株式会社の設立手続|発起設立と募集設立の比較
株式会社の設立手続を行政書士試験向けに解説。発起設立と募集設立の違い、定款の記載事項(絶対的・相対的・任意的)、変態設立事項、設立の瑕疵と設立無効の訴えを比較表つきで整理します。
はじめに|設立は会社法の基本中の基本
株式会社の設立は、会社法の学習において最初に取り組むテーマであり、行政書士試験でも頻出です。設立手続の流れ、定款の記載事項、発起設立と募集設立の違いを正確に理解することが求められます。
会社法の設立分野は、条文がそのまま素直に問われやすい領域です。判例知識を要する論点(発起人の権限、見せ金、財産引受けの追認)と、条文の数字や手続を暗記する論点(絶対的記載事項、検査役調査の例外、設立無効の訴えの提訴期間)がはっきり分かれているため、出題の角度を意識して整理すると得点源になります。
本記事では、設立手続の全体像を把握した上で、各手続の詳細・条文の趣旨・重要判例・過去問で問われた角度・よくある誤解までを体系的に整理します。
設立手続の全体像
株式会社の設立手続は、大きく以下の流れで進みます。
- 定款の作成(発起人が作成)
- 定款の認証(公証人による認証)
- 出資の履行(設立時発行株式の引受けと払込み)
- 設立時役員等の選任
- 設立の登記(本店所在地で登記)
設立の登記をすることにより、株式会社は成立します(会社法49条)。つまり、登記が会社の成立要件です。
「設立中の会社」という考え方
設立手続が進行している段階の存在を、講学上「設立中の会社」と呼びます。設立中の会社は権利能力なき社団に類する性質をもち、発起人がその機関として行動します。そして、設立中の会社が取得した権利義務は、会社の成立によって特段の移転行為を要せず当然に成立後の会社に帰属すると説明されます(同一性説)。この「同一性説」の発想は、発起人の権限の範囲や財産引受けの効力を理解する前提になるため、設立分野の通奏低音として押さえておきましょう。
発起設立と募集設立の早見
設立方法は、株式を発起人だけで引き受けるか、外部からも引受人を募るかで2つに分かれます。詳細は後述しますが、全体像の段階で「創立総会の有無が最大の分岐点」という軸だけ先に意識しておくと、各手続の差異が頭に入りやすくなります。
発起人
発起人とは
発起人とは、定款に発起人として署名又は記名押印(電子署名を含む)をした者をいいます(会社法26条1項)。
発起人の要件と義務は以下のとおりです。
- 発起人は1人以上いれば足りる(自然人でも法人でもよい)
- 発起人は設立時発行株式を1株以上引き受ける義務がある(会社法25条2項)
- 発起人全員が定款に署名又は記名押印しなければならない
ここで重要なのは、「発起人かどうかは定款への署名(記名押印)の有無で形式的に決まる」という点です。実際に設立の事務に関与していても定款に署名していなければ発起人ではなく、逆に事務に関与していなくても署名していれば発起人として責任を負います。この「形式説」の理解は、後述する擬似発起人の論点(会社法103条4項)とセットで問われます。
発起人の権限
発起人の権限の範囲については、判例は次のように区分しています。
権限が問題となる4類型
発起人の行為は、その性質によって次の4つに整理すると論点が見通せます。
- 会社設立を直接の目的とする行為:定款作成、株式引受け、出資の払込みの受領など。当然に権限内。
- 設立に必要な行為:設立事務所の賃借、設立事務員の雇用など。これも権限内とするのが通説。
- 開業準備行為:会社成立後の営業の準備として、土地・店舗・原材料を取得する行為など。原則として権限外。ただし財産引受けは会社法28条2号により定款に記載すれば例外的に有効とされる。
- 開業準備行為を超える事業行為そのもの:これは設立中の会社の目的を完全に逸脱し、権限外。
判例(最判昭33.10.24): 発起人の権限は、会社の設立自体を直接の目的とする行為に限られ、開業準備行為は原則として含まれないとしています。この立場からは、定款に記載のない開業準備行為は会社に効果帰属しないことになります。
よくある誤解:発起人組合と設立中の会社
発起人が複数いる場合、発起人相互の関係は民法上の組合契約(発起人組合)として規律されます。これに対し、設立中の会社は将来成立する会社の前身です。両者は別個の概念であり、「発起人組合の活動=設立中の会社の活動」と短絡しないことが重要です。発起人が設立とは無関係に行った行為は発起人組合の問題にとどまり、成立後の会社には帰属しません。
定款の作成と認証
定款の意義
