(公開 2026/01/20) / 行政法

当事者訴訟とは|実質的当事者訴訟の活用と判例

当事者訴訟の種類(形式的・実質的)と活用場面を解説。2004年改正による確認訴訟の明文化、在外邦人選挙権訴訟等の重要判例を整理し、試験頻出ポイントをまとめます。

はじめに|当事者訴訟は行政訴訟の「もう一つの柱」

行政事件訴訟法は、行政事件訴訟を抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟の4種類に分類しています(第2条)。行政書士試験では取消訴訟を中心とする抗告訴訟の出題が多いですが、当事者訴訟も重要な出題対象です。

特に2004年(平成16年)の行政事件訴訟法改正では、実質的当事者訴訟としての確認訴訟の活用が明文化され、その重要性が飛躍的に高まりました。処分性が認められない行政活動に対する救済手段として、当事者訴訟の活用場面は広がっています。

当事者訴訟は、一言でいえば「対等な当事者間の法律関係を争う訴訟」です。これに対し抗告訴訟は「行政庁の優越的地位に基づく公権力の行使を争う訴訟」です。この対比こそが、当事者訴訟を理解する出発点になります。抗告訴訟が「行政庁 vs 私人」という縦の関係を前提とするのに対し、当事者訴訟は「当事者 vs 当事者」という横の関係を前提とします。だからこそ、後述するように出訴期間の制限がなく、仮の救済の方法も異なってくるのです。

本記事では、形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟の違いを明確にし、2004年改正の内容と重要判例、訴訟要件、そして抗告訴訟との使い分けまでを横断的に解説します。

行政事件訴訟の全体像のなかの当事者訴訟

当事者訴訟の位置づけを誤らないために、まず行政事件訴訟全体の分類を確認します。行政事件訴訟法第2条は次のように定めます。

この法律において「行政事件訴訟」とは、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟及び機関訴訟をいう。
― 行政事件訴訟法 第2条

この4類型は、大きく主観訴訟(自己の権利利益の保護を目的とする訴訟)と客観訴訟(法規の適正な適用という客観的な利益の確保を目的とする訴訟)に分けられます。

区分訴訟類型性質概要主観訴訟抗告訴訟(第3条)公権力の行使に対する不服取消訴訟・無効等確認訴訟・不作為違法確認訴訟・義務付け訴訟・差止訴訟主観訴訟当事者訴訟(第4条)対等当事者間の法律関係形式的当事者訴訟・実質的当事者訴訟客観訴訟民衆訴訟(第5条)自己の法律上の利益と無関係選挙訴訟・住民訴訟など客観訴訟機関訴訟(第6条)国・公共団体の機関相互の権限争い地方公共団体の長と議会の争いなど

当事者訴訟は、抗告訴訟と並んで主観訴訟に位置づけられます。つまり、原告自身の権利利益の保護救済を目的とする点では抗告訴訟と共通します。違いは「争いの構造」にあります。抗告訴訟が処分という公権力の行使を取り消したり差し止めたりするのに対し、当事者訴訟は処分を媒介とせず、当事者間の法律関係そのものを審判の対象とします。

なお、民衆訴訟・機関訴訟は「法律に定める場合において、法律に定める者に限り」提起できる(第42条)点も併せて押さえておくと、4類型の性格の違いがクリアになります。

当事者訴訟の定義と種類

行政事件訴訟法第4条

行政事件訴訟法第4条は、当事者訴訟を以下のように定義しています。

この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。
― 行政事件訴訟法 第4条

この条文は一文で読みづらいですが、「及び」という接続詞を境に前半・後半の2つの訴訟類型を定義しています。

  • 前半部分(〜当事者の一方を被告とするもの)=形式的当事者訴訟
  • 後半部分(公法上の法律関係に関する確認の訴え〜)=実質的当事者訴訟

この「及び」の切れ目を見抜けるかどうかが、条文問題の正誤を分けます。択一で第4条の条文をそのまま問われることがあるため、後半に「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」という語順が来ることまで記憶しておくと安全です。

