行政書士試験当日の時間配分と解答順序の戦略
行政書士試験当日の180分をどう使うか。科目別の最適な時間配分と解答順序の戦略を具体的に解説。本番で実力を発揮するための実践的テクニックを紹介します。
はじめに:180分をどう使うかが合否を分ける
行政書士試験は、180分(3時間)で60問を解く試験です。300点満点のうち180点以上を取れば合格ですが、限られた時間の中で最大限の得点を確保するためには、戦略的な時間配分と解答順序が不可欠です。
「知識はあるのに時間が足りなかった」「記述式に十分な時間を割けなかった」「焦って凡ミスをした」。これらは、時間配分と解答順序の戦略が不十分だったために起こる典型的な失敗です。
行政書士試験の特徴は、「知識量」と「時間管理」という2つの異なる能力が同時に問われる点にあります。どれだけ多くの条文や判例を覚えていても、本番の180分という制約の中でそれを得点へ変換できなければ意味がありません。逆に、知識がやや不足していても、時間配分を最適化し、解ける問題を確実に拾い、記述式で部分点を積み上げれば、180点の壁を越えることは十分に可能です。つまり時間配分・解答順序の戦略は、「同じ実力でも合否を分ける最後の1割」を握っているのです。
本記事では、試験の問題構成と配点の全体像を確認したうえで、おすすめの解答順序と各科目の時間配分、マークミス防止のテクニック、試験中のメンタル管理、そして記述式の時間戦略まで、本番で実力を100%発揮するための実践的なノウハウを詳しく解説します。
試験の基本情報と問題構成
試験時間と出題形式
行政書士試験の基本情報は以下の通りです。
- 試験時間:13時00分〜16時00分(180分)
- 出題数:60問
- 出題形式:5肢択一式(54問)、多肢選択式(3問)、記述式(3問)
- 満点:300点
- 合格基準点:180点以上(かつ一般知識等24点以上)
試験問題は大きく「法令等科目」と「一般知識等科目」に分かれています。法令等科目は244点満点(択一式160点+多肢選択式24点+記述式60点)、一般知識等科目は56点満点です。
なお、令和6年度(2024年度)試験から、従来「一般知識等科目」と呼ばれていた区分は「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」として再編されました。具体的には、従来の「政治・経済・社会」の一部が、行政書士法・戸籍法・住民基本台帳法など「諸法令」に置き換えられたとされます。出題数(14問程度)・配点(56点)・足切り基準(満点の40%=24点以上)といった枠組み自体は維持されており、時間配分・解答順序の戦略にはほとんど影響しません。本記事では理解しやすさのため一部で「一般知識等」という従来の呼称も併用しますが、最新の名称・出題範囲については必ず受験する年度の試験案内で確認してください。
合格基準を正しく理解する(3つの関門)
行政書士試験には、合格のために同時にクリアすべき基準が3つあります。時間配分を考える前提として、ここを正確に押さえておく必要があります。
重要なのは、3つすべてを満たして初めて合格だという点です。総合で180点を超えていても、一般知識等が24点未満(5問以下)なら不合格、法令等が122点未満でも不合格になります。とりわけ一般知識等の足切りは、対策しづらい科目であるだけに毎年一定数の受験生が落とされる「隠れた関門」です。だからこそ、後述する解答順序では一般知識等を早めに処理して安心感を得る戦略が有効になります。
科目別の問題数と配点
各科目の問題数と配点を整理します。
法令等科目(244点満点)
一般知識等科目(56点満点)
択一式は1問4点、多肢選択式は1問8点(空欄4つ×各2点)、記述式は1問20点です。配点の傾斜を意識すると、1問あたりの「得点効率」が見えてきます。基礎法学の1問(4点)に5分かけるのと、行政法の択一1問(4点)に2分で答えるのとでは、同じ4点でも投じた時間あたりの価値がまったく異なります。時間配分とは、つまるところ「1分あたり何点取れるか」を最大化する作業だと捉えるとわかりやすいでしょう。
合格のための得点戦略
