29日・大田区ごみ焼却場事件の定式)を指します。行政計画は将来の目標と手段を示すにとどまることが多く、それ自体が直接国民の権利義務を変動させるとはいえない場合が多いため、原則として処分性は認められにくいといえます。

しかし、計画の内容や法的効果によっては、特定の私人の法的地位に直接的・具体的な影響を及ぼすものがあり、その場合には例外的に処分性が肯定されます。試験では、「どの計画に処分性があり、どの計画に処分性がないか」を判例ベースで正確に押さえることが得点に直結します。

取消訴訟の対象や訴訟要件の全体像は行政事件訴訟法の基本|訴訟類型と取消訴訟の要件で確認しておくと、計画の処分性の位置づけが理解しやすくなります。

用途地域の指定と処分性

都市計画法に基づく用途地域の指定について、最高裁は処分性を否定しています。

最判昭和57年4月22日(盛岡用途地域事件): 用途地域の指定は、不特定多数の者に対して一般的・抽象的な制限を課すものであり、個人の権利義務に対して直接的・具体的な影響を及ぼすものではないとして、処分性を否定しました。

都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、(中略)、当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。
― 最判昭和57年4月22日(盛岡用途地域事件)

用途地域の指定によって建築物の用途・容積率等に制限が生じますが、その効果は地域内のすべての者に対して一律・抽象的に及ぶものであり、特定個人の権利を直接侵害するものではない、というのがその理由です。用途地域指定の違法は、後に具体的な建築確認の拒否処分などがされた段階で、その処分を争う中で主張すればよいと考えられています。

土地区画整理事業計画と処分性

一方、土地区画整理事業の事業計画については、判例の変遷がありました。

旧判例(最大判昭和41年2月23日・青写真判決): 事業計画は「いわば当該土地区画整理事業の青写真たる性質を有するにすぎない」として処分性を否定。事業計画はあくまで事業の青写真(設計図)にすぎず、これにより権利制限が生じても付随的効果にとどまるとされ、権利救済は後続の換地処分等の段階で争えば足りるとされていました。

新判例(最大判平成20年9月10日): 判例を変更し、土地区画整理事業の事業計画の決定に処分性を肯定しました。

施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることによって、(中略)建築行為等の制限を課せられるなど、その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり、事業計画の決定に伴う法的効果が一般的、抽象的なものにすぎないということはできない。
― 最大判平成20年9月10日

この判例変更は、行政計画の処分性に関する最も重要な判例の一つです。新判例が処分性を肯定した実質的な理由として、(1) 事業計画決定により建築行為等の制限という法的効果が具体的に生じること、(2) 後続の換地処分等の段階まで争訟を待つと、すでに事業が進行し権利者が不利益を受けるおそれがあること(実効的な権利救済の必要性)が挙げられます。とりわけ、補足意見では行政事件訴訟法改正の趣旨(救済の実効性確保)を踏まえた判断であることが示唆されており、処分性概念の柔軟化を象徴する判決として位置づけられます。

土地区画整理事業計画の処分性については、事案の詳細・判旨・学説上の評価を土地区画整理事業計画事件|計画の処分性を解説で詳しく扱っています。

計画の処分性 比較整理表

計画・行為判例処分性理由の要点用途地域の指定最判昭和57年4月22日(盛岡)否定不特定多数への一般的・抽象的制限土地区画整理事業計画(旧)最大判昭和41年2月23日(青写真)否定事業の青写真にすぎない土地区画整理事業計画(新)最大判平成20年9月10日肯定建築制限等で法的地位に直接的影響/救済の実効性

試験では、「用途地域=処分性なし」「土地区画整理事業計画=平成20年判決で処分性あり(判例変更)」という対比が鉄板の出題パターンです。両者を取り違えないように、セットで暗記しましょう。

小田急高架訴訟|最大判平成17年12月7日

事案の概要

小田急小田原線の連続立体交差化事業に関する都市計画事業の認可について、沿線住民が取消しを求めた事件です。

判決のポイント

原告適格の拡大: 最高裁大法廷は、都市計画事業の認可の取消しを求める原告適格を、事業地の周辺に居住する住民にも認めました。騒音、振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は原告適格を有するとしました。