形式的当事者訴訟

形式的当事者訴訟とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものです。

本来は抗告訴訟(取消訴訟等)として行政庁を被告とすべきところ、訴訟の便宜から、法令の規定により当事者の一方を被告とする形が採られる訴訟です。「形式的」と呼ばれるのは、実質は処分(公権力の行使)に起因する争いでありながら、形式的に当事者間の争いとして構成されているからです。

なぜこのような特殊な訴訟が用意されているのでしょうか。損失補償額の争いのような場合、紛争の中身は「いくら払うか」という当事者間の利害調整であり、補償を決めた行政の処分そのものの適否を争う実益が乏しいことがあります。それなら、行政庁を相手に処分を取り消すよりも、利害が直接対立する相手方(起業者または土地所有者)を被告として金額を争わせた方が、紛争の一回的解決にかなう。この実質に着目したのが形式的当事者訴訟です。

具体例:

根拠法訴訟の内容被告土地収用法第133条収用に伴う損失補償の額に関する訴え起業者または土地所有者・関係人特許法第179条ただし書 等特許の無効審決等のうち当事者対立構造をとるもの相手方当事者
  • 土地収用法に基づく損失補償に関する訴訟(土地収用法第133条): 収用委員会の裁決のうち損失補償に関する部分に不服がある場合、収用委員会(行政庁)を被告とするのではなく、起業者または土地所有者・関係人を被告として訴えを提起します。
  • 特許権等に関する訴訟: 特許無効審判の審決取消訴訟などで、当事者対立構造をとるものが該当します。

形式的当事者訴訟では、処分自体の違法性を正面から争うのではなく、処分により形成された法律関係の内容(金額等)を争います。土地収用法のケースでは、収用裁決のうち「権利取得(収用するか否か)」を争う部分は通常の抗告訴訟(取消訴訟)であり、「損失補償の額」を争う部分が形式的当事者訴訟である、という裁決の二段階構造を押さえると理解が深まります。

形式的当事者訴訟の重要ポイント

形式的当事者訴訟は「法令の規定により当事者の一方を被告とする」点が条文上の要件です。つまり、当事者を被告とできるのは、土地収用法第133条のような個別法に明文の根拠がある場合に限られます。原告が任意に「行政庁ではなく相手方当事者を被告にしたい」と選べるわけではありません。ここは引っかけ問題で問われやすい論点です。

また、形式的当事者訴訟には個別法で出訴期間が定められていることが多い点も特徴です(土地収用法第133条第2項は、裁決書の正本の送達を受けた日から6か月以内)。後述する実質的当事者訴訟に出訴期間の制限がないこととの対比で覚えると効果的です。

実質的当事者訴訟

実質的当事者訴訟とは、公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟です。行政事件訴訟法第4条後段に規定されています。

抗告訴訟とは異なり、行政庁の処分を前提とせず、公法上の法律関係そのものを直接の審判対象とします。「公法上の」という限定があるため、純然たる私法上の権利義務(売買代金請求など)を争う民事訴訟とは区別されます。もっとも、公法・私法の区別自体が相対化している現代では、どちらに当たるか微妙なケースもあります。

具体例:

  • 公法上の当事者間の権利義務の確認を求める訴訟
  • 公務員の地位の確認を求める訴訟
  • 国籍の確認を求める訴訟
  • 公法上の金銭債権(公務員の俸給請求、社会保障給付の支払請求など)に基づく給付を求める訴訟
  • 公務員の俸給・退職金など公法上の金銭の支払を求める給付訴訟

実質的当事者訴訟は、求める判決の内容によって、さらに確認訴訟・給付訴訟・形成訴訟に分かれます。2004年改正で特に脚光を浴びたのは、このうち確認訴訟です。

給付訴訟としての実質的当事者訴訟

確認訴訟ばかりが注目されますが、公務員の未払俸給請求のような公法上の金銭給付を求める訴訟も実質的当事者訴訟の典型例です。これは取消訴訟のような出訴期間の縛りがなく、消滅時効の問題として処理されます。試験では「実質的当事者訴訟=確認訴訟」と狭く理解していると足をすくわれることがあるため、給付・形成も含む幅広い概念であることを意識してください。

