1第五十七条第一項の募集をする場合には、発起人は、第五十八条第一項第三号の期日又は同号の期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく、設立時株主(第五十条第一項又は第百二条第二項の規定により株式会社の株主となる者をいう。以下同じ。)の総会(以下「創立総会」という。)を招集しなければならない。
2発起人は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、いつでも、創立総会を招集することができる。
1第五十七条第一項の募集をする場合には、発起人は、第五十八条第一項第三号の期日又は同号の期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく、設立時株主(第五十条第一項又は第百二条第二項の規定により株式会社の株主となる者をいう。以下同じ。)の総会(以下「創立総会」という。)を招集しなければならない。
2発起人は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、いつでも、創立総会を招集することができる。
創立総会は、この節に規定する事項及び株式会社の設立の廃止、創立総会の終結その他株式会社の設立に関する事項に限り、決議をすることができる。
結論:この記述は正しい。本問は「誤っているもの」を選ぶ問題なので、正解肢ではありません。
会社法108条2項柱書は、株式会社が内容の異なる2以上の種類の株式を発行する場合、各号に定める事項(種類株式の内容)および発行可能種類株式総数を定款で定めなければならないと規定しています。したがって、2以上の種類株式を発行するときは、各種類ごとに発行可能種類株式総数を定款で定める必要があります。
趣旨:各種類株式の発行上限をあらかじめ定款で明示させることで、株主・投資家に対して各種類の希釈化リスクの限度を画し、種類株主間の利害調整の前提を確保する点にあります。
関連知識:会社全体の発行可能株式総数(会社法37条・113条)と、種類株式ごとの発行可能種類株式総数(108条2項)は別個の概念です。両者を混同しないよう注意しましょう。記述は会社法108条2項に合致しており、誤りではありません。
1発起人は、創立総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 創立総会の日時及び場所
二 創立総会の目的である事項
三 創立総会に出席しない設立時株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四 創立総会に出席しない設立時株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2発起人は、設立時株主(創立総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない設立時株主を除く。次条から第七十一条までにおいて同じ。)の数が千人以上である場合には、前項第三号に掲げる事項を定めなければならない。
結論:この記述は誤りであり、本問が求める「誤っているもの(=正解肢)」です。
会社法108条1項各号は、株式会社が発行できる種類株式の内容を限定列挙しています。すなわち、剰余金配当(1号)、残余財産分配(2号)、議決権制限(3号)、譲渡制限(4号)、取得請求権(5号)、取得条項(6号)、全部取得条項(7号)、拒否権(8号)、取締役・監査役選任(9号)の9類型です。議決権に関わる種類株式は、3号の「株主総会において議決権を行使することができる事項」についての定め(議決権制限種類株式)に限られます。これはある事項について議決権を『制限する』方向の定めであり、『1株に2個以上の議決権を与える』という複数議決権株式は108条1項各号に存在しません。一株一議決権の原則(会社法308条1項)を、種類株式という形で超過させることは認められていないのです。
本肢の核心となるひっかけ:非公開会社(公開会社でない株式会社)では、会社法109条2項により、議決権を含む株主の権利について『株主ごとに』異なる取扱いを定款で定めることができます(属人的定め)。この属人的定めを使えば、特定の株主に1株あたり複数の議決権を与えることも可能です。しかし、これはあくまで『株主の属性』に着目した定め(109条2項)であって、『株式の属性』に着目した種類株式(108条)ではありません。さらに本問は冒頭で「株主総会における議決権等について株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定めはない」と明示し、この属人的定めの余地を封じています。
また、単元株式数を種類ごとに異ならせる手法(会社法188条3項)で議決権数に実質的な差を設けることも考えられますが、本問は「単元株式数の定めはない」とも明示しているため、この余地もありません。
したがって、種類株式として1株に2個以上の議決権を内容とするものを発行することはできず、本記述は誤りです。
結論:この記述は正しい。本問は「誤っているもの」を選ぶ問題なので、正解肢ではありません。
これは拒否権付種類株式(いわゆる黄金株)に関する記述です。会社法108条1項8号は、「株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会または取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会または清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの」を種類株式の内容として定めることができると規定しています。本記述はこれに合致します。
