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行政不服審査法vs行政事件訴訟法|2法の徹底比較

行政不服審査法と行政事件訴訟法を徹底比較。審査請求と取消訴訟の違い、手続き・期間・対象の差異を表形式で整理し、試験での混同を防ぎます。

はじめに:行政救済法の全体像を把握する

行政書士試験の行政法分野において、行政不服審査法と行政事件訴訟法は最重要科目の一つです。この2つの法律は、いずれも違法・不当な行政活動から国民の権利利益を救済するための制度を定めたものですが、制度の仕組みや手続の詳細は大きく異なります。

試験では、両法の相違点を正確に理解しているかを問う問題が繰り返し出題されています。たとえば、「審査請求期間」と「出訴期間」の違い、「書面審理主義」と「口頭弁論主義」の違い、「事情裁決」と「事情判決」の違いなど、似て非なる制度を混同しないことが合格の鍵を握ります。

行政救済法の全体像を整理すると、国民が行政活動に不服がある場合の救済手段は大きく3つに分けられます。第一に、行政庁に対して不服を申し立てる「行政不服申立て」(行政不服審査法)。第二に、裁判所に対して訴訟を提起する「行政事件訴訟」(行政事件訴訟法)。第三に、違法な行政活動によって生じた損害の賠償や損失の補償を求める「国家補償」(国家賠償法・損失補償)です。

本記事では、このうち行政不服審査法と行政事件訴訟法の2法に焦点を当て、7つの比較ポイントを軸に徹底的に整理します。最後に大きな比較表も掲載しますので、試験直前の確認にもご活用ください。

比較ポイント1:制度の目的と性格

行政不服審査法の目的

行政不服審査法は、行政庁に対する不服申立ての制度を定めた法律です。同法1条1項は、その目的を次のように規定しています。

この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。
――行政不服審査法1条1項

ここで重要なキーワードは「簡易迅速」と「公正な手続」です。行政不服審査法の制度は、裁判所による訴訟よりも簡易かつ迅速に国民の権利利益を救済することを目指しています。訴訟には弁護士費用や長期間の審理が伴いますが、審査請求は原則として書面で行うことができ、費用もかかりません。

また、「行政の適正な運営の確保」という目的も見逃せません。行政不服審査法は、国民の権利救済のみならず、行政の自己統制機能としての役割も担っています。

行政事件訴訟法の目的

行政事件訴訟法は、行政事件に関する訴訟手続について定めた法律です。同法1条は次のように規定しています。

この法律は、行政事件訴訟については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
――行政事件訴訟法1条

行政事件訴訟法自体には目的規定がありませんが、裁判所による司法審査を通じて行政活動の適法性を統制し、国民の権利利益を救済することがその制度趣旨です。裁判所という独立した第三者機関が審理を行うため、行政庁自身が審理を行う行政不服審査法と比較して、より慎重で公正な法的判断が期待できます。

両者の関係

行政不服審査法と行政事件訴訟法は、いずれも行政救済法の柱をなすものですが、その性格は異なります。行政不服審査法は「行政内部における簡易迅速な救済手段」であり、行政事件訴訟法は「裁判所による慎重な法的判断に基づく救済手段」です。両者は対立するものではなく、国民の権利救済を多層的に保障するための制度として相互に補完しあう関係にあります。

比較ポイント2:審理する機関と審理の方式

審理する機関の違い

行政不服審査法における審査請求は、処分庁の最上級行政庁(処分庁に上級行政庁がない場合は処分庁自身)が審査庁となります(行審法4条)。審査庁が指名する審理員が審理手続を行い(行審法9条1項)、行政不服審査会等への諮問を経て(行審法43条)、審査庁が裁決を行います。

一方、行政事件訴訟法における取消訴訟は、裁判所が審理を行います。管轄裁判所は、原則として被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所ですが、処分をした行政庁の所在地を管轄する裁判所にも提起できます(行訴法12条)。