定款とは、会社の組織と活動に関する根本規則をいいます。定款は、会社の基本法ともいうべき重要な文書です。実質的意義の定款(規則そのもの)と、形式的意義の定款(規則を記載した書面・電磁的記録)を区別する整理もありますが、試験では記載事項の3分類が中心です。
定款の記載事項
この3分類は、「記載がないとどうなるか」を軸に整理すると混乱しません。絶対的記載事項は欠けると定款全体が無効、相対的記載事項は欠けてもその事項だけ効力が生じない、任意的記載事項は欠けても効力に影響しないが、一度記載すると変更には定款変更手続(株主総会の特別決議)が必要になります。
絶対的記載事項(27条)
絶対的記載事項は以下の5つです。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
- 発起人の氏名又は名称及び住所
これらの事項のいずれか1つでも欠けると、定款全体が無効となります。
「発行可能株式総数」の扱い(要注意)
会社法37条との関係で頻出の論点があります。発行可能株式総数は、会社法27条の絶対的記載事項には含まれていません。しかし、会社成立の時までに定款に定めなければならず(会社法37条1項)、株式会社は発行可能株式総数を定款に定めていなければ成立できません。
つまり、
- 原始定款の作成・認証の時点では発行可能株式総数の記載は必須ではない
- ただし、会社成立(設立登記)の時までには定款変更により定めておく必要がある
という二段構えになっています。「発行可能株式総数は絶対的記載事項である」という記述は誤りですが、「成立までに定款に定めなければならない」という記述は正しい、という形で引っかけられやすいので注意してください。
「資本金の額」は絶対的記載事項ではない
「資本金の額」も絶対的記載事項ではありません。絶対的記載事項は「出資される財産の価額又はその最低額」であって、資本金の額そのものではない点を区別しましょう。
相対的記載事項の例
- 変態設立事項(28条):現物出資、財産引受け、発起人の報酬、設立費用
- 種類株式の内容
- 株式の譲渡制限に関する規定
- 株主総会の招集通知の期間短縮
- 取締役会・監査役などの機関設計(公開会社・大会社以外で任意に置く場合)
相対的記載事項は数が多いため、典型例として変態設立事項を確実に押さえることが優先です。
定款の認証
発起人が定款を作成したときは、その定款について公証人の認証を受けなければならない。
― 会社法 第30条第1項
原始定款(会社設立時の定款)は、公証人の認証を受けなければ効力を生じません。認証を受けていない定款に基づく設立は無効です。
定款認証が必要な理由(趣旨)
定款の認証を要求する趣旨は、定款の内容と作成の真正を公証人が確認することで、後日の紛争や定款の偽造・変造を防止する点にあります。会社の根本規則である定款の成立を公的に担保する制度です。
認証が「必要なもの/不要なもの」の整理
なお、設立後に定款を変更する場合(株主総会の特別決議)には、公証人の認証は不要です。「定款変更には認証が必要」という記述は誤りです。また、合同会社などの持分会社では、そもそも原始定款にも公証人の認証は不要であり、ここも株式会社との違いとして問われます。
変態設立事項(28条)
変態設立事項とは、発起人の利益と会社の利益が相反する可能性のある事項であり、定款に記載しなければ効力を生じません。「変態」とは通常の出資(金銭出資)と異なる特殊な事項という意味で、会社財産を危うくするおそれのある事項を定款に明記させ、検査役の調査に服させることで会社債権者や他の株主を保護する制度です。
現物出資と財産引受けの違い
両者は混同しやすいので明確に区別しましょう。
- 現物出資は、財産の給付と引換えに「株式」が割り当てられる出資行為です。出資者は株主になります。
- 財産引受けは、設立中の会社が特定財産を「売買等で取得する」契約であり、対価は金銭です。相手方は株主にはなりません。
いずれも目的物の過大評価によって会社財産を害するおそれがあるため、変態設立事項として規制されます。
財産引受けの判例(定款記載がない場合)
財産引受けは定款に記載しなければ無効です。問題は、この無効を成立後の会社が追認できるかどうかです。
発起人が会社の設立を条件としてその成立後に特定の財産を譲り受ける契約は、定款にその記載がない限り無効であって、設立後の会社が追認しても有効となるものではない。
― 最判昭和28年12月3日・最判昭和61年9月11日 等の趣旨
判例は、定款に記載のない財産引受けは絶対的に無効であり、成立後の会社が追認しても有効にならないとしています。これは、定款記載・検査役調査という厳格な規制を潜脱させないためです。もっとも、会社が長期間にわたり契約の履行を受けるなどした後に、会社自らが無効を主張することが信義則に反して許されない場合があることも判例は認めています。