効果:この種類株式が発行されると、対象事項については、通常の株主総会(または取締役会)決議に加えて種類株主総会の決議がなければ効力が生じません(会社法323条参照)。その結果、当該種類株主は対象事項について事実上の拒否権を握ることになります。事業承継やジョイントベンチャーで経営支配権をコントロールする手段として用いられます。
記述は会社法108条1項8号に正確に対応しており、誤りではありません。
1創立総会を招集するには、発起人は、創立総会の日の二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合にあっては、一週間(当該設立しようとする株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、設立時株主に対してその通知を発しなければならない。
2次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。
一 前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合
二 設立しようとする株式会社が取締役会設置会社である場合
3発起人は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、設立時株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該発起人は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
4前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
5発起人が設立時株主に対してする通知又は催告は、第二十七条第五号又は第五十九条第三項第一号の住所(当該設立時株主が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を発起人に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。
6前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。
7前二項の規定は、第一項の通知に際して設立時株主に書面を交付し、又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合について準用する。この場合において、前項中「到達したもの」とあるのは、「当該書面の交付又は当該事項の電磁的方法による提供があったもの」と読み替えるものとする。
結論:この記述は正しい。本問は「誤っているもの」を選ぶ問題なので、正解肢ではありません。
これは役員選任権付種類株式(クラス・ボーティング)に関する記述です。会社法108条1項9号は、「当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任すること」を内容とする種類株式を認めています。
ただし、同条1項柱書ただし書は、9号の種類株式について、公開会社および指名委員会等設置会社は発行することができないと定めています(指名委員会等設置会社では取締役選任は指名委員会の権限・株主総会決議によるべきこと等との整合のため)。
本記述は「公開会社および指名委員会等設置会社のいずれでもない株式会社」を前提としており、ちょうど9号の種類株式を発行できる範囲に収まっています。したがって正しい記述です。
ひっかけ:9号(役員選任権付)は発行できる会社が限定されている点が頻出論点です。「公開会社・指名委員会等設置会社は発行不可」という制限(108条1項柱書ただし書)を、本肢のように「いずれでもない会社」と裏返した形で問われたときに、正しい記述として処理できるかが問われます。なお、選任手続の詳細は会社法347条が読替えにより規律します。
結論:この記述は正しい。本問は「誤っているもの」を選ぶ問題なので、正解肢ではありません。
会社法108条1項3号は、「株主総会において議決権を行使することができる事項」について内容の異なる種類株式(議決権制限種類株式)を発行できると定めています。ここでいう議決権の制限の程度に下限はなく、一部の事項についてのみ議決権を制限することも、株主総会の決議事項の全部について議決権を有しないものとすること(完全無議決権株式)も認められます。したがって、決議事項の全部について議決権を有しない種類株式の発行は可能です。
関連知識:完全無議決権株式は議決権を行使できない代わりに、剰余金配当や残余財産分配で優先的な取扱いを受けるよう設計されることが多くあります。また、公開会社では、議決権制限株式(無議決権株式を含む)の数が発行済株式総数の2分の1を超えたときは、直ちに2分の1以下とするための必要な措置をとらなければなりません(会社法115条)。もっとも、これは発行可能性を否定するものではなく、超過後の是正措置を課すにすぎません。
本記述は完全無議決権株式の発行可能性を述べたもので、会社法108条1項3号に合致しており、誤りではありません。
前条の規定にかかわらず、創立総会は、設立時株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。ただし、第六十七条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない。
