行政書士法の基礎知識|業務範囲と義務を整理
行政書士法の基礎知識を試験向けに解説。行政書士の業務範囲(独占業務・非独占業務)、登録・届出、守秘義務をはじめとする行政書士の義務、懲戒処分の種類と手続を体系的に整理します。
はじめに|行政書士法は意外と出題される
行政書士法は、行政書士の資格・業務・義務等を定めた法律です。行政書士試験では一般知識の分野から出題されることがあり、行政書士を目指す受験生として知っておくべき基本知識です。
本記事では、行政書士法の目的、業務範囲、登録制度、行政書士の義務、懲戒処分について体系的に整理します。
行政書士法の目的
この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与し、あわせて、国民の利便に資することを目的とする。 ― 行政書士法 第1条
行政書士法は、行政に関する手続の円滑な実施と国民の利便を目的としています。行政書士は、行政手続の専門家として、国民と行政機関の間をつなぐ役割を果たしています。
行政書士の資格
行政書士となる資格を有する者
行政書士となる資格を有する者は、以下のいずれかに該当する者です(行政書士法2条)。
欠格事由
以下のいずれかに該当する者は、行政書士となることができません(行政書士法2条の2)。
- 未成年者
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなってから3年を経過しない者
- 公務員で懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から3年を経過しない者
- 行政書士の登録の取消しの処分を受け、当該処分の日から3年を経過しない者
- 行政書士法等に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなってから3年を経過しない者
- 懲戒処分により弁護士・税理士等の業務を停止された者で、現にその処分を受けているもの
行政書士の業務
独占業務(1条の2)
行政書士の独占業務は、以下のとおりです。
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(中略)その他権利義務又は事実証明に関する書類(中略)を作成することを業とする。 ― 行政書士法 第1条の2第1項
他士業との関係
行政書士の独占業務には例外があり、他の法律で制限されている業務は行政書士の業務から除外されます。
たとえば、登記申請書の作成は司法書士の独占業務であり、税務申告書の作成は税理士の独占業務であるため、行政書士がこれらの業務を行うことはできません。
非独占業務(1条の3)
行政書士は、独占業務のほかに以下の業務を行うことができます。これらは独占業務ではないため、行政書士でない者が行っても処罰されません。
特定行政書士
特定行政書士とは、行政書士のうち、所定の研修を修了し、考査に合格した者をいいます。特定行政書士は、行政書士が作成した書類に係る許認可等に関して、行政庁に対する不服申立ての手続の代理を行うことができます。
通常の行政書士は不服申立ての代理を行うことはできません。
登録
登録の手続
行政書士となるには、日本行政書士会連合会の行政書士名簿に登録を受けなければなりません(行政書士法6条)。
登録の流れは以下のとおりです。
- 事務所を設けようとする都道府県の行政書士会を経由して申請
- 日本行政書士会連合会が登録を行う
- 登録を受けた者は、当該都道府県の行政書士会の会員となる
登録の拒否
日本行政書士会連合会は、以下の場合に登録を拒否しなければなりません。
- 欠格事由に該当する場合
- 心身の故障により行政書士の業務を行うことができない者
また、以下の場合は登録を拒否することができます(裁量的拒否)。
- 行政書士の信用又は品位を害するおそれがある者
- その他登録が適当でないと認められる者
登録の取消し
日本行政書士会連合会は、以下の場合に登録を取り消さなければなりません。
- 欠格事由に該当するに至った場合
- 行政書士が死亡した場合
- 行政書士が廃業届を提出した場合
行政書士の義務
守秘義務
行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱った事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなった後も、また同様とする。 ― 行政書士法 第12条
守秘義務は、行政書士にとって最も重要な義務の一つです。以下の点が特に重要です。
- 「正当な理由」がなければ漏らしてはならない: 法令に基づく場合等が正当な理由に当たる
- 退職後も継続: 行政書士でなくなった後も守秘義務は存続する
- 違反には罰則: 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(行政書士法22条)
その他の義務
事務所に関する規制
- 行政書士は、2以上の事務所を設けてはなりません
- 行政書士が事務所を移転した場合は、所定の届出が必要です
- 行政書士法人は、従たる事務所を設けることができます
行政書士法人
行政書士法人とは
行政書士法人とは、行政書士の業務を組織的に行うために、行政書士が設立する法人です(行政書士法13条の3以下)。
行政書士法人の業務
行政書士法人は、行政書士の業務(独占業務・非独占業務)を行うことができます。また、定款で定めれば、行政書士の業務に付随する業務を行うこともできます。
懲戒処分
懲戒権者
行政書士に対する懲戒処分は、当該行政書士の事務所の所在地を管轄する都道府県知事が行います(行政書士法14条)。
懲戒処分の種類
懲戒処分の事由
懲戒処分の事由は以下のとおりです(行政書士法14条)。
- 行政書士法又はこれに基づく命令・規則等に違反したとき
- 行政書士たるにふさわしくない重大な非行があったとき
懲戒処分と聴聞
都道府県知事は、業務停止又は業務の禁止の処分をしようとするときは、聴聞を行わなければなりません。聴聞に際しては、処分を受ける行政書士に弁明の機会が与えられます。
罰則
行政書士法の主な罰則
名称の使用制限
行政書士でない者は、行政書士又はこれと紛らわしい名称を使用してはなりません(行政書士法19条の2)。これは名称独占の規定です。
行政書士会と日本行政書士会連合会
行政書士会
各都道府県に1つの行政書士会が設立されています。行政書士は、事務所の所在地の都道府県の行政書士会に所属しなければなりません(強制加入)。
日本行政書士会連合会
日本行政書士会連合会は、全国の行政書士会を会員とする連合会であり、行政書士名簿の登録事務を行っています。
試験での出題ポイント
- 独占業務の範囲: 官公署提出書類・権利義務書類・事実証明書類の作成
- 他士業との業務範囲の調整: 弁護士・司法書士・税理士等の独占業務は除外
- 守秘義務: 退職後も継続、違反は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- 登録先: 日本行政書士会連合会(行政書士会を経由して申請)
- 懲戒権者: 都道府県知事(戒告・業務停止・業務の禁止)
- 特定行政書士: 不服申立ての代理ができる
行政書士の守秘義務は、行政書士でなくなった後は消滅する。
行政書士に対する懲戒処分は、日本行政書士会連合会が行う。
特定行政書士は、行政書士が作成した書類に係る許認可等に関して、行政庁に対する不服申立ての手続の代理を行うことができる。
まとめ
行政書士法は、行政書士の業務範囲・義務・懲戒処分を定めた法律です。行政書士の独占業務は官公署提出書類・権利義務書類・事実証明書類の作成であり、他士業の独占業務は除外されます。
守秘義務は退職後も継続する最も重要な義務であり、懲戒処分は都道府県知事が行います。特定行政書士は不服申立ての代理ができる点も押さえておきましょう。行政書士を目指す者として、行政書士法の基本知識は確実に身につけておく必要があります。