連帯債務・保証・連帯保証の比較整理|改正民法対応
連帯債務・保証債務・連帯保証の3つを徹底比較。改正民法で変わった絶対効・相対効の原則や、保証人保護の新規定を図表で分かりやすく整理します。
はじめに|改正民法で大きく変わった多数当事者の債権関係
連帯債務・保証債務・連帯保証は、行政書士試験の民法分野において最も出題頻度の高いテーマの一つです。特に2020年4月施行の改正民法では、連帯債務における絶対効の範囲の縮小や、保証人保護に関する新規定の創設など、大幅な改正がなされました。
これらの3制度は、複数の債務者が存在する場面で登場しますが、それぞれの法的性質や効果が異なり、正確な区別が求められます。改正前と改正後の違いを意識しつつ、横断的に整理することが合格への鍵です。
本記事では、連帯債務・保証債務・連帯保証の3制度を体系的に解説し、改正民法のポイントと試験出題のツボを明らかにしていきます。
多数当事者の債権関係の全体像
多数当事者の債権関係とは
通常の債権関係は、1人の債権者と1人の債務者の間で成立しますが、複数の債権者又は複数の債務者が存在する場合があります。民法は、このような多数当事者の債権関係について、以下の類型を規定しています。
分割債権・分割債務の原則(427条)
数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
― 民法 第427条
多数当事者の債権関係の原則形態は分割債権・分割債務であり、各債権者・債務者は均等な割合で権利を有し、又は義務を負います。しかし、実務上は連帯債務や保証債務が多く利用されており、これらの特殊な類型の理解が重要です。
連帯債務(436条〜445条)
連帯債務の意義と性質
債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
― 民法 第436条
連帯債務とは、数人の債務者が、同一の給付について、各自が独立して全部の履行をなす義務を負う債務関係です。債権者は、連帯債務者の一人に対し、又はすべての連帯債務者に対し、同時に又は順次に、全部又は一部の履行を請求することができます。
連帯債務の性質として、各債務者の債務は独立したものであり、主従の関係はありません。この点が、主たる債務に対して従たる地位にある保証債務と異なります。
改正による絶対効の範囲の縮小
改正民法の最重要ポイントの一つが、連帯債務における絶対効の範囲の縮小です。
改正前: 請求・更改・相殺・免除・混同・時効完成の6事由が絶対効
改正後(441条): 原則として相対効。絶対効は以下の3事由のみ。
第438条、第439条第1項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
― 民法 第441条
この改正の趣旨は、連帯債務者の一人について生じた事由が他の連帯債務者に影響を及ぼすのは例外的な場面に限定すべきであり、債権者の地位を不当に害することを防止することにあります。特に、請求が相対効になったことは実務上も大きな影響があります。
ただし、441条ただし書により、債権者と他の連帯債務者が「別段の意思表示」をした場合には、相対効の原則が修正されます。これは、当事者間の合意により請求に絶対効を持たせることができることを意味します。
連帯債務者間の求償関係(442条〜445条)
連帯債務者の一人が弁済等をして共同の免責を得た場合、他の連帯債務者に対して求償権を取得します。
連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。
― 民法 第442条1項
改正前は、自己の負担部分を超えて弁済した場合にのみ求償権が発生するとされていましたが、改正民法は、自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず求償権を認めています。
相殺の絶対効(439条)
連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。
― 民法 第439条1項
連帯債務者の一人が相殺を援用した場合、全連帯債務者の利益のために債権が消滅します。ただし、改正民法では、他の連帯債務者が相殺を援用する場合には、反対債権を有する連帯債務者の負担部分の限度でのみ相殺を援用できます(439条2項)。
保証債務(446条〜465条の10)
保証債務の意義と性質
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
― 民法 第446条1項
保証債務は、主たる債務者が債務を履行しない場合に、保証人が代わって履行する責任を負う制度です。保証契約は書面(又は電磁的記録)でしなければ効力を生じません(446条2項・3項)。
保証債務には、以下の3つの重要な性質があります。
付従性
