(公開 2026/02/09) / 行政法

意見公募手続(パブコメ)|行政手続法の要点整理

行政手続法の意見公募手続(パブリックコメント)を徹底解説。命令等制定機関の義務、手続の流れ(案の公示・意見提出・結果公示)、意見提出期間30日以上の原則、適用除外の具体例まで行政書士試験の頻出ポイントを整理します。

はじめに|意見公募手続とは何か

意見公募手続(パブリックコメント)とは、行政機関が命令等(政令・省令・審査基準・処分基準・行政指導指針)を定めようとする際に、あらかじめその案を公示して広く国民から意見を求め、提出された意見を考慮して最終的な決定を行う手続です。

行政手続法の第6章(38条〜45条)に規定されており、2005年(平成17年)の行政手続法改正で新たに追加されました。それ以前は閣議決定に基づく「パブリックコメント手続」として運用されていましたが、法律上の制度として明確に位置づけられたのはこの改正以降です。

意見公募手続が法制化された背景には、行政立法(命令等の制定)に対する民主的コントロールの強化という問題意識があります。法律は国会の議決を経て成立しますが、政令・省令などの命令等は行政機関が単独で定めるため、国民の意思が反映される機会が乏しいという指摘がありました。意見公募手続は、この「行政立法の正統性の弱さ」を手続的に補う仕組みとして位置づけられています。

行政書士試験では、意見公募手続の対象となる「命令等」の範囲、手続の具体的な流れ、適用除外の類型、意見提出期間(30日以上)の数字が頻繁に出題されます。択一式(多肢選択を含む)で条文の細かい要件を正確に問われるのが特徴で、「何人も提出できる」「考慮義務であって反映義務ではない」「地方公共団体には適用されない」といった引っかけポイントが繰り返し登場します。本記事では、条文に忠実に整理しながら、試験対策上のポイントを丁寧に解説していきます。

行政手続法全体の中での位置づけ

行政手続法は、大きく分けて次の4つの柱(プラス総則・補則)から成り立っています。意見公募手続は最後の柱であり、対象が「処分・行政指導」という個別的行為ではなく、「命令等」という一般的・抽象的なルールである点が他の手続と決定的に異なります。

章規律対象主な手続第2章申請に対する処分審査基準・標準処理期間・理由提示第3章不利益処分処分基準・聴聞・弁明の機会の付与・理由提示第4章行政指導行政指導指針・中止等の求め第4章の2処分等の求め処分・行政指導をすべき旨の申出第6章命令等を定める手続意見公募手続(パブリックコメント)

このように、第2章〜第4章は「すでに作られた基準を個別事案に当てはめる場面」を規律し、第6章はその「基準そのものを作る場面」を規律しています。審査基準・処分基準・行政指導指針が第6章の「命令等」に含まれるのは、まさにこのためです。

命令等と命令等制定機関

命令等の定義

意見公募手続の対象となる「命令等」とは、行政手続法2条8号に定義されています。具体的には、以下の4つを指します。

  1. 法律に基づく命令(政令・省令等)又は規則
  2. 審査基準(法5条1項)
  3. 処分基準(法12条1項)
  4. 行政指導指針(法36条)

ここで注意すべきは、「命令等」という用語が一般的なイメージよりも広い概念である点です。政令や省令といった法規命令だけでなく、審査基準・処分基準・行政指導指針といった行政規則も含まれています。

行政手続法2条8号
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
八 命令等 内閣又は行政機関が定める次に掲げるものをいう。
イ 法律に基づく命令(処分の要件を定める告示を含む。次条第二項において単に「命令」という。)又は規則
ロ 審査基準(第五条第一項に規定する審査基準をいう。)
ハ 処分基準(第十二条第一項に規定する処分基準をいう。)
ニ 行政指導指針(第三十六条に規定する行政指導指針をいう。)
――行政手続法2条8号

「命令」には処分要件を定める告示が含まれる

条文のイ号をよく読むと、「法律に基づく命令」には「処分の要件を定める告示を含む」と明記されています。告示は本来、行政機関の決定を国民に知らせる「通知行為」の形式にすぎませんが、その中身が処分の要件を定める実質的な法規範であるときは「命令」として扱われ、意見公募手続の対象になります。告示の形式をとっているからといって一律に対象外になるわけではない点に注意が必要です。

