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日本の社会保障制度の全体像|4つの柱を整理

行政書士試験の一般知識で問われる日本の社会保障制度を体系的に解説。社会保険・公的扶助・社会福祉・公衆衛生の4つの柱、年金・医療保険・介護保険・生活保護制度の仕組みを整理し、試験の得点力を高めます。

はじめに|社会保障制度を体系的に理解する

日本の社会保障制度は、国民の生活を支える根幹的な仕組みです。行政書士試験の一般知識等科目では、社会保障制度の全体像や個別の制度の内容が出題されます。

社会保障制度は範囲が広いため、まず全体像を把握し、そのうえで個別の制度を理解していくことが効率的な学習法です。本記事では、社会保障制度の4つの柱を中心に、行政書士試験で問われるポイントを体系的に整理します。

社会保障制度の4つの柱

社会保障制度の全体像

日本の社会保障制度は、大きく以下の4つの柱で構成されています。

柱内容具体例社会保険保険の仕組みで生活上のリスクに備える年金保険、医療保険、介護保険、雇用保険、労災保険公的扶助生活困窮者に対して最低限度の生活を保障生活保護社会福祉支援を要する者に対する福祉サービス児童福祉、障害者福祉、高齢者福祉公衆衛生国民の健康の保持・増進感染症予防、食品衛生、環境衛生

社会保険と公的扶助の違い

社会保障制度のうち、特に重要なのが社会保険公的扶助の違いです。

社会保険公的扶助原理保険原理(拠出=保険料の支払いが前提)扶助原理(拠出は不要)財源保険料+公費(税金)全額公費(税金)給付要件保険事故の発生(病気、老齢など)資力調査(ミーンズテスト)を経て認定対象加入者(被保険者)とその家族生活に困窮するすべての国民

社会保険は「保険料を払っている人が保険事故にあった場合に給付を受ける」仕組みであるのに対し、公的扶助は「保険料の支払いに関係なく、生活に困窮する人に対して国が給付する」仕組みであるという違いを理解しておきましょう。

年金制度

公的年金の二階建て構造

日本の公的年金制度は、二階建て構造と呼ばれる仕組みになっています。

  • 1階部分: 国民年金(基礎年金): 日本に住む20歳以上60歳未満のすべての者が加入する制度。全国民共通の基礎年金を支給
  • 2階部分: 厚生年金: 会社員や公務員が国民年金に上乗せして加入する制度。報酬に応じた年金を支給

国民年金の被保険者の種別

国民年金の被保険者は、以下の3種類に分類されます。

種別対象者保険料の負担方法第1号被保険者自営業者、学生、無職の者等自ら納付(定額)第2号被保険者会社員、公務員(厚生年金加入者)厚生年金保険料に含まれる第3号被保険者第2号被保険者の被扶養配偶者自己負担なし(配偶者の厚生年金制度が負担)

年金給付の種類

公的年金の給付には、以下の3種類があります。

  1. 老齢年金: 一定の年齢に達した場合に支給される年金
  • 老齢基礎年金: 原則65歳から支給。10年以上の受給資格期間が必要
  • 老齢厚生年金: 厚生年金加入者に対して、老齢基礎年金に上乗せして支給
  1. 障害年金: 病気やけがにより障害の状態になった場合に支給される年金
  • 障害基礎年金: 障害等級1級または2級の場合に支給
  • 障害厚生年金: 厚生年金加入者に対して、障害基礎年金に上乗せして支給。3級もあり
  1. 遺族年金: 被保険者が死亡した場合に、遺族に支給される年金
  • 遺族基礎年金: 子のある配偶者または子に支給
  • 遺族厚生年金: 厚生年金加入者の遺族に支給

年金制度の財政方式

日本の公的年金は、賦課方式を基本として運営されています。賦課方式とは、現役世代が納める保険料で、現在の年金受給者への給付を賄う方式です。

これに対して、自分で積み立てた保険料を自分の年金給付に充てる方式を積立方式といいます。日本の公的年金は、完全な賦課方式ではなく、積立金も活用した修正賦課方式を採用しています。

マクロ経済スライド

マクロ経済スライドは、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。現役世代の減少や平均余命の伸びを反映して、年金額の伸びを賃金や物価の上昇率よりも低く抑えることで、年金財政の均衡を図ります。

医療保険制度

国民皆保険

日本は、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入する国民皆保険制度を採用しています。これにより、国民はどの医療機関でも保険証(マイナ保険証を含む)を提示して、一定の自己負担で医療サービスを受けることができます。