合格ラインの180点を達成するための科目別目標得点を設定しましょう。以下は現実的な目標配分の一例です。
この目標から分かるように、行政法の出来が合否を大きく左右します。行政法全体で112点の配点があり、ここで安定して70〜80点を取れれば合格が大きく近づきます。
「捨て問」と「拾う問」を区別する発想
得点戦略を立てるうえで欠かせないのが、すべての問題を等価に扱わないという発想です。60問の中には、(1)必ず取りたい基本問題、(2)正答率が割れる標準問題、(3)誰も解けない超難問が混在しています。合格に必要なのは6割であり、4割は落としても構いません。つまり、超難問に時間を奪われて基本問題を落とすことが、最も避けるべき「時間の使い方の失敗」です。
具体的には、行政法・民法の基本論点や、過去問頻出の条文知識を問う問題は「絶対に拾う問」として丁寧に扱い、見たこともない判例や統計データを問う問題は「捨て問の候補」として早々に仮マークして撤退する——この見極めの速さが、本番の得点を底上げします。模試の段階から「これは捨て問だ」と判断する訓練を積んでおくと、本番で迷わずに済みます。
おすすめ解答順序
なぜ解答順序が重要なのか
行政書士試験の問題冊子は、基礎法学→憲法→行政法→民法→商法・会社法→多肢選択式→記述式→一般知識等の順に掲載されています。しかし、この順番通りに解くことが最適とは限りません。
解答順序を工夫する目的は3つあります。
第一に、確実に得点できる科目を先に片付けることで精神的な安定を得ること。第二に、集中力が高いうちに配点の大きい科目を解くこと。第三に、足切りのリスクがある一般知識等を早めに処理して安心感を得ることです。
加えて、心理学的な観点も無視できません。試験開始直後は緊張で頭が回りにくく、終盤は疲労で集中力が落ちます。集中力のピークは開始後20〜60分あたりにあるとされ、この「黄金時間帯」に、配点が大きく頭を使う問題(文章理解・記述式の構想・行政法の判断問題)を割り当てるのが理にかなっています。逆に、開始直後の緊張が抜けない数分間は、頭をあまり使わない作業(マークシートの氏名・受験番号の記入確認、問題冊子のページ数チェック)に充てると、自然なウォームアップになります。
推奨する解答順序と時間配分
以下が、多くの合格者が推奨する解答順序と時間配分です。
第1段階:一般知識等(目安30分)
解答を始める順番は、一般知識等からがおすすめです。特に文章理解(3問)から着手しましょう。
文章理解は、長めの文章を読んで設問に答える問題であり、集中力を要します。試験開始直後は集中力が最も高い時間帯ですので、このタイミングで文章理解に取り組むのが効果的です。
文章理解の3問に15分程度、政治・経済・社会と情報通信・個人情報保護の11問に15分程度の合計30分が目安です。一般知識等を先に解くことで、足切り(24点=6問正解)をクリアできそうかどうかを早い段階で判断でき、残りの科目を落ち着いて解くことができます。
第2段階:行政法の択一式(目安35分)
一般知識等の次は、最も配点の大きい行政法の択一式19問に取り組みます。行政法は問題数が多く、1問あたり約2分のペースで解く必要があります。
行政法の択一式は条文知識を問う問題が多く、知っているかどうかで勝負が決まる問題が大半です。迷う問題は仮マークをして次に進み、35分を厳守しましょう。
第3段階:民法の択一式(目安25分)
民法の択一式9問に25分をかけます。民法は事例問題が多く、1問あたりの所要時間が行政法よりも長くなる傾向があります。1問あたり約2.5〜3分を目安にしましょう。
民法の事例問題は、問題文を正確に読み取ることが重要です。焦って問題文を読み飛ばすとミスにつながるため、問題文はゆっくり読み、事実関係を整理してから解答しましょう。
第4段階:憲法の択一式(目安15分)
憲法の択一式5問に15分をかけます。憲法は判例の知識が中心で、1問あたり3分程度で解答できます。
第5段階:商法・会社法(目安10分)
商法・会社法の択一式5問に10分をかけます。商法・会社法は配点が20点と小さいため、深く考えすぎずにテンポよく解答します。分からない問題は消去法で2択に絞り、直感で選んで次に進みましょう。
