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婚姻と離婚の法律関係|要件・効果を体系整理

婚姻の実質的要件・形式的要件から婚姻の効果(氏・同居義務・財産関係)、離婚の種類(協議離婚・調停離婚・裁判離婚)、財産分与まで体系的に解説。行政書士試験の家族法対策として、条文と判例を整理します。

はじめに|家族法は得点を伸ばせる分野

家族法(親族法・相続法)は、行政書士試験の民法で毎年出題される重要分野です。特に婚姻と離婚は、要件・効果が条文で明確に規定されているため、正確に覚えれば確実に得点できます。

本記事では、婚姻の成立要件から婚姻の効果、離婚の種類と財産分与まで、試験に必要な知識を体系的に整理します。

婚姻の成立要件

婚姻が有効に成立するためには、実質的要件と形式的要件の両方を満たす必要があります。

実質的要件(積極的要件)

婚姻の実質的要件とは、婚姻が有効であるための実体的な条件です。

  1. 婚姻意思の合致: 当事者間に社会通念上の夫婦関係を創設する意思が必要。形式的に婚姻届を出しただけでは足りない(実質的意思説、判例の立場)
  2. 婚姻適齢: 婚姻は18歳にならなければすることができない(民法第731条)。2022年4月の改正で男女とも18歳に統一された

実質的要件(消極的要件=婚姻障害)

以下に該当する場合は婚姻できません。

  1. 重婚の禁止: 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない(民法第732条)
  2. 再婚禁止期間: 2024年4月の民法改正により、女性の再婚禁止期間(旧733条)は廃止された
  3. 近親者間の婚姻禁止: 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では婚姻できない(民法第734条第1項)。養子と養方の傍系血族との間でもこの制限は適用される
  4. 直系姻族間の婚姻禁止: 直系姻族の間では婚姻できない。姻族関係が終了した後も同様(民法第735条)
  5. 養親子等の間の婚姻禁止: 養子、その配偶者、養子の直系卑属又はその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、離縁後でも婚姻できない(民法第736条)

形式的要件(届出)

婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生じます(民法第739条第1項)。届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で行います(同条第2項)。

婚姻届が受理された時点で婚姻が成立します。届出がない限り、たとえ事実上の夫婦関係があっても法律上の婚姻は成立しません(法律婚主義)。

婚姻の無効と取消し

婚姻の無効(742条)

婚姻は、以下の場合に無効となります。

  1. 婚姻意思を欠く場合: 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき
  2. 届出を欠く場合: 当事者が婚姻の届出をしないとき(ただし、届出が形式的要件を欠くにとどまるときは無効としない)

婚姻の取消し(743条〜749条)

婚姻障害に違反した婚姻は、取り消すことができます。婚姻の取消しは、将来に向かってのみ効力を生じます(民法第748条第1項)。遡及効はありません。

  • 不適齢婚の取消し: 適齢に達した後は、本人のみが取消可能
  • 重婚の取消し: 当事者、その親族、検察官が取消請求可能
  • 詐欺・強迫による婚姻: 詐欺・強迫を知った後3か月以内に取消し

婚姻の効果

氏の変更

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称します(民法第750条)。現行法では夫婦同氏制が採られています。

同居・協力・扶助義務

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。 ― 民法 第752条

夫婦には、同居義務・協力義務・扶助義務が課されます。正当な理由のない別居は、裁判離婚の原因となり得ます。

成年擬制

2022年4月の民法改正により成年年齢が18歳に引き下げられ、婚姻適齢も18歳に統一されたため、未成年者の婚姻がなくなり、成年擬制の規定(旧753条)は削除されました。

夫婦間の契約取消権

夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができます(民法第754条)。ただし、判例は婚姻関係が破綻した後はこの規定の適用はないとしています(最判昭和33年3月6日)。

夫婦間の財産関係

夫婦財産契約(755条〜759条)

夫婦が婚姻届出前に財産に関する契約を締結した場合、その契約に従います。登記をしないと夫婦の承継人及び第三者に対抗できません(民法第756条)。

法定財産制

夫婦財産契約がない場合は、法定財産制が適用されます。

  1. 婚姻費用の分担: 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する(民法第760条)
  2. 日常家事債務の連帯責任: 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について連帯してその責任を負う(民法第761条)
  3. 夫婦間の帰属不明財産: 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、共有に属するものと推定する(民法第762条第2項)

離婚の種類

協議離婚(763条〜769条)

協議離婚とは、夫婦の協議によって離婚する方法です。日本の離婚の約9割が協議離婚です。

  • 要件: 夫婦の離婚意思の合致+戸籍法に基づく届出
  • 届出: 婚姻届と同様、成年の証人2人以上の署名が必要
  • 離婚届の不受理申出: 協議離婚の意思がない場合、不受理申出制度により離婚届の受理を防止できる

