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労働法の基礎|労基法・労契法の頻出ポイント

労働基準法の基本原則・労働時間・解雇規制、労働契約法の解雇権濫用法理・雇止め法理・無期転換ルールなど、行政書士試験で問われる労働法の頻出ポイントを体系的に解説します。

はじめに|労働法は一般知識で得点源にできる分野

行政書士試験の一般知識等科目では、労働法に関する問題が出題されることがあります。労働基準法や労働契約法は、働く人の権利を守る基本的な法律であり、社会人として身近なテーマでもあるため、比較的取り組みやすい分野です。

労働法という名称の法律は存在しません。労働基準法、労働契約法、労働組合法、最低賃金法など、労働に関する法律群の総称として「労働法」と呼ばれています。本記事では、試験対策として特に重要な労働基準法と労働契約法を中心に、頻出ポイントを整理します。

労働基準法の基本原則

労働基準法の目的と性格

労働基準法は、労働条件の最低基準を定める法律です。1947年に制定され、すべての労働者に適用される強行法規としての性格を持ちます。

労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定めた労働契約は、その部分について無効となり、無効となった部分は労働基準法で定める基準によります(第13条)。これを強行的・直律的効力といいます。

5つの基本原則

労働基準法は冒頭で以下の基本原則を定めています。

  1. 労働条件の原則(第1条): 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない
  2. 労使対等の原則(第2条): 労働条件は、労働者と使用者が対等の立場において決定すべきもの
  3. 均等待遇の原則(第3条): 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取扱いをしてはならない
  4. 男女同一賃金の原則(第4条): 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について男性と差別的取扱いをしてはならない
  5. 強制労働の禁止(第5条): 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない

均等待遇の原則のポイント

第3条の均等待遇の原則で禁止される差別理由は「国籍」「信条」「社会的身分」の3つです。性別は含まれていません(性別による差別は男女雇用機会均等法で規制されます)。また、第4条の男女同一賃金の原則は賃金のみに関する規定であり、採用や昇進について定めたものではありません。

労働契約と労働条件の明示

労働契約の成立

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて合意することにより成立します(労働契約法第6条)。書面の作成は成立要件ではなく、口頭の合意でも成立します。

労働条件の明示義務

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません(労働基準法第15条)。

書面(又は電磁的方法)による明示が必要な事項(絶対的明示事項)

  1. 労働契約の期間
  2. 期間の定めのある労働契約の更新基準
  3. 就業の場所・従事すべき業務
  4. 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇
  5. 賃金の決定・計算・支払の方法、締切日・支払日
  6. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

明示された労働条件が事実と異なる場合、労働者は即時に労働契約を解除することができます。

賃金支払の4原則

賃金の支払いについて、労働基準法は以下の4つの原則を定めています(第24条)。

  1. 通貨払いの原則: 賃金は通貨で支払わなければならない(現物支給の原則禁止)
  2. 直接払いの原則: 賃金は直接労働者に支払わなければならない
  3. 全額払いの原則: 賃金はその全額を支払わなければならない
  4. 毎月1回以上・一定期日払いの原則: 賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない

労働時間・休憩・休日

法定労働時間

使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、また1日について8時間を超えて労働させてはなりません(第32条)。これを法定労働時間といいます。

休憩時間

使用者は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません(第34条)。

休憩時間には以下の3つの原則があります。

  1. 途中付与の原則: 労働時間の途中に与えること
  2. 一斉付与の原則: 事業場の労働者に一斉に与えること(労使協定による例外あり)
  3. 自由利用の原則: 休憩時間を自由に利用させること

休日

使用者は、労働者に対して毎週少なくとも1回の休日を与えなければなりません(第35条第1項)。これを法定休日といいます。ただし、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者にはこの規定は適用されません(変形休日制、第35条第2項)。

36協定(サブロク協定)

使用者が法定労働時間を超えて労働させる場合や法定休日に労働させる場合には、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者との書面による協定(36協定)を締結し、行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出なければなりません(第36条)。

2018年の働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制が法定化されました。原則として月45時間・年360時間が上限とされ、臨時的な特別の事情がある場合でも年720時間・単月100時間未満(休日労働含む)・複数月平均80時間以内(休日労働含む)を超えることはできません。

解雇規制

解雇予告制度

使用者は、労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前にその予告をしなければなりません(第20条)。30日前に予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。

予告日数は、解雇予告手当を支払った日数分だけ短縮することができます(例: 10日分の解雇予告手当を支払えば20日前の予告で足りる)。

解雇予告が不要な場合

以下の場合には解雇予告が不要です。

  • 日日雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用された場合を除く)
  • 2か月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超えて引き続き使用された場合を除く)
  • 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超えて引き続き使用された場合を除く)
  • 試の使用期間中の者(14日を超えて引き続き使用された場合を除く)

