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申請に対する処分|審査基準・標準処理期間を解説

行政手続法の申請に対する処分を徹底解説。申請の定義(2条3号)、審査基準の設定・公表義務(5条)、標準処理期間(6条)、審査・応答義務(7条)、理由の提示(8条)など、試験頻出条文を正確に整理します。

行政手続法の「申請に対する処分」(第2章、5条〜11条)は、行政書士試験において毎年のように出題される最重要分野です。審査基準の設定義務と公表義務の違い、標準処理期間の法的性質、理由の提示の要否など、条文の正確な理解が問われます。本記事では、各条文のポイントを一つひとつ丁寧に解説し、試験で問われるパターンを網羅的に整理します。

申請の定義(2条3号)

まず、行政手続法における「申請」の定義を正確に確認しましょう。

法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
― 行政手続法 第2条3号

申請の3つの要件

申請に該当するためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

要件内容ポイント法令に基づくこと法律・政令・省令等の根拠が必要法令の根拠がない単なる要望・陳情は申請に該当しない許認可等を求める行為であること自己に対して何らかの利益を付与する処分を求める行為「自己に対し」がポイント。第三者のための行為は含まない行政庁が諾否の応答をすべきこと法令上、行政庁に応答義務があること応答義務がない行為(事実上の要望等)は含まない

申請に該当しないもの

  • 法令の根拠のない事実上の要望・陳情
  • 行政庁に諾否の応答義務がないもの(行政指導への協力要請等)
  • 届出(届出は申請とは別の制度として37条で規定)

審査基準(5条)

審査基準に関する5条は、行政手続法の中でも最も出題頻度が高い条文の一つです。

行政庁は、審査基準を定めるものとする。
― 行政手続法 第5条1項

行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
― 行政手続法 第5条2項

行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない。
― 行政手続法 第5条3項

審査基準の3つのポイント

項内容義務の性質試験での出題ポイント1項審査基準の設定法的義務(「定めるものとする」)努力義務ではなく法的義務2項審査基準の具体性法的義務(「しなければならない」)「できる限り具体的なもの」とする義務3項審査基準の公表法的義務(「公にしておかなければならない」)「行政上特別の支障があるとき」は例外

審査基準の定義

審査基準とは何かについて、2条8号ロで定義されています。

申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準
― 行政手続法 第2条8号ロ

審査基準は「命令等」(2条8号)に含まれるため、審査基準を定める際には意見公募手続(第6章)の対象となります。

確認問題

行政手続法5条1項において、審査基準の設定は行政庁の努力義務にとどまる。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
行政手続法5条1項は「行政庁は、審査基準を定めるものとする」と規定しており、これは法的義務です。努力義務ではありません。なお、後述する不利益処分の処分基準(12条1項)は「努力義務」とされており、両者の違いは試験で頻出の比較ポイントです。

標準処理期間(6条)

標準処理期間とは、行政庁が申請を受理してから処分をするまでの通常要すべき標準的な期間をいいます。

行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。
― 行政手続法 第6条

標準処理期間の2つのポイント

内容義務の性質試験での出題ポイント標準処理期間の設定努力義務(「定めるよう努める」)法的義務ではなく努力義務。審査基準の設定(5条1項)が法的義務であるのと対比標準処理期間の公表法的義務(「公にしておかなければならない」)設定した場合には公表義務がある

標準処理期間の起算点

標準処理期間の起算点は「申請がその事務所に到達してから」です。申請が提出先とされている機関の事務所に到達した時点が基準であり、行政庁が申請を受理した時点ではありません。

標準処理期間の法的性質

標準処理期間はあくまで「標準的な期間」であり、これを超えたからといって直ちに処分が違法となるわけではありません。ただし、著しく遅延した場合には、不作為の違法確認訴訟(行政事件訴訟法3条5項)や不作為についての審査請求(行政不服審査法3条)の対象となり得ます。

申請に対する審査・応答義務(7条)

7条は、行政庁が申請を受けた場合の対応について規定しています。

行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。
― 行政手続法 第7条

7条の重要ポイント

  1. 審査開始義務: 申請が事務所に到達したときは「遅滞なく」審査を開始しなければならない
  2. 到達主義: 申請の効力は事務所に到達した時点で発生する。行政庁の受理行為は不要
  3. 形式上の要件に適合しない場合: 補正を求めるか、拒否処分をしなければならない
  4. 申請の放置の禁止: 申請を受理せずに放置することは許されない

「到達主義」の意味

7条は「申請がその事務所に到達したとき」と規定しており、行政庁が申請を受理する行為を要件としていません。つまり、行政庁が窓口で申請書の受取を拒否しても、申請が事務所に到達した時点で審査開始義務が生じます。これは、行政庁による不当な申請拒否を防止する趣旨です。

理由の提示(8条)