命令等に含まれるもの・含まれないものの整理

試験で最も狙われるのが、「これは命令等に当たるか」という線引きです。次の表で整理しておきましょう。

区分命令等への該当理由・根拠政令・省令(法規命令)含まれる2条8号イ「法律に基づく命令」規則(外局・委員会の規則等)含まれる2条8号イ「規則」処分の要件を定める告示含まれる2条8号イ括弧書き審査基準含まれる2条8号ロ処分基準含まれる2条8号ハ行政指導指針含まれる2条8号ニ地方公共団体の条例・規則含まれない3条3項により適用除外法律そのもの含まれない国会が制定する。行政機関の制定物ではない通達・訓令(内部基準)原則含まれない行政内部の指針で2条8号の各類型に当たらない限り対象外

審査基準・処分基準・行政指導指針が含まれることと、条例・法律が含まれないことの対比は、ほぼ毎年のように形を変えて出題されています。

命令等制定機関

「命令等制定機関」とは、命令等を定める権限を有する機関のことです(法38条1項)。具体的には、内閣、各省大臣、各委員会、各庁の長官などが該当します。

法38条1項は、命令等制定機関に対し、命令等を定めるに当たっての一般的な努力義務を定めています。すなわち、当該命令等がこれを定める根拠となる法令の趣旨に適合するものとなるようにしなければならない、という規定です。これは意見公募手続そのものとは別に、命令等制定機関が常に負う基本的な責務です。

試験対策上のポイントとして、地方公共団体の機関は命令等制定機関に含まれない点を押さえておきましょう。行政手続法の意見公募手続の規定は、地方公共団体の機関が命令等を定める行為には適用されません(法3条3項参照)。地方公共団体が同様の手続を実施している場合、それは各地方公共団体の条例や要綱に基づく独自の制度です。

行政手続法3条3項
第一項各号及び前項各号に掲げるもののほか、地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第六章までの規定は、適用しない。
――行政手続法3条3項

なお、地方公共団体が「処分」「届出」を行う場合の適用関係は、その根拠が法律に基づくものか条例・規則に基づくものかで分かれます(法3条3項)。これに対し、命令等を定める行為については、根拠が何であれ一律に適用除外とされている点が重要です。

意見公募手続の流れ

意見公募手続は、おおまかに「案の公示 → 意見提出 → 提出意見の考慮 → 結果の公示」という流れをたどります。以下、ステップごとに条文を確認します。

ステップ1:案の公示

命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案及びこれに関連する資料をあらかじめ公示しなければなりません(法39条1項)。

行政手続法39条1項
命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案(命令等で定めようとする内容を示すものをいう。以下同じ。)及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(情報を含む。以下同じ。)の提出先及び意見の提出のための期間(以下「意見提出期間」という。)を定めて広く一般の意見を求めなければならない。
――行政手続法39条1項

公示すべき内容は以下のとおりです。

  • 命令等の案(命令等で定めようとする内容を示すもの)
  • 関連する資料(趣旨説明、根拠法令、現行制度との比較など)
  • 意見提出先
  • 意見提出のための期間(意見提出期間)

ここで重要なのは、公示するのは「命令等の案」、すなわち完成した最終形ではなく、内容を示すものでよいという点です。条文案そのものでなくても、定めようとする内容が分かる程度の具体性があれば足ります。

また、法39条2項は、公示する命令等の案について、具体的かつ明確な内容のものであって、かつ、その題名及び趣旨が分かりやすいものでなければならない、と定めています。抽象的すぎて何を定めるのか分からない案を出して形式的に手続を済ませることは許されません。

公示の方法は、原則として電子情報処理組織(インターネット)を利用する方法その他の適切な方法により行うとされています(法45条1項)。実務上は、各省庁のウェブサイトや「e-Gov」(電子政府の総合窓口)に掲載されます。

ステップ2:意見の提出

何人も、公示された命令等の案について意見を提出することができます(法39条1項)。ここで重要なのは「広く一般の意見を求める」とされている点であり、解釈上、意見を提出できる主体に制限はありません。日本国民に限られず、外国人や法人も意見を提出することができます。利害関係の有無も問いません。

条文上、命令等制定機関が求めるのは「意見(情報を含む)」とされています(法39条1項括弧書き)。単なる賛否の表明だけでなく、命令等の判断材料となる事実やデータといった情報の提供も求められている点が、意見公募手続の情報収集機能を表しています。

