(公開 2026/01/23) / 民法

連帯債務の絶対効と相対効|改正で何が変わった?

連帯債務の絶対効と相対効の違いを改正前後で比較。改正で履行の請求・免除・時効完成が相対効に変更された理由、求償権の仕組み、不真正連帯債務との関係まで行政書士試験の頻出論点を網羅的に解説します。

はじめに|連帯債務は改正の目玉テーマ

連帯債務とは、数人の債務者が同一内容の給付について、各自が独立して全部の給付をなすべき債務を負い、そのうち一人が弁済すれば他の債務者も債務を免れる関係をいいます。

改正民法では、連帯債務に関する規定が大きく変更されました。特に、絶対効事由の大幅な縮小(履行の請求・免除・時効完成が相対効に変更)は試験で最も問われるポイントです。

本記事では、連帯債務の基本的な仕組みと改正のポイントを整理し、試験対策に役立つ知識をまとめます。連帯債務は条文知識を正確に押さえれば確実に得点できる「コスパの高い」分野である一方、絶対効事由を曖昧に覚えていると引っかけ問題で失点しやすい分野でもあります。本記事を読み終える頃には、「どの事由が絶対効で、どの事由が相対効か」「改正で何がどう動いたか」「求償の計算はどうなるか」を一通り説明できる状態を目指します。

この記事で押さえる全体像

行政書士試験における連帯債務の学習は、次の3つの軸で整理すると見通しがよくなります。

学習の軸中心となる条文試験での問われ方対外的効力(絶対効・相対効)民法438〜441条一人に生じた事由が他に及ぶかを問う正誤問題対内的関係(求償権)民法442〜445条負担部分に応じた求償額の計算、通知義務隣接概念との比較不真正連帯債務・連帯保証区別の実益、付従性の有無

この3つを行き来できるようになると、多肢選択でも記述でも安定して対応できます。

連帯債務の基本

連帯債務の成立

連帯債務は、以下の場合に成立します。

  1. 法律の規定: 共同不法行為(民法719条)など
  2. 当事者の意思表示: 契約で連帯債務とする旨の合意

改正民法では、連帯債務の成立要件について明文の整理が加えられました。意思表示による連帯債務は、「数人が連帯して債務を負担する」旨の合意があれば足り、必ずしも「連帯」という文言を用いる必要はありません。実質的に各債務者が全部給付義務を負う合意があるかどうかで判断されます。

なお、改正前の旧432条には「数人が連帯債務を負担するときは」という表現がありましたが、改正後の436条は、法令の規定または当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負う場合に適用される旨を整理しています。

債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
― 民法 第436条

連帯債務の効力

債権者は、連帯債務者の誰に対しても、全額の請求ができます。たとえば、A・B・Cが連帯して300万円の債務を負っている場合、債権者DはA・B・Cのいずれか一人に対して300万円全額を請求できます。一部だけを請求することも、同時に全員に請求することも自由です。

ここで重要なのは、債権者が複数の債務者に同時に全額の履行を「請求」できるとしても、現実に受け取れるのは合計300万円までだという点です。一人が全額弁済すれば、債権は満足を得て消滅し、他の債務者の債務も消えます。請求の自由と、満足による消滅の一回性は分けて理解しましょう。

連帯債務の性質

  • 各債務者の債務は独立: 一人の債務が無効でも、他の債務者の債務には影響しない
  • 全額給付義務: 各債務者は全額を弁済する義務を負う
  • 一人の弁済で全員が免責: 一人が全額弁済すれば、他の債務者の債務も消滅する

債務の独立性は条文にも表れています。

連帯債務者の一人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。
― 民法 第437条

たとえばA・B・Cの連帯債務のうち、Aが制限行為能力者で意思表示を取り消した場合でも、B・Cの債務はそのまま存続します。これは「各債務が独立した別個の債務である」という連帯債務の本質を示す規定で、保証債務が主たる債務に付従するのと対照的です。この対比は試験で頻出するため、後述の比較表で必ず確認してください。

負担部分とは何か

連帯債務を理解するうえで欠かせないのが「負担部分」という概念です。負担部分とは、連帯債務者間の内部関係において、最終的に各自が負担すべき割合(または金額)をいいます。

