審査会は、必要があると認める場合には、審査請求に係る事件に関し、審査請求人、参加人又は第四十三条第一項の規定により審査会に諮問をした審査庁(以下この款において「審査関係人」という。)にその主張を記載した書面(以下この款において「主張書面」という。)又は資料の提出を求めること、適当と認める者にその知っている事実の陳述又は鑑定を求めることその他必要な調査をすることができる。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「正しい」。
根拠は行政事件訴訟法11条6項です。同項は「処分又は裁決をした行政庁は、当該処分又は裁決に係る第一項の規定による国又は公共団体を被告とする訴訟について、裁判上の一切の行為をする権限を有する」と定めています。本肢はこれと同旨であり、正しい記述です。
理由づけを整理します。平成16年改正で被告が行政庁から国・公共団体に切り替わった結果、形式的には、国を代表するのは法務大臣(国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律1条)、地方公共団体を代表するのは長(地方自治法147条)ということになります。しかし、処分の経緯や理由、根拠法令の運用実態を最もよく知っているのは、実際に処分をした行政庁です。訴訟追行を代表者側に一元化してしまうと、かえって審理が非効率になります。そこで法は、被告適格こそ行政主体に移したものの、実際の訴訟追行権限は処分庁に残すという設計をとりました。これが11条6項の趣旨です。「裁判上の一切の行為」ですから、答弁書の提出、主張・立証、和解、上訴の提起なども含まれます。
関連知識として、被告となった国・公共団体は、訴訟提起後、遅滞なく裁判所に対して処分庁・裁決庁を明らかにしなければならず(11条5項)、原告も訴状に処分庁・裁決庁を記載するものとされています(11条4項)。これは、訴訟追行を担う行政庁を早期に特定するための仕組みです。
ひっかけポイントは、この権限が及ぶ範囲です。11条6項は「第一項の規定による国又は公共団体を被告とする訴訟について」と書かれており、11条2項によって行政庁自身が被告となる場合は、そもそも当該行政庁が当事者そのものですから、6項の出番はありません。また、11条6項は取消訴訟の規定ですが、38条1項により無効等確認訴訟・不作為の違法確認訴訟・義務付け訴訟・差止訴訟にも準用されます。抗告訴訟一般に妥当する仕組みだと理解しておいてください。
結論:この肢は「誤り」。本問は「誤っているもの」を選ぶ問題ですから、これが正解肢です。
根拠は行政事件訴訟法11条1項2号です。同号は、裁決の取消しの訴えについて、被告は「当該裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体」であると定めています。つまり、裁決庁が国または公共団体に所属している場合には、被告となるのは裁決庁そのものではなく、その所属する行政主体です。本肢は「国または公共団体に所属する場合であっても、当該裁決の取消訴訟において被告となる」としており、11条1項2号と正面から矛盾します。
理由づけとしては、肢1で見たとおり、平成16年改正が処分庁主義から行政主体主義へ転換したことが決定的です。この転換は、処分の取消訴訟だけでなく裁決の取消訴訟にも等しく及びます。11条1項は1号で処分の取消しの訴え、2号で裁決の取消しの訴えを並べて規定しており、両者を区別していません。したがって、たとえば国土交通大臣がした裁決を争う場合の被告は国、都道府県知事がした裁決を争う場合の被告は当該都道府県となります。行政不服審査法上の審査庁が行政委員会や審議会型の機関であっても、それが国・公共団体に所属する限り結論は同じです。
ひっかけポイントは、「裁決だけは特別扱いされるのではないか」という思い込みです。裁決は審査請求に対する判断であり、処分とは性質が違うように見えるため、裁決庁自身が被告になると錯覚しやすいのですが、被告適格のルールに処分・裁決の区別はありません。裁決について特別扱いされているのは、被告適格ではなく、①原処分主義(10条2項。裁決取消訴訟では原処分の違法を主張できない)と、②処分の取消しの訴えを裁決の取消しの訴えに併合して提起する場合の特例(20条。被告の同意が不要とされ、出訴期間の遵守は裁決取消訴訟の提起時を基準に扱われる)の場面です。この二つを被告適格の話と混線させないでください。
なお、裁決庁が国・公共団体に所属しない場合には、肢1で見た11条2項が適用され、裁決庁自身が被告となります。本肢が誤りとされるのは、あくまで「所属する場合であっても」と言い切っている点にあります。