8条は、申請を拒否する処分をする場合の理由の提示について規定しています。

行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。
― 行政手続法 第8条1項

前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。
― 行政手続法 第8条2項

8条の重要ポイント

ポイント内容理由提示の時期処分と同時に示さなければならない理由提示の方式処分を書面でするときは、理由も書面で示す例外(但書)要件が客観的指標で明確 + 不適合が申請内容から明らか → 申請者の求めがあったときに示せば足りる適用対象拒否処分の場合のみ。許可する場合は理由提示不要

理由提示の程度に関する判例

理由の提示がどの程度の具体性を要するかについて、判例は以下のように判示しています。

いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がされたかを、申請者においてその記載自体から了知し得るものでなければならない。
― 最判平成23年6月7日(一級建築士免許取消事件)

単に根拠条文を示すだけでは理由の提示として不十分であり、処分の原因となった具体的事実関係と適用法規が分かる程度の記載が必要です。

確認問題

行政手続法8条1項により、行政庁は申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合、処分の後に遅滞なく理由を示せば足りる。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
行政手続法8条1項は「申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない」と規定しています。理由の提示は処分と「同時に」行う必要があり、処分の後に遅滞なく示せば足りるわけではありません。「同時に」という文言は試験で頻出のポイントです。

情報の提供(9条)と公聴会の開催等(10条)

情報の提供(9条)

行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない。
― 行政手続法 第9条1項

行政庁は、申請をしようとする者又は申請者の求めに応じ、申請書の記載及び添付書類に関する事項その他の申請に必要な情報の提供に努めなければならない。
― 行政手続法 第9条2項

9条はいずれも努力義務です。審査の進行状況や処分時期の見通しを示す義務は法的義務ではありません。

公聴会の開催等(10条)

行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、必要に応じ、公聴会の開催その他の適当な方法により当該申請者以外の者の意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない。
― 行政手続法 第10条

10条も努力義務です。公聴会の開催は法的義務ではありません。

複数の行政庁が関与する処分(11条)

行政庁は、申請の処理をするに当たり、他の行政庁において同一の申請者からされた関連する申請が審査中であることをもって自らすべき許認可等をするかどうかについての審査又は判断を殊更に遅延させるようなことをしてはならない。
― 行政手続法 第11条1項

一の申請又は同一の申請者からされた相互に関連する複数の申請に対する処分について複数の行政庁が関与する場合においては、当該複数の行政庁は、必要に応じ、相互に連絡をとり、当該申請者からの説明の聴取を共同して行う等により審査の促進に努めるものとする。
― 行政手続法 第11条2項

11条の重要ポイント

  • 1項: 他の行政庁の審査を理由に、自らの審査・判断を殊更に遅延させてはならない(法的義務)
  • 2項: 複数の行政庁の連絡・共同審査は努力義務(「努めるものとする」)

試験での出題ポイント

申請に対する処分に関する出題は、条文の正確な文言の理解を問うものが大半です。特に以下の点は頻出です。

義務の性質の比較(最重要)

条文内容義務の性質5条1項審査基準の設定法的義務5条3項審査基準の公表法的義務(例外あり)6条標準処理期間の設定努力義務6条標準処理期間の公表法的義務7条審査開始義務法的義務8条1項理由の提示法的義務(例外あり)9条情報の提供努力義務10条公聴会の開催努力義務

この「法的義務か努力義務か」の対比は、毎年のように択一式で問われます。特に、審査基準の設定(法的義務)と標準処理期間の設定(努力義務)の違い、審査基準の設定(法的義務)と処分基準の設定(努力義務、12条1項)の違いは必ず覚えましょう。

不利益処分との比較

申請に対する処分(第2章)と不利益処分(第3章)の対比は、試験で極めて重要です。

項目申請に対する処分不利益処分基準の名称審査基準処分基準基準の設定法的義務(5条1項)努力義務(12条1項)基準の公表法的義務(5条3項)努力義務(12条1項)理由の提示拒否処分の場合(8条)すべての不利益処分(14条)

まとめ

申請に対する処分に関する重要ポイントを整理します。

  1. 申請の定義: 法令に基づき許認可等を求める行為であって、行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの(2条3号)
  2. 審査基準: 設定は法的義務(5条1項)、公表も法的義務(5条3項、例外あり)。「できる限り具体的なもの」とする義務がある(5条2項)
  3. 標準処理期間: 設定は努力義務(6条)、設定した場合の公表は法的義務(6条)。起算点は申請が事務所に到達した時点
  4. 審査・応答義務: 到達主義を採用(7条)。申請が到達したら遅滞なく審査開始。形式不備の場合は補正を求めるか拒否する
  5. 理由の提示: 拒否処分の場合、処分と同時に理由を示す(8条1項)。書面による処分は書面で理由を示す(8条2項)
  6. 義務の性質: 審査基準の設定・公表は法的義務、標準処理期間の設定・情報提供・公聴会は努力義務。この区別は毎年出題される

条文の「法的義務か努力義務か」を正確に覚えることが、得点に直結します。5条〜11条の各条文を繰り返し読み込みましょう。

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