(公開 2026/01/22) / 民法

制限行為能力者制度|後見・保佐・補助の比較表

民法の制限行為能力者制度を4類型(未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人)で比較。同意権・取消権・代理権の有無、審判の要件、日常生活に関する行為の例外まで行政書士試験の頻出ポイントを網羅します。

はじめに|制限行為能力者制度は民法総則の基本

民法は、判断能力が不十分な者を保護するために制限行為能力者制度を設けています。制限行為能力者が行った法律行為は、一定の場合に取り消すことができるとすることで、本人の利益を保護しつつ取引の安全との調整を図っています。

行政書士試験では、4つの類型(未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人)の比較が頻繁に出題されます。それぞれの保護者に認められる権限(同意権・取消権・代理権)の違いを正確に把握することが合格への鍵です。とりわけ「同意権の有無」「代理権が当然に付くか審判によるか」「日常生活に関する行為の扱い」「相手方保護の制度(催告権・詐術)」は、択一式・多肢選択式の双方で繰り返し問われる定番論点です。

本記事では、4類型を横断的に比較し、条文の趣旨・要件・重要判例・過去問で問われた角度・受験生が陥りやすい誤解までを体系的に整理します。表と比較で「どこが違うのか」を一目で押さえられる構成にしているので、直前期の総まとめにも活用してください。

制限行為能力者制度の趣旨

意思能力と行為能力

民法は、法律行為の有効性に関連する能力として、意思能力行為能力を区別しています。

  • 意思能力: 自己の行為の法的な結果を認識・判断できる能力。意思能力を欠く状態で行った法律行為は無効(民法第3条の2)
  • 行為能力: 単独で確定的に有効な法律行為をする能力。行為能力が制限された者が行った法律行為は取消し可能
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
― 民法 第3条の2

意思能力は、おおむね7歳から10歳程度の判断力に相当するとされ、これを欠く者(幼児・泥酔者・重度の認知症高齢者など)の行為は当然に無効です。意思能力を欠く法律行為が無効であることは古くから判例上認められてきましたが、平成29年改正民法(令和2年4月1日施行)でこの第3条の2として明文化されました。

意思能力の不存在による無効は、表意者側を保護するための無効であり、相手方からはこれを主張できないとされる(取消し的無効・相対的無効と整理する見解が有力)点も、応用論点として押さえておくとよいでしょう。

制度趣旨

意思能力の有無は個々の法律行為ごとに判断する必要があり、立証が困難です。そこで民法は、判断能力が不十分な者をあらかじめ類型化し、画一的に保護する制度として制限行為能力者制度を設けています。

制限行為能力者の行った法律行為は取消しの対象となりますが、これは「無効」ではなく「取消し可能」という効果にとどめることで、取引の安全にも配慮しています。

ここに制度の二面性があります。すなわち、本人保護(取消しによる救済)と取引安全(無効ではなく取消しとし、追認や法定追認による有効確定の余地を残す)の両立です。意思能力を欠く法律行為は「無効」(誰でも・いつでも主張可能で追認できない)であるのに対し、制限行為能力を理由とする「取消し」は、取消権者が取消権を行使して初めて遡及的に無効となり、追認すれば確定的に有効になる――この効果の違いが出題されます。

意思能力の無効と行為能力制限の取消しの違い

比較項目意思能力なし(無効)行為能力の制限(取消し可能)効果初めから無効取消しにより遡及的に無効主張できる者表意者側(相対的無効)取消権者(民法第120条第1項)追認の可否追認の余地なし(原則)追認・法定追認で有効確定期間制限無効主張に消滅時効的制限は原則なし取消権は追認可能時から5年・行為時から20年(第126条)

両者は重畳的に主張できる場合があります。たとえば成年被後見人が意思能力を欠く状態で契約した場合、相手方の事情によっては「意思無能力による無効」と「行為能力制限による取消し」の双方を主張できます。

未成年者(第5条)

未成年者の定義

未成年者とは、18歳未満の者をいいます(民法第4条)。令和4年4月1日の改正民法施行により、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。

年齢18歳をもって、成年とする。
― 民法 第4条

成年年齢引下げに伴い、18歳・19歳の者は親権者の同意なく各種契約を締結できるようになりました。なお、飲酒・喫煙・公営競技(競馬等)の年齢制限は健康・依存症対策の観点から従来どおり20歳のまま維持されている点も、一般知識・常識として押さえておきましょう(これらは民法の行為能力とは別の規制です)。