形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟の違い(比較表)

本記事の中心的な検索意図である「形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟の違い」を、一覧で整理します。

比較項目形式的当事者訴訟実質的当事者訴訟条文上の位置第4条前段第4条後段審判の対象処分・裁決により形成された法律関係の内容(金額等)公法上の法律関係そのもの処分の存在前提とする(実質は処分起因の争い)前提としない被告法令の規定により定まる相手方当事者国または公共団体(法律関係の主体)提起の根拠個別法の明文の規定が必要一般的に提起可能(明文の根拠不要)出訴期間個別法で定められることが多い(例:6か月)制限なし(時効の問題のみ)代表例土地収用法上の補償額の訴え在外邦人選挙権確認訴訟・国籍確認訴訟性質の比喩「中身は抗告訴訟、形は当事者訴訟」「対等当事者間の純粋な公法上の争い」

両者に共通するのは、いずれも当事者訴訟であり主観訴訟であること、そして取消訴訟の規定の一部が準用される(後述)ことです。違いを覚えるコツは、「形式的=処分が背後にある/実質的=処分を介さない」という対比軸を一本通しておくことです。

2004年改正と確認訴訟の明文化

改正の背景

2004年改正前は、実質的当事者訴訟としての確認訴訟の活用が十分ではありませんでした。処分性の認められない行政活動に対して、取消訴訟を提起できない場合の救済手段が不明確だったのです。

行政の活動形式は、伝統的な「処分」だけでなく、行政指導・行政計画・行政立法・通達・公表など多様化しています。これらは処分性が否定されることが多く、取消訴訟の土俵に乗りません。しかし、それによって国民の権利義務に重大な影響が及ぶことは現実にあります。そこで、抗告訴訟(処分の取消し)に代わる救済の受け皿として、確認訴訟の活用が期待されるようになりました。

改正の内容

2004年改正では、行政事件訴訟法第4条後段に「公法上の法律関係に関する確認の訴え」という文言が明示されました。

  • 改正前の第4条後段: 「公法上の法律関係に関する訴訟」
  • 改正後の第4条後段: 「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」

「確認の訴え」を明文で例示することにより、実質的当事者訴訟としての確認訴訟が積極的に活用されることが期待されました。ここで重要なのは、この改正が新しい訴訟類型を創設したわけではないという点です。確認訴訟は改正前から実質的当事者訴訟の一種として提起可能でした。改正は、その活用を後押しするための確認的・例示的な規定にすぎません。この点は択一で繰り返し問われています(後掲クイズ参照)。

改正の意義

この改正により、以下のような場面で実質的当事者訴訟としての確認訴訟が活用できるようになりました。

  1. 処分性が認められない行政活動に対する救済: 行政契約、行政計画、通達等
  2. 将来の法律関係の確認: 将来の処分の予防的な救済
  3. 公法上の地位の確認: 公務員の地位、国籍の確認等

確認訴訟は、後述する差止訴訟や予防的義務付け訴訟(無名抗告訴訟・法定抗告訴訟)と並んで、事前救済・予防的救済の機能を担う点で実務上の意義が大きいとされています。処分を待ってから取り消すのではなく、処分がされる前に「自分にはこういう義務はない」「自分はこういう地位にある」ことを確定させる、という使い方ができるのです。

重要判例|在外邦人選挙権訴訟(最大判平成17年9月14日)

事案の概要

在外日本人(海外に居住する日本国民)が、公職選挙法上、在外選挙制度の対象が比例代表選出議員の選挙に限定されており、小選挙区選出議員の選挙について投票する機会が与えられていないことが、憲法15条1項、43条1項、44条ただし書に違反すると主張して訴訟を提起した事件です。