結論:本肢は会社法の規定に合致しており、正しい記述です。本問は「誤っているもの」を選ぶ問いなので、本肢は正解肢ではありません。
会社法423条3項は、利益相反取引(同法356条1項2号・3号の取引)によって株式会社に損害が生じたときは、一定の取締役・執行役は「その任務を怠ったものと推定する」と定めています(任務懈怠の推定)。推定の対象は、利益相反取引をした取締役・執行役本人(同項1号)、会社が当該取引をすることを決定した取締役・執行役(同項2号)、当該取引に関する取締役会の承認決議に賛成した取締役(同項3号)です。
本肢の「株主総会または取締役会の承認の有無にかかわらず」という点がひっかけの核心ですが、これは正しい記述です。利益相反取引について事前に承認(取締役会非設置会社では株主総会、取締役会設置会社では取締役会。356条1項柱書・365条1項)を得ていたとしても、現実に会社に損害が生じれば任務懈怠が推定されます。承認の取得は推定を覆す事由にはならず、承認の有無を問わず推定が働くため本肢は妥当です。
関連知識として、この推定は反証可能であり、推定を受けた取締役の側で任務を怠っていないことを立証すれば責任を免れ得ます(自己のための直接取引について無過失責任とする428条1項とは区別すること)。
結論:本肢は会社法の規定に合致しており、正しい記述です。本問は「誤っているもの」を選ぶ問いなので、本肢は正解肢ではありません。
会社法423条2項は、取締役・執行役が競業取引の制限に関する規定(同法356条1項1号、365条1項、419条2項)に違反して競業取引をしたときは、「当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する」と定めています。会社が被った損害額の立証は一般に困難であることから、違反者側が得た利益の額をもって会社の損害額と推定する規定(損害額の推定)です。本肢はこの423条2項をそのまま述べており妥当です。
ひっかけとして、肢1の利益相反取引(423条3項=任務懈怠の推定)と、本肢の競業取引(423条2項=損害額の推定)とで「何が推定されるか」を入れ替える出題パターンがあります。競業取引=得た利益=損害額の推定、利益相反取引=任務懈怠の推定、と対にして区別しておきましょう。
1発起人は、第六十七条第一項第三号に掲げる事項を定めた場合には、第六十八条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、設立時株主に対し、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(以下この款において「創立総会参考書類」という。)及び設立時株主が議決権を行使するための書面(以下この款において「議決権行使書面」という。)を交付しなければならない。
2発起人は、第六十八条第三項の承諾をした設立時株主に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による創立総会参考書類及び議決権行使書面の交付に代えて、これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、設立時株主の請求があったときは、これらの書類を当該設立時株主に交付しなければならない。
結論:本肢は誤りであり、これが本問(誤っているものを選ぶ問い)の正解です。
会社法423条4項は、監査等委員会設置会社において、取締役(監査等委員であるものを除く)が利益相反取引(356条1項2号・3号の取引)をした場合に、当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、同条3項(任務懈怠の推定)を適用しない、と定めています。すなわち、監査等委員会の承認により任務懈怠の推定が外れる特則は、その対象から「監査等委員である取締役」を明文で除外しています。
したがって、利益相反取引をした取締役が監査等委員自身である場合には、監査等委員会の承認を受けても任務懈怠の推定(423条3項)は排除されず、依然として推定が働きます。本肢は「当該取締役が監査等委員であるかどうかにかかわらず…推定されることはない」と述べる点で、本来除外されるべき監査等委員である取締役まで推定不適用の対象に含めており、条文に反します。
この特則の趣旨は、監査等委員会には取締役の選解任・報酬等についての意見陳述権など一定の監督機能があり、その承認を経た取引について推定の適用を外して監査等委員会設置会社制度の利用を促す点にあります。もっとも、利益相反取引の当事者である取締役自身が監査等委員として承認手続に関与する自己監査の弊害を避けるため、当事者が監査等委員である場合は推定を外さないこととしています。「監査等委員であるかどうかにかかわらず」という表現がひっかけの核心です。
結論:本肢は会社法の規定に合致しており、正しい記述です。本問は「誤っているもの」を選ぶ問いなので、本肢は正解肢ではありません。
会社法427条1項は、いわゆる責任限定契約について定めています。株式会社は、非業務執行取締役等(業務執行取締役等であるものを除く取締役、会計参与、監査役または会計監査人)の任務懈怠責任(423条1項)について、当該非業務執行取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と、最低責任限度額(425条1項に定める額)とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を、定款の定めに基づいて締結することができます。