この違いは極めて重要です。行政不服審査法では行政機関が自ら審理を行うため、行政の専門的知見を活かした判断が期待できる反面、公正性の面で懸念が生じます。この懸念に対応するため、2014年の行政不服審査法全部改正で審理員制度と行政不服審査会への諮問制度が導入されました。

書面審理主義と口頭弁論主義

行政不服審査法における審査請求は、原則として書面審理主義が採用されています。審査請求は書面を提出して行い(行審法19条1項)、審理手続も書面で進行します。ただし、審査請求人の申立てがあった場合には、審理員は口頭で意見を述べる機会を与えなければなりません(行審法31条1項)。この口頭意見陳述において、申立人は処分庁等に対して質問を発することができます(行審法31条5項)。

行政事件訴訟法における取消訴訟は、民事訴訟法の規定が準用されるため(行訴法7条)、口頭弁論主義が採用されています。裁判所での審理は公開の法廷において口頭弁論で行われ、当事者双方が主張・立証を行います。この方式は、書面審理と比較して手続に時間とコストがかかりますが、より慎重かつ公正な審理が期待できます。

審理における違法と不当の審査範囲

審理する機関の違いに関連して、審査範囲の違いも重要です。行政不服審査法では、処分の「違法」のみならず「不当」も審査の対象となります。行政庁が自ら審理を行うため、裁量の当不当にまで踏み込んだ判断が可能です。

一方、行政事件訴訟法における司法審査では、原則として処分の「違法」のみが審査の対象となり、処分の「不当」(裁量の当不当)は審査の対象となりません。裁判所は司法権の担い手として法的判断を行う機関であり、行政庁の裁量判断の当否にまで立ち入ることは、権力分立の観点から原則として許されないためです。ただし、裁量権の逸脱・濫用がある場合には、違法として取り消すことができます(行訴法30条)。

比較ポイント3:対象の範囲

行政不服審査法の対象

行政不服審査法の対象は、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」と「法令に基づく申請に対する不作為」です(行審法1条2項、3条)。

ここでいう「処分」の範囲は、行政事件訴訟法における「処分」よりも広いと解されています。行政事件訴訟法の処分性が認められるためには、「公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているもの」(最判昭和39年10月29日)という厳格な要件が求められます。これに対し、行政不服審査法は簡易迅速な救済を目的としているため、処分の範囲がやや広く解釈される傾向にあります。

行政事件訴訟法の対象

行政事件訴訟法は、行政不服審査法よりも多様な訴訟類型を定めています。行政事件訴訟の類型は以下の4つに大別されます。

第一に、抗告訴訟です。処分の取消しの訴え、裁決の取消しの訴え、無効等確認の訴え、不作為の違法確認の訴え、義務付けの訴え、差止めの訴えが含まれます(行訴法3条)。

第二に、当事者訴訟です。形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟(公法上の法律関係に関する確認の訴え等)があります(行訴法4条)。

第三に、民衆訴訟です。選挙訴訟や住民訴訟が典型例です(行訴法5条)。

第四に、機関訴訟です。国の機関相互間や地方公共団体の機関相互間の訴訟です(行訴法6条)。

このように、行政事件訴訟法は処分に対する不服申立てにとどまらず、公法上の法律関係全般を対象とする訴訟類型を備えている点で、行政不服審査法よりも対象範囲が広い側面もあります。

対象の比較まとめ

両法の対象を整理すると、個別の処分に対する不服申立ての場面では行政不服審査法のほうが処分概念が広く、救済の間口が広いといえます。一方、訴訟類型全体でみると、行政事件訴訟法は当事者訴訟や民衆訴訟など、処分以外の行政活動についても争う手段を提供しています。

比較ポイント4:不服申立期間と出訴期間

審査請求期間(行政不服審査法)

行政不服審査法における審査請求期間は、以下の2つの期間制限があります。

主観的審査請求期間:処分があったことを知った日の翌日から起算して3月以内(行審法18条1項)。正当な理由があるときは、この期間を経過した後でも審査請求をすることができます。

