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公物法の基礎|公共用物・公用物の分類と利用関係

公物法の基本体系を解説。公共用物・公用物・自然公物・人工公物の分類、公物の成立と消滅、利用関係(自由使用・許可使用・特許使用)を整理します。

はじめに|公物法は行政法各論の重要テーマ

道路、河川、公園、学校、庁舎――これらはすべて行政が管理し、公の目的のために供されている物です。行政法では、このような物を公物と呼び、その法律関係を規律する法分野を公物法といいます。

公物法は、行政法の教科書では行政組織法や行政作用法の後に学ぶ分野であり、行政書士試験でも択一式で出題されることがあります。特に公物の分類、公物の成立と消滅、利用関係は基本的な知識として押さえておく必要があります。

本記事では、公物法の基礎的な概念を体系的に整理し、試験で問われるポイントを解説します。

公物の意義

公物とは

公物とは、国又は地方公共団体等の行政主体により、直接に公の目的のために供される個々の有体物をいいます。

ここで重要なのは以下の点です。

  1. 行政主体が管理する物: 私人が所有する物は原則として公物に該当しない(ただし例外あり)
  2. 公の目的に供される: 行政の目的を達成するために使用されていること
  3. 有体物: 物理的な実体を持つ物であること

公物と私物の区別

行政主体が所有する物であっても、すべてが公物というわけではありません。行政主体が私経済活動のために所有している物(普通財産)は公物ではなく、行政法上は私物に分類されます。

  • 公物: 行政財産として公の目的に供されている物
  • 私物(普通財産): 行政目的に直接供されていない行政主体所有の物

公物の分類

公共用物と公用物

公物は、その利用形態によって以下の2つに大別されます。

公共用物(公衆用物): 直接に一般公衆の使用に供される公物

  • 道路: 道路法に基づく国道、都道府県道、市町村道
  • 河川: 河川法に基づく一級河川、二級河川
  • 公園: 都市公園法に基づく都市公園
  • 海浜: 海岸法に基づく海岸
  • 港湾: 港湾法に基づく港湾施設

公用物: 国又は地方公共団体がその事務・事業を遂行するために直接使用する公物

  • 庁舎: 官公庁の建物
  • 公用車: 行政事務に使用される自動車
  • 学校: 公立学校の建物・施設(公共用物的性格も持つ)
  • 刑務所: 矯正施設

自然公物と人工公物

公物は、その成立原因によって以下の2つに分類されます。

自然公物: 自然の状態で公の目的に供される公物。人為的な加工を要せずに成立する。

  • 河川: 自然の流水・河道
  • 海浜: 自然の海岸・砂浜
  • 湖沼: 自然の湖・沼

人工公物: 人為的な行為(設置行為・公用開始行為)によって公の目的に供される公物。

  • 道路: 建設工事により造成された道路
  • 公園: 整備・設計された都市公園
  • 庁舎: 建設された官公庁の建物

動産公物と不動産公物

  • 不動産公物: 土地・建物等の不動産(道路、庁舎など)
  • 動産公物: 動産である公物(公用車、図書館の蔵書など)

公物の多くは不動産ですが、動産も公物に該当し得ます。

公物の成立と消滅

人工公物の成立

人工公物が公物として成立するためには、原則として以下の2つの要素が必要です。

  1. 実体の形成(物的基盤の整備): 道路の建設、公園の整備など、物理的な形態が整えられること
  2. 公用開始行為: 行政主体がその物を公の目的に供する意思を表示する行為

公用開始行為とは、行政主体が特定の物を公物として公の目的に供することを決定する行為です。公用開始行為は、法令上の手続き(供用開始の公示等)によって行われるのが通常です。

道路管理者は、路線が指定され、又は路線が認定された場合においては、遅滞なく、道路の区域を決定して、国土交通省令で定めるところにより、これを公示しなければならない。 ― 道路法 第18条第1項(趣旨)

自然公物の成立

自然公物は、自然の状態で公の目的に適する性質を備えていれば成立します。公用開始行為は不要とされるのが一般的です。ただし、河川法に基づく一級河川・二級河川の指定のように、法令上の指定行為が必要な場合もあります。

公物の消滅

公物が公物としての性質を失うことを公用廃止といいます。人工公物の消滅には、原則として公用廃止行為(行政主体が公の目的に供することをやめる旨の意思表示)が必要です。

ただし、以下の場合には事実上の公用廃止(黙示の公用廃止)が認められることがあります。

  • 公物の形態が完全に失われ、回復不能な状態になった場合
  • 長期間にわたり公の目的に使用されず、事実上放棄されたと認められる場合

自然公物については、自然現象による形態の消滅(河川の枯渇等)により公物としての性質を失うことがあります。

公物の利用関係

公共用物の利用関係

公共用物の利用関係は、利用の態様に応じて以下の3つに分類されます。

自由使用(一般使用): 公物の目的に沿った通常の使用で、何人も自由に行うことができる利用形態。特別の許可等は不要。

  • 道路の通行
  • 公園での散歩・休息
  • 河川での散歩・景観の享受

自由使用は公物の最も基本的な利用形態であり、特段の法的手続きを要しません。

許可使用: 公物の使用について一般的に禁止されている行為について、個別に禁止を解除して使用を認める利用形態。

  • 道路の占用許可(道路法第32条): 電柱の設置、地下埋設管の敷設等
  • 公園内の出店許可
  • 河川の占用許可(河川法第24条)

