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親権と養子縁組|特別養子との違いを比較

親権の内容(身上監護権・財産管理権)と親権の喪失・停止、普通養子縁組と特別養子縁組の比較を解説。行政書士試験で頻出の家族法テーマを、要件・効果・離縁の違いに着目して体系的に整理します。

はじめに|親権と養子縁組は家族法の重要テーマ

親権と養子縁組は、行政書士試験の家族法分野で頻繁に出題されるテーマです。親権については身上監護権と財産管理権の内容、養子縁組については普通養子と特別養子の比較が問われます。

特に、普通養子と特別養子は要件・効果・離縁の点で大きく異なっており、比較表で整理する学習が効果的です。本記事では、親権の内容と養子縁組の制度を体系的に解説します。

親権の意義

親権とは

親権とは、未成年の子の利益のために、監護・教育・財産管理を行う父母の権利義務です。

親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。 ― 民法 第820条

2011年の民法改正により、「子の利益のために」という文言が追加され、親権が子の利益のための制度であることが明文化されました。

親権者

  • 婚姻中: 父母が共同して親権を行う(民法第818条第3項本文)。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う
  • 離婚時: 父母の一方を親権者と定める(民法第819条第1項・第2項)。協議で定め、協議が調わないときは家庭裁判所が定める

嫡出でない子の親権

嫡出でない子の親権は、が行います(民法第819条第4項)。父が認知した場合に、父母の協議で父を親権者と定めることができます。

親権の内容(1)身上監護権

監護及び教育の権利義務(820条)

親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負います。

居所の指定(821条)

子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければなりません。

懲戒(822条の削除)

2022年12月の民法改正により、懲戒権に関する規定(旧822条)は削除されました。これに伴い、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動の禁止が明記されました(民法第821条)。

親権を行う者は、前条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。 ― 民法 第821条

職業の許可(823条)

子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができません。親権者がこの許可を取り消し、又は制限することも可能です。

親権の内容(2)財産管理権

財産の管理と代表(824条)

親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表します(民法第824条本文)。

ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければなりません(同条ただし書)。例えば、子を労働者として雇用する契約を親が締結する場合には、子自身の同意が必要です。

利益相反行為(826条)

親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権者は、その子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません(民法第826条第1項)。

利益相反行為に該当するかどうかは、判例上、外形的・客観的に判断されます(最判昭和42年4月18日)。親権者の動機や意図は考慮しません。

  • 利益相反に該当する例: 親が自己の債務のために子の不動産に抵当権を設定する行為
  • 利益相反に該当しない例: 共同相続人である親と子が遺産分割協議をする場合に、親が子を代理する行為(子が複数いる場合は、一方の子と他方の子の間で利益相反)

親権者の管理の注意義務

親権を行う者は、自己のためにするのと同一の注意をもって、子の財産を管理しなければなりません(民法第827条)。善管注意義務ではなく、より軽い「自己の財産に対するのと同一の注意」である点に注意が必要です。

親権の喪失・停止・管理権喪失

親権喪失の審判(834条)

父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、親権喪失の審判をすることができます。

ただし、2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、親権喪失の審判はできません(この場合は親権停止の審判による)。

親権停止の審判(834条の2)

父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、2年を超えない期間を定めて親権停止の審判をすることができます。

親権停止は、親権喪失よりも要件が緩和されており、「著しく」害する必要はなく、「害する」で足ります。

管理権喪失の審判(835条)

父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、管理権喪失の審判をすることができます。身上監護権は失わず、財産管理権のみが失われます。

3つの審判の比較

項目親権喪失親権停止管理権喪失要件子の利益を著しく害する子の利益を害する子の利益を害する対象親権全部親権全部管理権のみ期間無期限2年以内無期限2年以内に原因消滅見込み審判不可審判可―請求権者子、その親族、未成年後見人等、検察官同左同左

普通養子縁組

要件

普通養子縁組の成立要件は以下の通りです。

  1. 養親の年齢: 成年に達した者(民法第792条)
  2. 養子の年齢: 制限なし(ただし、養親の尊属・年長者は養子にできない:民法第793条)
  3. 後見人が被後見人を養子にする場合: 家庭裁判所の許可が必要(民法第794条)
  4. 配偶者のある者の縁組: 配偶者の同意が必要(民法第796条)
  5. 未成年者を養子にする場合: 原則として家庭裁判所の許可が必要(民法第798条)。ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子にする場合は不要
  6. 届出: 戸籍法に基づく届出(民法第799条・第739条準用)

効果

  • 嫡出子の身分: 養子は、縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得する(民法第809条)
  • 養親の氏を称する: 養子は養親の氏を称する(民法第810条)
  • 実方との親族関係は存続: 普通養子の場合、実の父母との親族関係は消滅しない。相続権も双方に存する

