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NPO法人と公益法人|設立手続と違いを比較

NPO法人(認証制)、一般社団・一般財団法人(準則主義)、公益社団・公益財団法人(認定制)の設立手続や要件の違いを比較表付きで解説。行政書士試験の一般知識対策に役立つ法人制度の全体像を整理します。

はじめに|法人制度の全体像を把握しよう

行政書士試験の一般知識等科目では、NPO法人や公益法人に関する問題が出題されることがあります。また、行政書士の実務においても、法人の設立支援は重要な業務の一つです。

日本の法人制度は、2006年の公益法人制度改革により大きく変わりました。従来の社団法人・財団法人(主務官庁の許可制)が廃止され、一般社団法人・一般財団法人(準則主義)と公益社団法人・公益財団法人(認定制)の二階建て構造に移行しました。

本記事では、NPO法人、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人の設立手続、要件、税制の違いを比較しながら整理していきます。

NPO法人(特定非営利活動法人)の概要

NPO法の目的と背景

NPO法(特定非営利活動促進法)は、1998年に施行された法律です。1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに、ボランティア活動をはじめとする市民の自由な社会貢献活動の健全な発展を促進するために制定されました。

NPO法人の「NPO」はNon-Profit Organizationの略で、「非営利組織」を意味します。非営利とは利益を分配しないという意味であり、収益活動自体が禁止されているわけではありません。事業で得た利益を構成員(社員)に分配せず、団体の目的のために使用することが求められます。

NPO法人の設立要件

NPO法人を設立するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 特定非営利活動を行うことを主たる目的とすること
  2. 営利を目的としないこと(利益を社員に分配しないこと)
  3. 社員の資格の得喪に不当な条件を付さないこと
  4. 役員のうち報酬を受ける者の数が役員総数の3分の1以下であること
  5. 宗教活動や政治活動を主たる目的としないこと
  6. 特定の公職の候補者等を推薦・支持・反対することを目的としないこと
  7. 暴力団又は暴力団の構成員等の統制下にないこと
  8. 社員が10人以上いること
  9. 理事3人以上、監事1人以上を置くこと

特定非営利活動の20分野

NPO法が定める特定非営利活動は以下の20分野です。

  1. 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
  2. 社会教育の推進を図る活動
  3. まちづくりの推進を図る活動
  4. 観光の振興を図る活動
  5. 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
  6. 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
  7. 環境の保全を図る活動
  8. 災害救援活動
  9. 地域安全活動
  10. 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
  11. 国際協力の活動
  12. 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
  13. 子どもの健全育成を図る活動
  14. 情報化社会の発展を図る活動
  15. 科学技術の振興を図る活動
  16. 経済活動の活性化を図る活動
  17. 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
  18. 消費者の保護を図る活動
  19. 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
  20. 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

NPO法人の設立手続(認証制)

NPO法人の設立は認証制です。準則主義(要件を満たせば自動的に成立)でもなく、許可制(行政庁の裁量による判断)でもありません。所轄庁(都道府県知事又は指定都市の長)に申請し、設立の認証を受けた後、登記を行うことで法人として成立します。

設立手続の流れ

  1. 設立総会の開催
  2. 所轄庁への認証申請
  3. 所轄庁による縦覧(2か月間)・審査
  4. 認証又は不認証の決定(申請受理後3か月以内)
  5. 設立登記(認証後2週間以内)

所轄庁の審査は、法律に定められた要件を満たしているか否かの形式的な審査であり、活動内容の実質的な審査は行われません。これは「認証」の特徴であり、行政庁の裁量が認められる「許可」とは異なります。

認定NPO法人制度

認定NPO法人とは

認定NPO法人は、NPO法人のうち、一定の基準を満たすものとして所轄庁の認定を受けた法人です。認定を受けると、寄附者に対する税制優遇(寄附金控除等)が適用されます。