法定代理人

未成年者の法定代理人は、原則として親権者です(民法第818条以下)。親権者がいない場合は未成年後見人が選任されます。親権者が複数いる場合(父母の共同親権)、親権は原則として父母が共同して行使します(第818条第3項)。

未成年者の行為能力

未成年者が法律行為をするには、原則として法定代理人の同意を得なければなりません(第5条第1項)。同意を得ずに行った法律行為は、取り消すことができます(第5条第2項)。

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。
― 民法 第5条第1項

ここで重要なのは、未成年者の保護者である法定代理人は、同意権・取消権・追認権・代理権のすべてを有する点です。成年後見人には同意権がない(後述)のと対照的で、両者を混同しないことが頻出のひっかけポイントです。

例外:同意なしに単独でできる行為

以下の行為は、未成年者が単独で行うことができます。

  1. 単に権利を得、又は義務を免れる法律行為(第5条第1項ただし書)
  • 贈与を受ける、債務の免除を受けるなど
  1. 法定代理人が処分を許した財産の処分(第5条第3項)
  • 目的を定めて許した場合はその目的の範囲内
  • 目的を定めないで許した場合は自由に処分可能
  1. 法定代理人から許可を受けた営業に関する行為(第6条)
  • 営業許可を得た未成年者は、その営業に関しては成年者と同一の行為能力を有する

「単に権利を得、又は義務を免れる」行為の限界

「単に権利を得、又は義務を免れる」とは、未成年者にとって法律上の不利益がまったく生じない行為を指します。次の点に注意が必要です。

  • 負担付贈与を受けることは、義務(負担)を伴うため、単独では行えません。
  • 債務の弁済を受ける(弁済の受領)は、債権を失うという不利益を伴うため、判例・通説上、単に権利を得る行為とはいえず、単独ではできないとされます。
  • 単なる贈与の承諾債務免除の受領は単独で可能です。

営業許可については、許可された営業の範囲内では成年者と同一の行為能力を有しますが、その範囲外の行為には依然として同意が必要です。営業に堪えない事由があるときは、法定代理人は営業の許可を取り消し、又は制限することができます(第6条第2項)。

婚姻による成年擬制の廃止

改正前民法では、未成年者が婚姻すると成年に達したものとみなす「成年擬制」の規定がありました(旧第753条)。しかし、成年年齢が18歳に引き下げられ、婚姻適齢も男女ともに18歳となったことから、成年擬制の規定は削除されました。改正前は男18歳・女16歳が婚姻適齢でしたが、改正後は男女とも18歳に統一され、結果として「未成年で婚姻する」事態が生じなくなったため、成年擬制を残す必要がなくなったのです。

成年被後見人(第7条〜第9条)

定義と開始の審判

成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた者をいいます(第7条)。

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
― 民法 第7条

「欠く常況」とは、常に判断能力を欠いている状態をいいます。一時的に回復することがあっても差し支えありません。

審判の請求権者

後見・保佐・補助の開始の審判を請求できる者は、第7条等に列挙された本人、配偶者、四親等内の親族、検察官などです。このほか、市町村長も一定の場合に請求できます(老人福祉法・知的障害者福祉法・精神保健福祉法による)。請求権者でない者(たとえば友人・知人や債権者)からの請求はできない点が出題されます。なお、後見開始の審判は本人の同意を要しません(被補助人と異なる重要な相違点)。

成年後見人の権限

成年被後見人には成年後見人が付されます。成年後見人は以下の権限を有します。

  • 代理権: あり(包括的代理権)
  • 同意権: なし
  • 取消権: あり

成年後見人は1人に限られず、複数選任することもでき、法人を成年後見人とすることもできます(第843条)。成年後見人による財産管理には家庭裁判所・成年後見監督人の監督が及びます。

成年被後見人の行為能力

成年被後見人の法律行為は、原則として取り消すことができます(第9条本文)。成年後見人に同意権が認められていないため、成年後見人の同意を得て行った行為であっても取り消すことができます。

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
― 民法 第9条

なぜ同意権がないのか。成年被後見人は判断能力を「欠く常況」にあるため、同意を与えても、その同意の趣旨に沿って行為できる保証がありません。したがって、あらかじめ同意して単独行為をさせるよりも、後見人が代理して行うべきだという発想に立っています。これが「同意権なし・代理権あり」という権限構成の理由です。

例外:日常生活に関する行為

日用品の購入その他日常生活に関する行為については取消しの対象外です(第9条ただし書)。食料品の購入、電気・水道料金の支払いなど、日常生活に必要な行為は自らの判断で行えます。これは本人の自己決定権の尊重と残存能力の活用の趣旨です。

