選挙制度|小選挙区制・比例代表の仕組みと頻出ポイント
行政書士試験の一般知識で頻出の選挙制度を過去問の角度に沿って解説。小選挙区制・比例代表並立制やドント式、衆議院と参議院の違い、一票の格差判例、選挙の5原則、政党制度までを表で整理します。
はじめに|行政書士試験における選挙制度の位置づけ
行政書士試験の一般知識等(政治・経済・社会)では、日本の選挙制度や政治の仕組みに関する問題が繰り返し出題されています。選挙制度は憲法と密接に関連する分野であり、憲法の学習とあわせて理解しておくことで、法令科目との相乗効果も期待できます。
政治分野は範囲が広く対策が難しいとされますが、選挙制度は制度の仕組みが明確に定まっており、一度理解すれば安定した得点源になります。本記事では、選挙の基本原則から衆議院・参議院の選挙制度、一票の格差問題、政党制度、地方選挙まで体系的に整理します。
選挙制度が出題される角度は、大きく分けて次の3パターンです。第一に「制度の仕組みそのもの」(小選挙区制と比例代表制の違い、衆参の制度比較など)、第二に「数字の暗記」(定数・任期・年齢・政党要件など)、第三に「憲法・判例との接続」(選挙権の法的性格、一票の格差をめぐる最高裁判決など)です。本記事はこの3つの角度すべてに対応できるよう、制度の説明だけでなく、過去問で問われた論点・よくある誤解・暗記の勘どころまで踏み込んで整理しています。
選挙の基本原則|日本国憲法が保障する5つの原則
日本国憲法は、国民主権の理念に基づき、選挙に関するいくつかの基本原則を定めています。選挙の基本原則は大きく5つに整理されます。
1. 普通選挙
普通選挙とは、財産・納税額・教育・性別などによる制限を設けず、一定の年齢に達したすべての国民に選挙権を認める制度です。
- 日本国憲法第15条第3項は「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」と規定
- 現行法では満18歳以上の日本国民に選挙権が認められる(2015年の公職選挙法改正により、20歳から18歳に引き下げ)
- 被選挙権(立候補する権利)は衆議院議員・地方議会議員・市町村長が満25歳以上、参議院議員・都道府県知事が満30歳以上
普通選挙の対義語は「制限選挙」です。日本では1889年(明治22年)の衆議院議員選挙法では直接国税15円以上を納める満25歳以上の男子のみに選挙権が認められ、有権者は全人口の約1.1%にすぎませんでした。その後、納税要件は段階的に緩和され、1925年(大正14年)の普通選挙法で満25歳以上の男子に納税要件なしで選挙権が認められました(男子普通選挙)。女性に選挙権が認められたのは1945年(昭和20年)の改正で、翌1946年に女性が初めて投票した点は、政治史の知識として問われることがあります。
普通選挙について、日本国憲法は次のように定めています。
> 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
> ― 日本国憲法 第15条第3項
2. 平等選挙
平等選挙とは、すべての選挙人が等しい価値の投票権を持つことを意味します。
- 日本国憲法第14条(法の下の平等)および第44条(議員および選挙人の資格の平等)が根拠
- 「一人一票」の原則:すべての有権者が1票ずつ投じる
- 投票の価値の平等:各選挙人の1票が同等の影響力を持つべきとする考え方(一票の格差問題につながる)
平等選挙の対義語は「等級選挙・複数選挙」です。かつてプロイセンなどで採用された、納税額に応じて一部の有権者に複数票を与える制度は、平等選挙の原則に反します。日本国憲法第44条はこの点を明確にしています。
> 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
> ― 日本国憲法 第44条
平等選挙は「一人一票」という形式的平等にとどまらず、後述する一票の格差問題のように、投票価値の平等という実質面まで含むものと解されている点が重要です。
