(公開 2026/01/15) / 行政法

行政不服審査法の審理員と審査会|改正の要点整理

2014年改正で導入された審理員制度と行政不服審査会の役割を徹底解説。審査請求の手続きの流れ、改正前との比較、試験頻出ポイントを体系的に整理します。

はじめに|行政不服審査法の大改正と審理員制度

行政不服審査法は、国民が行政庁の処分や不作為に対して不服を申し立てる手続きを定めた法律です。1962年に制定された旧法は約50年間にわたり大きな改正がなされていませんでしたが、2014年(平成26年)に全部改正が行われ、2016年(平成28年)4月1日から施行されました。

この改正の最大の目玉が審理員制度の導入と行政不服審査会の設置です。旧法では審査庁自身が審理を行う仕組みでしたが、公正性・透明性の向上を図るため、審理手続きを行う審理員と、第三者機関である審査会による二重のチェック体制が整備されました。

行政書士試験では、審理員の選任方法、審理手続きの流れ、行政不服審査会への諮問手続きが頻繁に出題されます。本記事では、改正のポイントを整理しながら、審理員制度と審査会の仕組みを体系的に解説します。出題は条文の細かい数値(期間・人数)と、「だれが・いつ・何をするのか」という手続の主体と順序を問う角度が中心です。記事全体を通じて、この2つの軸を意識して読み進めてください。

本記事で押さえる3つの柱

行政不服審査法の改正と審理員・審査会を理解するうえで、最初に全体の骨格を頭に入れておくと、個別の条文が格段に覚えやすくなります。

柱内容制度趣旨不服申立ての一元化異議申立てを廃止し審査請求に一本化国民にとっての分かりやすさ審理員制度処分に関与しない職員が審理を主宰審理段階での公正性行政不服審査会第三者機関が裁決前に答申裁決段階での客観性

審理員は「審査庁の内部による中立化」、審査会は「外部の第三者によるチェック」という役割分担になっており、両者は二段階で公正性を担保しています。この役割の違いが混同しやすく、試験の引っかけポイントになります。

2014年改正の全体像

改正の背景

旧行政不服審査法には以下のような問題点が指摘されていました。

  1. 公正性の問題: 審査庁自身が審理を行うため、身内に甘い判断になりがち
  2. 不服申立ての二重構造: 異議申立てと審査請求の使い分けが複雑
  3. 手続きの不透明さ: 口頭意見陳述の機会が不十分
  4. 審理期間の長期化: 標準審理期間の定めがなかった

これらの問題は、いずれも「使いやすく、公正で、迅速な」権利救済という行政不服審査制度本来の理念に反するものでした。行政不服審査法は、第1条が掲げるとおり、簡易迅速かつ公正な手続のもとで国民の権利利益の救済を図ることを目的とする法律です。

この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。
― 行政不服審査法 第1条第1項

ここで注意したいのは、行政不服審査法の救済範囲が「違法」だけでなく「不当」にも及ぶ点です。行政事件訴訟(取消訴訟)が違法性のみを審査対象とするのに対し、行政不服審査は当不当(裁量権の行使の妥当性)まで踏み込んで判断できます。この違いは行政救済法の全体像を問う問題で頻出です。

改正の主要ポイント

2014年改正では、以下の点が大きく変わりました。

項目旧法新法(現行法)不服申立ての種類異議申立て・審査請求・再審査請求審査請求に一元化(再調査の請求・再審査請求は例外的に存置)審理の担い手審査庁自身審理員(審査庁所属の職員から指名)第三者機関なし行政不服審査会(国)・第三者機関(地方)審査請求期間処分を知った日の翌日から60日処分があったことを知った日の翌日から3か月不服申立ての名称異議申立て+審査請求審査請求に一元化標準審理期間定めなし設定の努力義務(第16条)教示制度一部拡充(第82条)

旧法を「異議申立て・審査請求・再審査請求の三本立て」、新法を「審査請求中心+例外2つ」と整理しておくと混乱しにくくなります。

審査請求の一元化|異議申立ての廃止

旧法の二重構造

旧法では、処分庁に上級行政庁がある場合は「審査請求」、上級行政庁がない場合(処分庁自身に対する不服申立て)は「異議申立て」という使い分けがありました。国民にとっては、どちらの手続きを選ぶべきかわかりにくいという問題がありました。