意見の提出方法は、命令等制定機関が定めるところによります。書面の郵送、FAX、電子メール、ウェブフォームなど、複数の方法が用意されていることが一般的です。

ステップ3:意見提出期間

意見提出期間は、原則として30日以上でなければなりません(法39条3項)。

行政手続法39条3項
第一項の規定により定める意見提出期間は、同項の公示の日から起算して三十日以上でなければならない。
――行政手続法39条3項

ここで暗記すべき数字のポイントは2つです。

  1. 期間は「30日以上」であること(「30日以内」ではない。最低ラインを定める規定)。
  2. 起算点は「公示の日から起算して」であること。

ただし、30日以上の意見提出期間を定めることができないやむを得ない理由があるときは、30日を下回る意見提出期間を定めることができます(法40条1項)。この場合、命令等制定機関は、命令等の案の公示の際に、その理由を明らかにしなければなりません

行政手続法40条1項
命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合において、三十日以上の意見提出期間を定めることができないやむを得ない理由があるときは、前条第三項の規定にかかわらず、三十日を下回る意見提出期間を定めることができる。この場合においては、当該命令等の案の公示の際その理由を明らかにしなければならない。
――行政手続法40条1項

なお、混同しやすい類似制度として法40条2項があります。これは、複数の命令等を一括して意見公募手続にかけ、その後に一部の命令等についてのみ意見提出期間を延長するといった場合の調整規定です。試験では、まず「30日以上が原則/やむを得ない理由があれば短縮可・理由公示が必要」という基本形を確実に押さえることが優先です。

ステップ4:提出意見の考慮

命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意見提出期間内に提出された意見(提出意見)を十分に考慮しなければなりません(法42条)。

行政手続法42条
命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意見提出期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての意見(以下「提出意見」という。)を十分に考慮しなければならない。
――行政手続法42条

ここで押さえるべきは、これが「考慮する義務」であって「反映する義務」ではないという点です。提出された意見がどれほど多くても、命令等制定機関はそれに従う法的義務はありません。考慮した上で、原案どおり制定することも、修正して制定することも、制定自体を取りやめることも可能です。

この「考慮義務であって反映義務ではない」という論点は、意見公募手続の出題のなかで最も頻出する引っかけポイントの一つです。「提出意見の多数に従わなければならない」「提出意見に拘束される」といった選択肢はすべて誤りになります。

ステップ5:結果の公示

命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、命令等の公布と同時期に、以下の事項を公示しなければなりません(法43条1項)。

行政手続法43条1項
命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布(公布をしないものにあっては、公にする行為。第五項において同じ。)と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければならない。
一 命令等の題名
二 命令等の案の公示の日
三 提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨)
四 提出意見を考慮した結果(意見公募手続を実施した命令等の案と定めた命令等との差異を含む。)及びその理由
――行政手続法43条1項
  1. 命令等の題名
  2. 命令等の案の公示の日
  3. 提出意見(提出意見がなかった場合はその旨)
  4. 提出意見を考慮した結果(案と定めた命令等との差異を含む)及びその理由

この結果公示は、単に「意見をいただきました。ありがとうございました」というものではなく、提出意見をどう考慮したのか、その結果と理由を示すことが求められます。すなわち、案と最終的に定めた命令等との差異まで含めて明らかにする必要があります。

なお、法43条2項は、提出意見をそのまま公示することにより第三者の利益を害するおそれがある場合などには、提出意見に代えて、その整理又は要約したものを公示できる旨を定めています。提出意見が大量に上ることもあるため、現実的な運用に配慮した規定です。

意見公募手続の適用除外

法39条4項の適用除外

以下の場合には、意見公募手続を実施することを要しないとされています(法39条4項)。

  1. 公益上、緊急に命令等を定める必要があるため、意見公募手続を実施することが困難であるとき(1号)
  2. 納付すべき金銭について定める法律の制定又は改正により必要となる当該金銭について定める命令等その他当該法律の施行に関し必要な事項を定める命令等を定めようとするとき(2号)――税率改正に伴う施行令の改正など
  3. 予算の定めるところにより金銭の給付決定を行うために必要となる当該金銭の額の算定の基礎となるべき金額及び率並びに算定方法についての命令等その他当該金銭の額に関する命令等を定めようとするとき(3号)
  4. 法律の規定により、内閣府設置法に規定する委員会等又は国家行政組織法に規定する委員会若しくは審議会等(審議会等)の議を経て命令等を定めることとされている場合であって、当該委員会等又は審議会等が意見公募手続に準じた手続を実施したとき(4号)