客観的審査請求期間:処分があった日の翌日から起算して1年以内(行審法18条2項)。正当な理由があるときは、この期間を経過した後でも審査請求をすることができます。

起算点に注意が必要です。行政不服審査法では、いずれも「翌日」から起算する初日不算入の原則が採用されています。

出訴期間(行政事件訴訟法)

行政事件訴訟法における取消訴訟の出訴期間は、以下の2つの期間制限があります。

主観的出訴期間:処分又は裁決があったことを知った日から6月以内(行訴法14条1項)。正当な理由があるときは、この期間を経過した後でも訴えを提起することができます。

客観的出訴期間:処分又は裁決の日から1年を経過したときは、提起することができない(行訴法14条2項)。正当な理由があるときは、この限りではありません。

ここで重要な違いは起算点です。行政事件訴訟法では「知った日から」「処分の日から」と規定されており、行政不服審査法のように「翌日から」という文言がありません。判例では、行訴法14条1項の「知った日」については、知った日の翌日から起算するとされていますが、条文上の文言の違いは試験で問われるポイントです。

期間比較のポイント

両法の期間を比較すると、主観的期間は行審法が3月、行訴法が6月です。客観的期間は、いずれも1年ですが、行審法は「翌日から1年以内」、行訴法は「日から1年を経過したとき」と表現が異なります。

審査請求の期間が取消訴訟よりも短い理由は、行政不服審査法が簡易迅速な救済を目的としているためです。不服があれば速やかに審査請求をすべきであり、長期間放置した後に審査請求を認めると、行政の安定性が損なわれるためです。

確認問題

行政不服審査法における審査請求の主観的請求期間は、処分があったことを知った日の翌日から6月以内である。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
行政不服審査法における主観的審査請求期間は、処分があったことを知った日の翌日から「3月以内」です(行審法18条1項)。6月以内は行政事件訴訟法における取消訴訟の主観的出訴期間です(行訴法14条1項)。両者の期間の混同は試験で頻出の引っかけポイントです。

比較ポイント5:自由選択主義と審査請求前置

自由選択主義の原則

行政庁の処分に不服がある場合、国民は審査請求と取消訴訟のいずれを先に行うかを自由に選択できます。これを「自由選択主義」といいます。行政事件訴訟法8条1項本文は、「処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない」と規定しています。

自由選択主義の下では、以下のような選択が可能です。

  1. 審査請求をせずに直接取消訴訟を提起する
  2. 先に審査請求を行い、裁決を待ってから取消訴訟を提起する
  3. 審査請求と取消訴訟を同時に行う

いずれの方法も適法であり、国民の権利救済の選択肢を広く保障する趣旨です。

審査請求前置の例外

自由選択主義の例外として、個別の法律で審査請求前置主義が定められている場合があります。審査請求前置主義とは、取消訴訟を提起する前に、必ず審査請求を経なければならないとする制度です。

行政事件訴訟法8条1項ただし書は、「法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない」と規定しています。

審査請求前置が定められている例としては、国税通則法115条(国税に関する処分)、生活保護法69条(生活保護に関する処分)などがあります。

裁決主義

審査請求前置に関連して、裁決主義についても押さえておく必要があります。裁決主義とは、原処分ではなく裁決のみを訴訟の対象とする制度です。通常は原処分主義(行訴法10条2項参照)が採られており、取消訴訟では原処分の違法を主張できますが、裁決主義が採用されている場合は、裁決の取消しの訴えのみが提起できます。

裁決主義は個別法で定められる例外的な制度であり、電波法96条の2などがその例です。試験対策としては、原処分主義が原則であり、裁決主義は個別法で定められた例外であるという点を押さえておけば十分です。