  • 負担部分は対内的関係(債務者同士の関係)の問題であり、対外的関係(債権者との関係)では各自が全額を負う
  • 負担部分の割合は、当事者間の特約があればそれによる
  • 特約がなければ、原則として平等の割合と解されている

たとえばA・B・Cが300万円の連帯債務を負い、特約がなければ各自の負担部分は100万円ずつです。しかし債権者に対しては、A一人で300万円全額を弁済する義務を負います。Aが300万円を弁済した後、B・Cに対して各100万円を求償することで、最終的な負担が内部割合どおりに調整される——これが連帯債務の基本構造です。

絶対効と相対効の意味

絶対効とは

絶対効とは、連帯債務者の一人について生じた事由が、他の連帯債務者にも影響を及ぼすことをいいます。

たとえば、弁済が絶対効を有する(一人が弁済すれば他の債務者の債務も消滅する)のは当然のことです。絶対効は債務全体に影響するため、債権者・債務者双方にとって効果が大きく、改正でどの事由を絶対効とするかが大きな論点になりました。

相対効とは

相対効とは、連帯債務者の一人について生じた事由が、他の連帯債務者には影響を及ぼさないことをいいます。

連帯債務者の一人について生じた事由は、次条から第440条までに規定する場合(弁済・更改・相殺・混同)を除き、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
― 民法 第441条

改正後は、相対効が原則です。絶対効を有するのは限定された事由のみです。

「相対効の原則」を覚えるコツ

改正後の連帯債務は「迷ったら相対効」と覚えるのが最も実戦的です。絶対効は弁済・更改・相殺・混同の4つに限定されており、これ以外の事由(請求・免除・時効・債権譲渡の通知・確定判決など)は、原則として他の債務者に影響しません。

区分内容覚え方絶対効弁済・更改・相殺・混同の4つ「弁・更・相・混」の4つだけ相対効上記以外すべて(請求・免除・時効など)原則はこちら

「絶対効リストを暗記し、それ以外は全部相対効」という消去法で臨むと、本番で迷いません。

改正後の絶対効事由

改正後に絶対効とされているのは、以下の4つです。

1. 弁済とこれに準じるもの

一人の連帯債務者が弁済(代物弁済・供託を含む)をした場合、債権は消滅し、全員が免責されます。これは連帯債務の本質から当然のことです。弁済は条文に明文の規定こそありませんが、連帯債務の目的である給付が実現される以上、当然に全員の債務が消滅すると解されています。代物弁済(482条)や供託(494条以下)も同様に、債権を満足させて消滅させるものとして絶対効を持ちます。

2. 更改(438条)

連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
― 民法 第438条

連帯債務者の一人と債権者との間で更改がなされると、旧債務は消滅し、全員が免責されます。更改とは、従前の債務に代えて新たな債務を発生させる契約(513条)で、旧債務は消滅します。たとえばAの300万円の金銭債務を「Aが所有する自動車を引き渡す債務」に切り替える更改があれば、もとの300万円の連帯債務は消滅し、B・Cも免責されます。

3. 相殺(439条)

連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
― 民法 第439条第1項

連帯債務者の一人が債権者に対して反対債権を有し、相殺を援用した場合、その相殺の限度で全員の債務が消滅します。

ただし、相殺を援用しない連帯債務者は、その反対債権を有する連帯債務者の負担部分の限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができます(439条2項)。

前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
― 民法 第439条第2項

ここは改正で表現が整理された重要ポイントです。改正前は、反対債権を有する債務者以外の者が「その負担部分について相殺を援用できる」と読める規定でしたが、改正後は他人の債権を勝手に処分できないという原則を尊重し、他の債務者は相殺そのものはできず、履行を拒絶できるにとどまるとしました。「援用できる」ではなく「履行を拒める」という点を正確に押さえましょう。

たとえばAが債権者Dに対して100万円の反対債権を持っているのにAが相殺を援用しない場合、B・Cは、Aの負担部分(100万円とする)の限度で、Dからの請求に対して支払いを拒めます。

4. 混同(440条)

連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。
― 民法 第440条

連帯債務者の一人が債権者を相続した場合など、混同が生じた場合は弁済とみなされます。たとえば連帯債務者Aが債権者Dを単独相続すると、AはDの地位を承継し、債権者と債務者が同一人に帰します。このとき440条により「Aが弁済をしたものとみなす」ため、債権は満足を得て消滅し、B・Cも対外的には債務を免れます。その後、Aは弁済者として、B・Cにそれぞれの負担部分を求償できます。