このほか、法39条4項には、他の行政機関が意見公募手続を実施して定めた命令等と実質的に同一の命令等を定めるときなど、複数の除外事由が列挙されています。条文では号の数や表現が細かいため、試験対策としては「どんな場面が適用除外になるか」という類型のイメージで押さえるのが効率的です。

試験で特に問われやすいのは緊急性を理由とする除外審議会等が意見公募手続に準じた手続を行った場合の除外です。後者は、すでに審議会で実質的に国民・専門家の意見を聴く手続を踏んでいるのだから、重ねて意見公募手続を行う必要はない、という趣旨です。

命令の制定改廃に伴う適用除外(法39条による趣旨)

意見公募手続は「命令等を定めようとする場合」の手続ですが、軽微な変更など実質的に新たな規律を設けない場合の扱いについても、命令等の性質に応じて整理しておくとよいでしょう。試験では、まずは39条4項の各除外類型を正確に押さえることが優先されます。

適用除外の場合の公示義務

意見公募手続を実施しないで命令等を定めた場合であっても、命令等制定機関は、命令等の公布と同時期に、以下の事項を公示しなければなりません(法43条5項)。

行政手続法43条5項
命令等制定機関は、第三十九条第四項に該当することにより意見公募手続を実施しないで命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければならない。ただし、第一号に掲げる事項のうち命令等の趣旨については、同項第一号から第四号までのいずれかに該当することにより意見公募手続を実施しなかった場合において、当該命令等自体から明らかでないときに限る。
一 命令等の題名及び趣旨
二 意見公募手続を実施しなかった旨及びその理由
――行政手続法43条5項

つまり、適用除外に該当して意見公募手続を省略した場合でも、「意見公募手続を実施しなかった旨及びその理由」を国民に説明する義務は免除されません。「適用除外なら何も公示しなくてよい」というのは誤りです。

意見公募手続と命令等の修正・不制定

命令等を定めないこととした場合

命令等制定機関は、意見公募手続を実施した後に、命令等を定めないこととした場合にも、結果の公示が必要です(法43条4項)。この場合、その旨(命令等の題名及び案の公示の日を含む)を速やかに公示しなければなりません。

意見公募手続を踏まえて「やはり制定を見送る」と判断すること自体は適法ですが、案を公示して意見を募った以上、その後どうなったのかを国民に明らかにする責任がある、という趣旨です。

公示された案を変更して制定する場合

法43条1項4号が「意見公募手続を実施した命令等の案と定めた命令等との差異を含む」と明記しているとおり、公示した案を修正して命令等を定めること自体は当然に想定されています。提出意見を考慮した結果として案を修正することは、むしろ意見公募手続の本来の目的に沿うものです。

ただし、当初の案とは別物といえるほど内容が変質するような場合には、実質的に「新たな案」を定めようとするものとして、改めて意見公募手続を実施すべきと解する見解があります。この点は条文上一義的に明確とは言い難く、「大幅な修正の場合は再実施が必要と解されることがある」という程度で押さえておけば足ります。

意見公募手続に関する法的性質と効力

意見公募手続の機能

意見公募手続は、国民の権利利益を保護するための手続であると同時に、行政の意思決定の質を向上させるための制度でもあります。行政法学上は、主に以下の機能が指摘されています。

  1. 民主的正統性の補完機能: 命令等は国会の議決を経ないため、直接的な民主的正統性が弱い。意見公募手続によって国民の意見を反映させる機会を設けることで、民主的正統性を補完する。
  2. 情報収集機能: 行政機関が持っていない情報や視点を国民(事業者・専門家・利害関係者)から得ることで、命令等の内容の合理性・質を向上させる。
  3. 透明性・説明責任の確保機能: 案と関連資料を事前に公示し、結果を理由とともに公示することで、行政過程の透明性と説明責任を確保する。