設立費用とは
設立費用とは、設立中の会社のために発起人が支出した費用(設立事務所の賃料、株式募集の広告費、株主募集の事務費用など)のうち、会社の負担に帰すべきものをいいます。定款認証の手数料・登録免許税・検査役の報酬などは、金額が客観的に定まり濫用のおそれが小さいため、定款への記載や検査役調査を要せず当然に会社負担となります(会社法28条4号かっこ書、会社法施行規則5条)。この「除外される費用」が引っかけポイントです。
検査役の調査
現物出資と財産引受けについては、原則として裁判所が選任した検査役の調査が必要です(会社法33条)。
検査役調査の趣旨は、変態設立事項の目的財産が過大に評価されていないかを中立の専門家にチェックさせ、出資の充実(会社財産の確保)を図る点にあります。
ただし、以下の場合は検査役の調査が不要です。
- 現物出資・財産引受けの目的財産の定款記載価額の総額が500万円を超えない場合
- 目的財産が市場価格のある有価証券であり、定款記載価額が市場価格を超えない場合
- 定款記載価額が相当である旨の弁護士・税理士等の証明を受けた場合(不動産は不動産鑑定士の鑑定評価も必要)
検査役調査の例外を覚える3つの視点
- 500万円基準:少額だから過大評価のリスクが小さい
- 市場価格のある有価証券:客観的な価格があるので過大評価しにくい
- 専門家の証明:弁護士・税理士・公認会計士等が相当性を保証する。ただし不動産は価格判断が難しいため、専門家の証明に加えて不動産鑑定士の鑑定評価も要求される
なお、報酬・特別利益(28条3号)や設立費用(28条4号)についても定款記載は必要ですが、検査役調査が問題となる中心は現物出資・財産引受けです。
発起設立と募集設立
定義
どちらの方法であっても、発起人は最低1株は引き受けなければならない点(会社法25条2項)は共通です。募集設立だからといって発起人が全く引き受けないということはありません。
発起設立と募集設立の比較
払込金保管証明の違い(頻出の差異)
募集設立では、発起人は払込取扱機関(銀行等)に対して払込金の保管証明書の交付を請求でき、保管証明をした銀行は、後にその証明が事実と異なることなどを理由に会社に対して払込みの不存在を主張できません(保管証明責任)。これに対し、発起設立では保管証明までは要求されず、払込みがあったことを証する書面(残高証明等)で足ります。これは、募集設立では外部の引受人が関与するため、出資の確実性をより厳格に担保する趣旨です。
創立総会
募集設立の場合、設立時株主全員(発起人と設立時募集株式の引受人)で構成される創立総会を開催しなければなりません。
創立総会の主な権限は以下のとおりです。
- 設立時取締役・設立時監査役等の選任
- 定款の変更(ただし変更できる事項には制限あり)
- 設立に関する報告の聴取
- 設立手続の調査報告の聴取
- 設立の廃止の決定
創立総会の決議要件
創立総会の決議は、株主総会よりも加重されています。
創立総会の決議は、当該創立総会において議決権を行使することができる設立時株主の議決権の過半数であって、出席した当該設立時株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行う。
― 会社法 第73条第1項
つまり、「議決権の過半数を有する株主が出席し、かつ出席株主の議決権の3分の2以上の賛成」という二重の要件です。成立後の株主総会の特別決議(過半数出席・3分の2以上)と似ていますが、創立総会ではこの73条1項が原則的な決議要件である点が特徴です。
募集設立だけに登場する手続
募集設立では、発起設立にはない次の手続が加わります。
- 設立時募集株式の募集事項の決定(発起人全員の同意)
- 引受けの申込み・割当て・引受け
- 払込みと払込金保管証明
- 創立総会の招集・決議
これらが「募集設立=手続が重い」と評価される理由です。
出資の履行
払込みの方法
発起人は、設立時発行株式の引受け後、遅滞なく、引き受けた株式について全額の払込み(又は全部の現物出資財産の給付)をしなければなりません(会社法34条1項)。
払込みは、発起人が定めた銀行等の払込取扱機関において行います。出資は全額払込主義であり、引き受けた金額の一部だけ払い込む「分割払込み」は認められません。
払込みをしなかった場合
発起設立において、発起人が出資の払込みをしなかった場合、当該発起人は設立時発行株式の株主となる権利を失います(会社法36条3項)。この権利の失権は、会社法36条1項・2項の期日を定めた催告手続を経た上で生じます。