絶対効4事由の整理表

事由根拠条文効果ポイント弁済等明文なし(弁済の本質)債権満足により全員免責代物弁済・供託を含む更改438条全員の利益のために債権消滅旧債務が新債務に置き換わる相殺439条1項相殺の限度で全員免責援用しない者は2項で履行拒絶可混同440条弁済とみなす相続による合一が典型

改正で相対効に変更された事由

改正前後の比較表

事由改正前改正後弁済絶対効絶対効(変更なし)更改絶対効絶対効(変更なし)相殺絶対効絶対効(変更なし)混同絶対効絶対効(変更なし)履行の請求絶対効相対効に変更免除絶対効相対効に変更時効の完成絶対効相対効に変更

この表は連帯債務分野で最も出題頻度が高い知識です。とくに「請求・免除・時効完成」の3つが改正で絶対効から相対効に移った点は、繰り返し問われています。逆に「弁済・更改・相殺・混同は改正前後で変わっていない」ことも、引っかけ対策として押さえておきましょう。

履行の請求が相対効に変更された理由

改正前は、連帯債務者の一人に対する履行の請求が他の債務者にも効力を及ぼしました(旧434条)。これにより、一人に請求すれば全員の消滅時効が中断するという便宜がありました。

しかし、債権者が連帯債務者の一人に請求した事実を他の債務者が知らないまま時効が中断(改正後は「完成猶予・更新」)されるのは不公平であるとの批判がありました。改正後は、履行の請求は相対効となり、一人に対する請求は他の連帯債務者には影響しません

これは実務的に大きな影響があります。改正後、債権者がすべての連帯債務者について時効の完成を防ぎたいなら、全員に対して個別に請求その他の時効の完成猶予・更新の措置をとる必要があるということです。ここを怠ると、請求していない債務者についてだけ時効が完成してしまうリスクが生じます。

ただし、441条ただし書により、債権者と他の連帯債務者が「別段の意思を表示した」場合は、請求に絶対効を認めることができます。契約実務では、この別段の意思表示によって「一人への請求は全員に効力を生じる」とする特約が用いられることがあります。

免除が相対効に変更された理由

改正前は、連帯債務者の一人に対する免除があると、その者の負担部分について他の債務者も免責されました(旧437条)。

たとえば、A・B・Cが各100万円ずつの負担部分で300万円の連帯債務を負っていた場合、Aが免除を受けると、B・Cの債務は200万円に減少していました。

改正後は、免除は相対効となったため、Aが免除を受けてもB・Cの債務は300万円のままです。ただし、求償の場面で調整が図られます(後述)。

この変更の趣旨は、債権者の意思の尊重にあります。債権者が一人だけを免除したい(残りからは全額回収したい)と考えても、改正前は負担部分の限度で他の債務者まで自動的に免責されてしまい、債権者の意図に反する結果になりがちでした。改正後は、免除は免除を受けた者との関係でのみ効力を生じるため、債権者は柔軟に債権管理ができます。

時効の完成が相対効に変更された理由

改正前は、連帯債務者の一人について消滅時効が完成すると、その者の負担部分について他の債務者も免責されました(旧439条)。

改正後は、時効の完成も相対効です。一人について時効が完成しても、他の連帯債務者の債務額には影響しません。これにより、ある債務者が時効を援用しても、他の債務者は依然として全額の支払義務を負い続けます。

相対効化された事由と求償への配慮

免除・時効完成が相対効になったことで、「免除を受けた者・時効が完成した者は、もう債権者には支払わなくてよいのに、他の債務者から求償されてしまうのか」という問題が生じます。この点について改正民法は445条で次のように手当てしています。

連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第442条第1項の求償権を行使することができる。
― 民法 第445条

つまり、免除を受けた者・時効が完成した者であっても、内部関係としての求償義務は免れないというのが改正後の明文の立場です。「対外的には支払わなくてよい」ことと「対内的には負担部分を負担する」ことは別問題、と整理しておきましょう。後述の「免除と求償の関係」とあわせて確認してください。