本肢は427条1項の文言をほぼ正確に述べており妥当です。押さえどころは、(1)定款にあらかじめ責任限定契約を締結できる旨の定めがあること、(2)善意かつ重過失がないこと、(3)賠償額の下限が最低責任限度額となること、です。
ひっかけとして頻出なのは、責任限定契約を締結できるのは「非業務執行取締役等」に限られ、代表取締役その他の業務執行取締役は対象とならない点です。「取締役なら誰でも締結できる」とする選択肢は誤りになります。
1発起人は、第六十七条第一項第四号に掲げる事項を定めた場合には、第六十八条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、設立時株主に対し、創立総会参考書類を交付しなければならない。
2発起人は、第六十八条第三項の承諾をした設立時株主に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による創立総会参考書類の交付に代えて、当該創立総会参考書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、設立時株主の請求があったときは、創立総会参考書類を当該設立時株主に交付しなければならない。
3発起人は、第一項に規定する場合には、第六十八条第三項の承諾をした設立時株主に対する同項の電磁的方法による通知に際して、法務省令で定めるところにより、設立時株主に対し、議決権行使書面に記載すべき事項を当該電磁的方法により提供しなければならない。
4発起人は、第一項に規定する場合において、第六十八条第三項の承諾をしていない設立時株主から創立総会の日の一週間前までに議決権行使書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供の請求があったときは、法務省令で定めるところにより、直ちに、当該設立時株主に対し、当該事項を電磁的方法により提供しなければならない。
結論:本肢は会社法の規定に合致しており、正しい記述です。本問は「誤っているもの」を選ぶ問いなので、本肢は正解肢ではありません。
会社法428条1項は、自己のために株式会社と取引(356条1項2号の直接取引のうち自己のためにしたもの)をした取締役・執行役の任務懈怠責任(423条1項)については、同条1項柱書の免責(任務を怠ったことが責めに帰することができない事由によるものである旨を立証して免責される一般原則)を適用しない、と定めています。すなわち、自己のために直接取引をした取締役・執行役の責任は無過失責任とされ、帰責事由がないことを主張・立証しても責任を免れることはできません。
本肢は、自己のために株式会社と取引をした取締役・執行役が「責めに帰することができない事由」を理由として損害賠償責任を免れることはできない、と述べており、428条1項に合致し妥当です。
注意点として、この責任加重は「自己のために」直接取引をした場合に限られ、第三者のためにした取引や利益相反の間接取引には及びません。また同条2項により、この場合には425条1項・426条・427条による責任の一部免除も認められない点もあわせて押さえておきましょう。
結論:本記述は正しい記述です。本問は「誤っているもの」を選ぶ問題ですので、正しい記述である本肢は正解肢ではありません。
会計監査人の設置義務について整理します。大会社のうち公開会社であるものは、監査役会および会計監査人を置かなければならず(会社法328条1項)、公開会社でない大会社も会計監査人を置かなければなりません(同条2項)。また、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は、会社の規模を問わず会計監査人を置かなければなりません(同法327条5項)。したがって、これら三つの会社形態では会計監査人は必置機関です。
これに対し、会計参与は、いかなる株式会社においても定款の定めにより任意に設置できる機関であり(同法326条2項)、設置が義務付けられている会社形態はありません。よって、会計監査人は必置・会計参与は任意という対比を正確に述べた本記述は正しく、正解肢ではありません。
ひっかけ・関連知識:会計参与は中小会社の計算書類の信頼性向上を目的に新設された機関で、税理士・公認会計士等の資格者しか就任できませんが(同法333条1項)、設置自体はあくまで任意である点を押さえてください。
1設立時株主(成立後の株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有することその他の事由を通じて成立後の株式会社がその経営を実質的に支配することが可能となる関係にあるものとして法務省令で定める設立時株主を除く。)は、創立総会において、その引き受けた設立時発行株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の設立時発行株式につき一個の議決権を有する。
2設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限がある種類の設立時発行株式を発行するときは、創立総会において、設立時株主は、株主総会において議決権を行使することができる事項に相当する事項に限り、当該設立時発行株式について議決権を行使することができる。
3前項の規定にかかわらず、株式会社の設立の廃止については、設立時株主は、その引き受けた設立時発行株式について議決権を行使することができる。
