客観訴訟|民衆訴訟と機関訴訟の違いを解説
行政事件訴訟法における客観訴訟(民衆訴訟・機関訴訟)を徹底解説。主観訴訟との違い、民衆訴訟の具体例(選挙訴訟・住民訴訟)、機関訴訟の具体例(国と地方の争い)、法律に定める場合にのみ提起可能な理由を整理します。
はじめに|行政事件訴訟の全体像
行政事件訴訟法は、行政事件訴訟を大きく4つの類型に分類しています(2条〜6条)。
- 抗告訴訟: 行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟
- 当事者訴訟: 当事者間の法律関係を確認し又は形成する訴訟
- 民衆訴訟: 国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟
- 機関訴訟: 国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟
このうち、抗告訴訟と当事者訴訟は「主観訴訟」と呼ばれ、個人の権利利益の保護を目的とします。一方、民衆訴訟と機関訴訟は「客観訴訟」と呼ばれ、行政の客観的な適法性の確保を目的とします。
行政書士試験では、客観訴訟の基本的な仕組みと具体例が毎年のように出題されます。特に「客観訴訟は法律に定める場合にのみ提起できる」という42条のルール、民衆訴訟と機関訴訟の区別、選挙訴訟・住民訴訟という具体例は、択一式・多肢選択式の双方で繰り返し問われる頻出テーマです。本記事では、民衆訴訟と機関訴訟のそれぞれについて、条文に基づいて正確に整理したうえで、試験で問われる角度や引っかけパターンまで踏み込んで解説します。
この記事で押さえるべき結論(先取り整理)
細かい論点に入る前に、最終的に暗記すべき骨格を先に示します。以下の5点が頭に入っていれば、客観訴訟の問題は大半が解けます。
主観訴訟と客観訴訟の区別
主観訴訟とは
主観訴訟とは、個人の権利利益の保護を目的とする訴訟です。行政事件訴訟法上、抗告訴訟と当事者訴訟がこれに該当します。
主観訴訟の特徴は以下のとおりです。
- 原告は自己の法律上の利益を主張する
- 原告適格は「法律上の利益を有する者」に認められる(抗告訴訟の場合)
- 法律に特別の定めがなくても提起可能(行政事件訴訟法の一般規定に基づく)
客観訴訟とは
客観訴訟とは、行政の客観的な適法性を確保することを目的とする訴訟です。民衆訴訟と機関訴訟がこれに該当します。
客観訴訟の最大の特徴は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り提起することができるという点です(42条)。
行政事件訴訟法42条
民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。
――行政事件訴訟法42条
これは、客観訴訟が個人の権利利益の保護ではなく、行政の適法性確保という公益目的の訴訟であることから、無制限に認めると訴訟が濫立するおそれがあるためです。
「法律上の争訟」に当たらないという理論的背景
なぜ客観訴訟だけが「法律に定める場合」という制限を受けるのか。その根本には、客観訴訟が憲法・裁判所法でいう「法律上の争訟」に本来は当たらない、という理論があります。
裁判所が本来扱うのは、当事者間の具体的な権利義務をめぐる紛争(主観訴訟)です。これに対し客観訴訟は、原告自身の権利義務とは無関係に、純粋に行政が適法かどうかを問うものです。そのため、立法者が特に「この場合は裁判所が審理してよい」と法律で定めたときに限って、例外的に出訴が認められる、という構造になっています。この点は記事後半の「客観訴訟と憲法上の法律上の争訟」で詳しく扱います。
主観訴訟と客観訴訟の比較表
4類型のなかでの位置づけ
行政事件訴訟法は、第2条で4類型を列挙したうえで、第3条で抗告訴訟、第4条で当事者訴訟、第5条で民衆訴訟、第6条で機関訴訟をそれぞれ定義しています。条文の並び順がそのまま「抗告訴訟・当事者訴訟(主観)→ 民衆訴訟・機関訴訟(客観)」という分類に対応している点を意識すると整理しやすくなります。試験では「当事者訴訟は客観訴訟である」といった入れ替えの誤りが定番ですので、当事者訴訟は主観訴訟であることを確実に押さえてください。
民衆訴訟
民衆訴訟の定義
行政事件訴訟法5条
この法律において「民衆訴訟」とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。
――行政事件訴訟法5条
民衆訴訟の重要なポイントは「自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起する」という点です。つまり、原告は自己の個人的な権利利益が侵害されたことを主張するのではなく、一般の国民・住民としての立場から行政の違法是正を求めます。
