情報公開法の要点|開示請求の要件と不開示情報を整理
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)を解説。開示請求権の要件、6つの不開示情報、部分開示・裁量的開示の仕組みを行政書士試験の出題ポイントに沿って整理します。
はじめに|情報公開法は行政法の重要テーマ
情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)は、行政機関が保有する情報を国民に公開する制度を定めた法律です。国民の「知る権利」を実現する重要な法律であり、行政書士試験でも択一式で出題されています。
情報公開法の出題パターンは、開示請求の要件、不開示情報の種類、救済手続が中心です。条文の数は多くありませんが、6つの不開示情報の正確な理解が求められます。
本記事では、情報公開法の全体像を解説し、試験で問われるポイントを整理します。条文数が限られているため、出題される論点は固定化しやすく、ここを押さえれば1問を確実に取りに行ける分野です。逆に「何人も」「知る権利の不使用」「30日以内」「義務的諮問」といった頻出ポイントを取りこぼすと、得点しやすい分野で失点することになります。本記事は条文の趣旨・要件整理表・誤解しやすいポイント・隣接制度との比較まで踏み込み、択一でどの角度から問われても対応できる水準を目指します。
情報公開法の全体構造をつかむ
情報公開法は、おおまかに次の流れで理解すると暗記が楽になります。
- 入口(誰が・何を・どうやって請求するか): 請求権者(第3条)、対象となる行政文書(第2条)、請求の手続(第4条)
- 判断(開示するか・しないか): 開示義務の原則(第5条本文)と6つの不開示情報(第5条各号)、部分開示(第6条)、裁量的開示(第7条)、存否応答拒否(第8条)
- 決定(いつ・どう答えるか): 開示決定等の期限(第10条)、決定の通知、第三者保護手続(第13条)
- 救済(不服があったらどうするか): 審査請求と情報公開・個人情報保護審査会への諮問(第19条)、取消訴訟
この「入口→判断→決定→救済」の順序は、開示請求の実際の時間軸とも一致しています。条文番号も概ねこの順に並んでいるため、流れで覚えると条文番号の暗記も定着しやすくなります。
情報公開法の目的と対象
法律の目的
情報公開法は、政府の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的としています(第1条)。
この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。
― 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)第1条
ポイント: 情報公開法は「知る権利」という文言を直接使用していません。目的規定では「政府の有するその諸活動を国民に説明する責務」(説明責任=アカウンタビリティ)という表現が用いられています。
「知る権利」が明記されなかった理由
立法過程では「知る権利」を明記すべきとの議論もありましたが、最終的には条文に書き込まれませんでした。これは、「知る権利」の法的性質や具体的な内容について学説・判例上の理解が固まっていなかったことが背景にあるとされます。代わりに「国民主権の理念」と「政府の説明する責務(アカウンタビリティ)」という表現が採用されました。試験では「目的規定に知る権利が明記されている」という記述は誤りとなるため、頻出の引っかけポイントです。
なお、目的規定に登場するキーワードは次の3点に整理できます。
- 国民主権の理念にのっとり: 制度の根拠となる理念
- 行政文書の開示を請求する権利: 制度の中核(請求権が「権利」として明記されている点は重要)
- 政府の説明する責務(アカウンタビリティ)が全うされるように: 制度の目的
「権利」という文言自体は使われている(開示請求は権利である)一方で、「知る権利」という熟語は使われていない、という区別を押さえておきましょう。
対象となる機関
情報公開法の対象は行政機関です。国会や裁判所は対象に含まれません。
- 対象: 内閣府、各省庁、委員会、庁など国の行政機関
- 対象外: 国会(立法府)、裁判所(司法府)
- 独立行政法人: 独立行政法人等情報公開法(別の法律)により対応
「行政機関」の範囲と地方公共団体の扱い
情報公開法が直接対象とするのは、あくまで国の行政機関です。地方公共団体(都道府県・市区町村)の保有する情報については、この法律は適用されません。地方公共団体は、それぞれが制定する情報公開条例によって情報公開を行っています。実際、情報公開条例は国の情報公開法に先行して各地で制定されてきた経緯があり、条例が制度の先駆けとなった分野です。
ただし、情報公開法は地方公共団体に対して、この法律の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定・実施するよう努める旨の規定を置いています(努力義務)。
地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。
― 情報公開法 第25条
行政文書の定義
開示請求の対象となるのは「行政文書」です。行政文書とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいいます(第2条第2項)。
この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。(以下略)