3. 自由選挙
自由選挙とは、選挙人が自由な意思に基づいて投票できることを意味します。
- 投票するかしないかの自由(棄権の自由)が保障される
- 日本では投票の義務化(義務投票制)は採用していない
- 選挙運動の自由もこの原則に含まれるが、公職選挙法により一定の制限がある
自由選挙の対義語は「強制選挙(義務投票制)」です。オーストラリアやベルギーなど、投票を法的義務とし棄権に罰則を科す国もありますが、日本は採用していません。
自由選挙には憲法上の明文規定がない点が、試験で繰り返し狙われます。普通選挙(第15条第3項)・秘密選挙(第15条第4項)には明文があるのに対し、自由選挙は憲法全体の趣旨から解釈上導かれるものとされます。
4. 秘密選挙(秘密投票)
秘密選挙とは、投票の内容が他人に知られないことを保障する制度です。
- 日本国憲法第15条第4項は「すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない」と規定
- 無記名投票が原則であり、誰に投票したかを他者に知られない仕組みが整備されている
- 選挙人は投票した内容について干渉を受けない
秘密選挙の対義語は「公開選挙(記名投票)」です。憲法第15条第4項後段は「選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない」とも定めており、誰に投票したかを理由に不利益を受けないことまで保障しています。
> すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
> ― 日本国憲法 第15条第4項
5. 直接選挙
直接選挙とは、選挙人が直接候補者を選ぶ制度です。
- 間接選挙(選挙人が代理人を選び、代理人が候補者を選ぶ方式)ではなく、国民が直接議員を選出する
- 日本国憲法第43条は国会議員を「全国民の代表」と位置づけ、第93条第2項は地方公共団体の長と議員の直接選挙を規定
直接選挙の対義語は「間接選挙」です。アメリカ大統領選挙のように、有権者がまず選挙人(大統領選挙人)を選び、その選挙人が大統領を選出する方式が間接選挙の典型例です。日本国憲法は地方公共団体の長について明文で直接選挙を要求していますが、国会議員については明文の規定はなく、現行法が直接選挙を採用しているにとどまる点に注意が必要です。
> 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
> ― 日本国憲法 第93条第2項
選挙の5原則 早見表
選挙の5原則(普通・平等・自由・秘密・直接)は、行政書士試験でも憲法の問題と絡めて出題されることがあります。特に「秘密選挙」は憲法第15条第4項に明文の規定があること、「自由選挙」は明文の規定はないものの解釈上認められていることを区別して覚えておきましょう。
選挙権の法的性格と公務員の選定罷免権
選挙権の根拠条文は日本国憲法第15条第1項です。
> 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
> ― 日本国憲法 第15条第1項
選挙権の法的性格については、有権者個人の主観的な「権利」であると同時に、公務員の選定という「公務」としての性格をあわせ持つ(権利・公務二元説)と理解するのが通説的です。この二面性は、選挙権を行使する機会を平等に保障すべきという議論や、後述する在外国民の選挙権制限の合憲性判断にもかかわります。なお、選挙権・被選挙権の制限が問題となった重要判例については、在外日本人選挙権訴訟|立法不作為と国家賠償を解説もあわせて確認すると理解が深まります。
日本国憲法には、選挙の基本原則として「自由選挙」の原則が明文で規定されている。
選挙区制度の種類|小選挙区・大選挙区・比例代表
