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多数当事者の債権関係|不可分と連帯債権を整理

分割債権債務の原則(427条)から、不可分債権・不可分債務、連帯債権(432条)、連帯債務の全体像を横断整理。改正で新設された連帯債権との違いや絶対的効力事由の比較表で、行政書士試験の得点力を高めます。

はじめに|多数当事者の債権関係は全体像の把握がカギ

民法の債権総論の中でも、多数当事者の債権関係は登場する制度が多く、混同しやすい分野です。分割債権・分割債務、不可分債権・不可分債務、連帯債権・連帯債務と、似た名前の制度が並んでいるため、それぞれの違いを正確に区別できることが合格の条件です。

2020年の民法改正では、連帯債権(432条〜435条の2)が新設されるなど大きな変更がありました。本記事では、多数当事者の債権関係の全体像を横断的に整理し、特に改正で変わったポイントを中心に解説します。

分割債権・分割債務の原則(427条)

原則は分割

多数当事者の債権関係において、民法は分割主義を原則としています。

数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
――民法427条

つまり、3人が100万円を貸した場合、特約がなければ各自が等しい割合(約33万3333円ずつ)の債権を有するのが原則です。

分割の意味

分割債権・分割債務の場合、各債権者・各債務者は独立した権利義務を有します。ある債権者の債権が時効消滅しても、他の債権者の債権には影響しません。

不可分債権(428条)

不可分債権とは

不可分債権とは、債権の目的が性質上不可分である場合に、複数の債権者が存在する債権関係をいいます。

次款(連帯債権)の規定(第四百三十二条から第四百三十五条の二まで)は、債権の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債権者があるときについて準用する。
――民法428条

改正民法では、不可分債権の規定は連帯債権の規定を準用する形に整理されました。

具体例: A・B・Cの3人が共同でDに対して1台の自動車の引渡しを請求する場合。自動車は分割できないため、不可分債権となります。

不可分債権の効力

連帯債権の規定が準用されるため、以下の効力があります。

  • 各債権者は、全ての債権者のために全部の履行を請求できる
  • 債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行できる

不可分債務(430条)

不可分債務とは

不可分債務とは、債務の目的が性質上不可分である場合に、複数の債務者が存在する債務関係をいいます。

第四款(連帯債務)の規定(第四百三十六条から第四百四十一条まで)は、債務の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債務者があるときについて準用する。
――民法430条

不可分債務には連帯債務の規定が準用されます。

具体例: A・B・Cの3人がDに対して1台の自動車を引き渡す債務を負う場合。

連帯債権(432条〜435条の2)

連帯債権とは

連帯債権とは、数人の債権者が、それぞれ独立に全部の給付を請求できる債権であり、そのうちの一人が弁済を受ければ他の債権者の債権も消滅するものです。

数人が連帯債権を有する場合において、そのうちの一人の連帯債権者に対し、又はその一人の連帯債権者から、弁済又は弁済と同視すべき行為があったときは、他の連帯債権者の権利も、消滅する。
――民法432条(趣旨を要約)

連帯債権は2020年の民法改正で新たに条文化された制度です。改正前は不可分債権の中に含まれていた概念が独立して規定されました。

連帯債権と不可分債権の違い

項目連帯債権不可分債権不可分性の根拠法律の規定または当事者の意思性質上の不可分性可分になった場合引き続き連帯債権として存続分割債権となる(431条)具体例連帯して100万円の債権を有する共同で1台の車の引渡しを請求

最大の違いは、目的が可分になった場合の処理です。不可分債権は不可分性が失われると分割債権になりますが、連帯債権は当事者の意思に基づくため、目的が可分になっても連帯関係が維持されます。

連帯債権における絶対的効力事由

連帯債権において、一人の債権者に生じた事由が他の債権者にも影響する(絶対的効力)のは以下の場合です。

事由効力条文弁済・代物弁済等全員の債権が消滅432条更改全員の債権が消滅433条相殺全員の債権が消滅434条免除内部的負担部分の範囲で効力433条類推混同弁済と同視435条

上記以外の事由(たとえば消滅時効の完成)は、相対的効力にとどまり、その債権者にのみ効力が生じます(435条の2)。

連帯債務(436条〜445条)

