持分会社の特徴|合名・合資・合同会社を比較
会社法の持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)の特徴を行政書士試験向けに解説。社員の責任・業務執行・退社の違い、株式会社との比較を表つきで整理。合同会社の債権者保護手続も解説します。
はじめに|持分会社は株式会社との比較で出題される
持分会社とは、合名会社・合資会社・合同会社の3つの会社形態の総称です。株式会社が「物的会社」と呼ばれるのに対し、持分会社は社員の個性が重視される「人的会社」としての性格を持ちます。
行政書士試験では、持分会社の各類型の違い、および株式会社との比較が択一式で出題されます。本記事では、3種類の持分会社の特徴を比較しながら整理します。
持分会社の意義
持分会社とは
持分会社とは、社員が出資をして会社の経営に参加する会社形態であり、社員の個性が会社の存立に大きな影響を与えます。
持分会社と株式会社の基本的な違い
社員の責任
無限責任と有限責任
直接責任と間接責任
各会社類型における社員の責任
重要ポイント: 合同会社の社員は「間接有限責任」であるのに対し、合資会社の有限責任社員は「直接有限責任」です。直接と間接の違いに注意が必要です。
持分会社の設立
設立手続
持分会社の設立は、株式会社と比較して非常に簡便です。
- 定款の作成: 社員となろうとする者が定款を作成
- 設立の登記: 本店所在地において設立の登記
持分会社の設立には、以下の特徴があります。
- 公証人の認証は不要: 株式会社と異なり、定款について公証人の認証は必要ありません
- 検査役の調査は不要: 現物出資についても検査役の調査は不要です
- 設立時の出資の全額払込み: 合同会社の社員は、設立登記前に出資の全額を払い込むか又は全部を給付しなければなりません(会社法578条)
定款の絶対的記載事項
持分会社の定款の絶対的記載事項は以下のとおりです(会社法576条1項)。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 社員の氏名又は名称及び住所
- 社員の全部が無限責任社員又は有限責任社員であるか、社員の一部が無限責任社員で他が有限責任社員であるかの区別
- 社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準
出資の目的(現物出資)
有限責任社員は責任が限定されているため、信用や労務による出資は認められません。
業務執行
業務執行の原則
社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。 ― 会社法 第590条第1項
持分会社では、社員全員が業務を執行するのが原則です(所有と経営の一致)。ただし、定款で一部の社員を業務執行社員として定めることができます。
業務執行の方法
合資会社の有限責任社員の業務執行
合資会社の有限責任社員も、定款に定めがあれば業務を執行できます。ただし、有限責任社員は会社を代表することはできません。
合同会社の業務執行
合同会社は有限責任社員のみで構成されますが、社員が業務を執行し、会社を代表することができます。この点が株式会社との大きな違いです。
持分の譲渡
持分譲渡の原則
持分会社の社員の持分の譲渡は、原則として他の社員の全員の承諾が必要です(会社法585条1項)。
株式会社との比較
株式会社の株式は原則として自由に譲渡できるのに対し、持分会社の持分は他の社員の承諾が必要です。これは、持分会社が社員の個性を重視する人的会社であることの表れです。
社員の加入と退社
社員の加入
持分会社に新たに社員が加入するには、総社員の同意が必要です(会社法604条)。加入する社員は出資をしなければなりません。
退社の種類
法定退社事由(607条)
- 定款で定めた事由の発生
- 総社員の同意
- 死亡
- 合併(合併により消滅する会社の社員)
- 破産手続開始の決定
- 解散
- 後見開始の審判を受けたこと
- 除名
退社した社員の持分の払戻し
退社した社員は、その持分の払戻しを受ける権利を有します(会社法611条)。持分の払戻しは、退社時の会社財産の状況に従って行われます。
合同会社の退社と債権者保護
合同会社では、社員の退社に伴う持分の払戻しについて、債権者保護手続が必要です(会社法635条)。これは、合同会社の社員が有限責任であるため、持分の払戻しが債権者の利益を害するおそれがあるためです。
定款変更
持分会社の定款変更は、原則として総社員の同意が必要です(会社法637条)。株式会社の定款変更が株主総会の特別決議で足りるのと比べ、要件が厳格です。
3種類の持分会社の比較表
会社の種類の変更
持分会社間の種類変更
持分会社は、定款の変更によって他の種類の持分会社に変更できます(会社法638条)。
合名・合資会社から合同会社への変更は、無限責任社員がいなくなるため、債権者保護手続が必要です。
持分会社から株式会社への組織変更
持分会社は、総社員の同意により株式会社に組織変更できます(会社法746条以下)。逆に、株式会社から持分会社への組織変更も可能です(会社法743条以下)。
試験での出題ポイント
- 社員の責任の違い: 合同会社は間接有限責任、合資会社の有限責任社員は直接有限責任
- 出資の目的: 有限責任社員は財産出資のみ(信用・労務は不可)
- 設立手続: 持分会社は公証人の認証不要、合同会社は出資の全額払込み必要
- 持分譲渡: 原則として他の社員全員の承諾が必要
- 合同会社の債権者保護: 退社時の払戻しに債権者保護手続が必要
- 定款変更: 総社員の同意が原則
合同会社の社員は直接有限責任を負う。
持分会社の設立に際して、定款について公証人の認証を受ける必要はない。
合同会社において社員が退社する場合、持分の払戻しにつき債権者保護手続をとらなければならない。
まとめ
持分会社は、社員の個性を重視する人的会社であり、合名会社・合資会社・合同会社の3類型があります。社員の責任の種類(直接・間接、有限・無限)が各類型の最大の違いであり、この違いが出資の目的、設立手続、債権者保護手続の要否などに影響を及ぼしています。
合同会社は有限責任社員のみで構成されるため、株式会社に近い規制(出資の全額払込み、債権者保護手続、財源規制)が課されています。試験では3つの持分会社の比較、および株式会社との比較が出題されるため、比較表で正確に整理しておきましょう。
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