意見公募手続の違反と命令等の効力

意見公募手続に違反して定められた命令等の効力については、判例上確立した一般的結論があるとは言い難い状況です。学説上は、以下のような考え方が示されています。

  • 手続違反は命令等を違法とし得るが、当然に無効となるとは限らない: 手続の瑕疵が命令等を違法とするかどうか、また無効原因となるほど重大なものかは、瑕疵の程度や性質によって個別に判断される。
  • 命令等の効力を争う方法: 命令等(法規命令)は一般に処分性が否定されるため、命令等それ自体を取消訴訟で直接争うことは原則として困難である。もっとも、当該命令等に基づく具体的処分を争う際に、その前提として命令等の違法を主張することは可能と解される。

この論点は記述や考察を要する場面で問われ得ますが、択一対策としては「手続違反が直ちに無効をもたらすと断定する選択肢には注意する」という姿勢で十分です。

行政手続法上の他の手続との比較

意見公募手続と聴聞・弁明の違い

意見公募手続は「一般的・抽象的なルール(命令等)の制定」を対象とするのに対し、聴聞・弁明は「特定の名宛人に対する不利益処分」を対象とします。両者は局面が全く異なります。

比較項目意見公募手続聴聞弁明の機会の付与対象命令等の制定重い不利益処分(許認可の取消し等)比較的軽い不利益処分意見を述べられる者何人も名宛人・参加人(利害関係人)名宛人手続の方式案の公示→意見提出→結果公示口頭審理(原則)書面(原則)意見の取扱い考慮義務のみ(反映義務なし)聴聞調書・報告書を十分に参酌弁明書等を十分に参酌根拠章第6章第3章第3章

意見公募手続と行政不服審査法上の手続の違い

意見公募手続は命令等の「制定前」の手続であるのに対し、行政不服審査法上の審査請求等は処分が「なされた後」の事後的な不服申立手続です。両者は全く異なる場面で機能するものですが、試験では「事前・事後」の対比や用語の混同を誘う出題がなされることがあります。

意見公募手続は事前手続の中でも特殊で、個別の名宛人を相手とするのではなく「広く一般」を相手とする点で、申請に対する処分や不利益処分の事前手続とも性格を異にします。

試験対策上の重要ポイント

過去問で問われる角度

行政書士試験では、意見公募手続は択一式(5肢択一・多肢選択)で次のような角度から繰り返し出題されています。

  1. 「命令等」の範囲を問う: 審査基準・処分基準・行政指導指針が含まれるか/条例・法律が含まれるか。
  2. 意見提出できる主体を問う: 「利害関係を有する者に限る」「日本国民に限る」といった限定を付けて誤りを作る。
  3. 意見提出期間の数字を問う: 「30日以上」を「30日以内」「14日以上」などにすり替える。起算点を「決定の日から」などに変える。
  4. 考慮義務の性質を問う: 「多数意見に従う義務がある」「提出意見に拘束される」といった反映義務型の選択肢で誤りを作る。
  5. 適用除外と公示義務を問う: 「適用除外なら一切公示は不要」という選択肢で誤りを作る(実際は不実施の旨と理由の公示が必要)。
  6. 地方公共団体への適用を問う: 「地方公共団体の機関が定める命令等にも意見公募手続が適用される」という選択肢で誤りを作る。

頻出論点の整理

  1. 「命令等」の範囲: 法規命令(政令・省令・規則)だけでなく、審査基準・処分基準・行政指導指針も含まれる。処分の要件を定める告示も「命令」に含まれる。
  2. 「何人も(広く一般)」意見提出可能: 日本国民に限定されない。利害関係の有無も問わない。求められるのは意見だけでなく「情報」も含む。
  3. 意見提出期間は公示の日から起算して30日以上: やむを得ない理由がある場合は短縮可能だが、その理由を公示しなければならない。
  4. 考慮義務であって反映義務ではない: 提出意見を十分に考慮すれば足り、従う義務はない(法42条)。
  5. 結果の公示が必要: 命令等の公布と同時期に、提出意見・考慮した結果(案との差異を含む)及び理由を公示する。
  6. 地方公共団体には適用されない: 第6章は地方公共団体の機関が命令等を定める行為には適用されない(法3条3項)。

間違いやすいポイント・よくある誤解

  • 「命令等」に条例は含まれない(条例は議会の議決により制定されるため、行政機関が定める「命令等」に当たらない)。
  • 「命令等」に法律は含まれない(法律は国会が制定する)。
  • 意見提出期間は「30日以上」であって「30日以内」ではない。起算は「公示の日から」である。
  • やむを得ない理由による短縮自体は可能だが、理由の公示が必要。「理由を示さず短縮できる」は誤り。
  • 審議会等が意見公募手続に準じた手続を実施した場合は、重ねて意見公募手続を実施する必要はない。
  • 意見公募手続を実施しなかった場合でも、その旨と理由の公示は必要。「適用除外なら何も公示しなくてよい」は誤り。
  • 提出意見は原則そのまま公示するが、第三者の利益を害するおそれ等がある場合は整理・要約したものを公示できる。