保証債務は主たる債務に従属するという性質です。具体的には以下のような効果があります。
- 成立における付従性: 主たる債務が成立しなければ、保証債務も成立しない
- 内容における付従性: 保証債務は主たる債務より重くなることがない(448条)
- 消滅における付従性: 主たる債務が消滅すれば、保証債務も消滅する
随伴性
主たる債務が移転すれば、保証債務もこれに随伴して移転するという性質です。例えば、主たる債権が譲渡された場合、保証人は新たな債権者に対しても保証債務を負います。
補充性
保証人は、主たる債務者が履行しない場合に初めて履行義務を負うという性質です。補充性を具体化したものが、以下の2つの抗弁権です。
催告の抗弁権(452条): 債権者が保証人に請求した場合、保証人はまず主たる債務者に催告すべきことを請求できます。
検索の抗弁権(453条): 債権者が主たる債務者に催告した後であっても、保証人は、主たる債務者に弁済の資力があり、かつ、執行が容易であることを証明して、まず主たる債務者の財産について執行すべきことを主張できます。
保証人の求償権
保証人が主たる債務者に代わって弁済した場合、主たる債務者に対して求償権を取得します。
- 委託を受けた保証人の求償権(459条〜461条): 弁済額のほか、弁済の日以後の法定利息、避けることのできなかった費用その他の損害の賠償を求償できる
- 委託を受けない保証人の求償権(462条): 求償の範囲が制限される
連帯保証(454条)
連帯保証の意義
保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。
― 民法 第454条
連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担する保証です。通常の保証と異なり、連帯保証人には催告の抗弁権と検索の抗弁権が認められません。
連帯保証は、通常の保証よりも債権者にとって有利な担保手段であり、実務上は連帯保証が圧倒的に多く利用されています。
改正民法による連帯保証への影響
改正前は、連帯保証人に対する請求は主たる債務者に対しても効力を生じる(絶対効)とされていました。しかし、改正民法では、この取扱いが変更されました。
改正前: 連帯保証人への請求は主たる債務者に対して絶対効(旧458条→旧434条準用)
改正後: 連帯保証人への請求は主たる債務者に対して相対効(458条→441条準用)
この改正により、連帯保証人に対して請求(催告)をしても、主たる債務者の時効の完成猶予・更新の効力は生じません。債権者は、時効の完成を阻止するためには、主たる債務者に対して直接請求する必要があります。
保証人保護の新規定(改正民法の重要ポイント)
個人根保証の極度額(465条の2)
改正前は、貸金等根保証契約についてのみ極度額の定めが必要とされていましたが、改正民法は、すべての個人根保証契約について極度額の定めを義務づけました。
一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものの全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
― 民法 第465条の2第1項
個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
― 民法 第465条の2第2項
極度額の定めのない個人根保証契約は無効です。この規定は、例えば賃貸借契約における個人の連帯保証人にも適用されるため、実務上の影響が極めて大きいものです。
個人根保証契約の元本確定事由(465条の4)
以下の事由が生じた場合、個人根保証契約の主たる債務の元本が確定します。
- 債権者が保証人の財産について強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき
- 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき
- 主たる債務者又は保証人が死亡したとき
事業に係る債務の保証(465条の6〜465条の10)
改正民法は、事業に係る債務の保証について、特に個人の保証人を保護するための規定を新設しました。
公正証書による保証意思の確認(465条の6)
事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
― 民法 第465条の6第1項
事業のために負担する貸金等債務の保証をする場合、保証契約締結の日前1か月以内に公正証書で保証意思を表示しなければなりません。この規定に違反した保証契約は無効です。
ただし、以下の者は公正証書作成の適用除外とされています(465条の9)。
- 主たる債務者が法人である場合の理事・取締役・執行役等