この定義文のなかで試験的に最も重要なのは「選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格」というフレーズです。ここを「自己の法律上の利益にかかわる資格」と書き換えた肢は明確な誤りであり、頻出の引っかけです。条文の文言を一字一句のレベルで記憶しておくことが得点に直結します。
民衆訴訟の具体例
選挙訴訟(公職選挙法)
公職選挙法は、選挙の効力に関する訴訟(203条・204条)と、当選の効力に関する訴訟(207条・208条)を規定しています。
選挙の効力に関する訴訟
選挙の手続に違法があった場合に、選挙人又は候補者が選挙の効力を争う訴訟です。地方公共団体の選挙については、まず選挙管理委員会に異議を申し出(または審査の申立てを経)、その決定に不服がある場合に訴訟を提起します(公職選挙法203条)。これに対し、衆議院議員・参議院議員の選挙については、選挙管理委員会への異議の手続を経ず、選挙人又は公職の候補者が、選挙の日から30日以内に高等裁判所に直接訴訟を提起します(公職選挙法204条)。
当選の効力に関する訴訟
当選人の当選の効力を争う訴訟です。当選人が被選挙権を有しなかった場合や、得票数の計算に誤りがあった場合などに提起されます(公職選挙法207条・208条)。
選挙訴訟は、選挙人としての資格で提起するものであり、自己の個人的な権利利益とは無関係に提起できる点が民衆訴訟の典型例とされています。
いわゆる「一票の格差」訴訟との関係
報道でよく耳にする「一票の格差」を争う訴訟(議員定数不均衡訴訟)は、選挙人が公職選挙法204条に基づいて選挙の効力を争うかたちで提起されるものであり、その実体は民衆訴訟(選挙訴訟)です。最高裁は、投票価値の平等が憲法上の要請であることを認めつつ、定数配分規定が違憲状態に至っているか否かを審査してきました(例として最大判昭和51年4月14日など)。憲法分野で学ぶこのテーマが、訴訟形式の面では行政事件訴訟法の民衆訴訟に位置づけられる、という縦の理解があると応用問題に強くなります。
選挙無効訴訟における事情判決の法理
選挙が違法であっても、これを無効とすると公の利益に著しい障害が生じる場合があります。最高裁は、行政事件訴訟法31条1項(事情判決)が定める一般的な法の基本原則を選挙訴訟にも援用し、選挙を違法と宣言しつつ請求自体は棄却する、という処理を認めてきました。
行政事件訴訟法31条1項
取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において…(中略)…裁判所は、請求を棄却することができる。この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならない。
――行政事件訴訟法31条1項
住民訴訟(地方自治法242条の2)
住民訴訟は、地方公共団体の住民が、当該地方公共団体の違法な財務会計行為の是正を求める訴訟です。
住民訴訟の前提: 住民監査請求(242条)
住民訴訟を提起するためには、まず住民監査請求を経なければなりません。住民監査請求は、地方公共団体の住民が、当該地方公共団体の執行機関又は職員の違法又は不当な財務会計上の行為について、監査委員に対して監査を求め、必要な措置を講ずべきことを請求するものです。
ここでの財務会計上の行為とは、公金の支出、財産の取得・管理・処分、契約の締結・履行、債務その他の義務の負担などを指し、これらを「怠る事実」も対象に含みます(地方自治法242条1項)。住民監査請求は、原則として当該行為のあった日(又は終わった日)から1年以内に行わなければなりません(正当な理由がある場合は例外)。
住民訴訟の4類型(242条の2第1項)
- 1号請求(差止請求): 当該行為の全部又は一部の差止めを求める
- 2号請求(取消・無効確認請求): 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認を求める
- 3号請求(怠る事実の違法確認請求): 当該怠る事実の違法確認を求める
- 4号請求(損害賠償・不当利得返還請求): 当該職員又は相手方に対する損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該地方公共団体の執行機関等に対して求める
住民訴訟は、住民が個人的に損害を受けたかどうかに関係なく、住民としての立場から地方公共団体の財務の適正を確保するために提起するものであり、民衆訴訟の代表例です。
4号請求の構造(平成14年改正)に注意