結論:本記述は正しい記述であり、正解肢ではありません。
会社法329条1項は、「役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する」と規定しています。この括弧書きの定義から明らかなとおり、「役員」とは取締役・会計参与・監査役の三者を指し、会計参与は法律上明確に「役員」に含まれます。
他方、会計監査人は同項で「役員」とは別に並列して掲げられており、「役員」には含まれません。この区別は、損害賠償責任の規定の適用範囲を考えるうえでも重要です。すなわち、役員等(取締役・会計参与・監査役・執行役・会計監査人)が任務を怠ったときの会社に対する責任を定める同法423条1項では、会計監査人は「役員」ではないものの「役員等」に含められ、責任規定の対象となります。
ひっかけ・関連知識:会計監査人は役員ではないため、たとえば役員の改選を要する場合の規律とは別の扱いを受けますが、責任の場面では「役員等」として取締役らと並んで責任を負う点を混同しないようにしてください。本記述は「役員」概念の範囲を正確に述べており、正しい記述です。
結論:本記述は正しい記述であり、正解肢ではありません。
会計参与は役員であり、株主総会の決議によって選任されます(会社法329条1項)。その任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(同法334条1項が同法332条1項を準用)。会計参与には自動再任の規定がないため、任期満了時には改めて株主総会の選任決議が必要となります。
これに対し、会計監査人の任期は選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までですが(同法338条1項)、その定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなされます(同条2項。みなし再任)。これにより、毎年改めて選任決議をしなくても継続して職務に当たることができます。
ひっかけ・関連知識:会計監査人は毎年任期が満了する(1年)にもかかわらず、みなし再任により実務上は毎期の選任決議が不要になる点が特徴です。会計参与(任期2年・みなし再任なし)との対比を正確に述べており、本記述は正しい記述です。
1創立総会の決議は、当該創立総会において議決権を行使することができる設立時株主の議決権の過半数であって、出席した当該設立時株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行う。
2前項の規定にかかわらず、その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う場合(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合を除く。)には、当該定款の変更についての創立総会の決議は、当該創立総会において議決権を行使することができる設立時株主の半数以上であって、当該設立時株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行わなければならない。
3定款を変更してその発行する全部の株式の内容として第百七条第一項第三号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとする場合(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合を除く。)には、設立時株主全員の同意を得なければならない。
4創立総会は、第六十七条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、定款の変更又は株式会社の設立の廃止については、この限りでない。
結論:本記述は正しい記述であり、正解肢ではありません。
会計参与の職務について、会社法374条1項は、会計参与は取締役と共同して計算書類およびその附属明細書、臨時計算書類ならびに連結計算書類を作成すると定めています。指名委員会等設置会社では「取締役」が「執行役」と読み替えられ(同条6項)、会計参与は執行役と共同してこれらを作成します。「共同して作成する」という点が会計参与の最大の特徴であり、あわせて会計参与報告を作成しなければなりません(同条1項後段)。
一方、会計監査人の職務は、株式会社の計算書類およびその附属明細書、臨時計算書類ならびに連結計算書類を監査することであり(同法396条1項前段)、その結果として会計監査報告を作成します(同項後段)。会計監査人は作成主体ではなく監査主体です。
ひっかけ・関連知識:会計参与=計算書類の共同作成、会計監査人=計算書類の監査、という役割分担が正確に述べられています。両者とも会計の専門家ですが、会計参与は会社内部から作成に関与し、会計監査人は外部からその適正性をチェックする立場である点を区別してください。本記述は正しい記述です。
結論:本記述は誤りであり、これが正解肢です。会計監査人だけでなく、会計参与にも同様の報告義務があります。
会計監査人については、その職務を行うに際して取締役(指名委員会等設置会社では執行役または取締役)の職務の執行に関し不正の行為または法令・定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく、これを監査役(監査役会設置会社では監査役会、監査等委員会設置会社では監査等委員会、指名委員会等設置会社では監査委員会)に報告しなければなりません(会社法397条1項・3項・4項・5項)。この点を述べた本記述の前段は正しい記述です。