第6段階:基礎法学(目安5分)
基礎法学の2問に5分をかけます。基礎法学は出題範囲が広く、対策が難しい科目です。2問しかないため、軽く解いて次に進みましょう。
第7段階:多肢選択式(目安15分)
多肢選択式の3問(憲法1問、行政法2問)に15分をかけます。多肢選択式は、20個の選択肢から4つの空欄に当てはまるものを選ぶ形式で、部分点があるため確実に得点を積み上げたい問題です。
文脈から選択肢を絞り込めることが多いため、判例や条文の正確な文言を思い出せなくても、前後の文脈から推測して解答しましょう。
第8段階:記述式(目安40分)
記述式の3問(行政法1問、民法2問)に40分をかけます。記述式は1問20点と配点が大きく、合否を左右する重要な問題です。1問あたり約13分で解答します。
記述式の時間戦略については、後述のセクションで詳しく解説します。
第9段階:見直し(目安5分)
最後の5分間で、マークシートの記入漏れや記入ミスがないかを確認します。問題番号と解答欄のズレがないか、マークが薄すぎないかをチェックしましょう。
解答順序のバリエーションと使い分け
上記の順序は「標準型」ですが、唯一の正解ではありません。自分の得意・不得意に応じて、以下のようなバリエーションから選ぶとよいでしょう。
どのタイプを選ぶにせよ、本番でいきなり試すのは厳禁です。必ず模試や過去問演習で実際に時間を計り、自分にとって最も安定して得点できる順序を確定させてから本番に臨んでください。
行政書士試験では、問題冊子に記載されている順番(基礎法学から)通りに解くのが最も効率的である。○か×か。
各科目の時間配分の根拠
行政法に最も時間をかける理由
行政法は択一式19問(76点)+多肢選択式2問(16点)+記述式1問(20点)で合計112点と、全300点中の約37%を占めます。つまり、行政法だけで合格ライン180点の6割以上の配点があるのです。
この配点の大きさを考えれば、行政法の択一式に35分、多肢選択式に10分(全体15分の中で行政法分)、記述式に13分(全体40分の中で行政法分)の合計約58分を投入することは十分に合理的です。
行政法の択一式は条文の正確な知識を問う問題が多く、知っていれば短時間で解答できます。1問2分を目安にテンポよく解きましょう。
行政法の出題内訳を理解しておくと、時間配分の精度が上がります。行政法は大きく、(1)行政法総論(行政行為・行政裁量・行政立法など)、(2)行政手続法、(3)行政不服審査法、(4)行政事件訴訟法、(5)国家賠償法・損失補償、(6)地方自治法から出題されます。とくに行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法は条文知識が直接問われ、知っていれば即答できる「拾う問」の宝庫です。一方、地方自治法は条文量が膨大で深入りすると時間を失いやすいため、頻出条文に絞って判断し、迷ったら早めに撤退するのが得策です。
たとえば行政事件訴訟法の抗告訴訟の類型は、記述式でも択一でも繰り返し問われる定番論点です。
この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
― 行政事件訴訟法 第3条第1項
この条文を起点に、取消訴訟・無効等確認訴訟・不作為の違法確認訴訟・義務付け訴訟・差止め訴訟という類型を即座に引き出せる状態にしておけば、関連問題を短時間で処理できます。
民法に余裕を持たせる理由
民法は択一式9問(36点)+記述式2問(40点)で合計76点です。択一式の問題数は9問と行政法の半分以下ですが、1問あたりの所要時間は民法のほうが長くなる傾向があります。
その理由は、民法の択一式には事例問題が多いことです。「AがBに土地を売却し、BがCに転売した。その後Aが契約を取り消した場合……」といった複雑な事実関係を正確に把握したうえで法律を当てはめる必要があるため、1問あたり3分程度を確保することが望ましいです。