求償権の仕組み

弁済した場合の求償権(442条)

連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。
― 民法 第442条第1項

弁済した連帯債務者は、他の連帯債務者に対して各自の負担部分に応じた金額を求償できます。改正前は「自己の負担部分を超える」弁済をした場合にのみ求償できましたが、改正後は負担部分を超えなくても求償が可能になりました。

たとえばA・B・Cが各100万円の負担部分で300万円の連帯債務を負い、Aが90万円だけ一部弁済したとします。改正前は、Aの弁済額90万円が自己の負担部分100万円を超えていないため求償できませんでした。改正後は、負担部分を超えるかどうかにかかわらず求償できるため、Aは90万円を負担割合に応じて分け、B・Cにそれぞれ30万円ずつ求償できます。

求償の範囲(442条2項)

求償できるのは元本だけではありません。

前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を含む。
― 民法 第442条第2項

求償の範囲には、免責があった日以後の法定利息、避けられなかった費用(強制執行費用など)、その他の損害賠償が含まれます。「免責があった日以後」の利息である点に注意しましょう。

通知義務(443条)

連帯債務者間の求償に関連して、弁済前後の通知義務が定められています。

  • 事前通知: 弁済等をしようとする場合、他の連帯債務者に通知すべき(443条1項)
  • 事後通知: 弁済等をした場合、他の連帯債務者に通知すべき(443条2項)
他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の一人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。
― 民法 第443条第1項(抜粋)

通知義務のポイントを整理すると次のとおりです。

場面通知を怠った者効果事前通知の懈怠(1項)弁済する者他の債務者が持っていた抗弁(相殺など)を、負担部分の限度で対抗される事後通知の懈怠(2項)弁済した者他の債務者が善意で二重に弁済した場合、後の弁済を有効とみなされうる

443条で頻出するのは、二重弁済が起きた場合の処理です。先に弁済した者が事後通知を怠り、かつ後から弁済した者が事前通知をしたうえで善意で弁済したときは、後の弁済者は自己の弁済を有効であったものとみなすことができます(443条2項)。前の弁済者が事後通知を怠った点が責められる構造です。なお、判例(最判昭和57年12月17日)は、第一の弁済者が事後通知を怠り、かつ第二の弁済者も事前通知を怠っていた事案で、443条2項は適用されず、原則どおり第一の弁済が有効になるとしています。両者がともに通知を怠った場合は、先に弁済した者が保護されるという結論を押さえておきましょう。

償還無資力者がいる場合の負担(444条)

求償の相手方の中に、支払能力のない者(無資力者)がいる場合の分担ルールも定められています。

連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する。
― 民法 第444条第1項

たとえばA・B・Cが各100万円の負担部分で、Aが300万円を弁済したものの、Cが完全に無資力だったとします。本来Cが負担すべき100万円は回収できないため、これをAとBで負担部分の割合(ここでは1:1)に応じて分担します。結果として、AとBがそれぞれ150万円ずつ最終負担することになり、AはBに150万円を求償できます。無資力者の負担を、求償者自身も含めて分け合う点がポイントです。

免除と求償の関係

改正後は免除が相対効となったため、新たな問題が生じます。

A・B・Cが各100万円の負担部分で300万円の連帯債務を負い、Aが免除を受けた場合を考えます。改正後、B・Cの債務は300万円のままです。Bが300万円を弁済した場合、BはAとCに各100万円を求償できます(445条により、免除を受けたAに対しても求償できる)。しかし、Aは債権者から免除を受けているのに、Bからの求償を受けるのは酷ではないかという問題があります。

この点について、改正民法の立案担当者は、BがAに求償した場合、Aは最終的に債権者に対して不当利得返還請求ができると説明しています。免除によって債権者が得た利益(Aの負担部分相当額の出捐をAがしないで済むという期待)が、求償によって失われるため、その分を債権者に取り戻すという発想です。もっとも、実務上の処理は今後の判例の蓄積を待つ必要があります。試験対策としては、445条により免除・時効完成があっても求償できるという結論を確実に押さえておけば十分です。

不真正連帯債務との関係

不真正連帯債務とは

不真正連帯債務とは、法律の規定や当事者の合意によらず、事実上、数人の債務者が同一内容の給付義務を負う関係をいいます。各債務者の間に主観的な共同関係(負担部分を分け合う関係)がない点が、本来の連帯債務との違いです。