― 情報公開法 第2条第2項
3つの要件:
- 行政機関の職員が職務上作成し又は取得したもの
- 行政機関の職員が組織的に用いるもの(個人的なメモは該当しない)
- 当該行政機関が保有しているもの
「組織的に用いる」要件の意味
3要件のうち、試験で最も論点になりやすいのが「組織的に用いる」という点です。職員が個人的に作成・保有しているメモや、自己の便宜のために保管しているにすぎない資料は、たとえ職務に関連していても「組織的に用いるもの」には当たらず、行政文書から除かれます。組織共用文書性が要件である点を押さえてください。
また、定義には次のような特徴があります。
- 媒体を問わない: 文書・図画だけでなく、電磁的記録(電子データ)も含まれます。紙に限られません。
- 作成だけでなく取得も含む: 行政機関自らが作った文書だけでなく、外部から取得した文書も対象です。
- 適用除外文書: 官報・白書・新聞・雑誌・書籍など、不特定多数に販売するため発行されるものや、公文書管理法に基づき特定歴史公文書等として国立公文書館等に移管されたものは、行政文書から除外されます(第2条第2項各号)。すでに広く公開されている刊行物や、歴史資料として別制度(公文書管理法)で管理されるものを重ねて開示請求の対象とする必要がないためです。
ここで重要なのが、開示請求の対象は「行政機関が現に保有している行政文書」であるという点です。請求を受けた段階で文書が存在しなければ開示しようがありません。行政機関に新たに文書を作成させたり、情報を収集・加工させたりする義務まで課すものではないことに注意しましょう。
開示請求権
請求権者
何人も行政文書の開示を請求することができます(第3条)。日本国民に限らず、外国人や法人も開示請求をすることができます。
何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる。
― 情報公開法 第3条
「何人も」の射程と請求理由の不要
「何人も」とは、自然人・法人を問わず、また日本国籍の有無も問わないことを意味します。外国に居住する外国人であっても請求できると解されています。
さらに重要なのが、開示請求にあたって理由や利害関係を示す必要がないという点です。個人情報保護法に基づく自己情報の開示請求が「本人」に限られるのと対照的に、情報公開法の開示請求は誰でも、何の目的でも行うことができます。「自己と関係のある情報でなければ請求できない」というのは誤りです。
開示請求の手続
開示請求は、以下の事項を記載した書面(開示請求書)を行政機関の長に提出して行います(第4条)。
- 氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人等にあっては代表者の氏名
- 行政文書の名称その他の開示請求に係る行政文書を特定するに足りる事項
形式上の不備と補正
開示請求書に形式上の不備があるときは、行政機関の長は、開示請求者に対し、相当の期間を定めて補正を求めることができます。この際、行政機関の長は、補正の参考となる情報を提供するよう努めなければならないとされています(第4条第2項)。請求者がうまく文書を特定できない場合に、いきなり却下するのではなく、補正の機会を与え、特定の手助けをする仕組みです。
開示の実施と手数料
開示を受ける際には、文書の閲覧または写しの交付という方法によります。また、開示請求をする者・開示を受ける者は、政令で定めるところにより、手数料を納付しなければなりません(第16条)。情報公開制度は手数料制を採用している点も、軽い知識として押さえておくとよいでしょう。
開示・不開示の決定
行政機関の長は、開示請求があったときは、不開示情報が記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければなりません(第5条)。開示・不開示の決定は、原則として開示請求があった日から30日以内に行わなければなりません(第10条第1項)。
行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。
― 情報公開法 第5条
「開示しなければならない」=原則開示
第5条本文は「開示しなければならない」と定めており、開示が原則・不開示が例外という構造になっています。不開示情報に該当しない限り、行政機関の長は開示する義務を負います。開示するかどうかが行政機関の自由裁量に委ねられているわけではない、という点に注意してください。
決定期限の延長
30日の原則期限は、事務処理上の困難その他正当な理由があるときは、30日以内に限り延長することができます(第10条第2項)。さらに、開示請求に係る行政文書が著しく大量であるため、相当の期間内にその全てについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には、相当の部分について期限内に決定し、残りについては相当の期間内に決定すれば足りるとする特例(第11条)もあります。
第三者に関する情報がある場合の手続
開示請求された文書に、国・行政機関・開示請求者以外の第三者に関する情報が含まれているとき、行政機関の長は、開示決定等をするにあたり、その第三者に対して意見書を提出する機会を与えることができます(任意的意見聴取、第13条第1項)。