調停離婚

離婚について当事者間で協議が調わないときは、家庭裁判所に離婚の調停を申し立てることができます。裁判離婚を求める場合も、まず調停を経なければなりません(調停前置主義、家事事件手続法第257条)。

審判離婚

調停が成立しない場合に、家庭裁判所が相当と認めるときに職権で審判を下す離婚です(家事事件手続法第284条)。実務上はあまり多くありません。

裁判離婚(770条)

裁判離婚は、法定の離婚原因がある場合に裁判所の判決によって離婚する方法です。

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。 ― 民法 第770条第1項

法定離婚原因(770条1項各号)は以下の5つです。

  1. 不貞行為: 配偶者に不貞な行為があったとき
  2. 悪意の遺棄: 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. 3年以上の生死不明: 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 回復の見込みのない強度の精神病: 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. 婚姻を継続し難い重大な事由: その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

裁判所は、1号から4号の事由があっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができます(民法第770条第2項、裁量棄却)。

有責配偶者からの離婚請求

判例(最大判昭和62年9月2日)は、有責配偶者からの離婚請求について、以下の3要件を満たせば認められるとしました。

  1. 別居期間が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと
  2. 夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと
  3. 離婚により相手方配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれないこと

財産分与(768条)

意義

離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができます(民法第768条第1項)。

財産分与の性質

財産分与には、以下の3つの要素が含まれるとされています。

  1. 清算的要素: 婚姻中に夫婦が協力して形成した財産の清算
  2. 扶養的要素: 離婚後の一方の配偶者の生活保障
  3. 慰謝料的要素: 離婚に伴う精神的苦痛の慰謝(判例は含み得るとする)

財産分与と慰謝料の関係

財産分与が行われた場合でも、それが損害賠償の要素を含めた趣旨でない場合や、その額が不十分な場合には、別途慰謝料を請求できます(最判昭和46年7月23日)。

財産分与請求権の期間制限

財産分与の請求は、離婚の時から2年以内に行わなければなりません(民法第768条第2項ただし書)。この期間は除斥期間と解されています。

離婚の効果

氏の変更

婚姻によって氏を改めた者は、離婚によって婚姻前の氏に復するのが原則です(民法第767条第1項)。ただし、離婚の日から3か月以内に届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を引き続き称することができます(同条第2項、婚氏続称)。

子の監護に関する事項

離婚の際には、子の監護者、面会交流、養育費などの子の監護に関する事項を定めます(民法第766条)。これらの事項は子の利益を最も優先して考慮しなければなりません。

復氏と子の氏

離婚によって復氏した親の子は、家庭裁判所の許可を得て、離婚後の親の氏を称することができます(民法第791条)。子の氏は離婚によって自動的に変更されるわけではなく、別途手続きが必要です。

試験での出題ポイント

  1. 婚姻適齢は男女とも18歳: 2022年改正で統一
  2. 再婚禁止期間は廃止: 2024年改正で削除
  3. 婚姻の届出: 成年の証人2人以上が必要
  4. 日常家事債務: 夫婦は連帯して責任を負う(761条)
  5. 法定離婚原因: 5つの事由を正確に覚える
  6. 有責配偶者からの離婚請求: 3要件を判例で確認
  7. 財産分与の期間: 離婚から2年以内
確認問題

2022年の民法改正後、婚姻適齢は男性18歳、女性16歳である。

○ 正しい × 誤り
解説
2022年4月施行の民法改正により、婚姻適齢は男女とも18歳に統一されました(民法第731条)。改正前は男性18歳、女性16歳でしたが、改正後は女性の婚姻適齢も18歳に引き上げられています。
確認問題

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方はこれによって生じた債務について連帯してその責任を負う。

○ 正しい × 誤り
解説
民法第761条は「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について連帯してその責任を負う」と規定しています。これは日常家事債務の連帯責任の規定であり、第三者保護のための重要な規定です。
確認問題

財産分与の請求は、離婚の時から3年以内に行わなければならない。

○ 正しい × 誤り
解説
財産分与の請求は、離婚の時から「2年以内」に行わなければなりません(民法第768条第2項ただし書)。3年ではなく2年である点に注意が必要です。この期間は除斥期間と解されており、期間経過により権利が消滅します。

まとめ

婚姻と離婚は、家族法の中核をなすテーマです。婚姻の成立には実質的要件(婚姻意思・婚姻適齢)と形式的要件(届出)が必要であり、婚姻障害に該当しないことも求められます。

離婚については、協議離婚・調停離婚・裁判離婚の区別を理解し、法定離婚原因(770条1項各号)を正確に覚えることが重要です。近年の改正(婚姻適齢の統一・再婚禁止期間の廃止)は出題可能性が高いため、改正前後の比較を意識して学習してください。

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