株式会社の機関設計|取締役会・監査役の設置パターン
会社法の株式会社の機関設計を解説。株主総会・取締役・取締役会・監査役の権限、公開会社・大会社の必置機関、委員会設置会社のパターンを比較表で整理します。
はじめに|機関設計は会社法の最頻出テーマ
行政書士試験の商法・会社法分野において、株式会社の機関設計は最も出題頻度の高いテーマです。株主総会、取締役、取締役会、監査役、監査役会、会計参与、会計監査人、そして委員会設置会社に至るまで、各機関の権限と設置の組み合わせルールを正確に理解することが求められます。
会社法は2005年に施行された比較的新しい法律ですが、2014年改正で「監査等委員会設置会社」が創設されるなど、機関設計の選択肢は広がっています。本記事では、行政書士試験で問われるポイントに焦点を当て、機関設計の基本ルールから各機関の権限、公開会社・大会社のパターンまでを体系的に解説します。
機関設計の基本ルール
すべての株式会社に共通の必置機関
すべての株式会社は、以下の機関を必ず設置しなければなりません。
- 株主総会(295条)
- 取締役(326条1項)
この2つは、会社の規模や種類にかかわらず必置です。それ以外の機関(取締役会、監査役、監査役会、会計参与、会計監査人、各種委員会)は、定款の定めにより任意に設置することができます(326条2項)。ただし、会社の類型によっては設置が義務づけられる場合があります。
会社の類型|公開会社・非公開会社・大会社・非大会社
機関設計のルールを理解するには、会社法上の以下の区分を正確に把握する必要があります。
注意: 「公開会社」とは上場会社のことではありません。株式の一部でも譲渡制限がなければ公開会社に該当します。すべての株式に譲渡制限がある会社のみが非公開会社です。
機関設計の主なルール
会社法が定める機関設計の主なルールは以下のとおりです。
株主総会の権限(295条)
株主総会の地位
株主総会は、株式会社の最高意思決定機関です。ただし、その権限の範囲は取締役会の有無によって異なります。
取締役会設置会社では、株主総会の権限が法定事項と定款所定事項に限定されます。これは、業務執行の意思決定を取締役会に委ねることで迅速な経営判断を可能にする趣旨です。
株主総会の決議要件
取締役会設置会社の株主総会は、会社法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議することができる。
取締役と取締役会
取締役
取締役は、株式会社の業務執行を行う機関です。取締役の員数・任期は以下のとおりです。
取締役会の権限
取締役会は、以下の権限を有します(362条2項)。
- 業務執行の決定
- 取締役の職務の執行の監督
- 代表取締役の選定及び解職
取締役会は、以下の事項の決定を個々の取締役に委任することができません(362条4項)。
- 重要な財産の処分及び譲受け
- 多額の借財
- 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
- 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
- 社債の募集に関する重要事項
- 内部統制システムの整備
- 定款の定めに基づく取締役等の責任の一部免除
代表取締役
代表取締役は、株式会社を代表し、業務を執行する機関です。
取締役会非設置会社では、代表取締役を定めないことも可能であり、その場合は各取締役が会社を代表します(349条1項・2項)。
監査役と監査役会
監査役の権限
監査役は、取締役の職務の執行を監査する機関です(381条1項)。監査の範囲は以下のとおりです。
注意: 監査役の権限を会計監査に限定できるのは、非公開会社に限られます。公開会社の監査役は必ず業務監査権限を有します。
監査役の員数と任期
監査役の任期は4年であり、取締役の任期(2年)よりも長く設定されています。これは、監査役の独立性を確保するためです。
監査役会
監査役会は、監査役全員で組織される合議体です(390条1項)。大会社かつ公開会社には監査役会の設置が義務づけられています(328条1項)。
監査役会の権限は以下のとおりです。
- 監査報告の作成
- 常勤の監査役の選定及び解職