最高裁の判断

最高裁大法廷は、以下の判断を示しました。

違憲判断: 在外日本人の小選挙区選挙における投票を認めないことは、憲法15条1項、43条1項、44条ただし書に違反する。

確認訴訟の活用: 本判決で最も注目されるのは、原告が次回の衆議院議員総選挙の小選挙区選出議員の選挙において投票をすることができる地位にあることの確認を求めた点について、最高裁がこれを適法と認めたことです。

本件の確認請求は、(中略)公法上の法律関係に関する確認の訴えとして、確認の利益が認められ、適法であるというべきである。
― 最大判平成17年9月14日(趣旨)

判決のポイント

  1. 実質的当事者訴訟としての確認訴訟の活用例: 2004年改正後の確認訴訟の代表的な活用例
  2. 公法上の地位の確認: 選挙権を行使できる地位の確認が認められた
  3. 立法不作為の違憲確認: 法律の規定が憲法に違反することの確認を間接的に得る手段

この判決が当事者訴訟論で持つ意義

本判決は、2004年改正で例示された確認訴訟が実際に最高裁で適法と認められた最初の代表例として位置づけられます。選挙権という権利は、選挙のたびに行使が問題となるため、過去の特定選挙について争っても紛争の抜本的解決にならず、将来の選挙で投票できる地位の確認を求めることに即時確定の利益が認められました。「過去の権利侵害の事後的救済」ではなく「将来に向けた地位の確認」という、確認訴訟ならではの機能が発揮された事案として理解しておきましょう。

加えて、本判決は国家賠償請求も併せて認容しており、立法不作為が国家賠償法上違法と評価される例外的な場面を示した点でも重要です。当事者訴訟の論点としては確認訴訟の適法性、憲法・国家賠償の論点としては立法不作為の違憲・違法、という二面性を持つ判例である点を意識すると、横断学習に役立ちます。

その他の重要判例

国籍確認訴訟(最大判平成20年6月4日)

フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれた非嫡出子について、国籍法の準正要件(父母の婚姻)を満たさないことを理由に日本国籍が認められなかった事案です。

最高裁は、国籍法第3条1項の準正要件が憲法14条1項に違反するとした上で、日本国籍を有することの確認を認めました。これは実質的当事者訴訟としての確認訴訟(国籍確認訴訟)の活用例です。国籍という公法上の地位の確認が、当事者訴訟の枠組みで争われた典型例として押さえてください。

在外日本人最高裁裁判官国民審査訴訟(最大判令和4年5月25日)

在外日本人が最高裁判所裁判官の国民審査に投票する権利を有することの確認を求めた事件です。最高裁は、在外日本人に国民審査権の行使を認めない最高裁判所裁判官国民審査法の規定は憲法に違反するとし、確認訴訟を適法と認めました。

この判決は、平成17年の在外邦人選挙権訴訟の判断枠組みを国民審査権に及ぼしたものと位置づけられます。比較的新しい判例であり、令和以降の試験で出題が想定されるため、「選挙権(平成17年)→国民審査権(令和4年)」という流れで一緒に記憶しておくと効率的です。

公務員の免職処分と地位確認

公務員が違法な免職処分を受けた場合、その免職が処分に当たるときは取消訴訟によるのが原則です。一方、処分性が認められない事実上の地位の否認や、処分の無効を前提とする場合などには、実質的当事者訴訟として公務員たる地位の確認を求めることが考えられます。取消訴訟と当事者訴訟のどちらによるべきかは、争いの対象に処分性があるか(取消訴訟の排他的管轄が及ぶか)によって決まります。

在外邦人関連訴訟の系譜(整理)

判例確認の対象結論最大判平成17年9月14日次回総選挙の小選挙区で投票できる地位確認の訴え適法・違憲最大判平成20年6月4日日本国籍を有すること国籍確認認容・準正要件違憲最大判令和4年5月25日国民審査で投票できる地位確認の訴え適法・違憲