民法の事例問題を素早く処理するコツは、問題文を読みながら登場人物の関係図(A→B→Cといった矢印)を問題用紙の余白に図示することです。頭の中だけで事実関係を整理しようとすると、「誰が善意で誰が悪意か」「いつ対抗要件を備えたか」といった条件を取り違えやすく、かえって時間を失います。図示は10〜20秒で済み、結果的に正答率と速度の両方を高めます。
また、民法の記述式2問は合計40点と、全記述式60点の3分の2を占めます。記述式40分のうち約26分を民法の記述式に充てることで、十分に考えて解答を書く時間を確保できます。
商法・会社法と基礎法学は効率重視
商法・会社法(20点)と基礎法学(8点)は合計28点であり、合格ラインの180点に対する影響は限定的です。この2科目に多くの時間を費やすのは得策ではありません。
商法・会社法は10分、基礎法学は5分の合計15分に抑え、浮いた時間を行政法・民法・記述式に回すことで、全体の得点を最大化できます。
ただし、商法・会社法と基礎法学を「捨て科目」にするわけではありません。短い時間の中でも、消去法を使って正答率を少しでも上げる努力は必要です。とくに商法・会社法は、出題範囲は広いものの設立・株式・機関設計といった頻出テーマに絞れば、過去問の焼き直しに近い問題が一定数出ます。深追いはしないが、知っている論点は確実に拾う——というメリハリが重要です。
憲法・多肢選択式の時間配分の考え方
憲法は判例知識が中心で、人権分野(表現の自由・平等原則・財産権など)と統治分野(国会・内閣・裁判所・財政)から出題されます。判例の結論を覚えていれば短時間で解ける反面、知らない判例は考えても答えが出ないため、1問3分を上限に区切る判断が大切です。
多肢選択式は「部分点が稼げる」という点で時間対効果が高い形式です。20の語群から4つの空欄を埋める形式のため、4つすべてを正解できなくても、文脈から確実な空欄だけでも埋めれば得点になります。完全に分からなくても0点にはなりにくいので、空欄をすべて埋めることを徹底しましょう。語群は品詞や意味の系統で分類すると、入る候補が一気に絞れます。
一般知識等の時間配分
一般知識等14問に30分をかけます。1問あたり約2分のペースですが、文章理解には1問5分程度かかるため、文章理解以外の問題は1問1〜1.5分で処理する必要があります。
文章理解は3問で15分、残り11問を15分で解くスケジュールです。政治・経済・社会の問題は、知らなければ考えても分からないものが多いため、迷ったら直感で選んで次に進みましょう。
一般知識等の中で、最も「努力が得点に直結する」のは文章理解(3問・12点)と個人情報保護関連です。文章理解は読解力の問題であり、解法(並べ替え・空欄補充・趣旨把握)のパターンを練習すれば本番でほぼ確実に得点できます。個人情報保護法も条文ベースで対策可能です。逆に、政治・経済・社会や時事問題は範囲が無限で対策効率が悪いため、ここは「取れたらラッキー」と割り切り、確実に取れる文章理解・個人情報保護で足切りラインを確保する戦略が安全です。
マークミス防止のテクニック
5問ごとの確認ルール
マークミスは、行政書士試験において最も避けるべきミスの一つです。特に「問題番号と解答欄の番号がズレる」ミスは、1問のズレが連鎖して複数の問題に影響するため致命的です。
これを防ぐために、「5問ごとに問題番号と解答欄の番号が一致しているか確認する」ルールを習慣化しましょう。5問解いたらマークシートを見て、最後にマークした欄の番号が正しいかを確認します。
また、問題を飛ばす場合は、マークシート上で飛ばした欄に小さく×印をつけておきます。後から戻ったときに「ここが空欄のままだ」と一目で分かるようにするためです。
仮マークの方法
迷った問題を後回しにする場合は、仮マークをしておくことをおすすめします。時間切れで解答できなかったという事態を防ぐためです。
仮マークの方法は、選択肢を2択まで絞ったうえで、可能性が高いと思うほうをいったんマークしておきます。問題冊子の該当問題に印(丸で囲むなど)をつけておき、見直し時間に戻って再検討します。
最終的に答えを変える場合は、消しゴムで丁寧に消してからマークし直します。消し残りがあると機械が誤読する可能性があるため、しっかりと消しましょう。