この判断にあたり、最高裁は2004年(平成16年)改正で新設された行政事件訴訟法第9条第2項を適用しました。同項は、処分の相手方以外の第三者の原告適格を判断する際に、関係法令の趣旨・目的や被侵害利益の内容・性質等を考慮すべきことを定めた規定です。

裁判所は、(中略)当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し、(後略)
― 行政事件訴訟法 第9条第2項

裁量審査の方法: 都市計画に関する裁量について、最高裁は以下のように判示しました。

裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては、当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として、その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である。
― 最大判平成17年12月7日(小田急高架訴訟)

判断過程審査

小田急高架訴訟判決は、計画裁量の統制方法として判断過程審査の手法を採用しました。これは、結論の当否を直接審査するのではなく、判断に至る過程(考慮事項、事実認定、評価の合理性)を審査する手法です。

判旨をかみくだくと、計画が違法となるのは次の場合に限られます。

  1. 基礎とされた重要な事実に誤認があるなど、重要な事実の基礎を欠く場合
  2. 事実に対する評価が明らかに合理性を欠く場合
  3. 考慮すべき事情を考慮しないなど、判断過程に看過しがたい過誤・欠落があり、内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合

この審査手法は、考慮事項に着目する点で衡量命令の法理と共通します。広範な計画裁量を尊重しつつも、判断の「過程」に着目することで一定の司法統制を及ぼす、というバランスを取った判断枠組みだと理解しておきましょう。

なお、この事件は原告適格論の重要判例でもあります。原告適格の判断枠組みの詳細は小田急高架化訴訟|原告適格の判断枠組みを解説、原告適格の一般論は原告適格の判断基準|法律上の利益を有する者とはで扱っています。

小田急訴訟の2つの顔(整理)

論点内容関連条文・キーワード原告適格騒音・振動等で著しい被害を受けるおそれのある周辺住民に肯定行訴法第9条第2項裁量審査計画裁量について判断過程審査を採用社会通念上著しく妥当性を欠く場合に違法

小田急訴訟は「原告適格」と「計画裁量(裁量審査)」の双方で頻出する判例です。どちらの論点で問われているのかを問題文から見極める意識を持ちましょう。

都市計画と土地利用規制

都市計画法の体系

都市計画法は、土地利用に関する計画的規制の中核をなす法律です。

都市計画区域: 都市計画を策定する対象となる区域

  • 市街化区域: すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域
  • 市街化調整区域: 市街化を抑制すべき区域

この市街化区域と市街化調整区域の区分を「区域区分(線引き)」といいます。

用途地域: 市街化区域内で、建築物の用途に関する制限を定める地域(住居系・商業系・工業系の13種類)

開発許可制度

都市計画法第29条は、一定規模以上の開発行為を行う場合に、都道府県知事等の開発許可を受けることを義務づけています。開発許可制度は、無秩序な市街化(スプロール化)を防止し、計画的な市街地形成を図るための中心的な手段です。市街化調整区域では、開発が原則として強く抑制されます。

計画制限(建築行為等の制限)

都市計画事業の認可・承認がされると、施行地区内では都道府県知事等の許可を受けなければ建築物の建築等ができなくなります(都市計画法第65条)。この建築制限こそが、土地区画整理事業計画の処分性肯定(平成20年判決)を支えた「法的地位への直接的影響」の具体的中身です。計画が「単なる青写真」ではなく現実の権利制限を生じさせる点が、処分性肯定の鍵となったことを意識しておきましょう。

行政計画の策定手続き

計画策定の手続的統制

行政手続法は行政計画の策定手続きについて一般的な規定を置いていません。計画の策定手続きは各個別法で定められています。

これは試験で繰り返し問われる重要ポイントです。行政手続法が一般的規定を定めているのは、(1) 申請に対する処分、(2) 不利益処分、(3) 行政指導、(4) 届出、(5) 命令等を定める手続(意見公募手続=パブリックコメント)の5類型であり、「行政計画の策定手続」は含まれていません。「行政計画にも行政手続法の一般規定がある」という記述は誤りです。