新法の一元化

新法では、不服申立ての種類を原則として審査請求に一元化しました(行政不服審査法第2条)。異議申立ては廃止されました。

行政庁の処分に不服がある者は、第四条及び第五条第二項の定めるところにより、審査請求をすることができる。
― 行政不服審査法 第2条

ただし、以下の2つの手続きが例外的に設けられています。

  1. 再調査の請求(第5条): 個別法に定めがある場合に、処分庁に対して簡易な手続きで処分の見直しを求めることができる
  2. 再審査請求(第6条): 個別法に定めがある場合に、審査請求の裁決に不服がある者が更に上級庁に対して不服を申し立てることができる

再調査の請求の位置づけ

再調査の請求は、大量に行われる処分(国税関係処分・関税関係処分など)について、簡易・迅速に処分庁自身が見直しを行うために存置された制度です。次の点が出題ポイントになります。

  • 再調査の請求ができるのは、法律に再調査の請求ができる旨の定めがある場合に限られます(第5条第1項)。行政不服審査法だけを根拠に再調査の請求はできません。
  • 再調査の請求をするか審査請求をするかは、原則として請求人が自由に選択できます(自由選択主義)
  • ただし、いったん再調査の請求をしたときは、原則としてその決定を経た後でなければ審査請求はできません(第5条第2項本文)。これは再調査の請求が前置されるイメージで、例外として、決定を経ないことにつき正当な理由があるとき等は直ちに審査請求ができます。

再審査請求の位置づけ

再審査請求も法律に再審査請求ができる旨の定めがある場合に限りできる手続です(第6条第1項)。審査請求の裁決を経た後、さらに不服がある場合に行うもので、対象は原則として「原裁決」または「当該処分」です。再調査の請求と同様、行政不服審査法のみを根拠に利用できる手続ではない点を押さえてください。

審理員制度の仕組み

審理員とは

審理員とは、審査請求の審理手続きを行うために審査庁が指名する職員です(第9条第1項)。審査庁に所属する職員のうちから、処分に関与していない者が指名されます。

第四条又は他の法律若しくは条例の規定により審査請求がされた行政庁(…)は、審査庁に所属する職員(…)のうちから第三節に規定する審理手続(…)を行う者を指名するとともに、その旨を審査請求人及び処分庁等(…)に通知しなければならない。
― 行政不服審査法 第9条第1項(要旨)

審理員の最重要ポイントは、「審査庁の外部の第三者」ではなく「審査庁に所属する職員」である点です。中立性は、外部から人を連れてくるのではなく、「処分に関与していない内部職員」を充てることで確保しています。ここを「外部の有識者」「中立の第三者委員」などと言い換えた選択肢は誤りです。

審理員の除斥事由

以下の者は審理員に指名することができません(第9条第2項)。

  1. 審査請求に係る処分に関与した者又は審査請求に係る不作為に係る処分に関与し、若しくは関与することとなる者
  2. 審査請求人
  3. 審査請求人の配偶者、四親等内の親族又は同居の親族
  4. 審査請求人の代理人
  5. 前2号に掲げる者であった者
  6. 審査請求人の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人
  7. 審査請求に係る処分の趣旨を実現するために行われた一連の手続に関与した者

この除斥事由は、要するに「処分に関与した者」と「審査請求人と一定の身分関係・利害関係にある者」を排除する趣旨です。細かい号は丸暗記より、「処分に関与した人はダメ」「請求人本人・親族・代理人はダメ」という2グループで理解すると実戦的です。

審理員が不要な場合

以下の場合には審理員の指名は不要とされています(第9条第1項ただし書)。

  1. 審査庁が委員会その他の合議制の機関である場合(地方公共団体の議会・委員会等を含む)
  2. 審査庁が地方公共団体の長で、条例に基づく処分について条例に特別の定めがある場合
  3. 審理員によらない旨を法律に特別の定めがある場合

合議制の機関が審査庁である場合は、機関自体が複数人の合議で判断する仕組みであり、それ自体に一定の中立性が認められるため、改めて審理員を置く必要がないと考えられています。

審理員候補者名簿

審査庁となるべき行政庁は、審理員となるべき者の名簿を作成するよう努めるものとされています(第17条)。名簿を作成した場合は、適当な方法により公にしておかなければなりません。これは「努力義務」であって作成自体は義務ではない点が出題されやすいところです。

