行政権は、内閣に属する。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「正しい」。
憲法70条は「内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない」と定め、続く71条は「前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ」と定めています。肢4はこの二か条をそのまま述べたものであり、妥当です。
「内閣総理大臣が欠けたとき」とは、死亡、辞職、失踪、国会議員たる地位の喪失、除名など、内閣総理大臣が一身上の理由でその地位を失った場合をいいます。病気や一時的な海外渡航のように、職務の遂行が一時的に困難になったにすぎない場合は「欠けたとき」にあたらず、内閣法9条により、あらかじめ指定された国務大臣が臨時に内閣総理大臣の職務を行います。
内閣が総辞職しなければならない場合は三つです。第一に70条の二つの場合、第二に69条の場合、すなわち衆議院で不信任の決議案が可決され、または信任の決議案が否決されたときに、10日以内に衆議院が解散されないときです。いずれの場合も71条により職務執行内閣として職務を続行します。行政に空白を生じさせないための規定であり、この職務執行内閣は、新総理が任命されるまで暫定的に職務を行うにとどまるため、政治的に重要な政策決定は差し控えるべきだと説かれます。
ひっかけポイントは、「総辞職しなければならない」場面と「衆議院を解散できる」場面の区別、および総辞職後に内閣が直ちに職務を離れるかのように書く誤り肢です。また、内閣総理大臣の指名は国会が国会議員の中から議決で行い(67条1項)、両議院の議決が異なり両院協議会でも一致しないとき、または参議院が10日以内に指名の議決をしないときは、衆議院の議決が国会の議決となります(67条2項)。総辞職から新内閣成立までの流れは、指名、天皇による任命(6条1項)、国務大臣の任命(68条1項)と続きます。
結論:この肢は「誤り」。
憲法87条1項は「予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる」と定めています。予備費の設置には国会の議決が必要であり、内閣が自らの判断で予備費を設けることはできません。内閣の裁量が及ぶのは、国会の議決を経て設けられた予備費を、具体的にどの経費に充てるかという支出の段階です。しかもその支出については、同条2項により、すべて事後に国会の承諾を得なければなりません。肢5は、国会の議決という前提を落としている点で誤りです。
さらに、予備費は「予見し難い予算の不足に充てるため」のものであり、そもそも本予算が成立していない状況を乗り切るための制度ではありません。新年度開始までに予算が成立しない場合の手当ては、財政法30条が定める暫定予算です。暫定予算も予算である以上、国会の議決を要します(憲法86条)。暫定予算すら成立しない場合には、国庫金の支出は原則としてできず、政治的な解決を待つほかありません。憲法には、内閣が国会の議決なしに支出を行うことを許す規定は存在せず、これは財政民主主義(憲法83条。国の財政を処理する権限は国会の議決に基づいて行使しなければならない)の当然の帰結です。
ひっかけポイントは、「予備費」という言葉が持つ緊急対応のイメージです。予備費は内閣の責任で支出できるため、内閣の自由裁量に見えますが、財源の枠取り自体は国会が握っています。「設ける」のは国会の議決、「支出する」のは内閣の責任、「承諾」は事後に国会、という三段構えで覚えてください。
関連知識として、憲法の財政条項は、租税法律主義(84条)、国費の支出と国の債務負担には国会の議決を要すること(85条)、予算の作成・提出は内閣が行うこと(86条)、公金支出の制限(89条)、決算の検査と国会への提出(90条)、財政状況の報告(91条)と続きます。予算の法的性質(予算法形式説が通説)や、国会が予算を修正できる範囲についての議論もあわせて確認しておくとよいでしょう。