選挙制度の「種類」を問う問題では、選挙区制度の分類を体系的に押さえておく必要があります。代表的な分類は次のとおりです。
選挙区制の基本分類
中選挙区制とは、1選挙区から概ね3〜5人を選出する制度で、大選挙区制の一種です。日本の衆議院は1947年から1993年まで中選挙区制を採用していましたが、1994年の政治改革で小選挙区比例代表並立制に移行しました。中選挙区制では同一政党から複数の候補者が立つため党内派閥が温存されやすい、という弊害が指摘されたことが移行の背景です。
多数代表制と少数代表制
選挙区制は、議席配分の考え方から「多数代表制」と「少数代表制」に分類することもできます。
- 多数代表制:多数派の意思を議席に反映させやすい制度。小選挙区制が典型。
- 少数代表制:少数派にも議席獲得の機会を確保する制度。大選挙区制(単記非移譲式)や比例代表制がこれに近い。
比例代表の議席配分方式(ドント式)
比例代表制で各政党に議席を配分する方法として、日本ではドント式が採用されています。ドント式は、各政党の得票数を1、2、3…の整数で順に割り、得られた商(数値)の大きい順に議席を割り当てる方式です。
たとえば、定数5に対しA党1500票・B党900票・C党600票の場合、各政党の得票を1・2・3…で割った商を比較し、上位5つに対応する政党へ1議席ずつ配分します。この計算手順は一般知識で具体的な数値計算として出題されることもあるため、「得票数を整数で割り、商の大きい順に配分する」という手順を理解しておきましょう。ドント式は相対的に大政党に有利に働きやすい特徴があります。
中選挙区制は、1つの選挙区から1人の議員を選出する制度である。
衆議院の選挙制度|小選挙区比例代表並立制
制度の概要
衆議院議員の定数は465人で、小選挙区比例代表並立制が採用されています。
「並立制」とは、小選挙区と比例代表をそれぞれ独立した制度として実施し、議席を別々に配分する方式です。これに対し、ドイツのように比例代表での議席配分を基本としつつ小選挙区の当選者を組み込む方式は「併用制」と呼ばれます。日本の衆議院は「並立制」であり「併用制」ではない、という用語の区別が問われることがあります。
小選挙区制の特徴
小選挙区制は、1つの選挙区から1人の議員を選出する制度です。
メリット
- 政権交代が起こりやすく、二大政党制に向かいやすい
- 有権者と議員の結びつきが強い
- 政治的安定が得られやすい
デメリット
- 死票(落選者への投票)が多くなりやすい
- 少数意見が反映されにくい
- ゲリマンダー(選挙区の恣意的な区割り)の問題が生じうる
比例代表制の特徴
比例代表制は、各政党の得票数に応じて議席を配分する制度です。衆議院の比例代表は全国を11ブロックに分けて実施されます。
メリット
- 死票が少なく、多様な意見が反映されやすい
- 少数政党も議席を獲得しやすい
デメリット
- 小党分立になりやすく、政治が不安定化する可能性がある
- 有権者と議員の個人的なつながりが薄い
重複立候補と惜敗率
衆議院選挙では、小選挙区と比例代表に同時に立候補する重複立候補が認められています。小選挙区で落選した候補者でも、比例代表の名簿順位が同じ場合は惜敗率(小選挙区での得票数÷当選者の得票数)が高い順に当選します。
衆議院の比例代表は拘束名簿式であり、政党があらかじめ名簿の順位を決めておきます。ただし複数の候補者を同一順位で並べることが認められ、その場合に同一順位者間の優劣を決めるのが惜敗率です。なお、小選挙区で供託物没収点(一定の得票率)に達しなかった候補者は、比例代表での復活当選ができません。重複立候補・惜敗率・拘束名簿式の3つを一体で理解しておくと、衆議院比例代表の出題に対応しやすくなります。
過去問で問われた角度・よくある誤解
- 衆議院の比例代表は「全国11ブロック」であって全国1区ではない。全国1区は参議院。両院を取り違えさせる出題が典型です。
- 衆議院の比例代表の投票は「政党名のみ」を記載します。候補者名でも投票できるのは参議院の比例代表です。