審理手続きの流れ

手続きの全体像

審理手続きは以下のような流れで進行します。主体(だれが行うか)を意識すると流れが整理できます。

  1. 審査請求の提起(審査請求人 → 審査庁)
  2. 審査庁による審理員の指名
  3. 審理員による審理手続きの実施
  4. 審理員意見書の作成・提出(審理員 → 審査庁)
  5. 行政不服審査会等への諮問(審査庁 → 審査会)
  6. 行政不服審査会等の答申(審査会 → 審査庁)
  7. 審査庁による裁決

「審査請求 → 審理員(意見書)→ 審査庁が審査会に諮問 → 答申 → 裁決」という骨格を一本で言えるようにしておくと、手続の順序を問う問題に強くなります。

審査請求書の提出と補正

審査請求は、原則として書面(審査請求書)でしなければなりません(第19条第1項)。ただし、他の法律または条例に口頭ですることができる旨の定めがある場合は口頭でも可能です。審査請求書に形式上の不備があるときは、審査庁は相当の期間を定めて補正を命じなければなりません(第23条)。いきなり却下するのではなく、まず補正の機会を与えるのが原則です。

審理手続きの具体的内容

審理員は以下の手続きを主宰します。

弁明書の提出要求(第29条): 審理員は処分庁等に対し、相当の期間を定めて弁明書の提出を求めます。弁明書が提出されたときは、審査請求人および参加人に送付します。

反論書・意見書の提出(第30条): 審査請求人は弁明書に対する反論書を提出できます。参加人は意見書を提出できます。審理員が期間を定めたときは、その期間内に提出します。

口頭意見陳述(第31条): 審査請求人又は参加人の申立てがあった場合、審理員は口頭意見陳述の機会を与えなければなりません。口頭意見陳述においては、申立人は審理員の許可を得て処分庁等に質問を発することができます。

審査請求人又は参加人の申立てがあつた場合には、審理員は、当該申立てをした者(…)に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。
― 行政不服審査法 第31条第1項

口頭意見陳述は「申立てがあれば原則として与えなければならない」点が重要です。審理員の裁量で省略できるわけではありません(申立人の所在不明等のやむを得ない事情がある場合を除く)。また、申立人による処分庁等への質問は「審理員の許可を得て」行う点も押さえましょう。

証拠書類等の提出(第32条): 審査請求人・参加人は証拠書類・証拠物を提出できます。処分庁等も書類その他の物件を提出できます。

物件の提出要求・参考人質問・鑑定・検証等(第33条〜第36条): 審理員は、書類その他の物件の提出要求、参考人への質問・陳述、鑑定の要求、検証、審理関係人への質問などを行うことができます。検証や審尋(質問)は、職権で行うことができ、ここに職権主義的な運用が表れています。

審理手続の計画的進行(第28条・第37条): 審理関係人および審理員は、簡易迅速かつ公正な審理の実現のため、審理において相互に協力するとともに、審理手続の計画的な進行を図らなければなりません。事件が複雑な場合等には、審理員が審理関係人を招集して審理手続の計画を策定することもできます。

提出書類等の閲覧・写し交付

審査請求人または参加人は、審理手続が終結するまでの間、審理員に対し、提出された書類その他の物件の閲覧またはその写し等の交付を求めることができます(第38条)。これは旧法にはなかった改正のポイントで、当事者が手続の透明性を確保するための重要な権利です。審理員は、第三者の利益を害するおそれがあると認めるとき等の正当な理由があるときでなければ、閲覧・交付を拒むことはできません。

審理手続の終結

審理員は、必要な審理を終えたと認めるときは、審理手続を終結するものとされます(第41条)。一定の場合には、審理関係人が書類等を提出しないとき等にも審理手続を終結できます。審理手続を終結したときは、その旨を審理関係人に通知します。

審理員意見書

審理員は、審理手続きを終結したときは、遅滞なく審理員意見書を作成し、速やかに事件記録とともに審査庁に提出しなければなりません(第42条)。審理員意見書には、審査庁がすべき裁決についての意見(認容・棄却・却下等の判断)とその理由が記載されます。

