株式会社の機関設計|取締役会・監査役の設置パターン
会社法の株式会社の機関設計を解説。株主総会・取締役・取締役会・監査役の権限、公開会社・大会社の必置機関、委員会設置会社のパターンを比較表で整理します。
はじめに|機関設計は会社法の最頻出テーマ
行政書士試験の商法・会社法分野において、株式会社の機関設計は最も出題頻度の高いテーマです。株主総会、取締役、取締役会、監査役、監査役会、会計参与、会計監査人、そして委員会設置会社に至るまで、各機関の権限と設置の組み合わせルールを正確に理解することが求められます。
会社法は2005年に施行された比較的新しい法律ですが、2014年改正で「監査等委員会設置会社」が創設されるなど、機関設計の選択肢は広がっています。本記事では、行政書士試験で問われるポイントに焦点を当て、機関設計の基本ルールから各機関の権限、公開会社・大会社のパターンまでを体系的に解説します。
行政書士試験の商法・会社法は5問前後と問題数は限られますが、機関設計はそのなかでも繰り返し問われる定番論点です。覚える条文と数字が多く一見とっつきにくいテーマですが、後述するとおり「公開会社→取締役会→監査役」「大会社→会計監査人」「委員会設置→監査役不可」という数本の幹を押さえれば、枝葉のパターンは論理的に導けます。本記事は、その幹を太く育てたうえで、過去問で実際に問われた角度・受験生が陥りやすい誤解まで踏み込んで整理することを目的としています。
条文番号の表記について:本記事で単に条文番号のみを示している場合は、特に断りがない限り会社法の条文を指します。
機関設計の基本ルール
機関設計を貫く3つの基本思想
細かいルールに入る前に、会社法が機関設計をどう設計しているかの「思想」を押さえておくと理解が速くなります。会社法は、株主が自由に株式を譲渡できるか(公開会社か)と、会社の事業規模が大きいか(大会社か)という2つの軸で、求める監督・監査体制の厚さを変えています。
- 公開会社(株式譲渡が自由):株主が頻繁に入れ替わり、経営に直接関与しにくいため、所有と経営が分離する。そこで業務執行を専門の取締役会に委ね、株主に代わって経営を監督させる必要が生じる。
- 大会社(規模が大きい):取引先・債権者・従業員など利害関係者が多く、計算の正確性確保が社会的に重要になる。そこで専門家である会計監査人による外部監査を強制する。
この2軸で「どこまで厳格な機関を強制するか」が決まる、というのが機関設計を読み解く設計思想です。これを念頭に置くと、後述する条文群が「なぜそうなっているのか」と腑に落ちます。
すべての株式会社に共通の必置機関
すべての株式会社は、以下の機関を必ず設置しなければなりません。
- 株主総会(295条)
- 取締役(326条1項)
この2つは、会社の規模や種類にかかわらず必置です。それ以外の機関(取締役会、監査役、監査役会、会計参与、会計監査人、各種委員会)は、定款の定めにより任意に設置することができます(326条2項)。ただし、会社の類型によっては設置が義務づけられる場合があります。
株式会社は、一又は二以上の取締役を置かなければならない。
― 会社法 第326条第1項
株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会又は指名委員会等を置くことができる。
― 会社法 第326条第2項
つまり、「株主総会+取締役」という最小構成だけは法律上当然に必要で、それ以外の機関は原則として定款自治で任意に置くか置かないかを選べる、というのが出発点です。例外的に「置かなければならない(強制)」あるいは「置いてはならない(禁止)」となる場合があり、その場面を整理するのが機関設計の学習にほかなりません。
会社の類型|公開会社・非公開会社・大会社・非大会社
機関設計のルールを理解するには、会社法上の以下の区分を正確に把握する必要があります。
注意: 「公開会社」とは上場会社のことではありません。株式の一部でも譲渡制限がなければ公開会社に該当します。すべての株式に譲渡制限がある会社のみが非公開会社です。
「公開会社」の定義は二重否定で読む
会社法2条5号の公開会社の定義は、条文上「譲渡制限の定めを設けていない株式会社」という二重否定の構造になっており、ここで受験生は混乱しがちです。正しく読むコツは次のとおりです。
その発行する全部又は一部の株式の内容として…譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう。
― 会社法 第2条第5号
- 発行する株式の一部にでも譲渡制限がない種類があれば → 公開会社