さらに、第三者が反対の意思を表示した情報を、それでもなお公益上の理由により開示しようとする場合などには、第三者への意見聴取が義務となります(第13条第2項)。この場合、開示決定をするときは、開示決定の日と開示を実施する日との間に少なくとも2週間を置き、開示決定後直ちに第三者に通知しなければならないとされています。第三者が争訟(審査請求や取消訴訟)を提起する機会を確保するための配慮です。
6つの不開示情報
情報公開法第5条は、6つの不開示情報を列挙しています。これが試験の最重要ポイントです。
不開示情報の全体像
まずは6類型を一覧で押さえましょう。試験では「この情報は何号に当たるか」「不開示の要件(おそれの有無)」が問われます。
1. 個人に関する情報(第5条第1号)
特定の個人を識別することができる情報、又は個人の権利利益を害するおそれがある情報は不開示です。ただし、公務員の職務遂行に関する情報のうち、公務員の職及び職務遂行の内容に関する部分は開示対象です。
個人識別型と権利利益侵害型
情報公開法の個人情報の不開示は、特定の個人を識別できる情報を広く不開示とする「個人識別型」を採用していると説明されます。個人の氏名・住所など、それ単体または他の情報と照合することで特定の個人を識別できる情報は、原則として不開示です。
ただし、1号にはいくつかの除外(=それでも開示される情報)が定められています。
- 法令の規定により、または慣行として公にされ、または公にすることが予定されている情報
- 人の生命、健康、生活または財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報
- 公務員等の職務遂行に係る情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分
公務員の情報の扱い
公務員が職務として行った行為に関する情報のうち、その職(ポスト)と職務遂行の内容は開示対象となります。これは、公務の遂行内容を国民の監視に置くという制度趣旨によるものです。一方で、公務員の私的な情報(自宅住所など)は引き続き個人情報として保護されます。「公務員に関する情報はすべて開示される」とするのは誤りで、あくまで職務遂行に係る部分に限られる点に注意しましょう。
2. 法人等に関する情報(第5条第2号)
法人等の正当な利益を害するおそれがある情報は不開示です。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため公にすることが必要な情報は除きます。
法人の事業活動上のノウハウや経営戦略、信用情報などを公にすると、その法人の正当な利益(競争上の地位など)を害するおそれがあるため不開示とされます。ただし、人の生命・健康・生活・財産を保護するために公にすることが必要な情報は、法人保護よりも人の保護を優先して開示されます。
3. 国の安全等に関する情報(第5条第3号)
国の安全が害されるおそれ、他国との信頼関係が損なわれるおそれ、又は他国等との交渉上不利益を被るおそれがある情報は不開示です。
「相当の理由」要件(行政機関の長の判断の尊重)
3号と次の4号には、他の号と異なる特徴があります。それは、不開示とするかどうかについて、行政機関の長が「おそれがあると認めることにつき相当の理由がある」情報、という書き方になっている点です。これは、国の安全や公共の安全といった高度に政策的・専門的な判断について、行政機関の長の判断を相応に尊重する趣旨とされ、司法審査においても行政機関の長の判断の合理性を問う形になります。1号・2号・5号・6号が客観的な「おそれ」の有無を要件とするのと対比して理解しておきましょう。
4. 公共の安全等に関する情報(第5条第4号)
公にすることにより犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報は不開示です。
3号と同様、「相当の理由がある」と認められる情報が不開示とされ、行政機関の長(典型的には捜査機関等)の専門的判断が尊重されます。
5. 審議・検討等に関する情報(第5条第5号)
国の機関等の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ等がある情報は不開示です。
意思決定に至る過程での自由・率直な議論を保護する趣旨です。「率直な意見の交換」「意思決定の中立性」が不当に損なわれる、国民の間に不当に混乱を生じさせる、特定の者に不当に利益を与え不利益を及ぼす、といった「不当に」という限定が付いている点が特徴です。意思決定が終わった後の情報まで広く不開示とするものではありません。
6. 事務・事業に関する情報(第5条第6号)
国の機関等が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報は不開示です。
監査・検査・取締りに関する情報、契約・交渉に関する情報、人事管理に関する情報など、公にすることで事務・事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものが該当します。6号は他の号でカバーしきれない事務事業上の支障を広く受け止める役割を担っています。
部分開示と裁量的開示
部分開示(第6条)
行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合でも、不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、その部分を除いた残りの部分について開示しなければなりません。