典型例として、使用者の損害賠償責任(民法715条)と被用者の不法行為責任(民法709条)が不真正連帯債務の関係にあるとされてきました。共同不法行為(719条)についても、判例は不真正連帯債務と性質づけてきました。

不真正連帯債務の特徴と判例

不真正連帯債務の最大の特徴は、各債務者間に負担部分がない(または観念しにくい)ため、一人について生じた事由は、債務を満足させる弁済等を除いて、原則として他の債務者に影響しないという点でした。改正前の連帯債務では請求・免除・時効などに絶対効があったため、これと区別する実益が大きかったのです。

判例の重要なものとして、共同不法行為者の一人がした弁済の効力に関するものがあります。

甲乙が共同不法行為により他人に損害を加えた場合において、甲が被害者に対して損害の一部を弁済したときは、その弁済は乙の債務をも消滅させる。
― 最判昭和48年1月30日(共同不法行為の弁済の趣旨)

このように、不真正連帯債務でも弁済には絶対効が認められます。一方で、改正前の連帯債務とは異なり、不真正連帯債務では一人に対する履行の請求や免除、時効の完成は他の債務者に影響しないとされてきました。たとえば最判平成10年9月10日は、共同不法行為者の一人に対する免除の効力について、債権者が他の債務者の債務を免除する意思を含まない限り、他の債務者に効力は及ばないとしています。

改正による区別の実益の減少

改正前は、連帯債務には絶対効事由が多く認められていたため、絶対効が認められない不真正連帯債務との区別に実益がありました。

改正後は、連帯債務においても相対効が原則となったため、連帯債務と不真正連帯債務の区別の実益は大幅に減少しています。改正後の連帯債務でも、請求・免除・時効完成は相対効となり、不真正連帯債務とほぼ同様の処理になったからです。

ただし、求償関係については依然として差が残るとの指摘があります。本来の連帯債務には負担部分があり、442条以下の求償ルールが直接適用されますが、不真正連帯債務では負担部分の観念が異なるため、求償の可否や範囲が事案ごとに判断される傾向があります。試験では「改正で区別の実益が減少した」という大きな流れを押さえつつ、求償の場面では完全に同一視できないことも意識しておくとよいでしょう。

連帯債務と保証債務の比較

連帯債務と混同しやすいのが連帯保証です。両者は「全額を負担しうる」点で似ていますが、付従性の有無という根本的な違いがあります。

項目連帯債務連帯保証独立性/付従性各債務は独立主たる債務に付従催告の抗弁権なしなし(連帯保証の場合)検索の抗弁権なしなし(連帯保証の場合)分別の利益なしなし主債務の無効・取消し他の債務に影響しない(437条)保証債務も成立しない(付従性)求償権負担部分に応じて全額(委託ある場合)

最大の違いは付従性です。連帯保証では、主たる債務が無効・取消しによって存在しなければ、保証債務も成立しません(保証の付従性)。これに対し連帯債務では、ある債務者の債務に無効・取消原因があっても、他の債務者の債務は影響を受けません(437条)。「付従性があるのが保証、独立しているのが連帯債務」という対比が、両者を区別する決め手になります。

なお、連帯保証人が複数いる場合に分別の利益がない点(各連帯保証人が全額を保証する)は、通常の共同保証と異なるところで、ここも試験で問われやすいポイントです。

試験での出題ポイント

連帯債務は、条文をベースにした正誤判定で繰り返し出題されます。過去問で問われてきた角度と、押さえるべきポイントを整理します。

  • 絶対効事由は4つのみ: 弁済・更改・相殺・混同(「弁・更・相・混」で暗記)
  • 請求・免除・時効完成は相対効に変更: 改正の最重要ポイント。逆に弁済・更改・相殺・混同は改正前後で不変
  • 441条ただし書: 別段の意思表示で相対効事由を絶対効にできる
  • 相殺の援用: 反対債権を持つ者が援用しないとき、他の債務者は「相殺できる」のではなく「負担部分の限度で履行を拒める」(439条2項)
  • 求償権: 負担部分を超えなくても求償可能(442条1項・改正)。法定利息・費用も含む(442条2項)
  • 445条: 免除・時効完成があっても、他の債務者はその者に求償できる
  • 443条: 事前・事後の通知懈怠による求償制限、二重弁済の処理
  • 444条: 無資力者の負担分は、求償者を含む資力者で負担部分に応じて分担
  • 437条: 一人の無効・取消しは他に影響しない(独立性)
  • 不真正連帯債務との区別の実益の減少: ただし求償の場面では差が残るとの指摘