当事者訴訟の訴訟要件と準用規定

取消訴訟規定の準用(第41条)

当事者訴訟には、取消訴訟に関する規定の一部が準用されます。行政事件訴訟法第41条第1項は、おおむね次の規定を準用しています。

  • 第23条(訴訟参加・行政庁の訴訟参加)
  • 第24条(職権証拠調べ)
  • 第33条第1項(取消判決の拘束力)
  • 第35条(訴訟費用の裁判の効力)
  • ほか関連規定

ここで重要なのは、準用される規定と準用されない規定の区別です。当事者訴訟には、取消訴訟の中核的な要件である処分性・原告適格(第9条)・狭義の訴えの利益・被告適格(第11条)・出訴期間(第14条)・執行停止(第25条)などは準用されません。これらが準用されないことが、当事者訴訟の性格(対等当事者間の訴訟)を裏づけています。準用関係はそのまま条文知識として問われることがあるため、「準用される/されない」の線引きを意識してください。

被告

実質的当事者訴訟の被告は、原則として国または公共団体です。取消訴訟の被告適格を定める第11条は準用されないため、被告は当事者間の法律関係に応じて、その法律関係の主体(権利義務の帰属主体)が誰かによって定まります。

形式的当事者訴訟の被告は、前述のとおり法令の規定により当事者の一方が被告となります。

管轄

当事者訴訟の管轄については、行政事件訴訟法第41条第2項が第12条を準用しており、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所などに提起できます。

出訴期間

実質的当事者訴訟には、取消訴訟のような出訴期間の制限はありません。これは、実質的当事者訴訟が処分の効力を争うものではなく、公法上の法律関係そのものを争うものだからです。給付請求の場合は、出訴期間ではなく消滅時効の問題として処理されます。

これに対し、形式的当事者訴訟には、個別法で出訴期間が定められている場合があります(例: 土地収用法第133条第2項は、裁決書正本の送達日から6か月以内)。同じ当事者訴訟でも出訴期間の扱いが異なる点は、引っかけのポイントです。

確認の利益

実質的当事者訴訟としての確認訴訟を提起するためには、民事訴訟と同様に確認の利益が必要です。確認の利益は、以下の要素から判断されます。

  1. 対象選択の適切性: 確認を求める対象が、現在の権利・法律関係であること(過去や将来の事実の確認は原則として不適切)
  2. 方法選択の適切性: 確認訴訟によることが紛争解決の手段として適切・有効であること(給付訴訟などより直接的な手段があれば、そちらが優先される)
  3. 即時確定の利益: 現に原告の権利・地位に危険・不安が存在し、それを除去するために判決による確認が必要・有効であること

在外邦人選挙権訴訟は、まさにこの確認の利益(特に即時確定の利益)が認められた事例として位置づけられます。

抗告訴訟との関係

処分性がある場合

行政庁の処分に処分性が認められる場合、原則として抗告訴訟(取消訴訟等)によるべきとされています。処分性がある場合に、あえて実質的当事者訴訟としての確認訴訟を提起することの可否については議論がありますが、取消訴訟の排他的管轄が及ぶ範囲では、取消訴訟によるべきとするのが通説的見解です。処分の効力は、取消訴訟(または無効等確認訴訟)という所定のルートでしか覆せない、という公定力・取消訴訟の排他的管轄の考え方が前提にあります。

処分性がない場合

処分性が認められない行政活動(行政契約、行政計画、行政指導等)に対しては、取消訴訟を提起できないため、実質的当事者訴訟としての確認訴訟が有効な救済手段となります。当事者訴訟は、抗告訴訟という入口に乗れない紛争を受け止める「受け皿」としての役割を果たすのです。

補充性の関係

実質的当事者訴訟には、(差止訴訟や予防的な無名抗告訴訟で問題となるような)厳格な補充性の要件はありません。ただし、確認の利益の判断における「方法選択の適切性」を通じて、他により適切な訴訟形態(給付訴訟・抗告訴訟など)がある場合には、確認訴訟の利益が否定されることがあります。事実上の調整が確認の利益のレベルで行われる、と理解すると整理しやすいでしょう。