- 発行するすべての株式に譲渡制限が付いている → 非公開会社(全株式譲渡制限会社)
ここで最重要なのが、「公開会社=上場会社ではない」という点です。株式を証券取引所に上場しているかどうかは会社法上の公開会社・非公開会社の区別とは無関係です。たとえば一族経営の中小企業でも、定款に譲渡制限を一切設けていなければ会社法上は「公開会社」になります。試験では「公開会社=上場会社」と誤認させる選択肢が定番なので注意しましょう。
「大会社」は資本金または負債のいずれか一方で足りる
大会社の要件も誤解されやすいポイントです。条文を確認します。
大会社 次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社をいう。
イ 最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が五億円以上であること。
ロ 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であること。
― 会社法 第2条第6号
ポイントは「いずれかに該当すれば大会社」、すなわち資本金5億円以上または負債200億円以上のどちらか一方を満たせば大会社になることです。「資本金5億円以上かつ負債200億円以上」と「かつ」で結ぶ誤りや、「資本金5億円かつ」「負債合計200億円」の数字を入れ替える誤りが出題されやすいので、「資本金=5億」「負債=200億」「OR条件」とセットで暗記してください。判定の基準は最終事業年度の貸借対照表の計上額であり、期中の見込みではない点も押さえどころです。
機関設計の主なルール
会社法が定める機関設計の主なルールは以下のとおりです。
327条・328条は条文の趣旨で覚える
機関設計の強制ルールは327条・328条に集約されており、丸暗記すると忘れやすいので、それぞれの趣旨をセットで覚えると定着します。
- 公開会社→取締役会必置(327条1項1号):株式譲渡が自由だと株主が流動的で経営を直接監視しにくい。そこで合議体である取締役会に経営判断と相互監督を担わせる。
- 取締役会設置会社→監査役必置(327条2項本文):取締役会が業務執行の意思決定機関である以上、その執行を外部の目でチェックする監査役が必要になる。ただし非公開会社が会計参与を置く場合の例外(後述)がある。
- 会計監査人設置会社→監査役必置(327条3項):会計監査人は会計の専門家だが、その選任・解任議案や報酬同意などに関与し会計監査人を支える存在として監査役が要求される。会計監査人を置きながら監査役を置かない設計(監査役非設置)は委員会型を除き認められない。
- 大会社→会計監査人必置(328条):規模が大きく利害関係者が多いため、計算書類の信頼性を外部の専門家に担保させる。
- 大会社かつ公開会社→監査役会必置(328条1項):規模が大きく株主も流動的なため、監査体制を合議体である監査役会まで厚くする。
これらは互いに連鎖します。たとえば「大会社かつ公開会社」は、大会社ゆえに会計監査人が必要(328条)、公開会社ゆえに取締役会が必要(327条1項1号)、さらに公開会社の大会社として監査役会が必要(328条1項)、監査役会があるので監査役も当然必要、という具合に芋づる式に決まっていきます。
取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社については、この限りでない。
― 会社法 第327条第2項
株主総会の権限(295条)
株主総会の地位
株主総会は、株式会社の最高意思決定機関です。ただし、その権限の範囲は取締役会の有無によって異なります。
取締役会設置会社では、株主総会の権限が法定事項と定款所定事項に限定されます。これは、業務執行の意思決定を取締役会に委ねることで迅速な経営判断を可能にする趣旨です。
株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
― 会社法 第295条第1項
前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
― 会社法 第295条第2項
ここで重要なのは「権限が広い/狭い」の方向です。取締役会非設置会社の株主総会は万能であり、何でも決議できます。取締役会を設置すると、業務執行の意思決定を取締役会に委ねる代わりに、株主総会の権限が法定事項+定款所定事項に限定されます。「取締役会を設置すると株主総会の権限が拡大する」という記述は誤りで、実際は縮小(限定)する方向である点を取り違えないようにしましょう。なお、定款で定めれば取締役会設置会社でも個別の事項を株主総会の決議事項に追加できるので、株主の意思を反映する余地は残されています。
