株式会社の設立手続|発起設立と募集設立の比較
株式会社の設立手続を行政書士試験向けに解説。発起設立と募集設立の違い、定款の記載事項(絶対的・相対的・任意的)、変態設立事項、設立の瑕疵と設立無効の訴えを比較表つきで整理します。
はじめに|設立は会社法の基本中の基本
株式会社の設立は、会社法の学習において最初に取り組むテーマであり、行政書士試験でも頻出です。設立手続の流れ、定款の記載事項、発起設立と募集設立の違いを正確に理解することが求められます。
本記事では、設立手続の全体像を把握した上で、各手続の詳細と試験での出題ポイントを整理します。
設立手続の全体像
株式会社の設立手続は、大きく以下の流れで進みます。
- 定款の作成(発起人が作成)
- 定款の認証(公証人による認証)
- 出資の履行(設立時発行株式の引受けと払込み)
- 設立時役員等の選任
- 設立の登記(本店所在地で登記)
設立の登記をすることにより、株式会社は成立します(会社法49条)。つまり、登記が会社の成立要件です。
発起人
発起人とは
発起人とは、定款に発起人として署名又は記名押印(電子署名を含む)をした者をいいます(会社法26条1項)。
発起人の要件と義務は以下のとおりです。
- 発起人は1人以上いれば足りる(自然人でも法人でもよい)
- 発起人は設立時発行株式を1株以上引き受ける義務がある(会社法25条2項)
- 発起人全員が定款に署名又は記名押印しなければならない
発起人の権限
発起人の権限の範囲については、判例は次のように区分しています。
判例(最判昭33.10.24): 発起人の権限は、会社の設立自体を直接の目的とする行為に限られ、開業準備行為は原則として含まれないとしています。
定款の作成と認証
定款の意義
定款とは、会社の組織と活動に関する根本規則をいいます。定款は、会社の基本法ともいうべき重要な文書です。
定款の記載事項
絶対的記載事項(27条)
絶対的記載事項は以下の5つです。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
- 発起人の氏名又は名称及び住所
これらの事項のいずれか1つでも欠けると、定款全体が無効となります。
相対的記載事項の例
- 変態設立事項(28条):現物出資、財産引受け、発起人の報酬、設立費用
- 種類株式の内容
- 株式の譲渡制限に関する規定
- 株主総会の招集通知の期間短縮
定款の認証
発起人が定款を作成したときは、その定款について公証人の認証を受けなければならない。 ― 会社法 第30条第1項
原始定款(会社設立時の定款)は、公証人の認証を受けなければ効力を生じません。認証を受けていない定款に基づく設立は無効です。
なお、設立後に定款を変更する場合(株主総会の特別決議)には、公証人の認証は不要です。
変態設立事項(28条)
変態設立事項とは、発起人の利益と会社の利益が相反する可能性のある事項であり、定款に記載しなければ効力を生じません。
検査役の調査
現物出資と財産引受けについては、原則として裁判所が選任した検査役の調査が必要です(会社法33条)。
ただし、以下の場合は検査役の調査が不要です。
- 現物出資・財産引受けの目的財産の定款記載価額の総額が500万円を超えない場合
- 目的財産が市場価格のある有価証券であり、定款記載価額が市場価格を超えない場合
- 定款記載価額が相当である旨の弁護士・税理士等の証明を受けた場合(不動産は不動産鑑定士の鑑定評価も必要)
発起設立と募集設立
定義
発起設立と募集設立の比較
創立総会
募集設立の場合、設立時株主全員(発起人と設立時募集株式の引受人)で構成される創立総会を開催しなければなりません。
創立総会の主な権限は以下のとおりです。
- 設立時取締役・設立時監査役等の選任
- 定款の変更(ただし変更できる事項には制限あり)
- 設立に関する報告の聴取
- 設立手続の調査報告の聴取
出資の履行
払込みの方法
発起人は、設立時発行株式の引受け後、遅滞なく、引き受けた株式について全額の払込み(又は全部の現物出資財産の給付)をしなければなりません(会社法34条1項)。
払込みは、発起人が定めた銀行等の払込取扱機関において行います。
払込みをしなかった場合
発起設立において、発起人が出資の払込みをしなかった場合、当該発起人は設立時発行株式の株主となる権利を失います(会社法36条3項)。この権利の失権は、催告の有無にかかわらず生じます。
仮装払込み(預合い・見せ金)
設立時役員等の選任
発起設立の場合
発起設立では、出資の履行完了後、発起人の議決権の過半数で設立時取締役を選任します(会社法40条1項)。
募集設立の場合
募集設立では、創立総会の決議で設立時取締役等を選任します(会社法88条)。
設立時取締役の調査
設立時取締役(設立時監査役が選任されている場合は設立時監査役も)は、設立手続が法令・定款に違反していないかを調査しなければなりません(会社法46条、93条)。
設立の登記と会社の成立
株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。 ― 会社法 第49条
設立の登記は、会社の成立要件です。登記をしなければ、いかに他の設立手続が完了していても、会社は成立しません。
設立の瑕疵
設立無効の訴え
設立手続に瑕疵がある場合、設立無効の訴えによって会社の設立を無効とすることができます(会社法828条1項1号)。
設立無効事由の例
- 定款の絶対的記載事項の欠缺
- 公証人の認証を受けていない
- 設立時発行株式の全部について払込みがない
- 設立の登記に重大な瑕疵がある
発起人の責任
試験での出題ポイント
- 絶対的記載事項: 5つを正確に暗記する(目的・商号・本店所在地・出資財産額・発起人の氏名等)
- 変態設立事項: 4つの内容と検査役調査の要否
- 発起設立と募集設立の違い: 創立総会の要否が最大の違い
- 現物出資は発起人のみ可能(発起設立の場合)
- 検査役調査が不要となる3つの例外: 500万円以下・市場価格ある有価証券・弁護士等の証明
- 設立無効の訴え: 提訴期間2年、対世効・将来効
株式会社の設立において、定款は発起人が作成し、公証人の認証を受けなければ効力を生じない。ただし、設立後の定款変更についても公証人の認証が必要である。
募集設立では発起人以外の者も設立時発行株式を引き受けることができるため、設立時取締役の選任は創立総会で行われる。
現物出資の目的財産の定款記載価額の総額が500万円を超えない場合、検査役の調査は不要である。
まとめ
株式会社の設立は、定款の作成・認証、出資の履行、設立時役員の選任、設立の登記という流れで行われます。発起設立と募集設立の最大の違いは創立総会の要否であり、実務上は手続が簡便な発起設立が多く利用されています。
試験対策としては、絶対的記載事項の5つ、変態設立事項の4つ、検査役調査が不要となる例外、設立無効の訴えの要件を正確に覚えておきましょう。
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