当事者訴訟における仮の救済

仮処分の可否

行政事件訴訟法第44条は、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については民事保全法に規定する仮処分をすることができないと規定しています。

行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法(平成元年法律第九十一号)に規定する仮処分をすることができない。
― 行政事件訴訟法 第44条

しかし、当事者訴訟は公権力の行使に対する訴訟ではないため、当事者訴訟については民事保全法上の仮処分が可能です。抗告訴訟では「執行停止(第25条)」という行政事件訴訟法独自の仮の救済制度が用意され、その代わりに仮処分が排除されているのと対照的です。

訴訟類型仮の救済の方法抗告訴訟(処分・公権力の行使)執行停止(第25条)/仮の義務付け・仮の差止め(第37条の5)。民事保全法の仮処分は不可(第44条)当事者訴訟民事保全法に規定する仮処分が可能

「当事者訴訟では仮処分ができる/抗告訴訟では執行停止のみで仮処分はできない」という対比は、択一の定番です。仮処分の可否を、訴訟の対象が「公権力の行使か否か」で振り分ける思考を身につけてください。

頻出論点・出題ポイントの総整理

行政書士試験で当事者訴訟が問われるときの「角度」を、過去の出題傾向を踏まえて整理します。

  1. 形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟の区別: 形式的は処分の法律関係(金額等)、実質的は公法上の法律関係そのもの。第4条の「及び」を境に前後で読み分ける。
  2. 2004年改正で確認訴訟が「明文化」された: ただし新類型の創設ではなく、確認的・例示的規定にすぎない(最頻出の引っかけ)。
  3. 在外邦人選挙権訴訟(平成17年): 確認訴訟の代表的活用例。将来の地位の確認・即時確定の利益。
  4. 出訴期間の有無: 実質的当事者訴訟は出訴期間の制限なし。形式的当事者訴訟は個別法で定めあり(土地収用法は6か月)。
  5. 仮処分が可能: 抗告訴訟と異なり、当事者訴訟では民事保全法の仮処分が認められる(第44条の反対解釈)。
  6. 確認の利益が必要: 対象選択・方法選択・即時確定の利益の3要素。
  7. 取消訴訟規定の準用関係: 第41条で一部準用。処分性・原告適格・被告適格・出訴期間・執行停止は準用されない。
  8. 被告: 実質的当事者訴訟は国または公共団体。形式的当事者訴訟は法令の定める相手方当事者。

よくある誤解の整理

よくある誤解正しい理解確認訴訟は2004年改正で創設された新しい訴訟類型だ改正前から提起可能。改正は例示・確認的規定にすぎない形式的当事者訴訟も自由に当事者を被告にできる個別法の明文の規定がある場合に限られる当事者訴訟にも出訴期間がある実質的当事者訴訟には出訴期間の制限はない(形式的は個別法による)当事者訴訟でも仮処分はできない当事者訴訟では仮処分が可能。仮処分が禁止されるのは公権力の行使(抗告訴訟)取消訴訟の規定は当事者訴訟に全面準用される一部のみ準用(第41条)。原告適格・被告適格・出訴期間・執行停止は準用されない実質的当事者訴訟=確認訴訟だけ給付訴訟・形成訴訟も含む。公務員の俸給請求などが給付訴訟の例

関連論点|抗告訴訟・仮の救済との横断整理

当事者訴訟は単独で問われるより、抗告訴訟の各類型や仮の救済と絡めて問われることが多い分野です。次の3点をセットで押さえると、行政救済法全体の理解が安定します。

  • 取消訴訟との対比: 処分性・原告適格・出訴期間という「取消訴訟の三大関門」が、当事者訴訟には存在しないこと。
  • 無効等確認訴訟・不作為違法確認訴訟との区別: これらは抗告訴訟(処分を対象とする訴訟)であり、当事者訴訟の「確認の訴え」とは別物。名前に「確認」が付くからといって当事者訴訟と混同しないこと。
  • 差止訴訟・義務付け訴訟との機能比較: いずれも事前救済・予防的救済の手段。処分を対象とするなら抗告訴訟(差止・義務付け)、処分を介さない法律関係なら当事者訴訟(確認)という振り分け。
確認問題