比較ポイント6:裁決・判決の種類と効力

行政不服審査法における裁決の種類

行政不服審査法における裁決の種類は以下のとおりです。

却下裁決:審査請求が不適法である場合に、本案の審理に入らずに退ける裁決です(行審法45条1項、49条1項)。審査請求期間の徒過や、処分性がない行為に対する審査請求などが該当します。

棄却裁決:審査請求に理由がない場合(処分が違法・不当でない場合)に行われる裁決です(行審法45条2項、49条2項)。

認容裁決:審査請求に理由がある場合に行われる裁決です。処分についての審査請求が理由がある場合、審査庁は処分の全部もしくは一部を取り消し、又はこれを変更します(行審法46条1項)。ここで重要なのは、行政不服審査法では「変更」裁決も可能である点です。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合は、処分庁に対し当該処分を変更すべき旨を命じることはできません。また、審査請求人の不利益に変更することはできません(不利益変更の禁止、行審法48条)。

事情裁決:処分が違法又は不当であるにもかかわらず、これを取り消し又は変更することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合に、審査請求を棄却する裁決です(行審法45条3項)。この場合、裁決の主文で処分が違法又は不当であることを宣言しなければなりません。

行政事件訴訟法における判決の種類

行政事件訴訟法における取消訴訟の判決の種類は以下のとおりです。

却下判決:訴えが不適法である場合に、本案の審理に入らずに退ける判決です。訴訟要件(処分性、原告適格、訴えの利益、出訴期間等)を欠く場合に行われます。

棄却判決:原告の請求に理由がない場合(処分が違法でない場合)に行われる判決です。

認容判決(取消判決):原告の請求に理由がある場合に行われる判決です。裁判所は処分又は裁決を取り消します。ここで重要なのは、行政事件訴訟法では取消判決のみが認められ、「変更」判決は認められない点です。裁判所が行政庁の処分を変更することは、司法権による行政権への過度の介入となるため、権力分立の観点から許されません。

事情判決:処分又は裁決が違法であるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合に、原告の請求を棄却する判決です(行訴法31条1項)。この場合、判決の主文で処分又は裁決が違法であることを宣言しなければなりません。事情判決は、行審法の事情裁決と対応する制度ですが、行訴法の事情判決は処分が「違法」の場合のみを対象とし、「不当」の場合は含まれない点に注意が必要です。

取消判決の効力

取消訴訟の認容判決(取消判決)には、以下の効力があります。

形成力:取消判決によって処分は遡及的に効力を失います。

拘束力:取消判決は、その事件について処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束します(行訴法33条1項)。これにより、行政庁は同一事情の下で同一の処分を繰り返すことが禁止されます。

第三者効(対世効):取消判決は第三者に対しても効力を有します(行訴法32条1項)。通常の民事訴訟の判決効は当事者間にしか及びませんが、取消判決は行政処分という公権力の行使に関するものであるため、対世的な効力が認められています。

比較ポイント7:教示制度の比較

行政不服審査法の教示制度

行政不服審査法82条は、行政庁が不服申立てをすることができる処分を書面でする場合に、処分の相手方に対して、審査請求をすることができる旨、審査請求をすべき行政庁、審査請求期間を教示しなければならないと規定しています。

教示が誤っていた場合の救済措置も設けられています。行政庁が審査請求をすべき行政庁を誤って教示した場合、その教示された行政庁に審査請求がなされたときは、当該行政庁は審査請求書を正しい審査庁に送付し、かつ、審査請求人に通知しなければなりません(行審法22条)。

行政事件訴訟法の教示制度

行政事件訴訟法46条は、行政庁が取消訴訟を提起することができる処分又は裁決をする場合には、当該処分又は裁決の相手方に対し、取消訴訟の被告とすべき者、出訴期間、審査請求前置の定めがある場合にはその旨を書面で教示しなければならないと規定しています。

