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共有の法律関係|2021年改正で変わった管理・変更

共有の持分・保存行為・管理行為・変更行為の区別を解説。2021年民法改正で導入された軽微変更の持分過半数化、所在不明共有者への対応、共有物分割の見直しなど、行政書士試験で狙われる改正ポイントを網羅します。

はじめに|共有は物権法の頻出テーマ

共有とは、一つの物を複数人が共同で所有する形態です。民法第249条から第264条に規定されており、行政書士試験では物権法の中でも特に出題頻度の高いテーマです。

2021年(令和3年)の民法改正では、共有制度に大幅な見直しが行われました。軽微変更の要件緩和、所在不明共有者への対応、共有物分割訴訟の整備など、試験でも改正点が狙われる可能性が高い分野です。本記事では、共有の基本から2021年改正の重要ポイントまでを体系的に整理します。

共有の基本|持分と持分権

持分の意義

各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます(民法第249条第1項)。

各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。 ― 民法 第249条第1項

持分とは、共有物に対する各共有者の権利の割合をいいます。持分の割合が明らかでないときは、各共有者の持分は等しいものと推定されます(民法第250条)。

持分の処分

各共有者は、自己の持分を自由に処分できます。他の共有者の同意は不要です。持分の処分には、持分の譲渡、持分への抵当権の設定などが含まれます。

ただし、共有物「全体」の処分(例えば共有不動産全体の売却)は、共有者全員の同意が必要です。

持分の放棄と共有者の死亡

共有者の一人が持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は他の共有者に帰属します(民法第255条)。

共有物の使用(249条の改正)

2021年改正による明文化

2021年改正で、共有物を使用する共有者がいる場合のルールが明文化されました。

共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負います(民法第249条第2項)。

また、共有者は、善良な管理者の注意をもって共有物の使用をしなければなりません(民法第249条第3項)。

使用に関するルール

項目内容使用権限持分に応じた使用が可能対価償還持分超過の使用に対して償還義務あり注意義務善管注意義務

保存行為・管理行為・変更行為の区別

共有物に関する行為は、その性質によって3つに分類され、それぞれ必要な要件が異なります。これは試験の最頻出論点です。

保存行為(252条5項)

保存行為とは、共有物の現状を維持する行為です。各共有者が単独で行うことができます。

  • 具体例: 共有建物の修繕、不法占拠者に対する明渡請求、共有物の登記申請
  • 根拠: 民法第252条第5項

管理行為(252条1項)

管理行為とは、共有物の利用・改良に関する行為です。各共有者の持分の価格の過半数で決定します。

  • 具体例: 共有物の賃貸借契約の締結(短期のもの)、共有物の使用方法の決定
  • 根拠: 民法第252条第1項

変更行為(251条1項)

変更行為とは、共有物の物理的な変更や法律的な処分を伴う行為です。共有者全員の同意が必要です。

  • 具体例: 共有建物の増改築、共有不動産全体の売却、共有物の抵当権設定
  • 根拠: 民法第251条第1項

3つの行為の比較表

行為の種類必要な要件具体例保存行為各共有者が単独で可能修繕、不法占拠者への明渡請求管理行為持分の価格の過半数短期賃貸借、使用方法の決定変更行為共有者全員の同意増改築、共有物全体の売却

2021年改正(1)軽微変更の過半数決定

改正前の問題点

改正前は、共有物の「変更」はすべて共有者全員の同意が必要でした。しかし、砂利道をアスファルト舗装にするような軽微な変更でも全員の同意が必要とされ、共有者の一部と連絡が取れない場合には事実上変更が不可能でした。

改正後のルール

2021年改正により、共有物の形状又は効用の著しい変更を伴わない変更(軽微変更)は、持分の価格の過半数で決定できるようになりました(民法第251条第1項)。

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。 ― 民法 第251条第1項
変更の種類必要な要件著しい変更共有者全員の同意(従来通り)軽微変更持分の価格の過半数(新設)

軽微変更の具体例

  • 砂利道のアスファルト舗装
  • 建物の外壁の塗替え
  • 共有農地への簡易な排水設備の設置

2021年改正(2)所在不明共有者への対応

改正前の問題点

共有者の一部の所在が不明な場合、全員の同意が必要な変更行為はもちろん、過半数の決定が必要な管理行為すら行えないケースがありました。所有者不明土地問題への対応が急務とされていました。

裁判所の決定による対応

2021年改正では、共有者が他の共有者を知ることができないとき又はその所在を知ることができないときの対応として、以下の制度が新設されました。

変更行為について(251条2項): 裁判所の決定を得て、所在不明共有者以外の共有者全員の同意で変更行為が可能になりました。

管理行為について(252条2項): 裁判所の決定を得て、所在不明共有者以外の共有者の持分の過半数で管理行為が可能になりました。

賛否を明らかにしない共有者への対応

2021年改正では、催告を受けても相当の期間内に賛否を明らかにしない共有者がいる場合にも、裁判所の決定による対応が可能になりました(民法第252条第2項第2号)。