募集設立の引受人が払込みをしない場合も、失権手続により株主となる権利を失います(会社法63条3項)。いずれも「払込みをしないと当然に失権する」のではなく、期日を定めた手続を経て失権する点を押さえましょう。
仮装払込み(預合い・見せ金)
見せ金の判例
見せ金については、外形上は実際に金銭が払込取扱機関に入金される点で預合いと異なりますが、判例は実質を重視して払込みの効力を否定しています。
当初から真実の株式の払込みとして金銭を確保するつもりがなく、一時的な借入金で払込みの外形を整え、会社成立後ただちにこれを引き出して借入先に返済する場合には、その払込みは払込みとしての効力を有しない。
― 最判昭和38年12月6日 の趣旨
払込みが有効か否かの判断にあたっては、(1)借入れから返済までの期間の長短、(2)払戻金が会社資金として運用された事実の有無、(3)借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無、などの事情が総合考慮されるとされます。
仮装払込みをした場合の責任(会社法52条の2・103条)
平成26年改正により、出資の履行を仮装した発起人・引受人は、会社に対して仮装した払込金額の全額を支払う義務を負うこと、関与した他の発起人・設立時取締役も連帯して支払義務を負うこと(無過失責任は仮装した本人のみで、関与者は注意を怠らなかったことを証明すれば免責)などが明文化されています。仮装払込みによる株主権の行使も、原則として支払いがなされるまで制限されます。
設立時役員等の選任
発起設立の場合
発起設立では、出資の履行完了後、発起人の議決権の過半数で設立時取締役を選任します(会社法40条1項)。ここでの議決権は、発起人が引き受けた設立時発行株式1株につき1個を基準とします(会社法40条2項本文)。「発起人の頭数の過半数」ではない点に注意しましょう。
募集設立の場合
募集設立では、創立総会の決議で設立時取締役等を選任します(会社法88条)。
設立時取締役の調査
設立時取締役(設立時監査役が選任されている場合は設立時監査役も)は、設立手続が法令・定款に違反していないか、出資の履行が完了しているか等を調査しなければなりません(会社法46条、93条)。発起設立では発起人に対して、募集設立では創立総会に対して調査結果を報告します。法令・定款違反や不当な事項を発見したときは、その旨を通知・報告しなければなりません。
設立の登記と会社の成立
株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。
― 会社法 第49条
設立の登記は、会社の成立要件です。登記をしなければ、いかに他の設立手続が完了していても、会社は成立しません。
設立登記の効果
設立登記によって、それまで「設立中の会社」として発起人に帰属していた権利義務が、成立後の会社に当然に帰属します。また、設立登記後は、次のような効果が生じます。
- 株式の引受けに係る心裡留保・通謀虚偽表示の無効を主張できなくなる(会社法51条2項、102条6項)
- 錯誤・詐欺・強迫を理由とする引受けの取消しができなくなる(会社法51条2項、102条6項)
これは、いったん成立した会社の法律関係を安定させ、取引の安全を図る趣旨です。「会社成立前なら引受けの瑕疵を主張できるが、成立後はできない」という対比で問われます。
設立の瑕疵
設立無効の訴え
設立手続に瑕疵がある場合、設立無効の訴えによって会社の設立を無効とすることができます(会社法828条1項1号)。会社の設立は多数の利害関係人に影響を及ぼすため、いったん成立した会社を一般原則どおり当然無効とすると法的安定性を害します。そこで、無効主張を訴えによってのみ、かつ期間を限って認める制度が設けられています。
対世効と将来効の趣旨
- 対世効(会社法838条):無効判決の効力は当事者だけでなく第三者にも及びます。会社をめぐる法律関係を画一的に確定するためです。
- 将来効(会社法839条):無効判決は将来に向かってのみ効力を生じ、遡及しません。これにより、無効判決までに会社が行った取引の効力は維持され、取引の安全が守られます。設立無効が確定すると、会社は解散に準じて清算されます。
設立無効事由の例
- 定款の絶対的記載事項の欠缺
- 公証人の認証を受けていない
- 設立時発行株式の全部について払込みがない
- 発行可能株式総数を定款で定めていない
- 設立の登記に重大な瑕疵がある