医療保険の種類

種類対象者保険者健康保険(被用者保険)会社員とその被扶養者全国健康保険協会(協会けんぽ)、健康保険組合共済組合公務員等とその被扶養者各共済組合国民健康保険自営業者、無職の者等市区町村、国民健康保険組合後期高齢者医療制度75歳以上の者(一定の障害のある65歳以上の者を含む)後期高齢者医療広域連合

自己負担割合

医療保険における患者の窓口自己負担割合は、以下のとおりです。

年齢自己負担割合義務教育就学前2割義務教育就学後〜69歳3割70〜74歳2割(現役並み所得者は3割)75歳以上1割(一定以上所得者は2割、現役並み所得者は3割)

高額療養費制度

高額療養費制度は、1か月の医療費の自己負担額が一定の限度額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。限度額は年齢や所得に応じて設定されており、医療費が高額になっても過度な負担がかからないようにする仕組みです。

介護保険制度

介護保険の仕組み

介護保険は、加齢に伴う疾病等により介護が必要な状態になった者に対して、必要な保健医療サービスと福祉サービスを提供する社会保険制度です。2000年(平成12年)4月に施行されました。

被保険者の区分

介護保険の被保険者は、以下の2種類に分類されます。

区分対象者給付要件第1号被保険者65歳以上の者要介護状態又は要支援状態にあること(原因を問わない)第2号被保険者40歳以上65歳未満の医療保険加入者加齢に起因する特定疾病により要介護・要支援状態にあること

要介護認定

介護保険のサービスを受けるためには、市区町村に申請して要介護認定を受ける必要があります。要介護認定は、以下の区分に分かれています。

  • 要支援1・2: 日常生活に支援が必要な状態
  • 要介護1〜5: 日常生活に介護が必要な状態(数字が大きいほど介護の必要度が高い)

介護保険の保険者

介護保険の保険者(制度の運営主体)は市区町村です。市区町村は、被保険者から保険料を徴収し、介護サービスの提供を管理します。

介護保険サービスの種類

介護保険サービスは、大きく以下の3種類に分けられます。

  1. 居宅サービス: 自宅で生活しながら受けるサービス(訪問介護、通所介護、短期入所等)
  2. 施設サービス: 介護施設に入所して受けるサービス(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設等)
  3. 地域密着型サービス: 住み慣れた地域での生活を支えるサービス(小規模多機能型居宅介護等)

生活保護制度

生活保護の基本原理

生活保護は、生活に困窮するすべての国民に対して、最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする制度です(生活保護法1条)。

生活保護法は、以下の4つの基本原理を定めています。

  1. 国家責任の原理(1条): 国が生活に困窮するすべての国民に対して最低限度の生活を保障する
  2. 無差別平等の原理(2条): すべての国民は、生活保護法の要件を満たす限り、無差別平等に保護を受けることができる
  3. 最低生活保障の原理(3条): 保障する生活水準は、健康で文化的な最低限度の生活を維持することができるものでなければならない
  4. 補足性の原理(4条): 生活保護は、資産・能力その他あらゆるものを活用することを要件とし、他の法律による扶助等を優先する

生活保護の基本原則

生活保護法は、以下の4つの基本原則も定めています。

  1. 申請保護の原則(7条): 保護は、要保護者等の申請に基づいて開始される(ただし急迫の場合は職権保護も可能)
  2. 基準及び程度の原則(8条): 保護の基準は厚生労働大臣が定める
  3. 必要即応の原則(9条): 保護は、要保護者の年齢、性別等の事情を考慮して行う
  4. 世帯単位の原則(10条): 保護は、世帯を単位として行う

生活保護の種類(8つの扶助)

生活保護には、以下の8種類の扶助があります。

  1. 生活扶助: 衣食その他日常生活の需要を満たすための扶助
  2. 教育扶助: 義務教育に伴う費用の扶助
  3. 住宅扶助: 住居に関する費用の扶助
  4. 医療扶助: 医療に関する扶助(現物給付が原則)
  5. 介護扶助: 介護に関する扶助(現物給付が原則)
  6. 出産扶助: 出産に関する費用の扶助
  7. 生業扶助: 生業に必要な費用の扶助(技能修得費等)
  8. 葬祭扶助: 葬祭に関する費用の扶助

朝日訴訟(最大判昭和42年5月24日)

生活保護の水準に関する著名な判例が、朝日訴訟です。最高裁は、「何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、厚生大臣の合目的的な裁量に委されており、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあっても、直ちに違法の問題を生ずることはない」と判示しました。