2021年改正(3)管理者制度の新設

共有物の管理者

2021年改正で、共有物の管理者を選任・解任できる制度が新設されました(民法第252条の2)。

  • 選任・解任: 持分の価格の過半数で決定
  • 管理者の権限: 共有物の管理に関する行為をする権限を有する
  • 軽微変更: 管理者は軽微変更も行うことができる
  • 重大変更: 共有者全員の同意が必要(管理者が単独では不可)

管理者は共有者以外の第三者でもなることができます。

2021年改正(4)共有物分割

分割請求権

各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができます(民法第256条第1項本文)。ただし、5年を超えない期間内は分割しない旨の契約(不分割特約)をすることができます。

共有物分割の方法

2021年改正により、共有物分割の方法が明文で整理されました(民法第258条)。

  1. 現物分割: 共有物を物理的に分割する方法
  2. 賠償分割(価格賠償): 共有者の一人が共有物を取得し、他の共有者に持分の価格を賠償する方法(改正で明文化)
  3. 競売分割(換価分割): 共有物を競売にかけ、その代金を持分に応じて分配する方法

改正前は賠償分割が条文上明記されておらず、判例(最判平成8年10月31日)で認められていましたが、改正により明文化されました。

裁判所による分割の順序

裁判所は、まず現物分割又は賠償分割を検討し、これらの方法が困難な場合やこれらの方法では著しく不公平な結果になる場合に、競売分割を命じます。

共有に関する重要判例

共有持分権に基づく明渡請求

共有者の一人が共有物を単独で占有している場合、他の共有者は当然には明渡しを請求できません(最判昭和41年5月19日)。共有者はそれぞれ共有物全部を使用する権利を有しているためです。

不法占拠者に対する明渡請求

共有者の一人は、共有物を不法に占拠する第三者に対し、単独で明渡請求ができます。これは保存行為に該当するためです。

持分の過半数による使用者の決定

共有物の使用方法について、持分の過半数で特定の共有者に使用させることを決定した場合、少数持分権者はこれに従わなければなりません(最判昭和57年10月4日)。

試験での出題ポイント

  1. 保存・管理・変更の区別: 具体例と必要な要件を正確に対応させる
  2. 軽微変更は過半数で可能: 2021年改正の最重要ポイント
  3. 所在不明共有者への裁判所の決定: 変更・管理それぞれの対応を区別
  4. 持分の放棄・相続人不存在: 他の共有者に帰属(255条)
  5. 共有物分割の3つの方法: 賠償分割が明文化されたことに注意
  6. 共有者間の明渡請求: 当然には認められない(判例)
確認問題

2021年の民法改正により、共有物の形状又は効用の著しい変更を伴わない軽微な変更は、各共有者の持分の価格の過半数で決定できるようになった。

○ 正しい × 誤り
解説
2021年改正後の民法第251条第1項は、共有物の変更のうち「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」を除外しており、この軽微変更は管理行為と同様に持分の価格の過半数で決定できます(第252条第1項)。改正前は軽微な変更でも共有者全員の同意が必要でしたが、改正により要件が緩和されました。
確認問題

共有者の一人が持分を放棄した場合、その持分は国庫に帰属する。

○ 正しい × 誤り
解説
民法第255条により、共有者の一人がその持分を放棄したとき又は相続人なくして死亡したときは、その持分は国庫ではなく「他の共有者」に帰属します。単独所有の場合の相続人不存在(民法第959条、国庫帰属)と混同しないように注意が必要です。
確認問題

共有者の一人は、他の共有者が共有物を単独で占有している場合、当然に明渡しを請求することができる。

○ 正しい × 誤り
解説
判例(最判昭和41年5月19日)によれば、共有者はそれぞれ共有物全部について持分に応じた使用をする権利を有しているため、共有者の一人が共有物を単独で占有していても、他の共有者は当然には明渡しを請求することができません。ただし、不法占拠する第三者に対しては、保存行為として単独で明渡請求が可能です。

まとめ

共有は行政書士試験の物権法で最頻出のテーマの一つです。保存行為・管理行為・変更行為の区別という基本を押さえた上で、2021年改正による軽微変更の過半数決定、所在不明共有者への裁判所決定、賠償分割の明文化といった改正ポイントを確実に理解しましょう。

特に、改正で新設された制度は出題可能性が高く、従来のルールと比較して「何が変わったのか」を意識して学習することが得点に直結します。

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