- 「並立制」と「併用制」の混同。日本の衆議院は並立制です。
- 重複立候補で復活当選するには小選挙区での一定の得票が必要であり、惨敗した候補者まで救済されるわけではない点も、誤りの選択肢として使われます。
参議院の選挙制度|選挙区+比例代表
制度の概要
参議院議員の定数は248人で、任期は6年です。3年ごとに半数が改選されるため、1回の選挙で選ばれるのは124人です。
参議院に解散はなく、3年ごとに必ず半数が改選される点(半数改選制)は、衆議院との大きな違いです。これにより参議院は「再考の府」「良識の府」として、衆議院の動向に左右されにくい構成を保つことが意図されています。なお、参議院議員の任期や半数改選は日本国憲法第46条に根拠があります。
> 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
> ― 日本国憲法 第46条
非拘束名簿式比例代表制
参議院の比例代表は非拘束名簿式を採用しています。これは、政党が候補者の名簿順位をあらかじめ決めない方式です。
- 有権者は候補者名または政党名のどちらかを記載して投票
- まず政党の総得票数(候補者名票+政党名票)でドント式により各政党の議席数を決定
- 各政党内では、候補者名での得票数が多い順に当選
非拘束名簿式は、有権者が政党だけでなく個々の候補者を直接選べる点に特徴があります。候補者名票も政党名票も合算して政党の議席数を決め、政党内の当落は個人名票の多寡で決まるという「二段階の集計」を理解しておきましょう。
特定枠制度
2018年の公職選挙法改正により、参議院の比例代表に特定枠制度が導入されました。
- 政党が比例代表名簿に「特定枠」を設定できる
- 特定枠の候補者は、個人の得票数に関係なく、名簿に記載された順位のとおり優先的に当選する
- 特定枠は拘束名簿式の要素を部分的に取り入れたもの
特定枠は、非拘束名簿式を原則としながら、政党が優先的に当選させたい候補者を順位どおりに当選させられる仕組みです。導入の背景には、後述する参議院選挙区の「合区」により議席を失う県の候補者を救済する狙いがあったとされます。
衆議院と参議院の選挙制度の比較
衆参の比較は一般知識でも憲法(統治機構)でも頻出です。国会全体の仕組みや両院の関係については、国会・内閣・裁判所の権限と相互関係を整理とあわせて学習すると、選挙制度の知識が統治機構の理解に結びつきます。
参議院の比例代表選挙では、衆議院と同様に拘束名簿式が採用されている。
一票の格差問題|投票価値の平等をめぐる判例
一票の格差とは
一票の格差とは、選挙区ごとの議員1人あたりの有権者数の不均衡により、有権者の投票の価値に差が生じる問題です。人口が少ない選挙区の1票は、人口が多い選挙区の1票よりも大きな影響力を持つことになります。
一票の格差は、前述した平等選挙の原則(投票価値の平等)にかかわる問題です。最高裁は、憲法第14条第1項の法の下の平等が、選挙における投票価値の平等まで要求していると解しています。投票価値の平等を含む法の下の平等の一般論については、法の下の平等(14条)|平等原則の意味と重要判例も参照すると、この論点の憲法上の位置づけが明確になります。
リーディングケース(衆議院・昭和51年判決)
一票の格差を初めて違憲と判断したのが、昭和51年の最高裁大法廷判決です。
> 各選挙人の投票の価値、すなわち各投票が選挙の結果に及ぼす影響力においても平等であることを要求せざるをえないものというべきである。
> ― 最大判昭和51年4月14日(議員定数不均衡訴訟)
この判決は、約4.99倍の格差を違憲としつつ、選挙自体は無効とせず有効としました。選挙を無効とすると公益に重大な障害が生じることを理由に、行政事件訴訟法第31条の事情判決の法理を援用したものです。「違憲だが選挙は無効としない」という処理の枠組みは、その後の一票の格差訴訟の基本形になりました。
最高裁判所の判例の推移