設立無効事由は客観的・重大な瑕疵に限られると解されています。発起人個人の主観的な意思の瑕疵(錯誤等)は、前述のとおり成立後は主張できないため、原則として設立無効事由にはなりません。
会社の不成立と不存在
設立をめぐる「うまくいかなかった」状態には、無効以外にもいくつかの類型があり、区別が問われます。
会社の不成立の場合、発起人は会社の設立に関してした行為について連帯して責任を負い、設立に関して支出した費用も発起人の負担となります(会社法56条)。引受人がいる場合、払い込まれた出資は引受人に返還されます。
発起人の責任
財産価額てん補責任の発起設立・募集設立での違い
会社法52条の財産価額てん補責任について、
- 発起設立:現物出資をした発起人本人は無過失責任。それ以外の発起人・設立時取締役は、検査役調査を経た場合や注意を怠らなかったことを証明した場合は免責される(過失責任化)。
- 募集設立:引受人保護の要請が強いため、発起人・設立時取締役の免責(証明による免責)が認められず、原則として無過失責任となる(会社法103条1項)。
この発起設立・募集設立での責任の重さの差は応用論点として問われることがあります。
擬似発起人の責任
募集設立において、株式募集の広告等に自己の氏名・名称と設立を賛助する旨を記載することを承諾した者は、発起人ではないにもかかわらず、発起人と同様の責任を負います(会社法103条4項)。これを擬似発起人といいます。外観を信頼した引受人を保護する趣旨です。「定款に署名していないから発起人ではない=一切責任を負わない」とは限らない、という形で出題されます。
試験での出題ポイント
設立分野は条文の数字と判例の結論が直接問われます。次の論点を優先的に固めましょう。
- 絶対的記載事項: 5つを正確に暗記する(目的・商号・本店所在地・出資財産額・発起人の氏名等)。発行可能株式総数と資本金の額は絶対的記載事項ではない点に注意
- 発行可能株式総数: 絶対的記載事項ではないが、会社成立時までに定款で定める必要がある(37条)
- 変態設立事項: 4つの内容と検査役調査の要否。設立費用から除外される費用(定款認証手数料・登録免許税等)
- 検査役調査が不要となる3つの例外: 500万円以下・市場価格ある有価証券・専門家の証明(不動産は鑑定士の鑑定評価も)
- 発起設立と募集設立の違い: 創立総会の要否が最大の違い。払込金保管証明の差、責任の重さの差
- 現物出資は発起人のみ可能(募集設立の引受人は不可)
- 財産引受けの判例: 定款記載なき財産引受けは絶対的無効、追認も不可(ただし信義則による制限あり)
- 見せ金・預合い: いずれも払込み無効。預合いには刑事罰(965条)
- 設立無効の訴え: 提訴期間2年、対世効・将来効。会社の不成立・不存在との区別
- 定款認証: 必要なのは原始定款のみ。設立後の定款変更や持分会社の定款には不要
株式会社の設立において、定款は発起人が作成し、公証人の認証を受けなければ効力を生じない。ただし、設立後の定款変更についても公証人の認証が必要である。
募集設立では発起人以外の者も設立時発行株式を引き受けることができるため、設立時取締役の選任は創立総会で行われる。
現物出資の目的財産の定款記載価額の総額が500万円を超えない場合、検査役の調査は不要である。
発行可能株式総数は会社法27条の絶対的記載事項であり、原始定款の作成時に必ず記載しなければ定款は無効となる。
発起人が会社の成立を条件として成立後に特定の財産を譲り受ける契約(財産引受け)は、定款に記載がなくても、会社の成立後にその会社が追認すれば有効となる。
まとめ
株式会社の設立は、定款の作成・認証、出資の履行、設立時役員の選任、設立の登記という流れで行われます。発起設立と募集設立の最大の違いは創立総会の要否であり、それに加えて払込金保管証明の有無や発起人の責任の重さにも差があります。実務上は手続が簡便な発起設立が多く利用されています。
試験対策としては、絶対的記載事項の5つ(発行可能株式総数・資本金の額は含まれない)、変態設立事項の4つと除外費用、検査役調査が不要となる例外、財産引受け・見せ金の判例、設立無効の訴えの要件(提訴期間2年・対世効・将来効)を正確に覚えておきましょう。会社の成立後は引受けの瑕疵を主張できなくなる点、設立無効・不成立・不存在の区別も応用論点として押さえると盤石です。
設立の後に学ぶ機関設計・株式・株主総会の各テーマは、本記事の「設立時取締役」「創立総会」「議決権」の理解が前提になります。関連論点もあわせて整理しておきましょう。
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