行政手続法の全体像|目的・適用範囲を図解
行政手続法の目的(1条)、適用範囲と適用除外(3条・4条)、処分・行政指導・届出の3本柱を図解で解説。地方公共団体との関係や命令等制定手続きまで、行政書士試験に頻出の条文を正確に整理します。
行政手続法は、行政書士試験の行政法科目において最も条文知識が問われる法律の一つです。択一式では毎年複数問が出題され、条文の正確な理解が合否を分けるといっても過言ではありません。本記事では、行政手続法の目的・適用範囲から処分・行政指導・届出の3本柱の概要、地方公共団体との関係まで、全体像を体系的に整理します。
行政手続法の目的(1条)
行政手続法は、1993年(平成5年)に制定された法律であり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図ることを目的としています。
この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第四十六条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。
― 行政手続法 第1条1項
1条の重要キーワード
この条文には、試験で問われる重要なキーワードが複数含まれています。
1条2項の意義
処分、行政指導及び届出に関する手続に関しこの法律に規定する事項について、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。
― 行政手続法 第1条2項
行政手続法は一般法であり、個別法に特別の定めがある場合は個別法が優先適用されます。ただし、命令等を定める手続については1条2項の対象外であり、個別法に特別の定めがあっても行政手続法の規定が適用される点に注意が必要です。
行政手続法1条1項は、行政運営における公正の確保と迅速性の向上を図ることを目的としている。○か×か。
行政手続法が対象とする4つの手続
行政手続法は、以下の4つの手続について規定しています。制定当初は処分・行政指導・届出の3本柱でしたが、2005年(平成17年)の改正により命令等制定手続が追加されました。
全体の構成
処分・行政指導・届出の定義(2条)
行政手続法2条は、法律で使用される用語の定義を規定しています。試験での出題頻度が極めて高い条文です。
処分(2条2号):
行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。
― 行政手続法 第2条2号
申請(2条3号):
法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
― 行政手続法 第2条3号
不利益処分(2条4号):
行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。
― 行政手続法 第2条4号
不利益処分の定義から除外されるものとして、以下が規定されています。
- 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分(イ)
- 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分(ロ)
- 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分(ハ)
- 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の根拠となる法令の規定により当該処分の要件とされている事実が発生したことを理由としてされるもの(ニ)
行政指導(2条6号):
行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。
― 行政手続法 第2条6号
適用除外(3条)
行政手続法3条は、同法の規定が適用されない処分・行政指導を列挙しています。試験では、ある行為が適用除外に該当するか否かが問われます。
3条1項の適用除外(処分・行政指導に関する適用除外)
主な適用除外事項は以下のとおりです。
3条3項の適用除外(命令等制定手続に関する適用除外)
命令等制定手続(第6章)については、以下の場合に適用が除外されます。
- 法律の施行期日について定める政令
- 恩赦に関する命令
- 命令等を定める行為が処分に該当する場合(告示によるもの等)
行政手続法は、外国人の出入国に関する処分にも適用される。○か×か。
国の機関等に対する処分等の適用除外(4条)
行政手続法4条は、国の機関又は地方公共団体等に対する処分・行政指導について、行政手続法の適用を除外しています。
国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する処分(これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の名あて人となるものに限る。)及び行政指導並びにこれらの機関又は団体がする届出(これらの機関又は団体がその固有の資格においてすべきこととされているものに限る。)については、この法律の規定は、適用しない。
― 行政手続法 第4条1項
