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制限行為能力者制度|後見・保佐・補助の比較表

民法の制限行為能力者制度を4類型(未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人)で比較。同意権・取消権・代理権の有無、審判の要件、日常生活に関する行為の例外まで行政書士試験の頻出ポイントを網羅します。

はじめに|制限行為能力者制度は民法総則の基本

民法は、判断能力が不十分な者を保護するために制限行為能力者制度を設けています。制限行為能力者が行った法律行為は、一定の場合に取り消すことができるとすることで、本人の利益を保護しつつ取引の安全との調整を図っています。

行政書士試験では、4つの類型(未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人)の比較が頻繁に出題されます。それぞれの保護者に認められる権限(同意権・取消権・代理権)の違いを正確に把握することが合格への鍵です。

本記事では、4類型を横断的に比較し、試験で問われるポイントを整理します。

制限行為能力者制度の趣旨

意思能力と行為能力

民法は、法律行為の有効性に関連する能力として、意思能力行為能力を区別しています。

  • 意思能力: 自己の行為の法的な結果を認識・判断できる能力。意思能力を欠く状態で行った法律行為は無効(民法第3条の2)
  • 行為能力: 単独で確定的に有効な法律行為をする能力。行為能力が制限された者が行った法律行為は取消し可能
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。 ― 民法 第3条の2

制度趣旨

意思能力の有無は個々の法律行為ごとに判断する必要があり、立証が困難です。そこで民法は、判断能力が不十分な者をあらかじめ類型化し、画一的に保護する制度として制限行為能力者制度を設けています。

制限行為能力者の行った法律行為は取消しの対象となりますが、これは「無効」ではなく「取消し可能」という効果にとどめることで、取引の安全にも配慮しています。

未成年者(第5条)

未成年者の定義

未成年者とは、18歳未満の者をいいます(民法第4条)。令和4年4月1日の改正民法施行により、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。

年齢18歳をもって、成年とする。 ― 民法 第4条

法定代理人

未成年者の法定代理人は、原則として親権者です(民法第818条以下)。親権者がいない場合は未成年後見人が選任されます。

未成年者の行為能力

未成年者が法律行為をするには、原則として法定代理人の同意を得なければなりません(第5条第1項)。同意を得ずに行った法律行為は、取り消すことができます(第5条第2項)。

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。 ― 民法 第5条第1項

例外:同意なしに単独でできる行為

以下の行為は、未成年者が単独で行うことができます。

  1. 単に権利を得、又は義務を免れる法律行為(第5条第1項ただし書)
  • 贈与を受ける、債務の免除を受けるなど
  1. 法定代理人が処分を許した財産の処分(第5条第3項)
  • 目的を定めて許した場合はその目的の範囲内
  • 目的を定めないで許した場合は自由に処分可能
  1. 法定代理人から許可を受けた営業に関する行為(第6条)
  • 営業許可を得た未成年者は、その営業に関しては成年者と同一の行為能力を有する

婚姻による成年擬制の廃止

改正前民法では、未成年者が婚姻すると成年に達したものとみなす「成年擬制」の規定がありました(旧第753条)。しかし、成年年齢が18歳に引き下げられ、婚姻適齢も男女ともに18歳となったことから、成年擬制の規定は削除されました。

成年被後見人(第7条〜第9条)

定義と開始の審判

成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた者をいいます(第7条)。

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。 ― 民法 第7条

「欠く常況」とは、常に判断能力を欠いている状態をいいます。一時的に回復することがあっても差し支えありません。

成年後見人の権限

成年被後見人には成年後見人が付されます。成年後見人は以下の権限を有します。

  • 代理権: あり(包括的代理権)
  • 同意権: なし
  • 取消権: あり

成年被後見人の行為能力

成年被後見人の法律行為は、原則として取り消すことができます(第9条本文)。成年後見人に同意権が認められていないため、成年後見人の同意を得て行った行為であっても取り消すことができます。

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。 ― 民法 第9条

例外:日常生活に関する行為

日用品の購入その他日常生活に関する行為については取消しの対象外です(第9条ただし書)。食料品の購入、電気・水道料金の支払いなど、日常生活に必要な行為は自らの判断で行えます。これは本人の自己決定権の尊重と残存能力の活用の趣旨です。

被保佐人(第11条〜第13条)

定義と開始の審判

被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者で、家庭裁判所から保佐開始の審判を受けた者をいいます(第11条)。

保佐人の権限

被保佐人には保佐人が付されます。保佐人の権限は以下のとおりです。

  • 同意権: あり(第13条1項所定の行為について)
  • 取消権: あり(同意を要する行為について)
  • 代理権: 家庭裁判所の審判により付与された場合のみ(第876条の4)

保佐人の同意を要する行為(第13条第1項)

被保佐人が以下の行為をするには、保佐人の同意を得なければなりません。

  1. 元本の領収又は利用
  2. 借財又は保証
  3. 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為
  4. 訴訟行為
  5. 贈与、和解又は仲裁合意
  6. 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割
  7. 贈与の申込みの拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の申込みの承諾又は負担付遺贈の承認
  8. 新築、改築、増築又は大修繕
  9. 一定期間を超える賃貸借(土地5年、建物3年、動産6か月)
  10. 上記各号に掲げる行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること

家庭裁判所は、上記以外の行為についても同意を要する旨の審判をすることができます(第13条第2項)。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為はこの拡張の対象外です(第13条第2項ただし書)。

代理権の付与

保佐人に代理権が必要な場合は、家庭裁判所の審判で特定の法律行為について代理権を付与することができます。ただし、本人以外の者の請求による場合は本人の同意が必要です(第876条の4第2項)。

被補助人(第15条〜第17条)

定義と開始の審判

被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者で、家庭裁判所から補助開始の審判を受けた者をいいます(第15条)。

補助開始の審判は、本人の同意がなければすることができません(第15条第2項)。これは、被補助人は判断能力がある程度残存しているため、本人の意思を尊重する必要があるためです。

本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。 ― 民法 第15条第2項

補助人の権限

被補助人には補助人が付されます。補助人の権限は以下のとおりです。

  • 同意権: 家庭裁判所の審判で付与された場合のみ(第17条第1項)
  • 取消権: 同意を要する行為について
  • 代理権: 家庭裁判所の審判で付与された場合のみ(第876条の9)

同意権・代理権の付与

補助人の同意権と代理権は、いずれも家庭裁判所の審判によって付与されます。同意権の対象は、第13条第1項各号に定める行為の一部に限られます(全部ではない点に注意)。

同意権・代理権の付与の審判は、本人以外の者の請求による場合、本人の同意が必要です。

補助開始の審判をする場合は、同意権付与の審判又は代理権付与の審判の少なくとも一方を同時にしなければなりません。

4類型の横断比較表

項目未成年者成年被後見人被保佐人被補助人判断能力年齢による欠く常況著しく不十分不十分開始要件出生(18歳未満)審判審判審判+本人の同意保護者親権者/未成年後見人成年後見人保佐人補助人同意権あり(法定代理人)なしあり(13条1項)審判で付与取消権ありあり(全行為)あり(同意対象行為)あり(同意対象行為)代理権あり(法定代理人)あり(包括的)審判で付与審判で付与日常生活行為単独可単独可(取消不可)単独可単独可

重要な比較ポイント

  1. 成年後見人に同意権がない理由: 成年被後見人は判断能力を欠く常況にあるため、同意を得て行為をさせるよりも、後見人が代理して行為する方が本人の保護に資する
  2. 補助開始に本人の同意が必要な理由: 被補助人は判断能力がある程度残存しているため、自己決定権の尊重の観点から本人の同意を要求
  3. 保佐人・補助人の代理権は当然には付与されない: 家庭裁判所の審判が必要

制限行為能力者の相手方の保護

催告権(第20条)

制限行為能力者の相手方は、取消しの可否が不確定な状態に置かれます。そこで民法は、相手方に催告権を認めています。

催告の相手確答がない場合の効果行為能力者となった本人追認とみなす法定代理人・保佐人・補助人追認とみなす被保佐人・被補助人本人取り消したものとみなす

被保佐人・被補助人本人に催告した場合は「取り消したものとみなす」点が重要です。これは、単独では追認できない者に催告しても、確答がないことをもって追認とみなすのは酷だからです。

制限行為能力者の詐術(第21条)

制限行為能力者が、行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができません。

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。 ― 民法 第21条

判例は、単に制限行為能力者であることを黙秘しただけでは詐術にあたらないとしていますが、他の言動と相まって相手方を誤信させた場合は詐術にあたりうるとしています(最判昭和44年2月13日)。

試験での出題ポイント

  • 4類型の判断能力の程度: 欠く常況 > 著しく不十分 > 不十分
  • 成年後見人に同意権がない: 同意を得ても取消可能
  • 補助開始の審判には本人の同意が必要
  • 保佐人の同意を要する行為のリスト(13条1項): 暗記が必須
  • 催告に対する応答がない場合の効果: 催告相手で結論が異なる
確認問題

成年被後見人が成年後見人の同意を得て行った法律行為は、取り消すことができない。

○ 正しい × 誤り
解説
成年後見人には同意権が認められていないため、成年後見人の同意を得て行った法律行為であっても取り消すことができます(民法第9条)。成年被後見人は判断能力を欠く常況にあるため、同意を得ても保護する必要があります。
確認問題

補助開始の審判は、本人以外の者の請求による場合であっても、本人の同意がなければすることができない。

○ 正しい × 誤り
解説
民法第15条第2項により、本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには本人の同意が必要です。被補助人は判断能力がある程度残存しているため、自己決定権の尊重の観点から本人の同意が要求されています。
確認問題

制限行為能力者の相手方が被保佐人本人に催告し、確答がなかった場合は、追認したものとみなされる。

○ 正しい × 誤り
解説
被保佐人本人に催告して確答がなかった場合は「取り消したものとみなす」とされます(民法第20条第4項)。単独では追認できない者に催告しても、確答がないことをもって追認とみなすのは酷だからです。

まとめ

制限行為能力者制度は、判断能力が不十分な者を4つの類型に分けて保護する制度です。

  • 未成年者: 法定代理人の同意が原則必要
  • 成年被後見人: 原則として全行為が取消可能。後見人に同意権なし
  • 被保佐人: 13条1項所定の重要行為に同意が必要。代理権は審判で付与
  • 被補助人: 同意権・代理権とも審判で付与。開始に本人の同意必要

4類型の権限の違い(特に同意権と代理権の有無)を比較表で正確に整理することが、試験対策の第一歩です。

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