行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合において、不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、開示請求者に対し、当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。(以下略)
― 情報公開法 第6条第1項
「容易に区分して除くことができるとき」という要件に注意してください。区分が技術的に困難であったり、区分によって有意な情報が残らなくなったりする場合は、部分開示の義務は生じません。なお、個人識別情報については、特定の個人を識別できることとなる記述等の部分(氏名等)を除けば、公にしても個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、その部分を除いた残りを開示するという特則があります(第6条第2項)。
公益上の理由による裁量的開示(第7条)
不開示情報に該当する場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、行政機関の長は裁量により開示することができます。
行政機関の長は、開示請求に係る行政文書に不開示情報(第五条第一号の二に掲げる情報を除く。)が記録されている場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該行政文書を開示することができる。
― 情報公開法 第7条
裁量的開示は、あくまで「できる」規定であり、開示の義務を課すものではありません。不開示情報に該当する以上、原則は不開示ですが、それを上回る公益上の必要が認められる場合に限り、行政機関の長の判断で開示する道を開いたものです。第5条本文の「開示しなければならない」(義務的開示)と、第7条の「開示することができる」(裁量的開示)の文末表現の違いは頻出ポイントです。
行政文書の存否に関する情報(第8条)
開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで不開示情報を開示することとなるときは、その存否を明らかにしないで開示請求を拒否することができます(グローマー拒否)。
開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、行政機関の長は、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。
― 情報公開法 第8条
グローマー拒否が必要な理由
たとえば「特定個人の病歴に関する文書」を請求された場合、「そのような文書は存在する」と答えるだけで、その人物に病歴があるという事実(不開示情報)を明らかにしてしまいます。逆に「存在しない」と答え続ければ、存在する場合だけ沈黙することになり結局推測されてしまいます。そこで、存否そのものを明らかにせずに拒否することを認めたのがグローマー拒否です。名称は米国の事案に由来するとされます。「文書が存在しないから拒否する」のではなく、「存否を答えること自体が不開示情報の開示になる」場面である点を区別しましょう。
救済手続
不服申立て
開示決定等に不服がある場合は、行政不服審査法に基づく審査請求をすることができます。この場合、行政機関の長は原則として情報公開・個人情報保護審査会に諮問しなければなりません(第19条)。
開示決定等又は開示請求に係る不作為について審査請求があったときは、当該審査請求に対する裁決をすべき行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、情報公開・個人情報保護審査会(中略)に諮問しなければならない。
― 情報公開法 第19条第1項
義務的諮問という特徴
ここでのポイントは、審査会への諮問が原則として義務である(「諮問しなければならない」)という点です。行政不服審査法では、第三者機関(行政不服審査会等)への諮問は審理員意見書等を踏まえて行われますが、情報公開法では情報公開・個人情報保護審査会への諮問が制度上組み込まれています。ただし、審査請求が不適法で却下する場合や、裁決で全部開示する(請求を全部認容する)場合など、諮問する必要がない場合は除かれます(第19条第1項各号)。「常に必ず諮問が必要」とまではいえず、例外がある点に注意してください。
情報公開・個人情報保護審査会の権限(インカメラ審理)
情報公開・個人情報保護審査会は、必要があると認めるときは、諮問をした行政機関の長に対し、対象となる行政文書の現物の提示を求めることができ、提示を求められた行政機関の長はこれを拒むことができません。この、文書そのものを審査会だけが見分する手続をインカメラ審理(ヴォーン・インデックスとあわせて)と呼びます。審査請求人や訴訟当事者には文書を見せずに、第三者機関である審査会が中身を確認して判断する仕組みで、不開示情報を保護しながら判断の適正を確保する重要な制度です。なお、裁判所による訴訟手続でのインカメラ審理は、明文の制度としては限定的であり、この点で審査会手続との違いが意識されます。
取消訴訟
不開示決定に対して行政事件訴訟法に基づく取消訴訟を提起することも可能です。
開示・不開示の決定は「処分」に当たるため、これを争う場合は審査請求(行政不服審査法)か取消訴訟(行政事件訴訟法)によることになります。審査請求と取消訴訟は、原則として自由選択できます(自由選択主義。審査請求前置が一律に課されているわけではありません)。不開示決定の取消しを求める訴訟は、抗告訴訟のうち取消訴訟として提起されます。
頻出論点と出題ポイントの整理
試験での出題ポイント