- 監査の方針、監査役会設置会社の業務及び財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定
ただし、監査役会は各監査役の権限の行使を妨げることができません(390条2項ただし書)。各監査役は独立して職務を行うことができます。
会計参与と会計監査人
会計参与
会計参与は、取締役と共同して計算書類等を作成する機関です(374条1項)。会計参与になれるのは、公認会計士(監査法人)又は税理士(税理士法人)に限られます(333条1項)。
会計参与は、非公開会社の取締役会設置会社において、監査役の代わりに設置することができる点が試験上重要です(327条2項ただし書)。
会計監査人
会計監査人は、計算書類等の監査を行う機関です(396条1項)。会計監査人になれるのは、公認会計士又は監査法人に限られます(337条1項)。税理士は会計監査人にはなれません。
大会社は会計監査人を設置しなければなりません(328条)。
会計参与は公認会計士又は税理士でなければならないが、会計監査人は公認会計士又は監査法人でなければならず、税理士は会計監査人になることができない。
委員会設置会社
2種類の委員会設置会社
会社法は、従来の監査役制度に代わる機関設計として、以下の2種類の委員会設置会社を用意しています。
指名委員会等設置会社
指名委員会等設置会社は、指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3つの委員会を設置する会社です。
各委員会の構成と権限
重要な特徴
- 執行役を置かなければならない(402条1項)
- 執行役が業務執行を行い、取締役会は経営の基本方針の決定と監督に専念する
- 監査役を置くことができない(327条4項)
- 代表執行役は取締役会が選定する
監査等委員会設置会社
監査等委員会設置会社は、2014年改正で創設された新しい機関設計です。監査等委員会のみを設置すればよく、指名委員会等設置会社よりも導入しやすい仕組みとなっています。
監査等委員会の構成と権限
- 取締役3人以上で構成(過半数は社外取締役)(331条6項)
- 監査等委員である取締役の任期は2年(非監査等委員の取締役は1年)(332条3項・4項)
- 取締役の職務の執行の監査、監査報告の作成
- 株主総会における取締役(監査等委員である取締役を除く)の選任・解任・報酬等について意見陳述権
重要な特徴
- 監査役を置くことができない(327条4項)
- 執行役は置かない(取締役が業務を執行する)
- 取締役会の決議で重要な業務執行の決定を取締役に委任可能(399条の13第5項・6項)
公開/非公開 × 大会社/非大会社のパターン表
機関設計の必置機関一覧
パターンの整理表
以下は、公開/非公開と大会社/非大会社の組み合わせによる主な機関設計パターンです(委員会設置会社を除く)。
試験のポイント: 「非公開会社かつ非大会社」は取締役1人だけの最小構成が可能であり、「公開会社かつ大会社」は取締役会+監査役会+会計監査人が必須となる(委員会設置会社を選択する場合を除く)点を押さえましょう。
公開会社は、取締役会を設置しなくてもよい。
試験対策のまとめ
択一式で問われるポイント
- 公開会社の必置機関: 取締役会が必須
- 大会社の必置機関: 会計監査人が必須、公開会社かつ大会社は監査役会も必須
- 取締役会設置会社には監査役が必要(委員会設置会社を除く)
- 非公開会社の特例: 監査役の権限を会計監査に限定可能、会計参与で監査役に代替可能(取締役会設置会社の場合)
- 株主総会の権限: 取締役会設置会社では法定事項+定款所定事項に限定
- 委員会設置会社の特徴: 監査役を置くことができない、各委員会の過半数は社外取締役
学習のコツ
機関設計は、暗記事項が多いテーマですが、以下のルールを軸に整理すると効率的です。
- 公開会社 → 取締役会必置 → 監査役必置(委員会設置を除く)
- 大会社 → 会計監査人必置 → 監査役必置(委員会設置を除く)
- 委員会設置 → 監査役は置けない
この3つの基本ルールを出発点として、各パターンを導き出す練習をすることで、択一式での正確な判断が可能になります。
法律科目対策
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