この「日常生活に関する行為」の例外は、4類型すべてに共通して妥当します(成年被後見人は第9条ただし書、被保佐人は第13条第1項柱書ただし書・第2項ただし書、被補助人は第17条第1項ただし書)。最も保護の必要性が高い成年被後見人ですら日常的行為は単独でできる、という点が制度全体の底流にあります。

成年被後見人の居住用不動産の処分

成年後見人は包括的代理権を有しますが、成年被後見人の居住の用に供する建物・敷地について、売却・賃貸・賃貸借の解除・抵当権設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません(第859条の3)。生活の本拠を失わせる重大な行為であるため、後見人の独断を許さない趣旨です。許可なくされた処分は無効と解されています。応用論点として狙われやすいポイントです。

被保佐人(第11条〜第13条)

定義と開始の審判

被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者で、家庭裁判所から保佐開始の審判を受けた者をいいます(第11条)。保佐開始の審判についても、本人以外の者の請求によることができ、本人の同意は要件とされていません(後見と同じ。補助とは異なる)。

保佐人の権限

被保佐人には保佐人が付されます。保佐人の権限は以下のとおりです。

  • 同意権: あり(第13条1項所定の行為について)
  • 取消権: あり(同意を要する行為について)
  • 代理権: 家庭裁判所の審判により付与された場合のみ(第876条の4)

ここで「保佐は同意権が法律上当然に付き、代理権は審判で個別付与」という構造を正確に押さえてください。後見が「代理権が当然・同意権なし」であるのと逆の対応関係になっており、ここが比較問題の核心です。

保佐人の同意を要する行為(第13条第1項)

被保佐人が以下の行為をするには、保佐人の同意を得なければなりません。

  1. 元本の領収又は利用
  2. 借財又は保証
  3. 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為
  4. 訴訟行為
  5. 贈与、和解又は仲裁合意
  6. 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割
  7. 贈与の申込みの拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の申込みの承諾又は負担付遺贈の承認
  8. 新築、改築、増築又は大修繕
  9. 一定期間を超える賃貸借(土地5年、建物3年、動産6か月)
  10. 上記各号に掲げる行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること

家庭裁判所は、上記以外の行為についても同意を要する旨の審判をすることができます(第13条第2項)。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為はこの拡張の対象外です(第13条第2項ただし書)。

第13条第1項各号の覚え方と注意点

このリストは被保佐人論点の最重要暗記事項です。共通するのは「財産上の重大な行為」である点で、いずれも放置すれば本人の財産に大きな影響を及ぼす行為です。逆に、日常の買い物や軽微な行為は含まれません。覚え方のポイントを整理します。

  • 借りる側・保証する側は同意が必要だが、借す(貸す)側・贈与を受ける単純な受領は原則同意不要。第2号「借財又は保証」は債務を負担する側を念頭に置いています。
  • 相続の「承認・放棄・遺産分割」はすべて同意対象(第6号)。相続放棄を被保佐人が単独でできない点は頻出。
  • 訴訟行為(第4号)は原告として訴える場合などが対象で、相手方の提起した訴えに応訴する行為は同意を要しないと解されています。
  • 第10号は、被保佐人自身が他人(未成年者など)の法定代理人として上記各号の行為をする場面で、令和元年の成年後見制度関連の改正で追加された規定です。

第10号を除く各号の行為を同意を得ずに行った場合は取り消すことができます(第13条第4項)。ただし、相手方の保護のため、後述の催告権・詐術の規定が適用されます。

代理権の付与

保佐人に代理権が必要な場合は、家庭裁判所の審判で特定の法律行為について代理権を付与することができます。ただし、本人以外の者の請求による場合は本人の同意が必要です(第876条の4第2項)。

ここで整理すると、保佐における「本人の同意」が問題になるのは代理権付与の審判の場面であって、保佐開始の審判そのものではありません。「保佐開始に本人の同意が必要」と覚えると誤りになります。本人の同意が開始の要件となるのは補助だけです。

被補助人(第15条〜第17条)

定義と開始の審判

被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者で、家庭裁判所から補助開始の審判を受けた者をいいます(第15条)。

補助開始の審判は、本人の同意がなければすることができません(第15条第2項)。これは、被補助人は判断能力がある程度残存しているため、本人の意思を尊重する必要があるためです。