解雇制限

使用者は、以下の期間は労働者を解雇してはなりません(第19条)。

  1. 業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間及びその後30日間
  2. 産前産後の休業期間及びその後30日間

労働契約法の重要規定

解雇権濫用法理(第16条)

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とされます。この規定は判例法理(日本食塩製造事件、高知放送事件等)を明文化したものです。

雇止め法理(第19条)

有期労働契約の期間満了時に使用者が更新を拒否することを「雇止め」といいます。以下のいずれかに該当する場合で、労働者が更新の申込みをしたときは、使用者が雇止めをすることが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、従前の有期労働契約と同一の労働条件で更新されたものとみなされます。

  1. 有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあり、雇止めが期間の定めのない労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められる場合
  2. 労働者が有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる場合

無期転換ルール(第18条)

同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されます。使用者は当該申込みを承諾したものとみなされます。

  • 通算契約期間: 2つ以上の有期労働契約の契約期間を通算する
  • クーリング期間: 契約がない期間が6か月以上あれば、それ以前の契約期間は通算されない
  • 転換後の労働条件: 別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一の労働条件

最低賃金法と労働組合法

最低賃金法

最低賃金法は、賃金の最低額を保障する法律です。最低賃金には2種類あります。

  1. 地域別最低賃金: 都道府県ごとに定められる最低賃金(すべての労働者に適用)
  2. 特定最低賃金(産業別最低賃金): 特定の産業について定められる最低賃金

最低賃金額に達しない賃金を定める労働契約は、その部分について無効となり、最低賃金と同額の定めをしたものとみなされます。

労働組合法の基本

労働組合法は、労働者の団結権・団体交渉権・団体行動権(争議権)を保障する法律です。

不当労働行為(第7条)

使用者の以下の行為は不当労働行為として禁止されています。

  1. 不利益取扱い: 組合員であること等を理由とする解雇その他の不利益取扱い
  2. 団体交渉の拒否(正当な理由のない): 正当な理由なく団体交渉を拒否すること
  3. 支配介入: 労働組合の結成・運営に対する支配・介入
  4. 経費援助: 労働組合の運営経費の援助(ただし、最小限の広さの事務所の供与等は除く)
  5. 報復的不利益取扱い: 不当労働行為の救済申立て等を理由とする不利益取扱い

不当労働行為に対しては、労働委員会に救済を申し立てることができます。

近年の労働法改正のポイント

働き方改革関連法(2018年成立)

2018年に成立した働き方改革関連法は、労働法制の大きな転換点となりました。

  1. 時間外労働の上限規制: 前述のとおり、罰則付きの上限が法定化
  2. 年次有給休暇の取得義務化: 年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について時季を指定して取得させる義務
  3. 同一労働同一賃金: 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の禁止
  4. 高度プロフェッショナル制度: 一定の年収要件を満たす高度な専門職について労働時間規制の適用を除外

フリーランス保護法(2024年施行)

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)が2024年に施行されました。フリーランスとして働く個人事業者を保護するため、発注者に対して取引条件の明示や報酬の支払期日に関するルールを定めています。

行政書士試験では、こうした最新の法改正も出題対象となりうるため、注意が必要です。

まとめ

労働法は、労働基準法と労働契約法を中心に押さえることが試験対策のポイントです。労働基準法の基本原則(均等待遇の差別禁止事由に性別が含まれないこと等)、労働時間・休憩・休日の数字(週40時間、1日8時間等)、解雇予告制度(30日前又は30日分の平均賃金)は頻出です。

労働契約法については、解雇権濫用法理(第16条)、雇止め法理(第19条)、無期転換ルール(第18条・通算5年超)を正確に理解しましょう。近年の働き方改革関連法による改正ポイント(時間外労働の上限規制、年次有給休暇の取得義務化等)も押さえておく必要があります。

確認問題

労働基準法第3条の均等待遇の原則では、国籍、信条、社会的身分又は性別を理由とする差別的取扱いが禁止されている。

○ 正しい × 誤り
解説
労働基準法第3条の均等待遇の原則で禁止される差別理由は「国籍」「信条」「社会的身分」の3つであり、「性別」は含まれていません。性別による差別は、労働基準法第4条(男女同一賃金の原則、賃金のみ)や男女雇用機会均等法で規制されています。
確認問題

同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者の申込みにより無期労働契約に転換される。

○ 正しい × 誤り
解説
労働契約法第18条により、同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者が申込みをすれば期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されます。使用者は当該申込みを承諾したものとみなされます。
確認問題

使用者が労働者を解雇する場合、少なくとも14日前に予告をしなければならない。

○ 正しい × 誤り
解説
使用者が労働者を解雇する場合、少なくとも「30日前」に予告をしなければなりません(労働基準法第20条)。30日前に予告しない場合は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。予告日数と解雇予告手当は合わせて30日分以上であれば足ります。
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