もっとも、計画裁量は実体的統制が難しいため、策定過程における手続的統制(住民参加・意見聴取等)が重要な意味を持つと指摘されています。手続を通じて多様な利益を計画に反映させることが、衡量命令の実質的な担保になるという発想です。

都市計画の策定手続き

都市計画法は、以下のような手続きを定めています。

  1. 公聴会の開催: 住民の意見を反映させるための公聴会等の開催(都市計画法第16条)
  2. 都市計画案の縦覧: 都市計画の案を2週間公衆の縦覧に供する(都市計画法第17条)
  3. 意見書の提出: 縦覧期間中に意見書を提出できる
  4. 都市計画審議会への付議: 都道府県都市計画審議会又は市町村都市計画審議会の議を経る

これらの手続は、住民参加と専門的・第三者的チェック(審議会)を組み合わせることで、計画裁量の適正な行使を手続面から担保するものといえます。

条文・概念の趣旨整理

ここまで登場した主要な条文・概念の趣旨を、試験対策の観点から整理します。

条文・概念趣旨・ポイント行訴法第3条第2項(取消訴訟)「処分」=公権力の行使に当たる行為。計画が処分に当たるかが争点行訴法第9条第2項第三者の原告適格の判断方法。小田急訴訟で適用都市計画法第65条都市計画事業認可後の建築制限。計画の法的効果の根拠衡量命令諸利益を正当に衡量すべき原則。計画裁量の手続的統制判断過程審査判断過程の合理性を審査。社会観念審査と対比される

頻出論点・よくある誤解

行政計画は理解があいまいになりやすく、選択肢で引っかけが多い分野です。代表的な誤りパターンを押さえておきましょう。

  • 誤解1:「拘束的計画であれば必ず処分性が認められる」→ 誤り。用途地域の指定は拘束的な性質を持ちつつ処分性が否定されています(昭和57年判決)。
  • 誤解2:「行政手続法に計画策定手続の一般規定がある」→ 誤り。一般規定はなく、個別法に委ねられています。
  • 誤解3:「土地区画整理事業計画は青写真判決により処分性が否定されたままである」→ 誤り。平成20年大法廷判決で判例変更され、処分性が肯定されています。
  • 誤解4:「小田急訴訟は原告適格を否定した判決である」→ 誤り。周辺住民の原告適格を肯定した判決です。
  • 誤解5:「計画裁量は通常の行政裁量より狭い」→ 誤り。将来予測・総合調整を要するため、むしろ広い裁量が認められます。

過去問で問われた角度

  • 行政計画の意義・分類(拘束的/非拘束的、法定/非法定)の正誤
  • 計画裁量が広く認められる理由とその統制方法(衡量命令・判断過程審査)
  • 用途地域指定と土地区画整理事業計画の処分性の対比(判例変更の有無)
  • 小田急訴訟における原告適格と裁量審査の双方
  • 行政手続法に計画策定手続の一般規定がないこと

関連論点

行政計画の理解を深めるには、隣接分野との関係を押さえると効果的です。

  • 行政行為との違い: 行政計画は将来の目標・手段を総合的に示すもので、原則として直接の法的効果を持ちません。個別の法的効果は、計画に基づく後続の処分(建築確認、開発許可、換地処分等)によって生じるのが原則です。行政行為の体系は行政行為とは|種類・効力・瑕疵を体系的に解説を参照してください。
  • 計画担保責任(計画変更と信頼保護): 行政計画を信頼して投資等を行った私人が、計画の変更により損害を被った場合の救済(損害賠償等)が議論されます。最判昭和56年1月27日(宜野座村工場誘致事件)は、一定の場合に地方公共団体の損害賠償責任を認めうるとした判例として知られます。
  • 処分性の拡大傾向: 平成20年判決のほか、登録免許税の還付に関する通知や病院開設中止勧告など、近年の判例は処分性概念を柔軟に拡大する傾向にあります。処分性論全体は行政事件訴訟法の基本|訴訟類型と取消訴訟の要件とあわせて確認すると体系的に理解できます。
確認問題