審理員意見書はあくまで審査庁への意見であり、裁決そのものではありません。審理員に裁決権限はなく、裁決を行うのは審査庁である点が重要です。審理員=審理を主宰して意見を述べる人、審査庁=最終的に裁決を下す人、という役割分担を明確に区別してください。

行政不服審査会の役割

行政不服審査会とは

行政不服審査会は、総務省に設置される第三者機関です(第67条)。審査庁の判断の客観性・公正性を担保するため、裁決の前に審査庁からの諮問に対して答申を行います。

総務省に、行政不服審査会(以下「審査会」という。)を置く。
― 行政不服審査法 第67条第1項

組織

項目内容委員9人常勤・非常勤非常勤が原則。ただし3人以内は常勤とすることができる任命両議院の同意を得て、総務大臣が任命任期3年(再任可能)合議体委員のうち会長が指名する3人で構成する合議体で審議(重要事件は委員全員=総会)

委員数「9人」、常勤「3人以内」、合議体「3人」、任期「3年」という数値は、混同を狙った選択肢が作られやすい箇所です。「委員9人・常勤は3人以内・合議体は3人・任期3年」とセットで覚えておきましょう。

諮問手続き

審査庁は、審理員意見書の提出を受けたときは、原則として行政不服審査会等に諮問しなければなりません(第43条第1項)。

ただし、以下の場合は諮問不要です(第43条第1項各号)。

  1. 審査請求が不適法であり却下する場合
  2. 審査請求の全部を認容し、当該審査請求に係る処分の全部を取り消し、または撤廃する場合等(審査請求人の主張を全面的に認める場合)
  3. 法律または条例に、審議会等の議を経るべき旨の定めがあり、当該議を経て処分がされた場合等
  4. 審査請求人が諮問を希望しない旨の申出をしている場合(参加人が反対しないときに限る)

ポイントは、「審査請求人にとって不利益な結論を出すとき(棄却など)には、原則として第三者のチェック=諮問が必要」という発想です。逆に、請求人の主張を全部認める(全部認容)場合や、請求人自身が諮問を望まない場合は、第三者チェックを省略しても請求人の権利保護に欠けるところがないため諮問不要となります。「全部認容=諮問不要」「一部認容・棄却=諮問必要」という対比は頻出です。

審査会の調査権限

審査会は、必要があると認める場合には、審査請求に係る事件に関し、審査関係人にその主張を記載した書面(主張書面)または資料の提出を求めること、適当と認める者に知っている事実の陳述や鑑定を求めること等の調査をすることができます(第74条)。また、審査関係人は審査会に対し、口頭で意見を述べる機会を求めることができ、審査会は申立てがあったときは原則としてこれを認めなければなりません(第75条)。

答申

行政不服審査会は、諮問を受けた事件について調査・審議を行い、答申を行います(第79条)。答申をしたときは、答申書の写しを審査請求人および参加人に送付するとともに、答申の内容を公表します(第79条)。

注意: 審査庁は答申に法的に拘束されるわけではありません。しかし、答申を尊重して裁決を行うことが期待されています。なお、裁決書には、審理員意見書または行政不服審査会等の答申書と異なる内容である場合には、その理由を示さなければならないとされています(第50条第1項第4号)。つまり、答申と異なる裁決をすること自体は可能ですが、その場合は理由を明示する必要があります。

裁決の手続と種類

審査会の答申を受けた審査庁は、遅滞なく裁決をしなければなりません。裁決は、行政救済法の到達点として重要なので、種類と効力を整理しておきます。

裁決の種類

種類内容却下裁決審査請求が不適法(期間徒過・対象不存在等)な場合棄却裁決審査請求に理由がない場合(処分を維持)事情裁決処分が違法・不当でも、取消し等が公共の福祉に適合しないとき、棄却したうえで違法・不当を宣言(第45条第3項)認容裁決審査請求に理由がある場合(処分の取消し・変更等)

不利益変更の禁止

認容裁決のうち処分を変更する場合、審査庁は審査請求人の不利益に処分を変更することはできません(第48条)。これは「不利益変更の禁止」と呼ばれ、不服を申し立てた者が、申立てによってかえって不利な立場に置かれることを防ぐ趣旨です。出題頻度が高い論点です。

裁決の効力(拘束力)