株主総会の決議要件
決議要件の数字と例外を整理する
決議要件は数字の暗記が中心ですが、機関設計と関連して次の点を押さえておくと得点に直結します。
- 定足数の緩和・排除:普通決議・特別決議の定足数(議決権の過半数)は、定款で引き下げることができます。ただし役員(取締役・監査役・会計参与)の選任・解任の普通決議については、定款によっても定足数を議決権の3分の1未満に下げることはできません(341条)。役員の地位の重要性ゆえに最低限の定足数を確保する趣旨です。
- 特別決議の加重:特別決議は「3分の2以上」が原則ですが、定款でこれを上回る割合(例:4分の3以上)を定めることは可能です。
- 特殊決議:全部の株式に譲渡制限を付す定款変更(=公開会社から非公開会社へ移行する場面)など、株主の地位に重大な影響を及ぼす事項には、頭数要件(株主の半数以上)と議決権要件(3分の2以上)の両方を要求する特殊決議が用いられます。さらに非公開会社で剰余金配当などについて株主ごとに異なる取扱いを定款で定める場合には、より厳格な特殊決議(総株主の半数以上かつ総株主の議決権の4分の3以上)が要求されます。
- 取締役の解任:取締役の解任は原則として普通決議で足ります(339条1項。かつての特別決議から会社法で緩和)。一方、監査役の解任は監査役の独立性確保のため特別決議が必要です(343条4項・309条2項7号)。「取締役の解任=特別決議」と覚えていると誤答するので注意してください。
取締役会設置会社の株主総会は、会社法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議することができる。
取締役と取締役会
取締役
取締役は、株式会社の業務執行を行う機関です。取締役の員数・任期は以下のとおりです。
取締役の任期は「短縮可・伸長は非公開会社のみ」
取締役の任期は原則として「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」です(332条1項)。試験では次の3点が問われます。
- 短縮:定款または株主総会の決議によって任期を短縮することは、会社の種類を問わず可能です。
- 伸長:任期を伸長できるのは非公開会社のみで、定款で最長10年まで伸ばせます(332条2項)。公開会社では伸長できません。
- 委員会型での特則:指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社の取締役(監査等委員を除く)の任期は1年(選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時まで)です(332条3項・6項)。監査による牽制が及ぶ反面、株主による信任を毎年問う設計になっています。
なお、取締役の資格に「株主でなければならない」旨の定款の定めは、公開会社では置くことができません(331条2項)。広く人材を取締役に登用できるようにする趣旨で、非公開会社では株主に限定する定めも許されます。
取締役会の権限
取締役会は、以下の権限を有します(362条2項)。
- 業務執行の決定
- 取締役の職務の執行の監督
- 代表取締役の選定及び解職
取締役会は、以下の事項の決定を個々の取締役に委任することができません(362条4項)。
- 重要な財産の処分及び譲受け
- 多額の借財
- 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
- 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
- 社債の募集に関する重要事項
- 内部統制システムの整備
- 定款の定めに基づく取締役等の責任の一部免除
取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一 取締役会設置会社の業務執行の決定
二 取締役の職務の執行の監督
三 代表取締役の選定及び解職
― 会社法 第362条第2項
「重要な業務執行の決定」は取締役に丸投げできない
362条4項が列挙する事項は「重要な業務執行の決定」であり、取締役会の決議が必須で、個々の取締役(代表取締役を含む)に決定を委任できません。これは取締役会の監督機能の核心であり、過去問でも「多額の借財」「重要な財産の処分」などを代表取締役に一任できるとする誤りの選択肢が頻出します。なお「重要な財産の処分」に当たるか否かは、当該財産の価額、会社の総資産に占める割合、保有目的、処分行為の態様および会社における従来の取扱い等を総合的に考慮して判断するとされ、画一的な基準ではありません(最判平成6年1月20日参照)。