飛ばし方とマーク連鎖ミスの構造
なぜ「飛ばした問題」が連鎖ミスを生むのか、構造を理解しておくと予防意識が高まります。たとえば問題5を飛ばして問題6を解いたとき、解答欄の「5」の行に問題6の答えをマークしてしまうと、それ以降のすべての解答が1行ずつ上にずれます。1つのうっかりが10問、20問の失点につながり、得点が一気に崩壊します。これは知識の有無とは無関係に発生する「事故」であり、最も悔やまれるミスです。
対策の要点は次の3つです。第一に、飛ばす問題は原則として仮マークを入れ、空欄を作らない(空欄こそがズレの起点になる)。第二に、どうしても空欄にする場合は解答欄に×印を付け、戻る場所を明示する。第三に、5問ごと(または各科目の区切りごと)に問題番号と解答欄番号の一致を指差し確認する。この3点を模試から習慣化しておけば、本番での事故率は大幅に下がります。
記述式の解答欄の確認
記述式は3問あり、それぞれ行政法(問題44)、民法(問題45)、民法(問題46)に対応しています。解答欄を間違えると、せっかく書いた解答が0点になる可能性があります。
記述式の解答を書き始める前に、「問題番号と解答欄の番号が一致しているか」を必ず確認しましょう。この確認作業は10秒もかかりませんが、致命的なミスを防ぐことができます。
試験中のメンタル管理
分からない問題は飛ばす
試験中に分からない問題に出くわしたとき、最もやってはいけないのは「何分もかけて考え込む」ことです。1問に5分以上かけても正答率はほとんど上がりません。それよりも、確実に解ける問題に時間を使うほうが全体の得点は高くなります。
迷ったら3分で区切るルールを設定しましょう。3分考えても答えが出なければ、仮マークをして次に進みます。全問を一通り解き終えた後で、時間が余れば戻って再検討します。
難問に動揺しない
試験では、どの受験生にとっても難しい問題が数問含まれています。正答率が10〜20%の超難問に出くわしても、「これは自分だけが解けないのではなく、多くの受験生が解けない問題だ」と割り切りましょう。
行政書士試験の合格ラインは6割です。4割は間違えてよいのです。難問を1〜2問落としても、基本〜標準レベルの問題を確実に正解すれば合格できます。
冒頭の難問でパニックにならない
行政書士試験は冊子の冒頭が基礎法学(2問)から始まります。実は基礎法学は出題範囲が広く対策しづらいため、いきなり難問に当たって「今年は難しい」と動揺してしまう受験生が少なくありません。本記事が一般知識等や文章理解から解くことを推奨する理由の一つも、ここにあります。最初に「解ける問題」で勢いをつけ、自信を保ったまま難所に進むことが、メンタルの安定につながります。冒頭で詰まっても、それは試験の難易度ではなく「たまたまその科目が苦手なだけ」と切り分けて、淡々と次へ進みましょう。
ペース配分を意識する
試験開始から30分ごとに、進捗状況を確認しましょう。以下の目安を参考にしてください。
- 13時00分〜13時30分:一般知識等14問を解き終える
- 13時30分〜14時05分:行政法の択一式19問を解き終える
- 14時05分〜14時30分:民法の択一式9問を解き終える
- 14時30分〜14時45分:憲法の択一式5問を解き終える
- 14時45分〜14時55分:商法・会社法の択一式5問を解き終える
- 14時55分〜15時00分:基礎法学の2問を解き終える
- 15時00分〜15時15分:多肢選択式3問を解き終える
- 15時15分〜15時55分:記述式3問を解き終える
- 15時55分〜16時00分:見直し
この目安からズレていたら、ペースを調整します。時間が押している場合は、迷っている問題に見切りをつけて仮マークし、先に進みましょう。
試験前日・当日朝の準備
メンタルの安定は、試験当日だけでなく前日・当日朝の準備から始まっています。前日は新しい問題に手を出さず、これまで使い込んだテキストの確認に留め、十分な睡眠を取ることが最優先です。当日は会場到着までの移動時間を見込んで早めに家を出て、遅延に巻き込まれても余裕を持てるようにします。会場では、試験開始前にトイレを済ませ、上着で体温調整ができるようにしておきましょう(試験中の体調不良は集中力を直撃します)。これらは点数に直結しないように見えて、180分間を平常心で戦い抜くための土台になります。