行訴法の教示制度は2004年の行訴法改正で新設されたものであり、それ以前は取消訴訟に関する教示義務はありませんでした。

教示制度の比較ポイント

両法の教示制度を比較すると、教示すべき事項に違いがあります。行審法では審査請求をすべき行政庁と審査請求期間を、行訴法では被告とすべき者と出訴期間を、それぞれ教示しなければなりません。また、利害関係人からの教示の求めについて、行審法83条では処分庁が教示義務を負うのに対し、行訴法46条には利害関係人からの求めに関する規定はありません。

確認問題

行政事件訴訟法における取消訴訟の認容判決では、裁判所は処分を取り消すだけでなく、変更することもできる。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
行政事件訴訟法における取消訴訟の認容判決は「取消判決」のみであり、裁判所が処分を「変更」することはできません。裁判所が処分を変更することは、司法権が行政権の行使に踏み込むことになり、権力分立の原則に反するためです。一方、行政不服審査法では、審査庁(処分庁の上級行政庁等)は処分を変更する裁決を行うことができます(行審法46条1項)。

2法の徹底比較表

ここまでの比較ポイントを一覧表に整理します。試験直前の確認にご活用ください。

比較項目行政不服審査法(審査請求)行政事件訴訟法(取消訴訟)目的簡易迅速かつ公正な手続による救済裁判所による慎重な法的判断に基づく救済審理機関審査庁(行政機関)・審理員裁判所審理方式書面審理主義(口頭意見陳述あり)口頭弁論主義審査範囲違法性+不当性違法性のみ(裁量の逸脱・濫用は違法として審査)主観的期間知った日の翌日から3月以内知った日から6月以内客観的期間処分の日の翌日から1年以内処分の日から1年経過で不可費用無料訴訟費用(印紙代等)が必要代理人弁護士でなくてもよい弁護士が代理人となることが多い(本人訴訟も可)認容の効果取消し又は変更取消しのみ(変更不可)不利益変更禁止(行審法48条)規定なし(取消しのみのため問題にならない)事情裁決/判決違法又は不当でも棄却可能違法でも棄却可能(不当は対象外)第三者効なしあり(対世効、行訴法32条)拘束力あり(行審法52条)あり(行訴法33条)執行停止審査庁が職権又は申立てにより決定裁判所が申立てにより決定(内閣総理大臣の異議あり)教示義務あり(行審法82条)あり(行訴法46条)

この比較表の各項目は、択一式で直接出題される頻出ポイントです。特に、期間の数字(3月vs6月)、審査範囲(違法+不当vs違法のみ)、認容の効果(取消し+変更vs取消しのみ)は、確実に暗記しておく必要があります。

試験出題ポイントと攻略法

択一式での出題パターン

行政不服審査法と行政事件訴訟法の比較問題は、択一式で毎年のように出題されています。主な出題パターンは以下の3つです。

パターン1:期間の比較
「審査請求は処分を知った日の翌日から6月以内にしなければならない」といった、期間の数字を入れ替えた選択肢が出されます。行審法は3月、行訴法は6月という数字を正確に覚えておくことが必要です。

パターン2:審理方式の比較
「行政不服審査法における審査請求は口頭弁論主義が採用されている」といった、審理方式を入れ替えた選択肢が出されます。行審法は書面審理主義、行訴法は口頭弁論主義です。

パターン3:裁決・判決の効力の比較
「取消訴訟の認容判決により、裁判所は処分を変更することができる」といった選択肢が出されます。変更裁決は行審法のみで認められ、行訴法では取消しのみです。

記述式での出題可能性

記述式では、行政不服審査法と行政事件訴訟法のそれぞれの手続の要件や効果を40字程度で記述する問題が出題される可能性があります。特に、取消訴訟の出訴期間や審査請求期間を正確に記述できるよう準備しておきましょう。

効率的な学習法

この2法の比較学習で最も効率的な方法は、上記の比較表を自分で作成することです。テキストの記述をそのまま暗記するのではなく、自分の手で表を作成する過程で、対応する制度の共通点と相違点を体系的に整理できます。