取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行う。
― 会社法 第369条第1項
取締役会の決議要件は「過半数出席・過半数の賛成」が原則で、株主総会と違い頭数(人数)で数えます。議決権の数ではない点に注意してください。また、決議について特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができません(369条2項)。たとえば代表取締役を解職する決議において、当該代表取締役本人は特別利害関係人として議決から排除されるとするのが判例の立場です(最判昭和44年3月28日)。
…代表取締役の解職決議について、当該代表取締役は特別利害関係を有する者にあたる。
― 最判昭和44年3月28日
代表取締役
代表取締役は、株式会社を代表し、業務を執行する機関です。
取締役会非設置会社では、代表取締役を定めないことも可能であり、その場合は各取締役が会社を代表します(349条1項・2項)。
代表取締役の代表権と表見代表取締役
代表取締役の代表権は会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為に及ぶ包括的なものであり、これに加えた制限は善意の第三者に対抗できません(349条4項・5項)。さらに、社長・副社長など会社を代表する権限を有すると認められる名称を付した取締役の行為については、たとえその者に代表権がなくても、会社は善意の第三者に対して責任を負います(354条/表見代表取締役)。取引の安全を保護する規定で、機関の権限と外観への信頼が問われる場面として理解しておきましょう。
株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。
― 会社法 第354条
監査役と監査役会
監査役の権限
監査役は、取締役の職務の執行を監査する機関です(381条1項)。監査の範囲は以下のとおりです。
注意: 監査役の権限を会計監査に限定できるのは、非公開会社に限られます。公開会社の監査役は必ず業務監査権限を有します。
監査役の独立性を支える権限と兼任禁止
監査役には、その職務を全うするための強力な権限が与えられています。
- 事業報告請求・業務財産調査権(381条2項):いつでも取締役・使用人に対し事業の報告を求め、業務・財産の状況を調査できる。
- 取締役会への報告義務・出席義務(382条・383条1項):取締役が不正行為をし、またはそのおそれがあると認めるとき等は取締役会に報告しなければならず、取締役会に出席し必要があれば意見を述べなければならない。
- 取締役の違法行為の差止請求権(385条1項):取締役の法令・定款違反行為により会社に著しい損害が生ずるおそれがある場合、その行為の差止めを請求できる。
- 会社・取締役間の訴訟での会社代表(386条):会社と取締役の間の訴えについては監査役が会社を代表する。
そして監査の実効性・独立性を担保するため、監査役は、その会社・子会社の取締役・支配人その他の使用人、または子会社の会計参与・執行役を兼ねることができません(335条2項/兼任禁止)。自己監査を防ぐ趣旨で、過去問でも「監査役は当該会社の取締役を兼任できる」とする誤りが定番です。
監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(…)若しくは執行役を兼ねることができない。
― 会社法 第335条第2項
会計監査限定監査役は登記される
非公開会社が定款で監査役の権限を会計監査に限定した場合、その旨は登記事項とされます(911条3項17号イ)。会計限定であることが対外的に明らかになる仕組みです。なお、会計監査に限定された監査役は業務監査権限を持たないため、上記の取締役会出席義務(383条)や違法行為差止請求権(385条)など業務監査を前提とする権限は及ばないとされています。
監査役の員数と任期
監査役の任期は4年であり、取締役の任期(2年)よりも長く設定されています。これは、監査役の独立性を確保するためです。
「短縮不可」が監査役の最重要ポイント