4号請求は試験で深く問われます。平成14年(2002年)の地方自治法改正により、4号請求の仕組みは大きく変わりました。改正前は、住民が職員個人を直接被告として損害賠償等を請求する構造(旧4号)でしたが、改正後は、住民はまず地方公共団体の執行機関(長など)を被告として、「当該職員又は相手方に損害賠償等を請求せよ」と求める訴訟(義務付け的な構造)を提起します。住民訴訟で勝訴判決が確定すると、地方公共団体の長が改めて当該職員等に対して損害賠償等を請求する(場合によっては別途の訴訟になる)という二段階の仕組みです。「住民が職員個人を直接訴える」とする肢には注意が必要です。
国民投票無効訴訟など
選挙訴訟・住民訴訟ほど頻出ではありませんが、憲法改正国民投票法(日本国憲法の改正手続に関する法律)に基づく国民投票無効訴訟や、最高裁判所裁判官の国民審査に関する訴訟なども、自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起する民衆訴訟に位置づけられます。「民衆訴訟は選挙訴訟と住民訴訟しかない」と断定する肢は不正確になり得る、という点だけ押さえておけば十分です。
住民訴訟の特徴
住民訴訟には、以下の特徴があります。
- 住民監査請求前置: 住民監査請求を経なければ訴訟を提起できない
- 出訴期間: 監査委員の監査結果等の通知があった日から30日以内
- 対象: 違法な財務会計行為に限定される(不当な行為は対象外。住民監査請求では不当も対象)
- 原告: 当該地方公共団体の住民(1人でも可)
ここで重要なのは、住民監査請求では「違法又は不当」な行為を対象とするのに対し、住民訴訟では「違法」な行為のみを対象とする点です。裁判所は行政の裁量判断の当・不当を審査する立場にないためです。
住民監査請求と住民訴訟の対比
両者は連続した制度ですが、試験では細かな違いが狙われます。下表で整理します。
住民訴訟に関する重要判例
一日校長事件(職員の損害賠償責任の捉え方)
財務会計行為の前提となる先行行為(人事上の措置など)が違法であっても、財務会計行為それ自体が直ちに違法となるわけではない、という考え方が判例上問題になります。最高裁は、財務会計上の行為を行う職員が、先行する原因行為の違法を是正すべき職務上の義務に違反したといえるかどうかという観点から、財務会計行為の違法性を判断する枠組みを示してきました(最判昭和60年9月12日など)。先行行為の違法と財務会計行為の違法を直結させない、という発想が試験では問われます。
神戸市公金支出(地鎮祭・玉串料)型の事案
住民訴訟は、政教分離原則(憲法20条・89条)違反を争う場面でもしばしば用いられてきました。たとえば玉串料の公金支出が違憲・違法であるとして住民が争った愛媛玉串料訴訟(最大判平成9年4月2日)は、その実体的争点は憲法問題ですが、訴訟形式としては住民訴訟です。憲法分野の有名判例が、手続上は住民訴訟=民衆訴訟として提起されている、という横断的理解が重要です。
機関訴訟
機関訴訟の定義
行政事件訴訟法6条
この法律において「機関訴訟」とは、国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいう。
――行政事件訴訟法6条
機関訴訟は、国や地方公共団体の「機関」間の争いを解決するための訴訟です。私人が当事者となるのではなく、国の機関と地方公共団体の機関、あるいは地方公共団体の機関同士が当事者となります。
通常、行政組織の内部における権限の争いは、上級機関の指揮監督によって行政内部で解決されるべきものとされます。したがって機関相互間の紛争を裁判所が審理することは例外であり、まさに「法律に定める場合」に限って機関訴訟が認められる、という関係になっています。これが客観訴訟が42条の制限に服する典型例です。
機関訴訟の具体例
地方自治法に基づく訴訟
国地方係争処理委員会の審査と関与に関する訴訟(251条の5)
地方分権改革により、国の関与(是正の要求、許可の拒否、指示など)に不服がある地方公共団体は、まず国地方係争処理委員会に審査の申出を行います。委員会の審査結果・勧告に不服がある場合、あるいは国の行政庁が勧告に従った措置をとらない場合などに、地方公共団体の長等は、高等裁判所に対し、国の行政庁を被告として訴え(関与の取消し又は不作為の違法確認)を提起することができます(地方自治法251条の5)。
ポイントは次の2点です。第一に、第一審が高等裁判所であること(通常の三審制の出発点である地方裁判所ではない)。第二に、訴訟の前に国地方係争処理委員会への審査申出という前置手続が組み込まれていること。両方とも択一で狙われます。
なお、都道府県と市町村の間の関与に関する紛争については、自治紛争処理委員による審査と、これに続く訴訟の仕組みが別途設けられています(地方自治法251条の6など)。