本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
― 民法 第15条第2項

条文の文言は「本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには」となっています。すなわち、本人自身が請求する場合は、当然に本人の意思があるため、改めて同意は問題になりません。「本人以外の者の請求による場合」という限定に注意してください。

補助人の権限

被補助人には補助人が付されます。補助人の権限は以下のとおりです。

  • 同意権: 家庭裁判所の審判で付与された場合のみ(第17条第1項)
  • 取消権: 同意を要する行為について
  • 代理権: 家庭裁判所の審判で付与された場合のみ(第876条の9)

補助は「同意権も代理権も、両方とも審判がなければ付かない」点で最も柔軟な制度です。後見(代理権が当然)・保佐(同意権が当然)と異なり、補助では何も当然には付与されません。

同意権・代理権の付与

補助人の同意権と代理権は、いずれも家庭裁判所の審判によって付与されます。同意権の対象は、第13条第1項各号に定める行為の一部に限られます(全部ではない点に注意)。

同意権・代理権の付与の審判は、本人以外の者の請求による場合、本人の同意が必要です。

補助開始の審判をする場合は、同意権付与の審判又は代理権付与の審判の少なくとも一方を同時にしなければなりません。

補助開始に「本人の同意」が三重に効いてくる

補助では、本人の自己決定権の尊重が制度の根幹にあるため、「本人の同意」が以下の各場面で要求されます。

  1. 補助開始の審判(本人以外の者の請求による場合・第15条第2項)
  2. 同意権付与の審判(本人以外の者の請求による場合・第17条第2項)
  3. 代理権付与の審判(本人以外の者の請求による場合・第876条の9第2項→第876条の4第2項準用)

この「本人同意の三本柱」は、被補助人の判断能力が4類型中最も高いことの帰結です。なお、同意権付与の対象が第13条第1項の行為の「一部」に限られるのに対し、代理権付与の対象は第13条第1項の行為に限られず、特定の法律行為について広く設定できる点も区別しておきましょう。

4類型の横断比較表

項目未成年者成年被後見人被保佐人被補助人判断能力年齢による欠く常況著しく不十分不十分開始要件出生(18歳未満)審判審判審判+本人の同意保護者親権者/未成年後見人成年後見人保佐人補助人同意権あり(法定代理人)なしあり(13条1項)審判で付与取消権ありあり(全行為)あり(同意対象行為)あり(同意対象行為)代理権あり(法定代理人)あり(包括的)審判で付与審判で付与日常生活行為単独可単独可(取消不可)単独可単独可

重要な比較ポイント

  1. 成年後見人に同意権がない理由: 成年被後見人は判断能力を欠く常況にあるため、同意を得て行為をさせるよりも、後見人が代理して行為する方が本人の保護に資する
  2. 補助開始に本人の同意が必要な理由: 被補助人は判断能力がある程度残存しているため、自己決定権の尊重の観点から本人の同意を要求
  3. 保佐人・補助人の代理権は当然には付与されない: 家庭裁判所の審判が必要

同意権・代理権の「当然/審判」マトリクス

権限が法律上当然に付与されるか、審判によって付与されるかを整理すると、対比が鮮明になります。

類型同意権代理権未成年者(法定代理人)当然当然成年被後見人なし当然(包括)被保佐人当然(13条1項)審判で個別付与被補助人審判で付与審判で付与

「後見=代理が主役、保佐=同意が主役、補助=オーダーメイド、未成年=全部あり」と俯瞰すると暗記が安定します。

取消権者は誰か(第120条)

制限行為能力を理由とする取消権は、制限行為能力者本人およびその代理人・承継人・同意権者(保佐人・補助人など)が行使できます(第120条第1項)。

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
― 民法 第120条第1項

重要なのは、制限行為能力者本人も、その制限行為能力者であった間に、単独で取消しの意思表示ができる点です。取消しはあくまで本人保護のための行為であり、新たな不利益を生じさせないため、保護者の同意なしに本人が単独で取り消せます(第120条の趣旨)。「取消しには法定代理人の同意が必要」と考えると誤りです。

制限行為能力者の相手方の保護

催告権(第20条)

制限行為能力者の相手方は、取消しの可否が不確定な状態に置かれます。そこで民法は、相手方に催告権を認めています。催告権とは、1か月以上の期間を定めて、取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨を催告できる権利です。

催告の相手確答がない場合の効果行為能力者となった本人追認とみなす法定代理人・保佐人・補助人追認とみなす被保佐人・被補助人本人取り消したものとみなす

被保佐人・被補助人本人に催告した場合は「取り消したものとみなす」点が重要です。これは、単独では追認できない者に催告しても、確答がないことをもって追認とみなすのは酷だからです。