つまり、生活保護の基準の設定は厚生大臣(現厚生労働大臣)の広い裁量に委ねられており、裁量権の逸脱・濫用がない限り違法とはならないとしたのです。

雇用保険と労災保険

雇用保険

雇用保険は、労働者が失業した場合に生活の安定を図り、求職活動を支援するための保険制度です。

雇用保険の主な給付には以下のものがあります。

  • 基本手当(失業手当): 失業した場合に支給される給付
  • 育児休業給付: 育児休業を取得した場合に支給される給付
  • 介護休業給付: 介護休業を取得した場合に支給される給付
  • 教育訓練給付: 厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講した場合に支給される給付

労災保険(労働者災害補償保険)

労災保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して保険給付を行う制度です。

労災保険の特徴は、保険料が全額事業主負担である点です(労働者の保険料負担はありません)。

少子高齢化と社会保障制度の課題

少子高齢化の進行

日本は世界に類を見ない速度で少子高齢化が進行しています。高齢化率(65歳以上人口の割合)は2025年には約30%に達すると見込まれています。

少子高齢化は、社会保障制度に以下のような課題をもたらしています。

  • 年金財政の圧迫: 年金受給者の増加と保険料負担者の減少
  • 医療費の増大: 高齢者の医療費は若年者に比べて高い
  • 介護需要の増大: 要介護者の増加に伴う介護サービスの需要増
  • 社会保障費の増大: 国家財政における社会保障費の割合が増加

全世代型社会保障改革

近年では、高齢者だけでなく、現役世代や子ども・子育て世代を含めた「全世代型社会保障」への転換が進められています。子育て支援の充実、現役世代の負担軽減、高齢者の就労促進などがその柱です。

確認問題

日本の公的年金制度における国民年金の第3号被保険者とは、第2号被保険者の被扶養配偶者であり、保険料は本人が直接納付する必要がある。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
国民年金の第3号被保険者(第2号被保険者の被扶養配偶者)は、保険料を自ら直接納付する必要はありません。第3号被保険者の保険料は、配偶者が加入する厚生年金制度全体で負担する仕組みになっています。これに対して、第1号被保険者(自営業者、学生等)は自ら定額の保険料を納付する必要があります。
確認問題

介護保険の被保険者は第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)に区分されるが、第2号被保険者は原因を問わず要介護状態になればサービスを受けることができる。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
第2号被保険者(40歳以上65歳未満)が介護保険のサービスを受けるには、「加齢に起因する特定疾病」により要介護・要支援状態になった場合に限られます。原因を問わずにサービスを受けられるのは第1号被保険者(65歳以上)です。第2号被保険者の場合、交通事故による障害など、特定疾病以外の原因による要介護状態では介護保険のサービスは利用できません。
確認問題

生活保護法の4つの基本原理は、国家責任の原理、無差別平等の原理、最低生活保障の原理、申請保護の原理である。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
「申請保護の原理」ではなく「補足性の原理」が正しい4つ目の基本原理です。生活保護法の4つの基本原理は、国家責任の原理(1条)、無差別平等の原理(2条)、最低生活保障の原理(3条)、補足性の原理(4条)です。「申請保護の原則」は、基本原理ではなく4つの基本原則(申請保護・基準及び程度・必要即応・世帯単位)の一つです。「原理」と「原則」の区別に注意しましょう。

まとめ|社会保障制度の全体像を得点源にする

日本の社会保障制度は、行政書士試験の一般知識分野において重要なテーマです。

本記事のポイントを整理すると、以下のとおりです。

  • 社会保障の4つの柱: 社会保険・公的扶助・社会福祉・公衆衛生
  • 年金の二階建て構造: 1階=国民年金(基礎年金)、2階=厚生年金
  • 国民皆保険: すべての国民が公的医療保険に加入
  • 介護保険: 保険者は市区町村。第1号被保険者は原因不問、第2号は特定疾病に限定
  • 生活保護の基本原理: 国家責任・無差別平等・最低生活保障・補足性の4つ
  • 生活保護の基本原則: 申請保護・基準及び程度・必要即応・世帯単位の4つ
  • 生活保護の8つの扶助: 生活・教育・住宅・医療・介護・出産・生業・葬祭

社会保障制度は、全体像を把握したうえで個別の制度の特徴を理解することが効率的な学習法です。本記事の内容を繰り返し復習して、確実に得点できるようにしましょう。

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