許可使用は、公物管理権に基づく許可(禁止の解除)として位置づけられます。

特許使用(特別使用): 公物について、一般人が有しない特別の使用権を設定する利用形態。

  • 公有水面の埋立免許(公有水面埋立法)
  • 鉱業権の設定(鉱業法)

特許使用は、公物に対する排他的・独占的な使用権を設定するものであり、行政行為としての「特許」に該当します。

許可使用と特許使用の区別

項目許可使用特許使用法的性質禁止の解除特別の権利の設定行政行為の種類許可特許使用権の性格一般人と同じ使用の回復一般人にはない特別の権利例道路占用許可公有水面埋立免許

公用物の利用関係

公用物は行政主体がその事務・事業のために使用するものであるため、一般公衆の利用は原則として予定されていません。ただし、公立学校や図書館のように、公用物と公共用物の性格を併せ持つ営造物については、利用者との法律関係が問題となります。

公物と私法の適用

公物の融通性

公物に対する私法の適用については、以下の議論があります。

融通性の制限: 公物は公の目的に供されているため、私法上の取引(売買、抵当権の設定等)が制限されます。

行政財産は、(中略)貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、出資の目的とし、若しくは信託し、又はこれに私権を設定することができない。 ― 地方自治法 第238条の4第1項

公物の取得時効

公物について取得時効が成立するかどうかは論点となります。

判例の立場(最判昭和51年12月24日): 公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、黙示的に公用が廃止されたものとみることができる場合には、取得時効の対象となり得るとしています。

公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、その物のうえに他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、右公共用財産については、黙示的に公用が廃止されたものとして、これについて取得時効の成立を妨げない。 ― 最判昭和51年12月24日

公物に対する民事上の強制執行

公物は公の目的に供されている物であるため、民事上の強制執行の対象とならないのが原則です(国有財産法第18条、地方自治法第238条の4等)。

道路法と河川法の比較

道路法

  • 道路管理者: 国土交通大臣(国道の指定区間)、都道府県知事、市町村長
  • 道路の種類: 高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道
  • 占用許可: 道路法第32条(電柱、地下管等の道路占用には許可が必要)
  • 道路の私権: 私権を行使することができない(道路法第4条)

河川法

  • 河川管理者: 国土交通大臣(一級河川)、都道府県知事(二級河川)
  • 河川の種類: 一級河川、二級河川、準用河川
  • 河川区域の占用: 河川法第24条(土地の占用許可)、第26条(工作物の新築等の許可)
  • 河川の私権: 河川区域内の土地について私権の行使が制限される

試験での出題ポイント

  1. 公共用物と公用物の区別: 公共用物は一般公衆の使用、公用物は行政主体の使用
  2. 自然公物と人工公物の区別: 自然公物は公用開始行為不要(原則)、人工公物は必要
  3. 自由使用・許可使用・特許使用の3分類: 特に許可使用と特許使用の違い
  4. 公物の取得時効: 黙示の公用廃止がある場合には成立し得る(判例)
  5. 行政財産の融通性の制限: 私権の設定は原則不可(地方自治法第238条の4)
  6. 公用開始行為と公用廃止: 人工公物の成立と消滅の要件
確認問題

公物のうち、道路や公園のように一般公衆の使用に供されるものを公用物という。

○ 正しい × 誤り
解説
一般公衆の使用に供される公物は「公共用物(公衆用物)」です。「公用物」は国又は地方公共団体がその事務・事業を遂行するために直接使用する公物(庁舎、公用車等)を指します。両者の名称を混同しないよう注意が必要です。
確認問題

最高裁判例によれば、公共用財産が長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置された場合、黙示的に公用が廃止されたものとして取得時効が成立し得る。

○ 正しい × 誤り
解説
最判昭和51年12月24日は、公共用財産が長年放置され、公共用財産としての形態・機能を全く喪失し、もはや公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、黙示的公用廃止として取得時効の成立を認めています。
確認問題

自然公物は、人工公物と異なり、原則として公用開始行為がなくても公物として成立する。

○ 正しい × 誤り
解説
自然公物(河川、海浜等)は自然の状態で公の目的に適する性質を備えていれば、特段の公用開始行為がなくても公物として成立するのが原則です。一方、人工公物(道路、公園等)は、物的基盤の整備に加えて公用開始行為が必要とされます。

まとめ

公物法は、行政が管理し公の目的に供する物(公物)の法律関係を規律する法分野です。公物は、利用形態により公共用物と公用物、成立原因により自然公物と人工公物に分類されます。

公共用物の利用関係は、自由使用・許可使用・特許使用の3類型に整理されます。公物は公の目的に供されているため、私法の適用が制限され、行政財産への私権設定は原則として禁止されています。

ただし、判例は公共用財産について黙示の公用廃止がある場合に取得時効の成立を認めています。公物の成立・消滅・利用関係の基本構造を正確に理解しておきましょう。

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