催告のルールを正確に押さえる

第20条の催告は、以下の3パターンに整理できます。

  1. 行為能力者となった本人へ催告(第20条第1項): たとえば成年に達した元未成年者本人。確答がなければ追認とみなされます。
  2. 法定代理人・保佐人・補助人へ催告(第20条第2項): 単独で追認できる立場の者。確答がなければ追認とみなされます。
  3. 被保佐人・被補助人本人へ「保佐人・補助人の追認を得るべき旨」を催告(第20条第4項): 確答がなければ取り消したものとみなされます。

ポイントは、「単独で追認できる地位にある者に催告して放置すれば追認、単独で追認できない者(被保佐人・被補助人本人)に催告して放置すれば取消し」という対応です。なお、未成年者本人・成年被後見人本人に対しては、そもそも有効に催告を受けることができず、催告しても効力を生じないと解されています(受領能力の問題)。被保佐人・被補助人本人には催告自体は可能で、結果が「取消しとみなす」になる点と区別してください。

制限行為能力者の詐術(第21条)

制限行為能力者が、行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができません。

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
― 民法 第21条

判例は、単に制限行為能力者であることを黙秘しただけでは詐術にあたらないとしていますが、他の言動と相まって相手方を誤信させた場合は詐術にあたりうるとしています(最判昭和44年2月13日)。

詐術に関する判例の事案・判旨・意義

  • 事案: 制限行為能力者(旧法の準禁治産者)が取引にあたり、自己が能力者であると相手方に誤信させたかが争われた事案。
  • 判旨: 制限行為能力者であることを単に黙秘していたのみでは詐術にあたらないが、黙秘していた場合でも、それが他の言動とあいまって相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、なお詐術にあたる、とした。
  • 意義: 「詐術」を積極的な欺罔行為に限らず、黙秘+他の言動という形でも成立しうると示した点に意義があります。詐術が成立すると、本人保護よりも相手方の信頼保護が優先され、取消権そのものが否定されます(取り消せなくなる)。

第21条が適用されると、その制限行為能力者だけでなく、保護者を含めおよそ取消権を行使できなくなります。本人が詐術を用いた以上、もはや保護に値しないと評価されるためです。

よくある誤解・ひっかけポイント

行政書士試験で受験生が間違えやすい論点を、誤った理解と正しい理解の形で整理します。

  • : 成年後見人の同意を得れば成年被後見人の行為は有効に確定する。→ : 成年後見人に同意権はなく、同意を得ても取り消せる(第9条)。
  • : 保佐開始・補助開始の審判には常に本人の同意が必要。→ : 本人の同意が開始要件となるのは補助のみ(第15条第2項)。保佐・後見の開始には本人同意は不要。
  • : 制限行為能力者が単独でした取消しは無効である。→ : 本人が単独で取り消すことは認められる(第120条第1項)。
  • : 日常生活に関する行為も取り消せる。→ : 日用品の購入その他日常生活に関する行為は取消しの対象外(全類型共通)。
  • : 詐術があっても本人保護のため取消しは可能。→ : 詐術を用いたときは取り消せない(第21条)。
  • : 被保佐人は相続放棄を単独でできる。→ : 相続の承認・放棄・遺産分割は同意対象(第13条第1項第6号)。
  • : 制限行為能力者を理由に取り消した場合、現存利益を超えて返還義務を負う。→ : 制限行為能力者は現に利益を受けている限度(現存利益)で返還すれば足りる(第121条の2第3項)。浪費した部分は返還不要となるのが原則です。

取消しの効果と現存利益の返還

取り消された行為は初めから無効であったものとみなされ(第121条)、各当事者は原状回復義務を負うのが原則です(第121条の2第1項)。もっとも、制限行為能力者については特則があり、その行為によって現に利益を受けている限度でのみ返還すれば足ります(第121条の2第3項後段)。

たとえば、未成年者が受け取った金銭を生活費に充てた場合は、その出費分は本来支出すべきだった費用の節約(=利益の現存)とみなされ返還義務が残りますが、遊興・ギャンブルで浪費して何も残っていない場合は、その部分の返還義務を免れます。「制限行為能力者の保護」が清算の場面でも貫かれている点として頻出です。

関連論点|法定追認と取消権の期間制限

法定追認(第125条)