記述式の時間戦略
記述式に40分を確保する重要性
記述式は3問で60点の配点があります。全300点の20%を占めるこの60点は、合否を大きく左右します。たとえば、択一式と多肢選択式で140点を取った場合、記述式で40点以上取れば合格ラインの180点に到達します。
記述式に十分な時間を確保するためには、択一式と多肢選択式を140分以内で解き終え、記述式に40分を確保することが重要です。
記述式が「合否を分ける」と言われるのには、もう一つ重要な理由があります。それは部分点の存在です。択一式は正解か不正解かの0か4点ですが、記述式は採点ポイント(キーワード)ごとに点が積み上がる方式とされ、完答できなくても10点前後を拾える可能性があります。択一であと2〜3問足りなかった受験生が、記述式の部分点で合格ラインに滑り込むケースは珍しくありません。つまり記述式は、知識が完璧でなくても「書けば点になる」可能性を秘めた、得点効率の高い領域なのです。
1問あたりの時間配分
40分を3問に配分する場合、以下のような時間配分が考えられます。
行政法の記述式(問題44):12〜13分
行政法の記述式は、訴訟類型の選択や手続の流れを問う問題が多く、ある程度パターン化されています。問題文を読んで論点を把握し(3分)、解答の骨格を組み立て(3分)、40字に収めて清書する(4分)、見直す(2〜3分)という流れで12〜13分です。
民法の記述式1問目(問題45):12〜13分
民法の記述式1問目も同様に、問題文の読解(3分)、解答の組み立て(3分)、清書(4分)、見直し(2〜3分)で12〜13分を使います。
民法の記述式2問目(問題46):12〜13分
民法の記述式2問目も同じ時間配分です。ただし、2問目は時間が押している場合があるため、効率的に解答することを意識しましょう。
残り1〜4分:全体の見直しに充てます。
記述式を書く際のポイント
記述式の解答は40字程度で書くことが求められます。解答用紙には45字分のマス目があるため、35〜45字の範囲で書くのが理想的です。
解答を書く際は、まず問題用紙の余白に解答の下書きをしましょう。いきなり解答用紙に書き始めると、途中で修正が必要になった場合に時間をロスします。
下書きでは、以下の手順で解答を組み立てます。
- 結論を先に決める:「取消訴訟を提起すべき」「損害賠償を請求できる」など
- 根拠を加える:「行政事件訴訟法第3条第2項に基づき」「民法第709条に基づき」など
- 要件・効果を補足する:「被告は〇〇市とし」「善意無過失であることを理由に」など
- 字数を調整する:40字前後に収まるよう、余計な修飾語を削る
下書きが完成したら、解答用紙に丁寧に転記します。字が汚いと読み取ってもらえない可能性があるため、普段よりもやや丁寧に書くことを心がけましょう。
記述式で問われる「誰に・何を・どうやって」の型
記述式の多くは、設問が「誰が・誰に対し・どのような手段で・どのような根拠に基づき」を問う構造になっています。この4要素を意識して空欄を埋めるイメージで構想すると、短時間で要素を漏らさず解答できます。
たとえば行政事件訴訟法の取消訴訟を問う問題では、根拠条文として次の規定が解答の核になります。
この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次号に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
― 行政事件訴訟法 第3条第2項
民法の不法行為に基づく損害賠償なら、次の条文の要件(故意・過失、権利侵害、損害)を解答に落とし込みます。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
― 民法 第709条
このように、頻出論点については「結論+根拠条文+要件」をワンセットで暗記しておくと、本番では当てはめるだけで済み、構想時間を大幅に短縮できます。