認定の主な要件

  1. パブリックサポートテスト(PST): 広く市民からの支援を受けていること(経常収入に占める寄附金等の割合が5分の1以上など)
  2. 事業活動の適正性: 共益的な活動の割合が50%未満であることなど
  3. 情報公開の適正性: 事業報告書等を閲覧に供していること
  4. 所轄庁への報告: 適正に報告を行っていること
  5. 法令違反等がないこと

認定の有効期間は5年間であり、更新が必要です。

仮認定(特例認定)NPO法人

設立後5年以内のNPO法人については、PSTの要件を免除した「特例認定」制度があります。特例認定の有効期間は3年間で、更新はできません。

一般社団法人・一般財団法人の概要

準則主義による設立

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法)に基づき設立される法人です。準則主義(法律で定められた要件を満たし、登記をすれば設立できる仕組み)が採用されており、行政庁の許可や認証は不要です。

一般社団法人

一般社団法人は、人の集合体(社団)に法人格を付与するものです。

設立の主な要件

  • 社員: 2人以上の設立時社員が必要
  • 定款: 設立時社員が定款を作成し、公証人の認証を受ける
  • 機関: 社員総会及び理事(1人以上)を置かなければならない。理事会、監事、会計監査人は任意
  • 基金: 基金制度を採用することができる(義務ではない)
  • 登記: 主たる事務所の所在地で設立の登記を行うことで成立

一般財団法人

一般財団法人は、一定の目的のために拠出された財産の集合体(財団)に法人格を付与するものです。

設立の主な要件

  • 設立者: 1人以上の設立者が必要
  • 拠出財産: 設立に際して設立者が拠出する財産の価額の合計額が300万円以上であること
  • 定款: 設立者が定款を作成し、公証人の認証を受ける
  • 機関: 評議員、評議員会、理事、理事会及び監事を置かなければならない。会計監査人は任意(大規模法人は必置)
  • 登記: 主たる事務所の所在地で設立の登記を行うことで成立

一般社団法人と一般財団法人の比較

項目一般社団法人一般財団法人基礎人の集まり(社団)財産の集まり(財団)設立者2人以上の社員1人以上の設立者財産要件なし300万円以上最高意思決定機関社員総会評議員会必置機関社員総会・理事評議員・評議員会・理事・理事会・監事定款認証必要必要事業内容制限なし制限なし営利・非営利非営利(剰余金の分配不可)非営利(剰余金の分配不可)

公益社団法人・公益財団法人の概要

公益認定制度(認定制)

公益社団法人・公益財団法人は、一般社団法人・一般財団法人のうち、行政庁(内閣総理大臣又は都道府県知事)の公益認定を受けた法人です。つまり、まず一般法人として設立し、その後公益認定を受けるという二段階の手続きになります。

認定を行う行政庁は、公益認定等委員会(国の場合)又は合議制の機関(都道府県の場合)の意見を聴いて認定の可否を判断します。

公益認定の主な基準

  1. 公益目的事業を行うことを主たる目的とすること: 公益目的事業とは、学術、技芸、慈善その他の公益に関する事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの(公益認定法別表に23事業を列挙)
  2. 公益目的事業比率が50%以上であること: 公益目的事業に係る費用が全体の費用の50%以上を占めること
  3. 収支相償であること: 公益目的事業の収入がその実施に要する費用を超えないこと
  4. 遊休財産額の制限: 遊休財産額が公益目的事業費1年分相当額を超えないこと
  5. 適切なガバナンス: 理事、監事等の適切な設置

公益法人の税制優遇

公益認定を受けた法人は、以下の税制優遇を受けることができます。

  • 法人税: 公益目的事業に係る所得は非課税(収益事業等に係る所得のみ課税)
  • 寄附者の税制優遇: 公益法人に対する寄附金は、個人の場合は寄附金控除(所得控除又は税額控除)、法人の場合は損金算入の特例が適用

各法人制度の比較表

設立手続の比較

項目NPO法人一般社団法人一般財団法人公益社団・財団法人設立方式認証制準則主義準則主義一般法人設立後に認定所轄庁都道府県知事等なし(法務局で登記)なし(法務局で登記)内閣総理大臣又は都道府県知事定款認証不要必要(公証人)必要(公証人)一般法人設立時に済み設立費用低い(登録免許税非課税)定款認証+登録免許税定款認証+登録免許税認定申請に係る費用人的要件社員10人以上社員2人以上設立者1人以上一般法人の要件に同じ財産要件なしなし300万円以上一般法人の要件に同じ