都市計画法に基づく用途地域の指定について、最高裁は処分性を肯定している。

○ 正しい × 誤り
解説
最判昭和57年4月22日(盛岡用途地域事件)は、用途地域の指定は不特定多数の者に対する一般的抽象的な制限にすぎないとして、処分性を否定しています。なお、土地区画整理事業の事業計画については、最大判平成20年9月10日で処分性が肯定されています。
確認問題

最大判平成20年9月10日は、土地区画整理事業の事業計画の決定について処分性を肯定し、従来の判例(いわゆる青写真判決)を変更した。

○ 正しい × 誤り
解説
最大判平成20年9月10日は、土地区画整理事業の事業計画の決定により施行地区内の宅地所有者等の法的地位に直接的な影響が生ずるとして処分性を肯定し、いわゆる青写真判決(最大判昭和41年2月23日)を変更しました。
確認問題

行政手続法には、行政計画の策定手続きに関する一般的な規定が設けられている。

○ 正しい × 誤り
解説
行政手続法は、処分・行政指導・届出・命令等制定手続に関する規定を置いていますが、行政計画の策定手続きに関する一般的な規定は設けられていません。計画の策定手続きは、都市計画法等の各個別法で定められています。
確認問題

小田急高架訴訟(最大判平成17年12月7日)で、最高裁は計画裁量の統制方法として、判断の過程に着目する判断過程審査の手法を採用した。

○ 正しい × 誤り
解説
最大判平成17年12月7日は、重要な事実の基礎を欠く場合や、事実に対する評価が明らかに合理性を欠く場合、考慮すべき事情を考慮しないこと等により内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合に限り違法となるとして、判断過程に着目する判断過程審査の枠組みを採用しました。
確認問題

計画裁量は、将来予測や諸利益の総合調整を要するため、一般の行政行為における裁量よりも狭く解されている。

○ 正しい × 誤り
解説
計画裁量は、将来予測に基づく総合的・専門技術的判断や多様な利益の総合調整を要するため、一般の行政行為と比較してより広い裁量が認められると解されています。「狭く解されている」とする点が誤りです。

試験での出題ポイント

  1. 計画裁量は広範: 総合的・専門技術的判断が必要なため
  2. 用途地域の指定に処分性なし: 一般的・抽象的な制限にすぎない(昭和57年判決)
  3. 土地区画整理事業計画に処分性あり: 青写真判決の変更(平成20年大法廷判決)
  4. 小田急判決の判断過程審査: 裁量の統制方法として重要。あわせて原告適格(行訴法第9条第2項)も頻出
  5. 行政手続法に計画の策定手続きの一般規定なし: 個別法に委ねられている
  6. 衡量命令の法理: 計画裁量の統制法理(衡量の欠落・不足・誤認・不均衡)
  7. 拘束的計画≠当然に処分性あり: 拘束的か否かと処分性の有無は別問題

まとめ

行政計画は、将来の目標を設定し手段を総合的に提示する行政活動であり、広範な計画裁量が認められます。計画裁量の統制には衡量命令の法理や判断過程審査が用いられます。

行政計画の処分性については、用途地域の指定は否定(昭和57年判決)される一方、土地区画整理事業の事業計画の決定は肯定(平成20年大法廷判決)されるなど、計画の種類によって結論が異なります。「拘束的計画だから処分性がある」と短絡せず、判例ごとの結論を正確に押さえることが重要です。

小田急高架訴訟(平成17年大法廷判決)は、計画裁量の審査方法として判断過程審査を採用し、あわせて周辺住民の原告適格を肯定した重要判例です。計画裁量の広さと統制方法、処分性に関する判例の立場を正確に理解しておきましょう。

行政計画は、裁量論・処分性・原告適格・行政手続法といった行政法の主要論点が交差する分野です。関連記事として、計画の処分性を扱う土地区画整理事業計画事件|計画の処分性を解説、裁量の統制を扱う行政裁量とは|裁量権の逸脱・濫用の判断基準、訴訟要件全体を扱う行政事件訴訟法の基本|訴訟類型と取消訴訟の要件、原告適格を扱う原告適格の判断基準|法律上の利益を有する者とはもあわせて確認し、横断的に理解を固めておきましょう。

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