関連論点・あわせて学びたいテーマ

意見公募手続を理解するうえで、その対象である審査基準・処分基準・行政指導指針が、申請に対する処分・不利益処分・行政指導の各場面でどのように機能するのかを併せて押さえると、知識が立体的になります。命令等の「制定場面(第6章)」と「適用場面(第2章〜第4章)」を往復しながら学習すると、なぜこれらの行政規則が意見公募手続の対象になるのかが腑に落ちます。

また、命令等(法規命令)の効力を直接争いにくい理由を理解するには、抗告訴訟における「処分性」の考え方を理解しておくことが有益です。命令等それ自体は一般的・抽象的なルールであるため、原則として処分性が認められにくく、これを争うには通常、当該命令等に基づく具体的処分を待って争うことになります。

まとめ

意見公募手続は、行政手続法の中でも比較的新しい制度であり、行政書士試験では条文ベースの正確な知識が問われます。特に以下の点を正確に記憶しておきましょう。

  • 命令等の範囲は4種類(法律に基づく命令・規則、審査基準、処分基準、行政指導指針)。処分の要件を定める告示も含まれる。
  • 意見は何人も(広く一般)提出可能であり、利害関係の有無は問わない。情報の提供も求められる。
  • 意見提出期間は公示の日から起算して原則30日以上だが、やむを得ない理由がある場合は短縮可能(理由の公示が必要)。
  • 提出意見は十分に考慮する義務があるにとどまり、これに従う(反映する)義務はない。
  • 命令等を定めた場合は、公布と同時期に提出意見・考慮結果及び理由を公示する。
  • 適用除外に該当する場合でも、不実施の旨と理由の公示義務がある。
  • 地方公共団体の機関が命令等を定める行為には、第6章は適用されない。

条文をしっかり読み込み、各手続のステップと適用除外の要件、そして「30日以上」「考慮義務」「何人も」「地方には適用なし」という頻出キーワードを正確に把握することが、得点を確実にする近道です。

関連記事もあわせて確認しておきましょう。

確認問題

行政手続法上の意見公募手続における「命令等」には、審査基準・処分基準・行政指導指針が含まれるが、地方公共団体の条例は含まれない。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
行政手続法2条8号において「命令等」は、法律に基づく命令又は規則、審査基準、処分基準、行政指導指針の4つと定義されています。条例は議会の議決により制定されるものであり、「命令等」には含まれません。
確認問題

意見公募手続において意見を提出できるのは、当該命令等に利害関係を有する日本国民に限られる。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
行政手続法39条1項は「広く一般の意見を求めなければならない」と規定しており、意見を提出できる主体に制限はありません。日本国民に限定されず、外国人や法人も提出でき、利害関係の有無も問いません。
確認問題

命令等制定機関は、意見公募手続において提出された意見が多数に上った場合、多数意見に従って命令等を定める法的義務を負う。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
行政手続法42条は、提出された意見を「十分に考慮しなければならない」と規定するのみであり、意見に従う(反映する)義務までは課していません。考慮した上で原案どおり制定することも適法です。
確認問題

意見公募手続における意見提出期間は、原則として命令等の案の公示の日から起算して30日以上でなければならないが、30日以上の期間を定めることができないやむを得ない理由があるときは、理由を明らかにしたうえで30日を下回る期間を定めることができる。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
意見提出期間は公示の日から起算して30日以上が原則です(行政手続法39条3項)。ただし、やむを得ない理由があるときは、その理由を案の公示の際に明らかにしたうえで30日を下回る期間を定めることができます(同法40条1項)。
確認問題

命令等制定機関が法39条4項の適用除外に該当することを理由に意見公募手続を実施しないで命令等を定めた場合、その旨や理由を公示する必要は一切ない。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
行政手続法43条5項により、適用除外に該当して意見公募手続を実施しないで命令等を定めた場合でも、命令等の公布と同時期に、命令等の題名及び趣旨、意見公募手続を実施しなかった旨及びその理由を公示しなければなりません。
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