離縁

普通養子縁組は、以下の方法で解消(離縁)できます。

  1. 協議離縁: 当事者の協議により離縁(民法第811条)
  2. 裁判離縁: 法定の離縁原因がある場合に裁判所の判決による離縁(民法第814条)

法定離縁原因(814条1項各号)は以下の3つです。

  1. 他の一方から悪意で遺棄されたとき
  2. 他の一方の生死が3年以上明らかでないとき
  3. その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき

特別養子縁組

意義

特別養子縁組は、子の利益のために特に必要があるときに、実方との親族関係を終了させる養子縁組制度です(民法第817条の2以下)。1988年に導入されました。

要件

特別養子縁組には厳格な要件が定められています。

  1. 家庭裁判所の審判: 養親となる者の請求により、家庭裁判所が成立させる(当事者の届出では成立しない)
  2. 養親の要件: 配偶者のある者に限る。夫婦共同で縁組をしなければならない(民法第817条の3)。養親の一方は25歳以上、他方は20歳以上であること
  3. 養子の年齢: 原則として15歳未満(民法第817条の5)。2019年改正により、特別の事情がある場合は15歳以上でも可能に(ただし審判確定時に18歳未満)
  4. 実父母の同意: 原則として実父母の同意が必要(民法第817条の6)。ただし、虐待等の場合は不要
  5. 要保護性: 父母による監護が著しく困難又は不適当であること、その他特別の事情がある場合に、子の利益のために特に必要があると認めるとき(民法第817条の7)
  6. 試験養育期間: 6か月以上の期間、養親となる者が養子となる者を監護した状況を考慮する(民法第817条の8)

効果

  • 実方との親族関係の終了: 特別養子と実方の父母及びその血族との親族関係は終了する(民法第817条の9)
  • 嫡出子の身分: 養親の嫡出子としての身分を取得

離縁

特別養子縁組の離縁は、極めて限定的にのみ認められます。

  • 協議離縁は不可: 当事者の協議では離縁できない
  • 家庭裁判所の審判: 養子、実父母、検察官の請求により、養子の利益のため特に必要があると認めるとき(民法第817条の10)
  • 実父母の要件: 実父母が相当の監護をすることができること

普通養子と特別養子の比較表

項目普通養子特別養子成立方法届出家庭裁判所の審判養親の要件成年者配偶者あり、25歳以上(一方は20歳以上)養子の年齢制限なし原則15歳未満実父母の同意不要原則必要実方との親族関係存続終了離縁協議離縁・裁判離縁家庭裁判所の審判のみ(極めて限定的)試験養育期間なし6か月以上戸籍の記載「養子」と記載「長男」「長女」等と記載

試験での出題ポイント

  1. 親権は子の利益のための制度: 2011年改正で明文化
  2. 利益相反行為は外形的に判断: 動機・意図は考慮しない(判例)
  3. 親権喪失と親権停止の違い: 「著しく害する」か「害する」か、期間の有無
  4. 懲戒権の削除: 2022年改正で旧822条は削除
  5. 普通養子は実方との関係存続: 特別養子は関係終了
  6. 特別養子の養親要件: 配偶者あり、25歳以上(一方は20歳以上)
  7. 特別養子の離縁: 協議離縁不可、家庭裁判所の審判のみ
確認問題

親権を行う者とその子との利益相反行為に該当するかどうかは、親権者の動機や意図を考慮して判断する。

○ 正しい × 誤り
解説
判例(最判昭和42年4月18日)は、利益相反行為に該当するかどうかは、行為の外形から客観的に判断すべきであるとしています。親権者の動機や意図は考慮しません。例えば、子のためにする意図であっても、親の債務のために子の不動産に抵当権を設定する行為は、外形的に利益相反に該当します。
確認問題

特別養子縁組が成立すると、養子と実方の父母及びその血族との親族関係は終了する。

○ 正しい × 誤り
解説
民法第817条の9は「養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する」と規定しています。これが特別養子縁組の最大の特徴であり、普通養子縁組(実方との親族関係が存続する)との最も重要な相違点です。
確認問題

普通養子縁組において、未成年者を養子にする場合は常に家庭裁判所の許可が必要である。

○ 正しい × 誤り
解説
未成年者を養子にする場合は原則として家庭裁判所の許可が必要ですが(民法第798条本文)、自己又は配偶者の直系卑属を養子にする場合は家庭裁判所の許可は不要です(同条ただし書)。例えば、再婚相手の連れ子(配偶者の子)を養子にする場合がこれに該当します。

まとめ

親権は子の利益のための制度であり、身上監護権と財産管理権の2つの内容から構成されます。利益相反行為の外形的判断、親権喪失と停止の区別は試験の頻出論点です。

養子縁組では、普通養子と特別養子の違いを比較表で正確に整理することが最も重要です。成立方法、養親・養子の要件、実方との親族関係の存否、離縁の可否という4つの観点から比較し、両制度の本質的な違いを理解しておきましょう。

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