裁決は、関係行政庁を拘束します(第52条第1項)。処分が手続の違法・不当を理由に取り消された場合、処分庁は裁決の趣旨に従い改めて手続を行うことになります。裁決は、審査請求人だけでなく関係行政庁を拘束する点が、単なる行政内部の判断にとどまらない法的効果として重要です。

地方公共団体の第三者機関

地方の審査会(機関)

地方公共団体における審査請求については、国の行政不服審査会ではなく、条例で設置される第三者機関(執行機関の附属機関)が諮問先となります(第81条)。

地方公共団体は、行政不服審査法の規定の趣旨にのっとり、審査請求の審理の公正性を確保するため、条例で、審査庁の諮問に応じて答申をする機関を置くものとされています(第81条第1項)。ただし、不服申立ての件数が少ないこと等の事情により、機関を常設することが不適当または困難であるときは、事件ごとに機関を置くこととすることもできます(第81条第2項)。

共同設置等

地方公共団体は、その規模等に応じ、他の地方公共団体と共同して第三者機関を設置したり、他の地方公共団体の第三者機関に審議を委託したりするなど、柔軟な運用が認められています。

改正前との比較|旧法と新法の対照

不服申立ての構造

旧法: 処分庁に上級行政庁がある場合→審査請求、ない場合→異議申立て。二重構造で複雑。

新法: 審査請求に一元化。処分庁が最上級行政庁の場合でも審査請求。再調査の請求と再審査請求は個別法の定めがある場合に限定。

審理の公正性確保

旧法: 審査庁自身が審理を行う。処分に関与した職員が審理に携わることも制度上排除されていなかった。

新法: 審理員制度の導入により、処分に関与していない職員が審理を担当。さらに行政不服審査会等の第三者機関によるチェックが加わった。

審査請求期間

旧法: 処分を知った日の翌日から60日以内(主観的期間)、処分の日の翌日から1年以内(客観的期間)。

新法: 処分があったことを知った日の翌日から3か月以内(主観的期間)、処分があった日の翌日から1年以内(客観的期間)。

処分についての審査請求は、処分があつたことを知つた日の翌日から起算して三月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があつたことを知つた日の翌日から起算して一月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
― 行政不服審査法 第18条第1項

主観的期間が60日から3か月に延長された点は、試験でも頻出です。さらに、いずれの期間も「正当な理由があるとき」は例外として徒過しても審査請求ができる点(ただし書)に注意してください。

取消訴訟の出訴期間との比較

審査請求期間は、取消訴訟の出訴期間と混同しやすいため、対比して覚えると効果的です。

区分審査請求(行審法)取消訴訟(行訴法)主観的期間知った日の翌日から3か月知った日から6か月客観的期間あった日の翌日から1年あった日から1年例外正当な理由正当な理由

主観的期間が「審査請求=3か月」「取消訴訟=6か月」と異なる点が引っかけポイントです。

教示制度と審査請求前置主義

教示制度

行政庁は、不服申立てをすることができる処分を書面でする場合には、処分の相手方に対し、①不服申立てをすることができる旨、②不服申立てをすべき行政庁、③不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければなりません(第82条第1項)。これを怠った場合(不教示)や誤った教示をした場合には救済規定が設けられており、たとえば教示をしなかった場合、処分庁に不服申立書を提出すれば適法な審査請求とみなされる等の手当てがあります(第83条等)。教示制度は、国民が救済手続を確実に利用できるようにするための重要な仕組みです。

審査請求前置主義

処分の取消しの訴えは、原則として審査請求の裁決を経ずに提起できます(自由選択主義。行政事件訴訟法第8条第1項本文)。ただし、個別の法律に「審査請求に対する裁決を経た後でなければ取消訴訟を提起できない」旨の定めがある場合には、例外的に審査請求を先に行う必要があります(審査請求前置主義。同項ただし書)。「原則=自由選択、例外=前置」という関係は、行審法と行訴法の接点として頻出です。

頻出論点・よくある誤解

よくある誤解の整理

誤解正しい理解審理員は外部の第三者である審査庁所属の職員から指名される審理員が裁決を行う裁決は審査庁が行う。審理員は意見書を出すのみ審査会の答申に拘束力がある法的拘束力はない(異なる裁決には理由明示が必要)必ず審査会への諮問が必要全部認容・却下・請求人が希望しない場合等は不要再調査の請求はいつでもできる法律に定めがある場合に限る審査請求期間は60日改正により3か月に延長された審査請求は口頭が原則原則は書面。口頭は法律・条例に定めがある場合