- 請求権者は「何人も」: 国籍を問わない。外国人や法人も請求可能。請求理由も不要
- 「知る権利」の文言なし: 法律の目的は「説明する責務」(アカウンタビリティ)。ただし「開示を請求する権利」という文言はある
- 6つの不開示情報: 個人情報・法人情報・国の安全・公共の安全・審議検討・事務事業
- 3号・4号は「相当の理由」: 国の安全・公共の安全は行政機関の長の判断を尊重
- 部分開示: 不開示部分を「容易に区分して除くことができるとき」に残部を開示する義務
- 裁量的開示: 不開示情報でも公益上特に必要があれば「開示することができる」(義務ではない)
- グローマー拒否: 存否を答えるだけで不開示情報を開示することになる場合に存否を明らかにせず拒否
- 決定期限: 原則30日以内、さらに30日延長可
- 義務的諮問: 審査請求があれば原則として情報公開・個人情報保護審査会に諮問
- 対象は国の行政機関: 国会・裁判所は対象外、地方公共団体は条例で対応
過去問で問われた角度
情報公開法は、条文の文末表現の違いや、対象機関の範囲を入れ替える形での出題が目立ちます。具体的には次のような角度です。
- 「開示しなければならない」と「開示することができる」のすり替え: 第5条の義務的開示を「裁量で開示できるにすぎない」と誤らせる、第7条の裁量的開示を「開示義務がある」と誤らせるパターン
- 請求権者の限定: 「日本国民に限る」「利害関係が必要」などと限定を加える誤り
- 目的規定の文言: 「知る権利を明記している」という誤り
- 対象機関: 「裁判所も対象」「地方公共団体にも直接適用される」などの誤り
- 諮問の要否: 「審査請求があっても諮問は任意」「いかなる場合も必ず諮問が必要」といった、原則と例外の理解を試す出題
- 存否応答拒否の場面: 単に「文書が存在しない」場合とグローマー拒否の場面を混同させる出題
よくある誤解
関連論点|個人情報保護・公文書管理との関係
情報公開法は単独で完結する制度ではなく、隣接する2つの法律と一体で「情報の入口・出口・保存」を担っています。
- 個人情報保護法との関係: 情報公開法は「何人も」が「行政文書一般」を請求する制度であるのに対し、個人情報保護法(行政機関等が保有する個人情報の取扱いを含む)は「本人」が「自己の保有個人情報」の開示等を求める制度です。両者は請求権者・対象・趣旨が異なります。なお、両制度の救済を担う第三者機関が共通の情報公開・個人情報保護審査会である点も押さえどころです。
- 公文書管理法との関係: 情報公開法が「現に保有する行政文書の開示」を扱うのに対し、公文書管理法は行政文書の作成・整理・保存・移管・廃棄という文書のライフサイクルを規律します。歴史公文書等として国立公文書館等に移管された文書は情報公開法の行政文書から除かれ、公文書管理法に基づく利用請求の対象となります。「文書を作って残す」公文書管理法と「残った文書を出す」情報公開法は車の両輪の関係にあります。
行政書士試験では、行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法の三法に比べると出題比重は小さいものの、これらの隣接制度との比較で問われることがあります。あわせて学習しておくと取りこぼしを防げます。
情報公開法に基づく開示請求は、日本国民に限られ、外国人は請求することができない。
情報公開法は、その目的規定において「知る権利」という文言を明記している。
不開示情報に該当する場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、行政機関の長は裁量により開示することができる。
行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合、行政機関の長は当該行政文書の全体を不開示としなければならない。
開示決定等について審査請求があったときは、行政機関の長は、審査請求を却下する場合など一定の例外を除き、情報公開・個人情報保護審査会に諮問しなければならない。
まとめ
情報公開法は、行政機関の保有する行政文書の開示請求制度を定めた法律です。請求権者は「何人も」であり国籍を問わず、請求理由も不要です。対象となるのは国の行政機関が保有する行政文書であり、国会・裁判所は対象外、地方公共団体は各自の条例で対応します。
開示は原則であり(第5条本文「開示しなければならない」)、6つの不開示情報(個人情報・法人情報・国の安全・公共の安全・審議検討・事務事業)に該当する場合に限って不開示とされます。3号・4号は行政機関の長の「相当の理由」判断が尊重される点が特徴です。さらに、部分開示(第6条)、公益上の裁量的開示(第7条「開示することができる」)、存否応答拒否=グローマー拒否(第8条)といった調整の仕組みが置かれ、可能な限り情報公開が図られる構造になっています。
救済は審査請求と取消訴訟により、審査請求があれば原則として情報公開・個人情報保護審査会への義務的諮問が行われ、審査会はインカメラ審理によって文書の現物を確認できます。
試験では、不開示情報の具体的内容、請求権者の範囲、「知る権利」の文言の不使用、義務的開示と裁量的開示の文末表現の違い、救済手続が繰り返し問われます。条文の正確な理解を心がけましょう。関連する分野として、行政不服審査法の要点|審査請求の手続と審理の流れや行政事件訴訟法の要点|取消訴訟の訴訟要件を整理、隣接制度である個人情報保護法の要点|行政機関の個人情報の取扱いもあわせて確認すると、救済手続や情報法制の全体像が立体的に理解できます。