目的・事業の比較

項目NPO法人一般社団・財団法人公益社団・財団法人目的の制限特定非営利活動(20分野)制限なし公益目的事業が主たる目的収益事業可能(本来事業に支障のない範囲)可能可能(ただし公益目的事業比率50%以上)利益分配不可不可不可

ガバナンスの比較

項目NPO法人一般社団法人一般財団法人公益法人最高意思決定機関社員総会社員総会評議員会社員総会又は評議員会理事3人以上1人以上3人以上(理事会必置)3人以上(理事会必置)監事1人以上任意必置必置会計監査人なし任意(大規模法人は必置)任意(大規模法人は必置)一定規模以上は必置

行政書士の法人設立支援業務

行政書士が関わる場面

行政書士は、NPO法人の設立認証申請や一般社団法人・一般財団法人の定款作成など、法人設立に関する手続を業として行うことができます。

主な業務

  • NPO法人の設立認証申請書類の作成・提出
  • 一般社団法人・一般財団法人の定款作成
  • 各種届出書の作成(税務届出、社会保険届出等の関連手続)
  • 公益認定申請の支援

ただし、法人の設立登記そのものは司法書士の業務範囲です。行政書士は、登記を除く設立に必要な書類の作成や行政庁への申請手続を担当します。

法人形態の選択アドバイス

依頼者の目的や状況に応じて、最適な法人形態を提案することも行政書士の重要な役割です。

  • 社会貢献活動が中心で、幅広い市民参加を求める場合: NPO法人
  • 機動的な運営や柔軟な事業展開を求める場合: 一般社団法人
  • 特定の財産を公益目的に活用したい場合: 一般財団法人(→公益認定)
  • 税制優遇を重視し、公益性の高い事業を行う場合: 公益社団法人・公益財団法人

まとめ

NPO法人、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人は、それぞれ設立方式、要件、税制、ガバナンスが異なります。試験対策上のポイントは以下のとおりです。

  1. NPO法人は認証制、一般社団・財団法人は準則主義、公益法人は認定制という設立方式の違いを正確に覚える
  2. NPO法人の社員は10人以上、一般社団法人の社員は2人以上、一般財団法人の拠出財産は300万円以上という数字を押さえる
  3. 一般社団法人の定款は公証人の認証が必要、NPO法人の定款は認証が不要
  4. 公益認定は一般法人設立後に行政庁(内閣総理大臣又は都道府県知事)から受ける二段階構造
  5. 消費者契約法の取消権の期間と同様に、認定NPO法人の有効期間(5年)も数字として出題されやすい

各法人形態の特徴を比較表で整理し、正確な知識を身につけましょう。

確認問題

NPO法人の設立は準則主義によるため、法律で定められた要件を満たして登記をすれば成立する。

○ 正しい × 誤り
解説
NPO法人の設立は準則主義ではなく「認証制」です。所轄庁(都道府県知事又は指定都市の長)に申請し、設立の認証を受けた後に登記を行うことで法人として成立します。準則主義が採用されているのは一般社団法人・一般財団法人です。
確認問題

一般財団法人を設立する際には、設立者が拠出する財産の価額の合計が300万円以上でなければならない。

○ 正しい × 誤り
解説
一般財団法人の設立には、設立者が拠出する財産の価額の合計額が300万円以上であることが要件とされています(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第153条第2項)。一般社団法人にはこのような財産要件はありません。
確認問題

公益社団法人・公益財団法人は、設立時に直接公益認定を受けて設立することができる。

○ 正しい × 誤り
解説
公益社団法人・公益財団法人は、まず一般社団法人又は一般財団法人として設立した後、行政庁(内閣総理大臣又は都道府県知事)の公益認定を受けるという二段階の手続きが必要です。設立時に直接公益法人として設立することはできません。
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