「固有の資格」の意味
4条1項の「固有の資格」とは、国の機関等が一般私人が立ち得ないような立場において処分の名あて人となる場合をいいます。
具体例:
- 固有の資格に該当する例: 国有財産の管理に関する処分、地方公共団体の法定受託事務に関する処分
- 固有の資格に該当しない例: 地方公共団体が一般の事業者と同じ立場で行う建築確認申請に対する処分
固有の資格に該当しない場合は、一般私人と同様に行政手続法が適用されます。
地方公共団体との関係(46条)
行政手続法と地方公共団体の関係は、試験で頻出のテーマです。
地方公共団体は、第三条第三項において第二章から第四章の二までの規定を適用しないこととされた処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続について、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
― 行政手続法 第46条
地方公共団体に対する行政手続法の適用関係
重要なポイントは以下のとおりです。
- 地方公共団体の機関が法律に基づいて行う処分・行政指導・届出には、行政手続法が直接適用される
- 地方公共団体の機関が条例・規則に基づいて行う処分・行政指導・届出には、行政手続法は適用されない(3条3項)
- 条例・規則に基づく行為については、行政手続法の趣旨にのっとり必要な措置を講ずる努力義務がある(46条)
- 46条は「義務」ではなく「努力義務」(「努めなければならない」)である点に注意
命令等制定手続(意見公募手続)の概要
2005年(平成17年)の改正により追加された意見公募手続(パブリックコメント手続)は、行政手続法の4本目の柱です。
命令等の定義(2条8号)
内閣又は行政機関が定める次に掲げるものをいう。
イ 法律に基づく命令(処分の要件を定める告示を含む。)又は規則
ロ 審査基準(法律の規定により、行政機関が審査基準を定めるものに限る。)
ハ 処分基準(法律の規定により、行政機関が処分基準を定めるものに限る。)
ニ 行政指導指針(法律の規定により、行政機関が行政指導指針を定めるものに限る。)
― 行政手続法 第2条8号
意見公募手続の流れ
意見公募手続の基本的な流れは以下のとおりです。
- 案の公示(39条1項): 命令等の案及びこれに関連する資料を公示する
- 意見提出期間の設定(39条3項): 公示の日から起算して30日以上の意見提出期間を設ける
- 意見の考慮(42条): 提出された意見を十分に考慮しなければならない
- 結果の公示(43条1項): 命令等の題名、命令等の案の公示日、提出意見及びこれに対する考慮の結果等を公示する
意見公募手続の重要ポイント
- 意見提出期間は30日以上が原則(39条3項)。ただし、やむを得ない理由がある場合は30日を下回る期間を定めることができる(40条1項)
- 提出された意見が命令等の案と関連のないものであっても、考慮義務は生じる
- 提出意見がなかった場合でも、その旨を公示しなければならない(43条4項)
試験での出題ポイント
行政手続法の全体像に関する問題は、以下のパターンで出題されます。
条文の正確な文言を問う問題
- 1条の目的規定: 「公正の確保と透明性の向上」を「迅速性」等にすり替えたひっかけ
- 透明性の定義: 「行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであること」の正確な暗記
- 46条: 地方公共団体の「努力義務」を「義務」とするひっかけ
適用範囲を問う問題
- 3条の適用除外事項のうち、どれが適用除外に該当するかを問う問題
- 4条の「固有の資格」の該当性を問う問題
- 地方公共団体の条例に基づく処分に行政手続法が適用されるか否かを問う問題
体系的理解を問う問題
- 行政手続法が対象とする手続の種類(処分・行政指導・届出・命令等制定手続)
- 2005年改正で追加された手続が何かを問う問題
- 1条2項の一般法・特別法の関係を問う問題
地方公共団体の機関が条例に基づいて行う処分には、行政手続法の規定が直接適用される。○か×か。
まとめ
行政手続法の全体像に関する重要ポイントを整理します。
- 目的: 行政運営における「公正の確保」と「透明性の向上」を図り、国民の権利利益の保護に資すること(1条1項)。「迅速性」は含まれない
- 対象手続: 処分(申請に対する処分・不利益処分)、行政指導、届出、命令等制定手続の4つ。命令等制定手続は2005年改正で追加
- 一般法としての性格: 他の法律に特別の定めがある場合は個別法が優先(1条2項)。ただし命令等制定手続は対象外
- 適用除外: 3条で列挙された処分・行政指導には不適用。外国人の出入国、公務員の身分に関する処分等が代表例
- 地方公共団体との関係: 法律に基づく処分等には適用あり、条例・規則に基づく処分等には適用なし。46条は努力義務
- 定義規定(2条): 処分、申請、不利益処分、行政指導等の定義は正確に暗記する必要がある
行政手続法は、条文の正確な文言が問われる科目です。特に1条、2条、3条、4条、46条は繰り返し読み込み、キーワードを正確に覚えましょう。