よくある誤解・ひっかけパターン

ありがちな誤解正しい理解「一人に請求すれば全員の時効が止まる」改正後は相対効。全員に個別の措置が必要「一人を免除すれば他の債務額も減る」改正後は相対効。他は全額のまま(旧法では負担部分減少)「他の債務者が相殺を援用できる」援用はできない。履行拒絶ができるにとどまる(439条2項)「負担部分を超えないと求償できない」改正後は超えなくても求償可(442条1項)「免除を受けた者には求償できない」445条により求償できる「連帯債務でも主債務無効なら全部無効」それは保証の付従性。連帯債務は独立(437条)

確認クイズ

確認問題

改正民法では、連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても効力を生じる(絶対効を有する)。

○ 正しい × 誤り
解説
改正前は履行の請求に絶対効が認められていましたが、改正後は相対効に変更されました。ただし、民法441条ただし書により、債権者と他の連帯債務者の間で別段の意思表示をした場合は絶対効とすることができます。
確認問題

連帯債務者の一人が債権者に対して反対債権を有する場合、他の連帯債務者はその者の負担部分の限度において債務の履行を拒むことができる。

○ 正しい × 誤り
解説
民法439条2項は、相殺を援用しない連帯債務者について、反対債権を有する連帯債務者の負担部分の限度において、債権者に対する債務の履行を拒むことができると規定しています。なお、他の連帯債務者が自ら相殺を援用することはできません。
確認問題

改正民法では、連帯債務者の一人が弁済をした場合、自己の負担部分を超える額を弁済したときに限り、他の連帯債務者に対して求償権を有する。

○ 正しい × 誤り
解説
改正後の442条1項は「その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず」求償権を有するとしています。改正前は負担部分を超える弁済が必要でしたが、改正後はこの制限がなくなりました。
確認問題

連帯債務者の一人が債務の免除を受けた場合、他の連帯債務者が弁済をしても、免除を受けた者に対しては求償することができない。

○ 正しい × 誤り
解説
民法445条は、連帯債務者の一人に対して免除がされ、又は時効が完成した場合でも、他の連帯債務者は442条1項の求償権を行使できると規定しています。免除・時効完成は相対効であり、対外的な債務は消えても、内部関係としての求償義務は免れません。
確認問題

連帯債務者の一人について法律行為の取消原因がある場合、その者が取消しの意思表示をすると、他の連帯債務者の債務も効力を失う。

○ 正しい × 誤り
解説
民法437条は、連帯債務者の一人について法律行為の無効・取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務はその効力を妨げられないと規定しています。連帯債務は各債務が独立しているため、一人の取消しは他に影響しません。これは付従性のある保証債務との大きな違いです。

まとめ

連帯債務は、改正民法で絶対効事由が大幅に縮小された重要テーマです。条文をベースに、対外的効力・対内的関係・隣接概念の3つの軸で整理しておきましょう。

  • 絶対効事由: 弁済・更改・相殺・混同の4つのみ(438〜440条)
  • 相対効に変更: 履行の請求・免除・時効の完成(改正の最重要ポイント)
  • 原則は相対効: 441条で明文化、ただし別段の意思表示で絶対効に変更可能
  • 求償権: 負担部分を超えなくても行使可能に(442条)。法定利息・費用も含む
  • 免除・時効完成と求償: 445条により、免除・時効完成があっても求償可能
  • 通知義務・無資力者の負担: 443条・444条の処理を押さえる
  • 独立性: 一人の無効・取消しは他に影響しない(437条)。保証の付従性との対比が頻出
  • 不真正連帯債務との区別: 改正後は実益が減少。ただし求償の場面では差が残る

改正前後の比較表を使って、どの事由が絶対効でどの事由が相対効に変わったかを正確に整理しておきましょう。

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#債権 #改正民法 #民法

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