時間が足りないときの対処法
記述式の時間が想定より短くなった場合でも、白紙で提出することは絶対に避けましょう。記述式は部分点が与えられるため、完璧な解答でなくても何か書けば得点の可能性があります。
時間がない場合は、以下の優先順位で解答します。
- 法的な結論だけでも書く:「取消訴訟を提起すべき」「損害賠償請求ができる」など
- キーワードを入れる:「原告適格」「処分性」「対抗要件」など、採点のポイントとなる法律用語を盛り込む
- 根拠条文を入れる:条文番号を入れることで、法的知識があることを示す
10秒しかなくても、「取消訴訟」と書くだけで部分点が得られる可能性があります。白紙は0点が確定しますが、何か書けば0点以上の可能性が生まれます。
よくある誤解:記述式の採点は厳しすぎる?
「記述式は採点が辛くて部分点がもらえない」という声を聞くことがありますが、これは半分誤解です。確かに採点基準は公表されておらず、年度によって採点の厳しさが変動するとも言われます。しかし、それを理由に記述式を軽視するのは危険です。むしろ、採点が読めないからこそ「キーワードを一つでも多く盛り込む」「論点を取り違えない」という基本を徹底することが、安定した部分点につながります。また、近年は記述式が合否調整の役割を担っているとの見方もあり、択一が易しい年ほど記述で差がつく傾向があるとされます。いずれにせよ、記述式を「捨てる」という選択肢は合格戦略上ありえません。
行政書士試験の記述式は3問で合計60点の配点があり、行政法1問と民法2問で構成されている。○か×か。
行政書士試験の記述式で時間が足りない場合、中途半端な解答を書くよりも白紙で提出するほうがよい。○か×か。
行政書士試験に合格するには、総合得点が180点以上あれば、一般知識等(基礎知識)の得点が24点未満であっても合格できる。○か×か。
模試で本番の戦略を仕上げる
時間配分と解答順序の戦略は、知っているだけでは意味がありません。本番と同じ180分・同じ時刻(午後)に、実際に手を動かして検証してはじめて「自分の戦略」になります。模試や過去問演習では、次の点を意識して取り組んでください。
第一に、必ず時間を計り、各科目にかかった実際の時間を記録すること。計画では行政法択一35分のつもりが実際は45分かかっていた、といったズレは、計測して初めて見えてきます。第二に、解答順序を実際に試し、複数パターンを比較すること。第三に、マークシートを使い、5問ごとの確認や仮マークの所作を体に染み込ませること。第四に、本番と同じ午後の時間帯に解き、食後の眠気のピークがどこに来るかを把握すること。
これらを2〜3回繰り返せば、本番では「考えなくても体が動く」レベルまで戦略を仕上げられます。逆に、ぶっつけ本番で新しい解答順序を試すのは、最もリスクの高い選択です。
まとめ
本記事では、行政書士試験当日の時間配分と解答順序の戦略について解説しました。要点を3つにまとめます。
- 解答順序は戦略的に決める:一般知識等→行政法→民法→憲法→商法・会社法→基礎法学→多肢選択式→記述式→見直しの順で解くことで、足切りリスクの回避・配点の大きい科目への時間確保・記述式への十分な時間配分が実現できる
- 記述式に40分を確保する:記述式3問60点は合否を左右する配点であり、択一式と多肢選択式を140分以内で解き終えて記述式に40分を確保することが重要。部分点があるため白紙提出は厳禁
- 迷ったら3分で区切る:分からない問題に時間をかけすぎず、仮マークをして先に進むことで全体の時間を有効に使い、確実に解ける問題で得点を積み上げる
そして、これらの戦略は3つの合格基準(法令122点以上・一般知識24点以上・総合180点以上)をすべて満たすための手段である点を忘れないでください。とりわけ一般知識等の足切りを早めにクリアし、配点の大きい行政法と部分点が稼げる記述式で得点を積み上げる——この大方針を、模試の段階で繰り返し練習し、本番で自信を持って実行できるよう準備しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 解答順序は人によって異なりますか?