一票の格差に関する最高裁判決は、行政書士試験の憲法分野でも出題されますが、一般知識でも政治の仕組みとして問われることがあります。
参議院については、最大格差が衆議院より大きくても「違憲」とされにくい傾向がありましたが、2010年選挙について最高裁は格差5.00倍を「違憲状態」、2013年選挙について格差4.77倍を「違憲状態」と判断しています。参議院は半数改選制であり都道府県を単位とする選挙区の歴史的経緯があることから、衆議院よりも大きな格差が許容されやすいとされてきました。もっとも近年は参議院についても投票価値の平等の要請を厳しく見る方向にあり、合区の導入につながりました。
最高裁判所は、一票の格差について「違憲」「違憲状態」「合憲」の3段階で判断します。「違憲状態」とは、投票価値の不平等が存在するものの、是正のための合理的期間が経過していないとして選挙自体は無効としない判断です。
「違憲状態」と「違憲」「合憲」の判断枠組み
最高裁の判断は、おおむね次の段階を踏みます。
- 投票価値の不平等が、憲法の要求に反する程度に至っているか(違憲状態かどうか)
- 違憲状態にある場合、是正のための合理的期間内に是正がされなかったか(違憲かどうか)
- 違憲の場合でも、選挙を無効とするか(事情判決の法理を用いるか)
「違憲状態」とは①を満たすが②に至っていない段階、「違憲」とは①②をともに満たす段階を指します。多くの事案では②の合理的期間を経過していないとして「違憲状態」にとどめ、選挙は有効とされてきました。この三段階の枠組みは、空欄補充や正誤判定の形で出題されやすい重要ポイントです。
区割りの見直し
一票の格差の是正のため、衆議院では2016年に「アダムズ方式」(各都道府県にまず1議席を配分し、残りを人口比で配分する方式)の導入が決定され、2022年の区割り改定で適用されました。「10増10減」と呼ばれる大規模な区割り変更が行われ、都市部の選挙区が増加しました。
参議院では、一票の格差是正のため2015年改正で鳥取県と島根県、徳島県と高知県をそれぞれ1つの選挙区とする「合区」が導入されました。合区は2県を1選挙区とするため、その県から選出される議員がいなくなる事態が生じ、これを補うために前述の特定枠制度が設けられたという流れを押さえておきましょう。
一票の格差をめぐる訴訟において、最高裁判所が選挙を「違憲状態」と判断した場合、その選挙は無効となる。
政党制度と政党助成法
日本の政党制度
日本国憲法には政党に関する直接的な規定はありませんが、結社の自由(第21条)を根拠に政党の自由な活動が保障されています。政党の法的根拠は主に以下の法律で定められています。
- 公職選挙法: 選挙における政党の扱い(政党要件など)
- 政党助成法: 政党交付金の交付に関する規定
- 政治資金規正法: 政党の政治資金の透明性に関する規定
政党は、議会制民主主義において国民の多様な意思を集約し政治に反映させる「公共的な存在」であると同時に、結社の自由に基づく私的団体でもあります。最高裁は八幡製鉄政治献金事件(最大判昭和45年6月24日)で、会社が政党に政治献金をすることも、会社の権利能力の範囲内であり許されるとしました。政党の党則に基づく除名処分の司法審査が問題となった共産党袴田事件(最判昭和63年12月20日)では、政党の自律的判断を尊重し、処分が一般市民法秩序と直接かかわらない内部問題については司法審査が及ばないとされた点も、政党をめぐる判例として押さえておくと有用です。
政党制の分類
政治学上、政党制(政党システム)は次のように分類されることがあります。一般知識で用語として問われることがあります。
小選挙区制は二大政党制を促し、比例代表制は多党制を促す傾向があるとされます(デュヴェルジェの法則として知られる)。選挙制度の特徴とあわせて理解しておくと、論点が結びつきます。
政党助成法の概要
政党助成法は、政党の活動を国が資金面で支援する制度を定めた法律です。