連帯債務とは

連帯債務とは、数人の債務者が、同一の内容の給付について、各自独立に全部の給付をなすべき債務を負い、そのうちの一人が弁済すれば全員の債務が消滅するものです。

債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
――民法436条

連帯債務の絶対的効力事由(改正後)

2020年の改正で、連帯債務における絶対的効力事由は大幅に縮小されました。

事由改正前改正後弁済・代物弁済等絶対的効力絶対的効力更改絶対的効力絶対的効力(438条)相殺絶対的効力絶対的効力(439条)混同絶対的効力絶対的効力(440条)請求絶対的効力相対的効力免除絶対的効力相対的効力時効の完成絶対的効力相対的効力

改正により、請求・免除・時効の完成が絶対的効力事由から外されたことが最大の変更点です。

連帯債務者の一人について生じた事由は、次条から第四百四十条までに規定する場合を除き、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。
――民法441条本文

ただし、当事者間の合意により、請求等に絶対的効力を認めることは可能です(441条ただし書)。

相殺の特則(439条)

連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合、その連帯債務者が相殺を援用しない間は、他の連帯債務者はその連帯債務者の負担部分の限度で履行を拒絶できます(439条2項)。

連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用しないときは、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
――民法439条2項

改正前は「他の連帯債務者も相殺を援用できる」としていましたが、改正後は「履行を拒絶できる」に変更されました。

求償権

連帯債務者間の求償(442条)

連帯債務者の一人が弁済等により共同の免責を得た場合、他の連帯債務者に対してその負担部分について求償権を有します

連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。
――民法442条1項

求償の要件と通知

通知条文効果事前通知なく弁済443条1項他の連帯債務者が債権者に対抗できた事由をもって求償に対抗される事後通知なく弁済443条2項他の連帯債務者が善意で弁済した場合、その弁済を有効とみなせる

事前通知と事後通知の双方を怠った場合の処理は試験で頻出です。

不可分債務と連帯債務の比較

項目不可分債務連帯債務不可分性の根拠性質上の不可分性法律の規定または当事者の意思可分になった場合分割債務となる連帯債務として存続絶対的効力事由連帯債務の規定を準用更改・相殺・混同求償権あり(連帯債務の規定を準用)あり(442条)

4類型の全体比較表

項目分割債権債務不可分債権債務連帯債権連帯債務各自の権利義務一部のみ全部全部全部不可分性の根拠可分性質上不可分意思・法律意思・法律絶対的効力事由―準用限定的限定的可分になった場合―分割に移行連帯を維持連帯を維持

まとめ

多数当事者の債権関係は、以下のポイントを押さえれば整理できます。

  • 原則は分割主義(427条)
  • 不可分債権・不可分債務: 性質上不可分な場合に成立、それぞれ連帯債権・連帯債務の規定を準用
  • 連帯債権: 改正で新設。法律の規定または当事者の意思に基づく
  • 連帯債務: 改正で絶対的効力事由が縮小。請求・免除・時効は相対的効力に変更

改正前との比較が試験で問われるため、「改正前は絶対的効力だったが改正後は相対的効力になった事由」を正確に覚えましょう。

確認問題

2020年の民法改正後、連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても効力を生じる。

○ 正しい × 誤り
解説
改正前は連帯債務者の一人に対する請求が他の連帯債務者にも効力を生じる(絶対的効力)としていましたが、改正後は相対的効力に変更されました(441条本文)。ただし、当事者間の合意により絶対的効力を認めることは可能です(441条ただし書)。
確認問題

不可分債権は、その目的が可分になった場合でも、引き続き不可分債権として扱われる。

○ 正しい × 誤り
解説
不可分債権は性質上の不可分性に基づく制度であるため、目的が可分になった場合には分割債権となります(431条)。これに対し、連帯債権は法律の規定または当事者の意思に基づく制度であるため、目的が可分になっても連帯関係は維持されます。
確認問題

連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合、他の連帯債務者は、その負担部分の限度で履行を拒絶できる。

○ 正しい × 誤り
解説
民法439条2項により、連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用しないときは、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は債権者に対して債務の履行を拒むことができます。改正前は「相殺を援用できる」でしたが、改正後は「履行を拒絶できる」に変更されました。
#債権 #択一式 #民法

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