取締役の任期は短縮できるのに対し、監査役の任期は原則4年で短縮できない点が、機関設計で最も狙われる対比の一つです(336条1項)。経営陣の都合で監査役を早期に交代させられないようにし、独立性を守るためです。一方、伸長については取締役と同様、非公開会社に限り定款で最長10年まで伸ばせます(336条2項)。「監査役の任期は定款で短縮できる」という記述は誤りであると即断できるようにしましょう。
なお、監査役会設置会社では監査役は3人以上で、そのうち半数以上が社外監査役でなければならず(335条3項)、さらに1人以上の常勤監査役を選定する必要があります(390条3項)。「過半数」ではなく「半数以上」である点(=半数ちょうどでも可)、「常勤は1人以上」である点が数字の引っかけになります。
監査役会
監査役会は、監査役全員で組織される合議体です(390条1項)。大会社かつ公開会社には監査役会の設置が義務づけられています(328条1項)。
監査役会の権限は以下のとおりです。
- 監査報告の作成
- 常勤の監査役の選定及び解職
- 監査の方針、監査役会設置会社の業務及び財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定
ただし、監査役会は各監査役の権限の行使を妨げることができません(390条2項ただし書)。各監査役は独立して職務を行うことができます。
監査役会は、すべての監査役で組織する。
― 会社法 第390条第1項
独任制という監査役の特徴
取締役会が合議体として多数決で意思決定し、個々の取締役を拘束するのと対照的に、監査役会は各監査役の権限行使を妨げられません。これを独任制といいます。たとえ監査役会で「調査しない」と決めても、個々の監査役は独自の判断で調査・報告・差止めを行えるのです。これは監査の見落としを防ぎ、各監査役に独立した責任を負わせる趣旨です。「監査役会の決議で個々の監査役の調査権限を制限できる」とする選択肢は、独任制に反するため誤りです。
会計参与と会計監査人
会計参与
会計参与は、取締役と共同して計算書類等を作成する機関です(374条1項)。会計参与になれるのは、公認会計士(監査法人)又は税理士(税理士法人)に限られます(333条1項)。
会計参与は、非公開会社の取締役会設置会社において、監査役の代わりに設置することができる点が試験上重要です(327条2項ただし書)。
会計参与は「作成側」、監査役・会計監査人は「チェック側」
会計参与は社外の専門家でありながら、取締役と共同して計算書類を作成する点が他の監査機関と決定的に異なります。監査役・会計監査人が作成された書類を外部からチェックする立場であるのに対し、会計参与は作成の段階から関与し、計算書類の信頼性を内側から高める機関です。主に会計監査人を置けない中小の非公開会社で、計算の適正を確保する受け皿として用意されています。会計参与も監査役と同様、その会社・子会社の取締役・監査役・執行役・使用人等を兼ねることができません(333条3項)。
会計監査人
会計監査人は、計算書類等の監査を行う機関です(396条1項)。会計監査人になれるのは、公認会計士又は監査法人に限られます(337条1項)。税理士は会計監査人にはなれません。
大会社は会計監査人を設置しなければなりません(328条)。
資格要件の対比は頻出
会計参与と会計監査人は名前が似ており、資格要件の引っかけが定番です。
「会計監査人に税理士が就任できる」という記述は誤りです。会計監査人の監査は財務諸表監査であり、公認会計士・監査法人の独占業務に対応するため、税理士は資格を持ちません。また会計監査人を設置するには監査役(または委員会型の監査機関)も必要であり(327条3項)、会計監査人を支える体制が要求される点も併せて押さえましょう。
会計参与は公認会計士又は税理士でなければならないが、会計監査人は公認会計士又は監査法人でなければならず、税理士は会計監査人になることができない。
委員会設置会社
2種類の委員会設置会社
会社法は、従来の監査役制度に代わる機関設計として、以下の2種類の委員会設置会社を用意しています。
指名委員会等設置会社
指名委員会等設置会社は、指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3つの委員会を設置する会社です。
各委員会の構成と権限
重要な特徴
- 執行役を置かなければならない(402条1項)
- 執行役が業務執行を行い、取締役会は経営の基本方針の決定と監督に専念する
- 監査役を置くことができない(327条4項)
- 代表執行役は取締役会が選定する
指名委員会等設置会社のキーポイント
指名委員会等設置会社は「業務執行(執行役)と監督(取締役会)の分離」を徹底したアメリカ型のモデルです。試験で問われるのは次の点です。