取消権者が、追認できる時以後に、一定の行為(全部・一部の履行、履行の請求、更改、担保の供与、取得した権利の譲渡、強制執行など)をしたときは、原則として追認したものとみなされます(第125条)。制限行為能力者の場合、行為能力者となった後など「追認できる時」に至ってからこれらの行為をすると、もはや取り消せなくなります。

取消権の期間制限(第126条)

取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
― 民法 第126条

「追認できる時から5年」「行為時から20年」という二つの期間のいずれかが経過すれば取消権は消滅します。制限行為能力者の場合、「追認できる時」とは、行為能力者となった時や、法定代理人等が取消しの原因となっていた状況の消滅を知った時などを指します。

試験での出題ポイント

  • 4類型の判断能力の程度: 欠く常況 > 著しく不十分 > 不十分
  • 成年後見人に同意権がない: 同意を得ても取消可能
  • 補助開始の審判には本人の同意が必要(保佐・後見は不要)
  • 保佐人の同意を要する行為のリスト(13条1項): 暗記が必須。相続放棄・訴訟行為・借財保証などに注意
  • 催告に対する応答がない場合の効果: 催告相手で結論が異なる(単独追認できる者=追認/被保佐人・被補助人本人=取消し)
  • 詐術を用いたときは取り消せない(第21条・黙秘+他の言動でも詐術になりうる)
  • 取消しは本人が単独でできる(第120条第1項)
  • 取消後の返還は現存利益の限度(第121条の2第3項)
  • 居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可(第859条の3)
確認問題

成年被後見人が成年後見人の同意を得て行った法律行為は、取り消すことができない。

○ 正しい × 誤り
解説
成年後見人には同意権が認められていないため、成年後見人の同意を得て行った法律行為であっても取り消すことができます(民法第9条)。成年被後見人は判断能力を欠く常況にあるため、同意を得ても保護する必要があります。
確認問題

補助開始の審判は、本人以外の者の請求による場合であっても、本人の同意がなければすることができない。

○ 正しい × 誤り
解説
民法第15条第2項により、本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには本人の同意が必要です。被補助人は判断能力がある程度残存しているため、自己決定権の尊重の観点から本人の同意が要求されています。
確認問題

制限行為能力者の相手方が被保佐人本人に催告し、確答がなかった場合は、追認したものとみなされる。

○ 正しい × 誤り
解説
被保佐人本人に催告して確答がなかった場合は「取り消したものとみなす」とされます(民法第20条第4項)。単独では追認できない者に催告しても、確答がないことをもって追認とみなすのは酷だからです。
確認問題

被保佐人が、保佐人の同意を得ずに相続の放棄をした場合、その相続放棄を取り消すことができる。

○ 正しい × 誤り
解説
相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割は、保佐人の同意を要する行為に含まれます(民法第13条第1項第6号)。同意を得ずにこれを行った場合は取り消すことができます(同条第4項)。
確認問題

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いた場合でも、本人保護の観点から、その行為を取り消すことができる。

○ 正しい × 誤り
解説
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができません(民法第21条)。詐術を用いた者は保護に値しないとされ、相手方の信頼保護が優先されます。なお、単なる黙秘でも他の言動とあいまって相手方を誤信させた場合は詐術にあたりえます(最判昭和44年2月13日)。

まとめ

制限行為能力者制度は、判断能力が不十分な者を4つの類型に分けて保護する制度です。

  • 未成年者: 法定代理人の同意が原則必要。法定代理人は同意権・取消権・代理権をすべて有する
  • 成年被後見人: 原則として全行為が取消可能。後見人に同意権なし・包括的代理権あり
  • 被保佐人: 13条1項所定の重要行為に同意が必要。代理権は審判で付与。開始に本人同意は不要
  • 被補助人: 同意権・代理権とも審判で付与。開始に本人の同意が必要

加えて、相手方保護の催告権(第20条)と詐術(第21条)、取消しの効果(現存利益の返還・第121条の2)、取消権の期間制限(第126条)まで一体で押さえることで、得点源にできます。4類型の権限の違い(特に同意権と代理権が「当然」か「審判」かの区別)を比較表で正確に整理することが、試験対策の第一歩です。

関連論点もあわせて学習し、総則分野の理解を盤石にしましょう。

#択一式 #民法 #総則

法律科目対策

条文ドリル × 肢別演習で効率的に学ぶ

条文の穴埋めドリルと肢別演習で、法律科目の知識を効率的に定着。 行政書士試験の法令科目対策に対応しています。

ドリルを始める 無料でアカウント作成
記事一覧を見る