根抵当権の特徴|普通抵当権との5つの違い
根抵当権の意義と普通抵当権との5つの違い(付従性・随伴性の緩和、極度額、被担保債権の範囲、元本確定期日・確定事由)を比較表で整理。行政書士試験の物権分野の得点力を高める解説記事です。
はじめに|根抵当権は実務でも試験でも重要
根抵当権は、継続的な取引関係から生じる不特定の債権を包括的に担保する制度です。普通抵当権が特定の債権を担保するのに対して、根抵当権は将来発生する債権も含めて一括で担保するという点に特徴があります。
銀行取引や商取引の実務では根抵当権が広く利用されており、行政書士の実務でも不動産関連業務で頻繁に登場します。試験では、普通抵当権との違いを正確に理解しているかが問われます。
本記事では、根抵当権の基本的な仕組みを解説した上で、普通抵当権との5つの主要な違いを比較表で整理します。
根抵当権の意義
根抵当権とは(398条の2)
抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。
――民法398条の2第1項
根抵当権とは、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保する抵当権です。
根抵当権が必要とされる場面
たとえば、企業Aが銀行Bとの間で継続的に融資取引を行う場合を考えましょう。
- 普通抵当権の場合: 融資のたびに新たな抵当権を設定し、返済のたびに抹消する必要がある
- 根抵当権の場合: 一度設定すれば、極度額の範囲内で何度融資と返済を繰り返しても、同一の抵当権で担保できる
このように、根抵当権は反復・継続する取引関係において利便性が高い制度です。
普通抵当権との5つの違い
違い1:付従性の緩和
普通抵当権: 被担保債権が成立しなければ抵当権も成立せず、被担保債権が消滅すれば抵当権も消滅する(付従性が厳格)。
根抵当権: 元本確定前は、被担保債権が弁済により消滅しても根抵当権は消滅しない(付従性が緩和されている)。ただし、元本確定後は普通抵当権と同様に付従性が復活する。
違い2:随伴性の緩和
普通抵当権: 被担保債権が譲渡されると、抵当権も随伴して移転する。
根抵当権: 元本確定前は、被担保債権が譲渡されても根抵当権は随伴しない(随伴性が緩和されている)。
元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。
――民法398条の7第1項
つまり、銀行Bが企業Aに対する貸金債権をCに譲渡しても、根抵当権はCには移転しません。根抵当権は銀行Bとの取引関係全体を担保するものだからです。
違い3:極度額による担保の上限
普通抵当権: 被担保債権の元本に加えて、利息・遅延損害金についても担保するが、後順位抵当権者がいる場合は最後の2年分に限定される(375条)。
根抵当権: 元本・利息・遅延損害金のすべてを含めて、極度額の限度で担保する。最後の2年分という制限はない。
根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。
――民法398条の3第1項
違い4:被担保債権の範囲の定め
普通抵当権: 特定の債権を被担保債権とする。設定時に債権が具体的に特定されている必要がある。
根抵当権: 一定の範囲に属する不特定の債権を被担保債権とする。設定行為で以下のいずれかを定める必要がある(398条の2第2項・3項)。
- 債務者との特定の継続的取引契約によって生じる債権
- 債務者との一定の種類の取引によって生じる債権
- 特定の原因に基づき債務者との間に継続して生じる債権
違い5:元本確定の概念
普通抵当権: 被担保債権が設定時に特定されているため、元本確定の概念がない。
根抵当権: 元本確定という概念があり、確定前と確定後で性質が大きく変わる。
元本が確定すると、根抵当権の被担保債権が具体的に特定され、以後は普通抵当権と同様の性質を有するようになります。
元本確定期日(398条の6)
元本確定期日の設定
根抵当権の設定時に、元本確定期日を定めることができます。
根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる。
――民法398条の6第1項
ただし、元本確定期日は根抵当権の設定の時から5年以内でなければなりません(398条の6第3項)。5年を超える期日を定めた場合は、その定めは無効となります(設定後5年で確定するわけではなく、確定期日の定めが無効になる点に注意)。
確定期日を定めなかった場合
元本確定期日を定めなかった場合、根抵当権の設定の時から3年を経過した後に、根抵当権設定者は元本の確定を請求できます(398条の19第1項)。この請求があった場合、元本は請求の時から2週間を経過した時に確定します。
一方、根抵当権者はいつでも元本の確定を請求できます(398条の19第3項)。この場合、元本は請求の時に確定します。
元本確定事由(398条の20)
法定の元本確定事由
以下の事由が生じた場合、元本は法律上当然に確定します。
確定後の根抵当権
元本が確定した後の根抵当権は、普通抵当権と同様の性質を有します。
- 付従性が復活: 被担保債権が弁済により消滅すれば、根抵当権も消滅する
- 随伴性が復活: 被担保債権が譲渡されると、根抵当権も随伴して移転する
根抵当権の変更
極度額の変更(398条の5)
極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ効力を生じません。
後順位抵当権者や差押債権者などが利害関係を有する者に該当します。極度額の増額は後順位抵当権者の配当額に影響するため、承諾が必要とされるのです。
被担保債権の範囲・債務者の変更(398条の4)
元本確定前に限り、被担保債権の範囲や債務者を変更できます。
元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。
――民法398条の4第1項
この変更には、後順位抵当権者等の承諾は不要です。極度額の変更とは異なり、被担保債権の範囲や債務者の変更は、極度額という担保の上限には影響しないためです。
根抵当権の処分
全部譲渡・分割譲渡・一部譲渡
元本確定前の根抵当権は、以下の方法で処分できます(398条の12)。
いずれの処分も、根抵当権設定者の承諾が必要です(398条の12第1項・2項)。
普通抵当権の処分との違い
普通抵当権の処分(転抵当・抵当権の譲渡・放棄等)は、債務者に通知し、または債務者が承諾しなければ対抗できませんが(377条)、設定者の承諾までは求められていません。根抵当権の場合は設定者の承諾が必要である点が異なります。
共同根抵当権(398条の16)
共同根抵当権の意義
共同根抵当権とは、複数の不動産に同一の根抵当権を設定するものです。
共同根抵当権が成立するためには、以下の3つの要件がすべて同一でなければなりません。
- 債権の範囲
- 債務者
- 極度額
これらが異なる場合は、共同根抵当権ではなく、個別の根抵当権が設定されたものとして扱われます。
まとめ|普通抵当権との比較で覚える
根抵当権の学習は、常に普通抵当権との比較で進めるのが効率的です。
元本確定の前後で根抵当権の性質が大きく変わるという点が最大のポイントです。確定前は付従性・随伴性が緩和された特殊な抵当権、確定後は普通抵当権と同じ性質を持つと覚えてください。
根抵当権の元本確定前に、被担保債権が弁済により全額消滅した場合、根抵当権も消滅する。
根抵当権の極度額の変更には、利害関係を有する者の承諾が必要である。
根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から3年を経過した後でなければ、元本の確定を請求できない。
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