- 3委員会必置:指名・監査・報酬の3つを必ず置く。1つだけ置くといった選択はできません。各委員会は取締役3人以上で構成し、その過半数が社外取締役でなければなりません(400条1項・3項)。各委員会の委員は取締役会が取締役の中から選定します。
- 指名委員会の権限が強力:株主総会に提出する取締役の選任・解任議案の内容を決定するのは指名委員会であり、取締役会はこれを覆せません(404条1項)。報酬委員会についても、取締役・執行役の個人別報酬の内容は報酬委員会が決定します(404条3項)。
- 執行役必置・監査役不可:業務執行を担う執行役を必ず置き(402条1項)、代表執行役を取締役会が選定します(420条1項)。一方で監査委員会が監査を担うため、監査役は置けません(327条4項)。
- 取締役の任期は1年(332条3項・6項)。
監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、監査役を置いてはならない。
― 会社法 第327条第4項
監査等委員会設置会社
監査等委員会設置会社は、2014年改正で創設された新しい機関設計です。監査等委員会のみを設置すればよく、指名委員会等設置会社よりも導入しやすい仕組みとなっています。
監査等委員会の構成と権限
- 取締役3人以上で構成(過半数は社外取締役)(331条6項)
- 監査等委員である取締役の任期は2年(非監査等委員の取締役は1年)(332条3項・4項)
- 取締役の職務の執行の監査、監査報告の作成
- 株主総会における取締役(監査等委員である取締役を除く)の選任・解任・報酬等について意見陳述権
重要な特徴
- 監査役を置くことができない(327条4項)
- 執行役は置かない(取締役が業務を執行する)
- 取締役会の決議で重要な業務執行の決定を取締役に委任可能(399条の13第5項・6項)
監査等委員会設置会社のキーポイント
監査等委員会設置会社は、指名委員会等設置会社の「3委員会+執行役」がハードルとなって普及しなかった反省から、監査委員会型の利点を取り入れつつ導入しやすくした折衷型です。
- 監査等委員は取締役そのもの:監査役会型と異なり、監査を担うのは「監査等委員である取締役」です。彼らは取締役会の構成員として議決権を持つため、監査と監督を一体で行えます。
- 任期の二段構え:監査等委員である取締役の任期は2年(短縮不可・伸長不可)、それ以外の取締役の任期は1年です(332条1項・3項・4項)。監査の独立性を確保するため監査等委員の任期だけ長く固定されている点が特徴です。
- 執行役は置かない:業務執行は取締役(代表取締役を含む)が行い、指名委員会等設置会社のような執行役は存在しません。
- 業務執行決定の委任:取締役の過半数が社外取締役である場合、または定款の定めがある場合には、重要な業務執行の決定の大部分を取締役に委任できます(399条の13第5項・6項)。これにより取締役会は監督に専念でき、迅速な経営判断が可能になります。
- 意見陳述権:監査等委員会は、監査等委員以外の取締役の選任・解任・報酬等について株主総会で意見を述べる権限を持ちます。指名委員会・報酬委員会を置かない分、この意見陳述権で人事・報酬への関与を確保しています。
両委員会型に共通する最重要ポイントは、いずれも監査役を置けないことです(327条4項)。委員会(監査委員会・監査等委員会)が監査機能を担うため、監査役と機能が重複するからです。「監査等委員会設置会社にも監査役を置ける」とする選択肢は誤りであると即断できます。
公開/非公開 × 大会社/非大会社のパターン表
機関設計の必置機関一覧
パターンの整理表
以下は、公開/非公開と大会社/非大会社の組み合わせによる主な機関設計パターンです(委員会設置会社を除く)。
試験のポイント: 「非公開会社かつ非大会社」は取締役1人だけの最小構成が可能であり、「公開会社かつ大会社」は取締役会+監査役会+会計監査人が必須となる(委員会設置会社を選択する場合を除く)点を押さえましょう。
パターン表を「自分で導く」3ステップ
パターン表は丸暗記しようとすると組み合わせが多くて挫折します。次の3ステップで具体的な会社の機関設計が適法か否かを判定する練習をすると、本試験の応用問題にも対応できます。
- 公開会社か? → Yesなら取締役会が必須(327条1項1号)。取締役会があるので原則として監査役も必須(327条2項)。
- 大会社か? → Yesなら会計監査人が必須(328条)。会計監査人があるので監査役も必須(327条3項)。
