法人制度の基礎|権利能力なき社団の要件
法人の設立方式(準則主義・許可主義・認可主義)、法人の権利能力の範囲と八幡製鉄政治献金事件、権利能力なき社団の4要件(最判昭和39年)を行政書士試験向けに徹底解説。出題パターンも紹介します。
はじめに|法人制度は民法総則の盲点
民法総則の「人」に関する規定の中で、自然人(制限行為能力者制度など)に比べて対策が手薄になりがちなのが法人制度です。しかし、行政書士試験では法人の権利能力の範囲や権利能力なき社団に関する問題が繰り返し出題されており、確実に押さえておくべき分野です。
本記事では、法人の設立方式(準則主義・許可主義・認可主義・特許主義)、法人の権利能力の範囲に関する判例、そして権利能力なき社団の4要件を中心に解説します。
法人の意義と種類
法人とは何か
法人とは、自然人以外で法律上の権利義務の主体となることができるものをいいます。民法33条1項は次のように規定しています。
法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。
――民法33条1項
この規定は法人法定主義と呼ばれ、法人は法律の根拠がなければ設立できないことを意味します。
法人の分類
営利法人と非営利法人の違い
ここでいう「営利」とは、法人が事業活動で得た利益を構成員に分配することを意味します。したがって、非営利法人であっても収益事業を行うこと自体は可能です。「非営利=利益を上げてはいけない」ではなく、「非営利=利益を構成員に分配しない」という点に注意してください。
法人の設立方式
4つの設立方式
法人の設立には、歴史的に以下の4つの方式があります。
現行法の主流は準則主義
2008年の公益法人制度改革により、旧民法の許可主義に基づく公益法人制度は廃止されました。現在は、一般社団法人・一般財団法人は準則主義(「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づく登記)で設立し、その中から公益認定を受けたものが公益社団法人・公益財団法人となる二段階制が採用されています。
試験では、旧制度と新制度の違いが問われることがあります。以下の点を押さえておきましょう。
- 旧制度: 主務官庁の許可が必要(許可主義)
- 新制度: 法定要件を満たせば登記により設立(準則主義)+公益認定は別手続
法人の権利能力の範囲
「目的の範囲内」(34条)
法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
――民法34条
法人の権利能力は、定款等で定められた目的の範囲内に限られます。この「目的の範囲内」をどう解釈するかが重要な論点です。
八幡製鉄政治献金事件(最大判昭和45年6月24日)
法人の権利能力の範囲に関する最も重要な判例が、八幡製鉄政治献金事件です。
事案: 八幡製鉄(現・日本製鉄)が自由民主党に政治献金を行ったことに対して、株主が会社の目的の範囲外の行為であるとして取締役の責任を追及した事件。
最高裁の判断: 会社は自然人と同様、一定の範囲で社会的作用を負う存在であり、政治資金の寄付も、客観的・抽象的に観察して会社の社会的役割として期待されるものである限り、目的の範囲内に含まれると判断しました。
この判例から、営利法人(会社)の「目的の範囲」は広く解釈されることがわかります。
法人の種類による「目的の範囲」の解釈の違い
労働組合については、国労広島地本事件で最高裁が組合員の政治的自由を尊重する立場から、目的の範囲を厳格に解釈しました。政治献金の強制徴収は目的の範囲外とされています。
法人の不法行為責任
一般法人法78条と民法44条
法人は、その代表機関が職務を行うについて第三者に損害を加えた場合、損害賠償責任を負います。
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条は次のように規定しています。
一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
――一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条
この「職務を行うについて」の解釈は、使用者責任(715条)における「事業の執行について」と同様に外形理論(外形的に職務行為と認められれば足りるとする考え方)が適用されます。
代表者個人の責任との関係
法人が損害賠償責任を負う場合、代表者個人も民法709条に基づく不法行為責任を負います。法人の責任と代表者個人の責任は不真正連帯債務の関係に立ちます。
権利能力なき社団
権利能力なき社団とは
権利能力なき社団とは、社団としての実質を備えているが法人格を有しない団体のことです。町内会、同窓会、マンション管理組合(法人化していないもの)などが典型例です。
最判昭和39年10月15日の4要件
権利能力なき社団と認められるための要件として、最高裁は以下の4つを示しています。
- 団体としての組織を備えていること
- 多数決の原則が行われていること
- 構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続すること
- 代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していること
この4要件は行政書士試験で頻出であり、正確に暗記しておく必要があります。
権利能力なき社団の法律関係
権利能力なき社団は法人格がないため、権利義務の帰属について特殊な取扱いがなされます。
不動産登記が社団名義でできない理由
不動産登記は「権利能力を有する者」の名義でなければできません。権利能力なき社団は法人格がなく権利能力がないため、社団名義での登記はできず、代表者の個人名義で登記することになります。
ただし、代表者が交代した場合は、新代表者への名義変更が必要になります。この登記は委任の終了を原因とする所有権移転登記として行われます。
総有の意味
権利能力なき社団の財産は構成員に「総有的に帰属」します。総有とは、各構成員が持分を有せず、個々の構成員には持分の処分や分割請求が認められない共有形態です。
法人の機関
社団法人の機関構成
一般社団法人を例に、法人の機関構成を確認します。
理事の代表権の制限
理事の代表権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができません。これは、取引の安全を保護するための規定です。
判例の横断整理
試験で問われやすい法人関連判例
これらの判例は、強制加入団体か任意加入団体かという観点で整理すると理解しやすくなります。
- 任意加入団体(会社など): 構成員は脱退の自由があるため、目的の範囲を広く解する
- 強制加入団体(税理士会、司法書士会など): 構成員に脱退の自由がないため、目的の範囲を厳格に解する。ただし、災害復興支援のように構成員の思想・信条に直接関わらない支出は目的の範囲内
まとめ|法人制度の得点ポイント
法人制度は、以下の3つのテーマを確実に押さえれば得点源にできます。
- 設立方式: 準則主義・許可主義・認可主義・特許主義の違い。現行法は準則主義が主流
- 権利能力の範囲: 「目的の範囲内」の解釈は法人の種類によって異なる。八幡製鉄事件は必須
- 権利能力なき社団: 4要件の暗記、財産は総有的帰属、不動産登記は代表者個人名義
特に権利能力なき社団の4要件は、一字一句正確に覚えておくことが試験対策として重要です。
権利能力なき社団の財産は、構成員全員の共有(民法249条以下)に属する。
八幡製鉄政治献金事件で最高裁は、会社の政治献金は定款の目的の範囲外であると判断した。
権利能力なき社団は、その名義で不動産の登記をすることができない。
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