試験での出題ポイント

  1. 審理員は審査庁所属の職員から指名: 外部の第三者ではなく、審査庁の職員であることに注意
  2. 処分に関与した者は審理員になれない: 除斥事由を正確に押さえる
  3. 審査請求期間は「3か月」: 旧法の60日、取消訴訟の6か月との混同に注意
  4. 行政不服審査会の答申に法的拘束力はない: 審査庁は答申を尊重するが、拘束されない(異なる裁決には理由明示)
  5. 諮問不要の場合を覚える: 特に「審査請求人が諮問を希望しない場合」「不適法で却下する場合」「全部認容する場合」
  6. 再調査の請求と再審査請求は個別法の根拠が必要: 行政不服審査法だけでは利用できない
  7. 審査会の数値: 委員9人・常勤3人以内・合議体3人・任期3年
  8. 不利益変更の禁止: 認容裁決で処分を変更する場合、請求人に不利益な変更はできない
  9. 口頭意見陳述: 申立てがあれば原則として与えなければならない
確認問題

審理員は、審査庁の外部から選任された第三者でなければならない。

○ 正しい × 誤り
解説
審理員は審査庁に所属する職員のうちから指名されます(行政不服審査法第9条第1項)。外部の第三者ではなく、審査庁の職員であることがポイントです。ただし、処分に関与した者など除斥事由に該当する者は指名できません。
確認問題

行政不服審査法の改正により、審査請求期間は処分があったことを知った日の翌日から3か月に延長された。

○ 正しい × 誤り
解説
旧法では処分を知った日の翌日から60日以内でしたが、2014年改正により3か月以内に延長されました(行政不服審査法第18条第1項)。国民の権利救済の機会を広げるための改正です。なお、取消訴訟の主観的出訴期間(6か月)と混同しないよう注意が必要です。
確認問題

審査庁は、行政不服審査会の答申に法的に拘束され、答申と異なる裁決をすることはできない。

○ 正しい × 誤り
解説
行政不服審査会の答申には法的拘束力はありません。審査庁は答申を尊重して裁決を行うことが期待されていますが、答申と異なる裁決をすることも法律上は可能です。ただし、答申と異なる裁決をする場合には、裁決書にその理由を示さなければなりません(行政不服審査法第50条第1項第4号)。
確認問題

審査庁は、審査請求人の主張を全部認めて処分の全部を取り消す場合であっても、行政不服審査会への諮問をしなければならない。

○ 正しい × 誤り
解説
審査請求の全部を認容し、処分の全部を取り消す場合等は、行政不服審査会への諮問は不要です(行政不服審査法第43条第1項)。請求人にとって有利な結論であり、第三者によるチェックを要しないためです。逆に、棄却など請求人に不利益な結論を出す場合には原則として諮問が必要となります。
確認問題

認容裁決により処分を変更する場合、審査庁は審査請求人にとって不利益に処分を変更することができる。

○ 正しい × 誤り
解説
審査庁は、審査請求人の不利益に当該処分を変更することはできません(行政不服審査法第48条、不利益変更の禁止)。不服を申し立てた者が、申立てによってかえって不利な立場に置かれることを防ぐ趣旨です。

まとめ

2014年の行政不服審査法の全部改正は、不服申立ての一元化(審査請求への一本化)、審理員制度の導入、行政不服審査会の設置、審査請求期間の延長(60日→3か月)を柱としています。

審理員は審査庁所属の職員から指名されますが、処分に関与した者は除外されるため、審理段階での公正性が一定程度担保されます。さらに、第三者機関である行政不服審査会による答申を通じて、裁決段階での客観性も確保される仕組みとなっています。審理員=意見書を出す人、審査庁=裁決を下す人、審査会=裁決前にチェックする第三者、という役割分担を区別して理解することが、本テーマ攻略の近道です。

試験対策としては、審理員の選任要件、諮問が不要となる場合、審査請求期間の変更、審査会の数値(委員9人・常勤3人以内・合議体3人・任期3年)、不利益変更の禁止を正確に押さえておくことが重要です。

行政救済法は、行政不服審査と行政事件訴訟を対比しながら学ぶと理解が深まります。あわせて以下の関連記事も確認しておきましょう。

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