政党交付金の総額
- 直近の国勢調査の人口 × 250円が基準
交付を受けるための要件(政党要件)
以下のいずれかを満たす政治団体が「政党」として交付金を受けられます。
- 所属する国会議員が5人以上
- 所属する国会議員が1人以上で、直近の国政選挙における得票率が2%以上
配分方法
- 総額の2分の1を各政党の所属議員数に応じて配分
- 総額の2分の1を直近の国政選挙の得票数に応じて配分
政党助成制度は、企業・団体献金への依存を減らし政治資金の透明化を図る目的で、政治改革の一環として1994年に導入されました。国民1人あたり年250円程度の税金が原資となる点や、共産党が制度の趣旨に反対して交付金を受け取っていないことも、社会的な背景知識として知られています。
政治資金規正法のポイント
政治資金規正法は、政治資金の収支の公開と寄附の規制を主な内容とする法律です。
- 企業・団体の寄附は政党・政治資金団体に対してのみ認められる(個々の政治家への企業献金は禁止)
- 個人献金は政治家個人にも認められるが、年間の上限額がある
- 政治資金収支報告書の提出が義務づけられている
政治資金規正法は寄附を「禁止」するのではなく、収支を公開させて国民の判断に委ねる「公開原則」を基本としている点に特徴があります。「規制」ではなく「規正」の字が用いられるのも、正しいあり方に正す(不正を是正する)という趣旨に由来するとされます。企業・団体献金は政党・政治資金団体に限り、政治家個人への献金は政党を経由する仕組みになっている点が、正誤問題でよく問われます。なお政党要件は「議員ゼロ+得票率2%」では満たさず、必ず所属国会議員が1人以上必要である点に注意しましょう。
地方選挙の仕組み
地方公共団体の選挙
地方公共団体の長(知事・市町村長)と議会の議員は、住民の直接選挙で選ばれます(憲法第93条第2項)。
地方公共団体は、長と議会の双方を住民が直接選ぶ「二元代表制」を採用しています。国の議院内閣制(国民が選んだ国会が内閣総理大臣を指名する)とは異なり、長も議員も住民から直接の民主的正統性を持つ点が特徴です。被選挙権の年齢で、都道府県知事だけが30歳以上(市町村長・地方議員はいずれも25歳以上)である点は、参議院議員(30歳以上)とあわせて狙われやすいポイントです。
直接請求制度
地方自治法は、住民が直接政治に参加する仕組みとして直接請求制度を定めています。
直接請求の「3分の1以上」の要件は、有権者総数が40万を超える部分・80万を超える部分について緩和される特例があります。署名要件の原則(50分の1・3分の1)に加え、解散・解職請求では成立後に住民投票(または議会の議決)が必要となる流れまで含めて整理しておくと万全です。直接請求制度は地方自治法そのものの論点でもあるため、直接請求制度を完全整理|条例制定・解職請求の要件で詳細を確認しておくと、一般知識と行政法の両面で得点しやすくなります。
直接請求制度における必要署名数は「50分の1以上」と「3分の1以上」の2種類を区別して覚えましょう。条例の制定・改廃請求と事務監査請求が「50分の1以上」、それ以外(解散・解職請求)が「3分の1以上」です。
地方自治法上、条例の制定・改廃を請求するには、有権者の3分の1以上の署名が必要である。
選挙運動の規制とインターネット選挙運動
公職選挙法は、選挙の公正を確保するために選挙運動に多くの規制を設けています。一般知識ではここから細かい知識が問われることがあります。
主な選挙運動の規制
- 事前運動の禁止:選挙運動ができるのは、立候補の届出をしてから投票日の前日までに限られます。届出前の選挙運動(事前運動)は禁止されています。
- 戸別訪問の禁止:候補者や運動員が有権者の家を個別に訪問して投票を依頼する行為は禁止されています。買収の温床になりやすいことが理由とされます。
- 法定外文書図画の頒布制限:選挙運動のために使えるビラ・ポスター等は法律で種類・枚数が制限されています。