はい、最適な解答順序は人によって異なります。本記事で紹介した順序は多くの合格者が推奨するパターンですが、行政法に自信がある人は行政法から始める、一般知識が得意な人は後回しにするなど、自分の得意・不得意に応じてカスタマイズしてください。重要なのは、模試の段階で複数の順序を試して、自分に最も合ったパターンを見つけることです。
Q2. 試験中に時計がないと時間配分はできませんか?
腕時計は必ず持参しましょう。試験会場に時計がない場合もあります。ただし、スマートウォッチや計算機能付きの時計は持ち込みが禁止されていますので、シンプルなアナログ時計またはデジタル時計を使用してください。アナログ時計であれば、解き始めの時刻に「あと何分でこの科目を終える」という到達点を針の位置でイメージしておくと、いちいち時刻を計算せずに残り時間を直感的に把握できます。
Q3. 記述式を先に解くのはどうですか?
記述式を先に解く戦略もありますが、リスクがあります。記述式に時間をかけすぎると択一式の時間が圧迫され、配点の大きい行政法の択一式で時間不足になる可能性があります。記述式は40分と時間を決めて最後のほうに解くことで、時間管理がしやすくなります。ただし、記述式に強い苦手意識があり「後回しにすると焦って書けなくなる」タイプの人は、択一を一通り終えた中盤に記述へ着手するのも一案です。
Q4. 見直し時間は5分で足りますか?
見直し5分は最低限の時間です。マークシートの記入漏れ・ズレの確認が主な目的です。見直し時間を長く取りたい場合は、他の科目の解答時間を少しずつ短縮して調整してください。ただし、見直しで答えを変えて間違えるケースも多いため、明確な根拠がない限り最初の解答を変えないことをおすすめします。見直しの優先順位は、(1)マークの記入漏れ・ズレ確認、(2)記述式の誤字・字数、(3)仮マークした迷い問題の再検討、の順がおすすめです。
Q5. 一般知識の足切りが心配な場合、一般知識にもっと時間をかけるべきですか?
一般知識の大半(政治・経済・社会)は「知っているか知らないか」の問題であり、時間をかけても正答率はほとんど変わりません。文章理解の3問にはしっかり時間をかけるべきですが、それ以外は1問1〜2分で判断して次に進みましょう。一般知識に過度に時間をかけて法令科目の時間を圧迫するのは本末転倒です。足切り対策の本質は「当日の時間配分」よりも「日頃の学習で文章理解と個人情報保護を得点源に固めておくこと」にあります。
Q6. 試験中に頭が真っ白になったらどうすればよいですか?
まず、その問題に固執せず仮マークして次へ進むことです。1問に詰まって動揺が全体に波及するのが最悪のパターンです。一度ペンを置いて深呼吸を数回し、確実に解ける科目(自分の得意分野)に戻って成功体験を作ると、平常心を取り戻しやすくなります。難問は「皆が解けない問題」と割り切り、6割取れば合格という事実を思い出しましょう。