代執行に関する訴訟(245条の8)
法定受託事務の管理・執行が法令の規定に違反する場合などに、各大臣(都道府県知事に対しては主務大臣)が是正を求める一連の手続として、勧告・指示を経て、最終的に高等裁判所に対し、当該事務の処理を命ずる旨の裁判を求めることができます(地方自治法245条の8)。この裁判を経たうえで、なお是正されないときに代執行が行われます。これも機関訴訟の代表例です。
長と議会の間の訴訟
地方公共団体の長と議会の間の紛争も、機関訴訟の一例として位置づけられることがあります。例えば、議会の議決・選挙がその権限を超え又は法令・会議規則に違反すると認めるとき、長は理由を示して再議に付すことができ(再議制度。地方自治法176条)、なお議会と意見が対立する場合には、長が裁判所(高等裁判所)に出訴できる場合があります(地方自治法176条7項など)。こうした長と議会という同一地方公共団体内の機関相互の争いは、機関訴訟の典型として理解されます。
機関訴訟の特徴
機関訴訟には、以下の特徴があります。
- 法律に定める場合にのみ提起可能(42条)
- 当事者は国又は地方公共団体の機関であり、私人ではない
- 個人の権利利益の保護ではなく、機関間の権限紛争の解決が目的
- 行政事件訴訟法の一般規定は原則として直接適用されず、必要な範囲で準用される(43条参照)
- 関与に関する訴訟など、第一審が高等裁判所とされる類型がある
民衆訴訟と機関訴訟の違い(整理表)
両者はともに客観訴訟ですが、「誰が争うか」が決定的に異なります。
客観訴訟に関する行政事件訴訟法の規定
法律の定めがある場合に限る(42条)
繰り返しになりますが、客観訴訟は法律に定める場合において、法律に定める者に限り提起することができます。これは、客観訴訟が個人の権利救済ではなく行政の適法性確保を目的とするため、訴訟の対象・原告資格を法律で限定する必要があるからです。「法律に定める場合」と「法律に定める者」の両方が要件である点に注意してください。場合が定められていても、提起できる者を限定する規定がなければ、誰でも提起できるわけではありません。
行政事件訴訟法の規定の準用(43条)
民衆訴訟と機関訴訟については、行政事件訴訟法の一般規定のうち、法律に特別の定めがある場合を除き、その性質に応じて取消訴訟・無効等確認訴訟・当事者訴訟に関する規定が準用されます(43条)。
具体的には、処分又は裁決の取消しを求めるものについては取消訴訟に関する規定が、処分又は裁決の無効確認を求めるものについては無効等確認訴訟に関する規定が、それ以外のものについては当事者訴訟に関する規定が、それぞれ準用される構造です。
ここで重要なのは「準用であって直接適用ではない」という点です。客観訴訟は本来の主観訴訟とは性質が異なるため、抗告訴訟や当事者訴訟の規定がそのまま当然に適用されるのではなく、性質に応じて準用される、という建て付けになっています。「行政事件訴訟法の規定が直接適用される」とする肢は誤りです。
客観訴訟と憲法上の「法律上の争訟」
「法律上の争訟」との関係
憲法76条1項は「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」と規定しており、裁判所が扱うのは原則として「法律上の争訟」に限られます。
「法律上の争訟」とは、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、法令の適用により終局的に解決できるものを指します(最判昭和56年4月7日・板まんだら事件)。
裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は、裁判所法3条にいう「法律上の争訟」、すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であつて、かつ、それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる。
――最判昭和56年4月7日(板まんだら事件)
客観訴訟は、個人の権利義務に関する紛争ではないため、厳密には「法律上の争訟」に該当しないと解されています。しかし、裁判所法3条1項は次のように規定しています。
裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。
――裁判所法3条1項
この「その他法律において特に定める権限」として、立法者が個別法(公職選挙法・地方自治法など)で出訴を認めることにより、客観訴訟を裁判所が扱うことが正当化されています。客観訴訟が「法律に定める場合にのみ提起できる」(行訴法42条)という制限と、裁判所法3条1項の「その他法律において特に定める権限」とは、表裏一体の関係にあると理解しておくと、論理がつながります。