- 主たる債務者が法人である場合の総株主の議決権の過半数を有する者等
- 主たる債務者が個人である場合の共同して事業を行う者又は配偶者で事業に現に従事している者
情報提供義務(465条の10)
主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。
― 民法 第465条の10第1項
主たる債務者が保証の委託をする場合、保証人になろうとする者に対して、以下の情報を提供しなければなりません。
- 財産及び収支の状況
- 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
- 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容
主たる債務者がこの情報提供義務に違反し、保証人が誤認して保証契約を締結した場合、債権者がその事実を知り又は知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことができます(465条の10第2項)。
3制度の比較表
改正民法において、連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても効力を生じる(絶対効である)。○か×か。
個人根保証契約において極度額の定めがない場合、その保証契約は無効である。○か×か。
事業のために負担した貸金等債務の保証をする場合、保証契約の締結に先立ち、公正証書で保証意思を表示しなければならないが、主たる債務者が法人であるときのその法人の取締役にはこの要件は適用されない。○か×か。
まとめ
本記事では、連帯債務・保証債務・連帯保証の3制度を比較整理し、改正民法の重要ポイントを解説しました。
要点を3つに整理します。
- 連帯債務の絶対効の縮小: 改正民法により、絶対効は更改・相殺・混同の3事由のみに縮小され、請求・免除・時効完成は相対効になった。この変更は試験の頻出ポイント。
- 連帯保証への請求も相対効に変更: 改正民法により、連帯保証人に対する請求も主たる債務者に対して相対効となった。債権者は時効管理に注意が必要。
- 保証人保護の新規定: 個人根保証の極度額の義務化(465条の2)、公正証書による保証意思の確認(465条の6)、情報提供義務(465条の10)は、改正民法の中でも最も出題可能性が高いテーマ。
改正民法の多数当事者の債権関係は、出題者にとって非常に問いやすいテーマです。改正前との比較を意識しつつ、正確な知識を身につけましょう。
FAQ(よくある質問)
Q1. 連帯債務と不真正連帯債務の違いは何ですか?
連帯債務は、法令又は当事者の意思表示によって成立し、民法の連帯債務の規定(436条以下)が適用されます。不真正連帯債務は、共同不法行為(719条)のように、法律の規定や事実上の関係から複数の債務者が全額について責任を負う場合で、連帯債務の規定が当然には適用されないとされてきました。ただし、改正民法で絶対効の範囲が縮小されたことにより、両者の実質的な違いは小さくなっています。
Q2. 保証契約を口頭で締結した場合、どうなりますか?
無効です。民法446条2項は「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」と規定しています。電磁的記録でも有効です(446条3項)。口頭での保証の約束には法的拘束力がありません。
Q3. 改正民法で、連帯保証人に対する請求が相対効になったことの実務的影響は?
改正前は、連帯保証人に対する請求は主たる債務者に対しても効力を生じた(時効の完成猶予・更新の効力が及んだ)ため、債権者は連帯保証人に請求するだけで主たる債務の時効管理ができました。改正後は相対効になったため、債権者は主たる債務者と連帯保証人の両方に対して別々に時効管理をする必要があります。
Q4. 個人根保証の極度額はいくらに設定すべきですか?
民法には極度額の上限規定はありません。ただし、極度額が著しく高額な場合には、公序良俗違反(90条)として無効となる可能性があります。実務上は、賃貸借契約の保証では賃料の1〜2年分程度が目安とされることが多いです。
Q5. 連帯債務者の一人が相殺を援用しない場合、他の連帯債務者はどうできますか?
改正民法439条2項により、連帯債務者の一人が債権者に対して反対債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用しないときは、他の連帯債務者は、その連帯債務者の負担部分の限度で、債権者に対して債務の履行を拒むことができます(履行拒絶の抗弁)。改正前は他の連帯債務者が相殺を援用できるとされていましたが、改正により履行拒絶にとどまることになりました。
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