この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
誤りの核心は、「すべての宗教に平等に適用される法律は違憲となることはない」という断定にあります。形式的にはすべての人・すべての宗教に等しく適用される一般的・中立的な法律であっても、特定の信仰を持つ者にとっては、その戒律との衝突により重大な不利益をもたらす場合があり、そのような場合には信教の自由(憲法20条1項)の制約として憲法上の審査を受けます。
代表的な判例が、神戸高専剣道実技拒否事件(最判平成8年3月8日)です。エホバの証人の信者である公立高等専門学校の学生が、宗教上の理由から体育の必修科目である剣道の実技に参加できず、原級留置および退学処分を受けた事件で、最高裁は、退学処分が学生の身分を剥奪する重大な措置であることなどを踏まえ、学生が信仰上の理由により剣道実技を拒否したことを、正当な理由のない履修拒否と区別せずに処分したことは、社会観念上著しく妥当を欠き、校長の裁量権の範囲を超える違法なものであると判断しました。剣道の必修という取扱い自体は全学生に平等に及ぶものでしたが、それでも信仰への配慮が求められたわけです。
さらに、日曜日授業参観事件(東京地判昭和61年3月20日)のように結論として救済が否定された例もありますが、いずれにせよ、一般的・中立的な法令であっても信教の自由の制約として審査されること自体は前提とされています。加持祈祷事件(最大判昭和38年5月15日)も、宗教行為であっても他人の生命・身体に危害を及ぼす違法な有形力の行使にわたるときは信教の自由の保障の限界を超えるとし、宗教行為であることと刑罰法規の適用との関係を正面から論じました。したがって、平等適用の法律なら常に合憲、という命題は成り立ちません。
また本肢の前段、信教の自由が宗教的少数派に多数派と同等の法的保護を与える趣旨を含むという説明自体は、歴史的にはおおむね正当です。しかし、まさにその趣旨からすれば、多数派には何の負担にもならない中立的な法律が少数派にだけ重い負担を課す場面こそ、信教の自由が働くべき局面であり、本肢の結論はその趣旨と矛盾します。
ひっかけポイントは、平等・中立という言葉の響きのよさです。憲法の場面では、形式的平等が実質的な不利益を生むことがあるという視点を常に持ってください。
結論:この肢は「誤り」。
憲法20条3項は「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と定めます。本肢は、この規定を国が自ら特定宗教を宣伝する活動を行うことの禁止に限定し、宗教団体の行う祭祀への公金支出が同項に違反することはないと述べますが、判例はこれを否定しています。
決定的な判例が愛媛玉串料事件(最大判平成9年4月2日)です。愛媛県が靖国神社の例大祭に際して玉串料等を、また県護国神社の慰霊大祭に際して供物料を、それぞれ公金から支出したことが争われた事件で、最高裁は、津地鎮祭事件(最大判昭和52年7月13日)が示した目的効果基準を用い、県が特定の宗教団体の挙行する重要な宗教上の祭祀にかかわり合いを持ったことは、一般人に対して県が当該宗教団体を特別に支援している印象を与え、特定の宗教への関心を呼び起こすものといわざるをえないとして、その目的が宗教的意義を持ち、その効果が特定の宗教に対する援助・助長・促進になると認定し、憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たり、かつ89条にも違反すると判断しました。国や地方公共団体自身が宗教を宣伝したわけではなく、宗教団体の祭祀に公金を支出しただけでも違憲となりうることを、明確に示した判例です。
さらに、砂川政教分離訴訟(最大判平成22年1月20日)では、市が市有地を神社施設の敷地として無償で提供していた行為が憲法89条・20条1項後段に違反するとされ、孔子廟訴訟(最大判令和3年2月24日)では、市が公園使用料を全額免除した行為が20条3項に違反するとされました。国や自治体が宗教団体に便宜を与える行為が広く政教分離違反となりうることは、判例の確立した立場です。
他方で、津地鎮祭事件では、市が体育館の起工式を神式の地鎮祭として挙行し公金を支出した行為について、目的が世俗的であり効果が特定宗教を援助・助長するものではないとして合憲とされています。ここから、公金支出が常に違憲になるわけでもないことがわかります。本肢が誤りなのは、「違反することはない」と例外なく言い切っている点です。
ひっかけポイントとして、20条3項の「宗教的活動」の主体は国およびその機関であり、公金支出という財産的側面は89条前段(公金の支出制限)でも規律されるという二重構造を押さえておきましょう。愛媛玉串料事件は両条違反を認めた点でも重要です。