- 公開会社かつ大会社か? → Yesなら監査役会まで必須(328条1項)。
この3ステップで「最低限置かなければならない機関」が確定します。あとは委員会型を選ぶ場合に「監査役を置けない」(327条4項)という禁止ルールが上書きされる、と理解すれば足ります。
四象限ごとの判定の勘所
- 非公開会社×非大会社:自由度が最も高い象限。取締役1人だけの最小構成も適法。取締役会を置けば監査役(または非公開会社の特例で会計参与)が必要になります。
- 非公開会社×大会社:大会社なので会計監査人が必須。すると監査役も必須(327条3項)。ただし公開会社ではないので監査役会までは不要です。取締役会の設置は任意である点に注意(取締役会を置かない大会社という設計もあり得る)。
- 公開会社×非大会社:公開会社なので取締役会・監査役が必須。大会社ではないので会計監査人・監査役会は任意です。
- 公開会社×大会社:最も重装備の象限。取締役会・監査役会・会計監査人がすべて必須。上場大企業の典型形です(委員会型を選ぶ場合を除く)。
よくある誤解の整理
機関設計では、似たルール同士を取り違える誤答が後を絶ちません。代表的な誤解を正しい結論とセットで確認しておきましょう。
公開会社は、取締役会を設置しなくてもよい。
大会社であっても公開会社でなければ、監査役会を設置する義務はない。
監査等委員会設置会社は、監査等委員会のほかに監査役を置くことができる。
試験対策のまとめ
択一式で問われるポイント
- 公開会社の必置機関: 取締役会が必須
- 大会社の必置機関: 会計監査人が必須、公開会社かつ大会社は監査役会も必須
- 取締役会設置会社には監査役が必要(委員会設置会社を除く)
- 非公開会社の特例: 監査役の権限を会計監査に限定可能、会計参与で監査役に代替可能(取締役会設置会社の場合)
- 株主総会の権限: 取締役会設置会社では法定事項+定款所定事項に限定
- 委員会設置会社の特徴: 監査役を置くことができない、各委員会の過半数は社外取締役
学習のコツ
機関設計は、暗記事項が多いテーマですが、以下のルールを軸に整理すると効率的です。
- 公開会社 → 取締役会必置 → 監査役必置(委員会設置を除く)
- 大会社 → 会計監査人必置 → 監査役必置(委員会設置を除く)
- 委員会設置 → 監査役は置けない
この3つの基本ルールを出発点として、各パターンを導き出す練習をすることで、択一式での正確な判断が可能になります。
数字で押さえる暗記マトリクス
機関設計は最終的に「数字」の正確さが得点を分けます。混同しやすい数値を一覧で確認しておきましょう。
関連記事
機関設計の理解を深めるために、会社法・商法の関連論点も併せて確認しておきましょう。
機関設計は会社法のなかでも条文・数字の正確な暗記が問われる分野ですが、本記事で示した「公開会社→取締役会→監査役」「大会社→会計監査人」「委員会型→監査役不可」という幹を起点に、各機関の権限・任期・資格要件・例外を肉付けしていけば、択一式の細かい引っかけにも対応できます。最後にパターン表を見ずに四象限の必置機関を自分で導けるか、ぜひ確認してみてください。
まとめ
- すべての株式会社の必置機関は株主総会+取締役のみで、それ以外は原則として定款自治で任意設置だが、会社の類型により強制・禁止される(326条)。
- 機関設計は「公開会社か(株式譲渡の自由)」「大会社か(規模)」の2軸で求められる監督・監査体制の厚さが決まる。
- 公開会社は取締役会必置(327条1項1号)、取締役会設置会社は監査役必置(327条2項)、大会社は会計監査人必置(328条)、大会社かつ公開会社は監査役会必置(328条1項)。
- 株主総会の権限は、取締役会非設置会社では万能、取締役会設置会社では法定事項+定款所定事項に限定される(295条)。
- 監査役は任期4年・短縮不可で独立性が手厚く保護され、独任制・兼任禁止が特徴。会計監査限定は非公開会社のみ可能(335条・336条・389条)。
- 委員会型(指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社)はいずれも監査役を置けない(327条4項)。各委員会・監査等委員会は取締役3人以上で過半数が社外取締役。
- 「公開会社=上場会社ではない」「大会社はOR条件」「取締役の解任は普通決議・監査役の解任は特別決議」など、対比で問われる引っかけを正確に押さえることが得点の鍵となる。
法律科目対策
条文ドリル × 肢別演習で効率的に学ぶ
条文の穴埋めドリルと肢別演習で、法律科目の知識を効率的に定着。 行政書士試験の法令科目対策に対応しています。