実質的当事者訴訟としての確認訴訟は、2004年の行政事件訴訟法改正前には存在しなかった新しい訴訟類型である。

○ 正しい × 誤り
解説
実質的当事者訴訟は2004年改正前から存在していました。改正により変わったのは、第4条後段に「公法上の法律関係に関する確認の訴え」という文言が明示された点です。確認訴訟の活用を促進するための例示・確認的な規定が追加されたのであり、新しい訴訟類型が創設されたわけではありません。
確認問題

在外邦人選挙権訴訟(最大判平成17年9月14日)において、最高裁は公法上の法律関係に関する確認の訴えとして選挙権を行使する地位の確認を認めた。

○ 正しい × 誤り
解説
最大判平成17年9月14日は、在外日本人が次回の総選挙の小選挙区選出議員の選挙において投票をすることができる地位にあることの確認請求を、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法と認めました。実質的当事者訴訟としての確認訴訟の代表的な活用例です。
確認問題

当事者訴訟においては、行政庁の処分に対する抗告訴訟の場合と異なり、民事保全法に規定する仮処分をすることができる。

○ 正しい × 誤り
解説
行政事件訴訟法第44条は行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為について仮処分を禁止していますが、当事者訴訟は公権力の行使に対する訴訟ではないため、仮処分が認められます。抗告訴訟では執行停止(第25条)が用意される一方で仮処分が排除されているのと対照的です。
確認問題

形式的当事者訴訟は、原告が行政庁を被告とするか相手方当事者を被告とするかを自由に選択して提起することができる。

○ 正しい × 誤り
解説
形式的当事者訴訟は、「法令の規定により」その法律関係の当事者の一方を被告とするもの(行政事件訴訟法第4条前段)です。当事者を被告とできるのは土地収用法第133条のような個別法に明文の根拠がある場合に限られ、原告が任意に被告を選べるわけではありません。
確認問題

実質的当事者訴訟には取消訴訟の出訴期間(行政事件訴訟法第14条)に関する規定が準用され、原則として処分を知った日から6か月以内に提起しなければならない。

○ 正しい × 誤り
解説
実質的当事者訴訟には取消訴訟の出訴期間の規定は準用されず、出訴期間の制限はありません。公法上の法律関係そのものを争うものであり、処分の効力を争うものではないためです。給付請求の場合は消滅時効の問題として扱われます。なお、形式的当事者訴訟では個別法で出訴期間が定められることがあります(土地収用法第133条第2項は6か月)。

まとめ

当事者訴訟は、抗告訴訟と並ぶ行政訴訟の柱であり、対等な当事者間の法律関係を争う主観訴訟です。形式的当事者訴訟(処分・裁決により形成された法律関係の内容を争い、法令の規定により当事者の一方を被告とするもの)と、実質的当事者訴訟(公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の訴訟)の2種類に分かれます。第4条の「及び」を境に前後で読み分けるのが、両者を区別する最大のコツです。

2004年改正により確認訴訟の活用が明文化(ただし新類型の創設ではなく確認的規定)され、在外邦人選挙権訴訟(平成17年)・国籍確認訴訟(平成20年)・在外邦人国民審査訴訟(令和4年)といった重要判例が蓄積されています。処分性が認められない行政活動に対する救済の「受け皿」として、実質的当事者訴訟の重要性はますます高まっています。

実質的当事者訴訟には出訴期間の制限がなく、仮処分も認められ、取消訴訟の規定は一部しか準用されないなど、抗告訴訟とは異なる特徴を持ちます。これらの違いを、本記事の比較表とともに正確に整理しておきましょう。

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