- 連座制:候補者本人ではなく、選挙運動の総括主宰者や親族などの一定の関係者が買収などの選挙違反で有罪となった場合、候補者本人の当選が無効となり、一定期間その選挙区からの立候補が制限される制度です。
インターネット選挙運動の解禁
2013年の公職選挙法改正により、ウェブサイトやSNS等を利用した選挙運動が解禁されました。ただし、解禁されたのはあくまで「インターネットを使った選挙運動」であり、次のような制約が残っている点に注意が必要です。
- 電子メールによる選挙運動は、候補者・政党等に限って認められ、一般の有権者は電子メールでの選挙運動ができません(SNSやウェブサイトの利用は一般有権者も可)。
- 年齢満18歳未満の者の選挙運動は引き続き禁止されています。
「ネット選挙が解禁された=すべての方法が自由になった」と誤解させる選択肢が出やすいため、電子メールと一般のSNS等の取扱いの違いを押さえておきましょう。2013年改正で解禁されたのはあくまでネットを使った選挙運動であり、電子メールを利用した選挙運動が認められるのは候補者・政党等に限られる点(一般有権者はSNS等は可だが電子メールは不可)が、正誤問題の頻出ポイントです。
行政書士試験での出題ポイントまとめ
選挙制度と政治の仕組みに関して、試験で問われやすいポイントを整理します。
選挙制度の比較
- 衆議院は小選挙区比例代表並立制、参議院は選挙区+非拘束名簿式比例代表
- 衆議院の比例代表は拘束名簿式で全国11ブロック、参議院は非拘束名簿式で全国1区
- 重複立候補は衆議院のみ認められ、参議院では認められない
- 比例の投票記載は、衆議院が政党名のみ、参議院は候補者名または政党名
数字の正確な暗記
頻出の「ひっかけ」整理
- 衆議院比例=全国11ブロック/参議院比例=全国1区(取り違えに注意)
- 自由選挙だけ憲法に明文がない(普通・秘密は明文あり)
- 「違憲状態」でも選挙は無効にならない
- ネット選挙解禁でも、一般有権者の電子メール選挙運動は不可
- 政党要件は「議員ゼロ+得票率2%」では満たさない
近年の改正・動向
- 選挙権年齢の18歳への引き下げ(2016年施行)
- 参議院の合区(鳥取・島根、徳島・高知)と特定枠制度の導入
- 衆議院のアダムズ方式による区割り改定(10増10減)
- インターネット選挙運動の解禁(2013年)
まとめ
選挙制度と政治の仕組みは、行政書士試験の一般知識対策として基本的な知識を押さえておくべきテーマです。
基本原則: 普通選挙・平等選挙・自由選挙・秘密選挙・直接選挙の5原則を理解し、特に憲法上の明文規定の有無を区別すること。自由選挙だけが明文なし、という点が頻出です。
選挙区制度の種類: 小選挙区制・大選挙区制・比例代表制の特徴と、二大政党制・多党制との結びつき、ドント式の議席配分の手順を理解すること。
衆参の選挙制度の違い: 定数・任期・比例代表の方式・重複立候補の可否・投票記載方法など、両院の制度の違いを表で整理して覚えること。
一票の格差: 最高裁判例の「違憲」「違憲状態」「合憲」の三段階の判断枠組みと、選挙を無効としない事情判決の法理、合区・アダムズ方式などの近年の動向を押さえること。
政党制度: 政党助成法の政党要件(国会議員5人以上、または1人以上+得票率2%以上)と政治資金規正法の企業献金の制限を理解すること。
地方選挙・直接請求: 二元代表制の特徴と、直接請求制度の署名要件(50分の1と3分の1の区別)は頻出であり、確実に覚えておくこと。
選挙制度は仕組みが明確に定まっている分野であるため、一度しっかり理解すれば安定した得点源になります。憲法や地方自治法の学習と連動させながら、効率的に知識を定着させましょう。関連分野として、憲法の全体像と学習戦略|行政書士試験の効率的な攻略法、地方自治法の基本|行政書士試験で押さえるべき重要論点、一般知識の足切り対策|行政書士試験で確実に6問取る方法もあわせて学習することをおすすめします。