また、過去問を解く際には、各選択肢がどちらの法律について述べているのかを意識しながら解答することが重要です。選択肢の文言を注意深く読み、「審査請求」なのか「取消訴訟」なのか、「審査庁」なのか「裁判所」なのかを常に確認する習慣をつけましょう。

確認問題

行政不服審査法の審査請求では処分の違法性のみが審査の対象となり、不当性は審査の対象とならない。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
行政不服審査法の審査請求では、処分の「違法性」だけでなく「不当性」も審査の対象となります(行審法1条1項参照)。行政庁が自ら審理を行うため、裁量の当不当にまで踏み込んだ判断が可能です。一方、行政事件訴訟法の取消訴訟では、原則として処分の「違法性」のみが審査の対象となり、不当性は審査対象になりません。ただし、裁量権の逸脱・濫用がある場合には違法として取り消すことができます(行訴法30条)。

まとめ

本記事では、行政不服審査法と行政事件訴訟法の7つの比較ポイントを整理しました。要点を3つにまとめます。

  1. 制度の目的と審理方式が異なる:行政不服審査法は行政庁による簡易迅速な救済(書面審理主義)、行政事件訴訟法は裁判所による慎重な法的判断(口頭弁論主義)という性格の違いがあり、審査範囲も行審法は違法+不当、行訴法は違法のみと異なる
  2. 期間と効力の数字を正確に覚える:主観的期間は行審法3月・行訴法6月、認容の効果は行審法が取消し+変更・行訴法が取消しのみ、事情裁決/判決の対象範囲も異なる
  3. 比較表を使った体系的な整理が最も効率的:個別に覚えるのではなく、対応する制度を並べて比較することで、試験での混同を防ぐことができる

両法の違いを正確に理解することは、行政法の得点力を大きく左右します。本記事の比較表を活用して、確実に得点できるようにしましょう。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 審査請求と取消訴訟は同時にできますか?

はい、同時に行うことができます。自由選択主義(行訴法8条1項)の下では、審査請求と取消訴訟のいずれを先に行うかは国民の自由であり、両方を同時に進行させることも認められています。ただし、個別法で審査請求前置が定められている場合は、審査請求を経てから取消訴訟を提起する必要があります。

Q2. 審査請求と取消訴訟で結論が矛盾する場合はどうなりますか?

審査請求で棄却裁決がなされた後に取消訴訟を提起し、裁判所が取消判決を下した場合、裁判所の判決が優先します。司法権の最終的な判断権を有するのは裁判所であり(憲法76条1項)、行政庁の裁決よりも裁判所の判決が優越します。

Q3. 行政不服審査法の2014年改正で何が変わりましたか?

2014年の全部改正で、審理員制度の導入(審理の公正性向上)、行政不服審査会への諮問制度の新設(第三者機関によるチェック)、審査請求への一元化(異議申立ての廃止)、審査請求期間の延長(60日→3月)などが行われました。これにより、公正性と簡易迅速性のバランスが改善されています。

Q4. 執行停止の要件は両法で異なりますか?

はい、異なります。行政不服審査法では、審査庁が職権で又は審査請求人の申立てにより執行停止をすることができます(行審法25条2項・3項)。一方、行政事件訴訟法では、裁判所が当事者の申立てにより執行停止をすることができますが(行訴法25条2項)、職権での執行停止は認められていません。また、行訴法では内閣総理大臣の異議の制度があります(行訴法27条)。

Q5. 不作為に対する争い方は両法でどう違いますか?

行政不服審査法では、法令に基づく申請に対して相当の期間内に何らの処分もなされない場合に、不作為についての審査請求ができます(行審法3条)。行政事件訴訟法では、不作為の違法確認の訴え(行訴法3条5項)のほか、義務付けの訴え(行訴法3条6項1号、申請型義務付け訴訟)を提起することもできます。義務付け訴訟では、裁判所が行政庁に対して処分をすべき旨を命じることができるため、より実効的な救済が期待できます。

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