委任・請負・寄託の比較|3つの契約類型を一覧表で整理
民法の委任・請負・寄託の3つの契約類型を比較表で解説。各契約の定義、当事者の権利義務、報酬請求権、解除・解約告知の違いを行政書士試験の出題ポイントに沿って整理します。
はじめに|役務提供型契約の区別が試験で問われる
民法は、他人に何らかの役務(サービス)を提供する契約として、委任・請負・寄託などの契約類型を定めています。行政書士試験では、これら3つの契約類型の違いが択一式で出題されます。
特に、委任と請負の違い(仕事の完成義務の有無)、委任と寄託の違い(目的の違い)は頻出論点です。本記事では、3つの契約類型を比較しながら整理します。
請負契約
定義
請負とは、当事者の一方(請負人)がある仕事を完成することを約し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する契約です(民法第632条)。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。 ― 民法 第632条
請負の特徴
- 諾成契約: 合意のみで成立
- 双務契約: 請負人は仕事完成義務、注文者は報酬支払義務
- 有償契約: 報酬の支払いが要素
- 仕事の完成が目的: 結果の実現が求められる
報酬の支払時期
報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に支払わなければなりません(民法第633条)。引渡しを要しない場合は、仕事の完成後に支払います。つまり、報酬は後払いが原則です。
請負人の担保責任(契約不適合責任)
請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を引き渡した場合、注文者は以下の権利を行使できます(民法第559条・第562条以下の準用)。
- 修補請求(追完請求)
- 報酬減額請求
- 損害賠償請求
- 契約の解除
2020年の民法改正により、旧法の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に統一されました。
注文者の解除権
注文者は、請負人が仕事を完成しない間は、いつでも損害を賠償して契約を解除することができます(民法第641条)。
委任契約
定義
委任とは、当事者の一方(委任者)が法律行為をすることを相手方(受任者)に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生ずる契約です(民法第643条)。
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。 ― 民法 第643条
法律行為でない事務の委託は準委任と呼ばれ、委任の規定が準用されます(民法第656条)。
委任の特徴
- 諾成契約: 合意のみで成立
- 原則無償契約: 特約がなければ報酬請求権なし(民法第648条第1項)
- 仕事の完成義務なし: 善管注意義務をもって事務を処理すれば足りる
受任者の義務
- 善管注意義務: 善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務(民法第644条)
- 報告義務: 委任者の請求があるとき及び委任終了後に経過・結果を報告する義務(民法第645条)
- 受取物等の引渡義務: 事務処理にあたって受け取った金銭等を委任者に引き渡す義務(民法第646条)
委任者の義務
- 費用前払義務: 事務処理に必要な費用を前払いする義務(民法第649条)
- 費用償還義務: 受任者が支出した必要費を償還する義務(民法第650条第1項)
- 損害賠償義務: 受任者が事務処理のために過失なく損害を受けた場合の賠償義務(民法第650条第3項)
委任の終了
委任は、以下の事由により終了します。
- 各当事者がいつでも解除できる(民法第651条第1項)
- 委任者又は受任者の死亡
- 受任者の破産手続開始決定
- 委任者又は受任者の後見開始の審判
重要ポイント: 委任の解除は、相手方に不利な時期に行った場合、やむを得ない事由がなければ相手方の損害を賠償しなければなりません(民法第651条第2項)。
寄託契約
定義
寄託とは、当事者の一方(寄託者)がある物を保管することを相手方(受寄者)に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生ずる契約です(民法第657条)。
寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。 ― 民法 第657条
2020年の民法改正により、寄託は要物契約から諾成契約に変更されました。
寄託の特徴
- 諾成契約: 合意のみで成立(改正前は要物契約)
- 原則無償契約: 特約がなければ報酬請求権なし
- 物の保管が目的: 預かった物を安全に保管し返還する
受寄者の注意義務
無償寄託の場合、受寄者の注意義務が軽減される点が重要です。善管注意義務よりも軽い「自己の財産に対するのと同一の注意」で足ります(民法第659条)。
寄託の終了と返還
- 寄託者はいつでも返還を請求できます(民法第662条)
- 受寄者は、期間の定めがない場合はいつでも返還できます
- 期間の定めがある場合でも、やむを得ない事由があれば期間前に返還できます
3つの契約類型の比較表
委任と請負の区別が問題となるケース
実務では、委任と請負のどちらに該当するか判断が難しいケースがあります。
- 弁護士への訴訟委任: 委任(勝訴という結果の保証はない)
- 建物の建築: 請負(建物の完成が目的)
- 医師の診療: 準委任(治癒という結果の保証はない)
- 行政書士への書類作成依頼: 請負的要素と委任的要素の両方がある
区別の基準は、仕事の完成(結果の実現)が契約の本質かどうかです。結果を問わず事務処理そのものが目的であれば委任、特定の結果の実現が目的であれば請負です。
試験での出題ポイント
- 請負は仕事の完成義務あり、委任はなし: 最も基本的な区別
- 委任は原則無償、請負は有償: 委任は特約がなければ報酬なし
- 委任は各当事者がいつでも解除可: ただし不利な時期の解除には損害賠償が必要
- 寄託は諾成契約: 2020年改正により要物契約から変更
- 無償寄託の注意義務は軽減: 自己の財産に対するのと同一の注意
- 委任は死亡で終了、請負は原則終了しない: 終了事由の違い
委任契約において、受任者は特約がなくても報酬を請求することができる。
2020年の民法改正により、寄託契約は要物契約から諾成契約に変更された。
無償寄託の場合、受寄者は善良な管理者の注意をもって保管しなければならない。
まとめ
委任・請負・寄託は、それぞれ目的と性質が異なる契約類型です。請負は仕事の完成が目的で有償契約、委任は事務処理の委託で原則無償、寄託は物の保管で原則無償です。
試験では、仕事完成義務の有無、報酬の要否、解除の要件、終了事由の違いが問われます。比較表で各契約の特徴を正確に整理し、混同しないようにしましょう。
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