試験対策上の重要ポイント
頻出論点の整理
- 客観訴訟は法律に定めがある場合のみ提起可能(42条)。しかも「法律に定める者」に限られる
- 民衆訴訟と機関訴訟の違い: 民衆訴訟は国民・住民が提起、機関訴訟は機関が提起
- 民衆訴訟の具体例: 選挙訴訟・住民訴訟(・国民投票無効訴訟)
- 機関訴訟の具体例: 国と地方公共団体の間の係争に関する訴訟、代執行訴訟、長と議会の訴訟
- 住民訴訟と住民監査請求の違い: 住民訴訟は「違法」のみ対象、住民監査請求は「違法又は不当」が対象
- 住民訴訟は住民監査請求前置が必要
- 準用であって直接適用ではない(43条)
- 関与に関する訴訟・代執行訴訟は第一審が高等裁判所
過去問で問われた角度
- 当事者訴訟が主観訴訟か客観訴訟かの分類(正解は主観訴訟)。4類型の振り分けを問う出題は定番です
- 民衆訴訟の定義条文(5条)の「自己の法律上の利益にかかわらない資格」という文言の正誤
- 住民訴訟の対象が「違法」に限られるか、「違法又は不当」を含むかの区別
- 客観訴訟に行政事件訴訟法の規定が「適用」されるか「準用」されるか
- 一票の格差訴訟・玉串料訴訟など、憲法判例が訴訟形式としては民衆訴訟であることの理解(応用)
よく出る引っかけパターン(よくある誤解)
- 「民衆訴訟は自己の法律上の利益が侵害された者のみが提起できる」→ 誤り(自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起する)
- 「客観訴訟は行政事件訴訟法の一般規定が直接適用される」→ 誤り(準用規定あり。直接適用ではない)
- 「住民訴訟では違法又は不当な財務会計行為を争うことができる」→ 誤り(住民訴訟は「違法」のみ。「不当」まで争えるのは住民監査請求)
- 「当事者訴訟は客観訴訟である」→ 誤り(当事者訴訟は主観訴訟)
- 「機関訴訟は私人も当事者となり得る」→ 誤り(当事者は国又は地方公共団体の機関)
- 「客観訴訟は法律上の争訟に当たるため当然に裁判所が審理できる」→ 誤り(本来は法律上の争訟に当たらず、裁判所法3条1項の特別の権限として認められる)
関連論点とのつながり
客観訴訟を理解するには、行政事件訴訟法の全体構造、特に抗告訴訟・当事者訴訟という主観訴訟との対比が前提になります。また、住民訴訟は地方自治法(住民監査請求・財務会計)と密接に結びつき、選挙訴訟は憲法(投票価値の平等)と、機関訴訟は地方自治法(国と地方の関係・関与・国地方係争処理委員会)とつながります。一般知識・憲法・地方自治法を横断して整理すると、知識が立体化します。
まとめ
客観訴訟は、行政事件訴訟の全体像を理解する上で欠かせないテーマです。以下の点をしっかり整理しておきましょう。
- 行政事件訴訟は、主観訴訟(抗告訴訟・当事者訴訟)と客観訴訟(民衆訴訟・機関訴訟)に大別される
- 客観訴訟は個人の権利利益の保護ではなく、行政の客観的適法性の確保を目的とする
- 客観訴訟は法律に定める場合において、法律に定める者に限り提起可能(42条)。本来「法律上の争訟」に当たらないため、裁判所法3条1項の特別の権限として正当化される
- 民衆訴訟の代表例は選挙訴訟と住民訴訟(国民投票無効訴訟なども含む)
- 機関訴訟は国又は地方公共団体の機関相互間の権限紛争についての訴訟であり、関与に関する訴訟・代執行訴訟は第一審が高等裁判所
- 住民訴訟は住民監査請求前置が必要であり、「違法」な行為のみを対象とする
- 客観訴訟には行政事件訴訟法の規定が性質に応じて準用される(直接適用ではない)
条文の正確な理解と具体例の把握が、この分野での得点につながります。さらに学習を深めたい方は、以下の関連記事もあわせて確認してください。
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客観訴訟である民衆訴訟と機関訴訟は、法律に定めがなくても、行政事件訴訟法の一般規定に基づいて提起することができる。○か×か。
住民訴訟では、地方公共団体の違法な財務会計行為だけでなく、不当な財務会計行為についても争うことができる。○か×か。
民衆訴訟は「自己の法律上の利益にかかわらない資格」で提起する訴訟であり、選挙訴訟や住民訴訟がその代表例である。○か×か。
機関訴訟には、行政事件訴訟法の取消訴訟や当事者訴訟に関する規定が、その性質に応じて準用される。○か×か。
地方公共団体が国の関与に不服がある場合に提起する関与の取消訴訟などは、地方裁判所を第一審として提起する。○か×か。