しかし、会計参与にも全く同様の報告義務が定められています。すなわち、同法375条1項は、会計参与はその職務を行うに際して取締役の職務の執行に関し不正の行為または法令・定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なくこれを株主に報告しなければならないと規定し、監査役設置会社では監査役に、監査役会設置会社では監査役会に、監査等委員会設置会社では監査等委員会に、指名委員会等設置会社では監査委員会に報告すべきものとしています(同条2項・3項・4項)。したがって、「会計参与にはこのような報告義務はない」とする本記述の後段は誤りです。
ひっかけ・関連知識:会計参与と会計監査人は、いずれも会計に関与する機関として共通の規律が多く、不正行為等の発見時の報告義務(375条・397条)はその代表例です。本問は問題文が「差異に関する」と述べているため差異ばかりを探しがちですが、本肢は両者に共通する義務を「会計参与にはない」と差異であるかのように装った点に誤りがあります。共通の義務規定の存在に注意してください。
1設立時株主は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該設立時株主又は代理人は、代理権を証明する書面を発起人に提出しなければならない。
2前項の代理権の授与は、創立総会ごとにしなければならない。
3第一項の設立時株主又は代理人は、代理権を証明する書面の提出に代えて、政令で定めるところにより、発起人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該設立時株主又は代理人は、当該書面を提出したものとみなす。
4設立時株主が第六十八条第三項の承諾をした者である場合には、発起人は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。
5発起人は、創立総会に出席することができる代理人の数を制限することができる。
6発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社。次条第三項及び第七十六条第四項において同じ。)は、創立総会の日から三箇月間、代理権を証明する書面及び第三項の電磁的方法により提供された事項が記録された電磁的記録を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店。次条第三項及び第七十六条第四項において同じ。)に備え置かなければならない。
7設立時株主(株式会社の成立後にあっては、その株主。次条第四項及び第七十六条第五項において同じ。)は、発起人が定めた時間(株式会社の成立後にあっては、その営業時間。次条第四項及び第七十六条第五項において同じ。)内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 代理権を証明する書面の閲覧又は謄写の請求
二 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
結論:この肢は「妥当」(記述は正しい)。本問は「誤っているもの」を選ばせる問題なので、正しい本肢は正解肢ではありません。
匿名組合員の出資は、営業者の財産に属します(商法536条1項)。本肢は条文そのものの内容を述べたもので妥当です。匿名組合契約とは、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約する契約です(商法535条)。出資された財産は営業者の名義・所有に帰属し、営業者の単独財産として運用される点に特徴があります。
ここがひっかけポイントです。民法上の組合(民法667条以下)では出資財産は総組合員の共有(合有的な共有)となりますが、匿名組合では出資が営業者の財産に吸収されるため、匿名組合員は財産そのものに対する物権的な持分を持ちません。匿名組合員は損益分配を受ける債権的な地位にとどまります。
なお、匿名組合員が出資できるのは金銭その他の財産に限られ、信用や労務を出資の目的とすることはできません(商法536条2項)。投資型クラウドファンディングや事業出資のスキームで匿名組合が用いられるのは、出資者が経営に関与せず損益分配のみを受けるというこの性質によります。
結論:この肢は「誤り」。本問は「誤っているもの」を選ばせる問題なので、これが正解肢です。
匿名組合員は、営業者の行為について第三者に対して権利及び義務を有しません(商法536条4項)。匿名組合では営業はあくまで営業者が自己の名で行い、匿名組合員は表に出ない出資者にとどまるため、営業者が負った債務について、債権者(第三者)に対して直接の弁済責任を負わないのが原則です。これは匿名組合員が出資額を限度にリスクを負う有限責任的な地位にあることの表れでもあります。
本肢のひっかけは「債権者が匿名組合員の当事者であることを知っていたとき」という条件付けです。債権者が匿名組合員の存在を知っていたか否かは、匿名組合員の責任の有無を左右しません。知っていたからといって匿名組合員が営業者と連帯して弁済責任を負うことになるわけではなく、この点で本肢は誤りです。
関連して、匿名組合員が営業者の債務について連帯責任を負う例外は限られています。匿名組合員が自己の氏・氏名を営業者の商号中に用いること、又は自己の商号を営業者の商号として使用することを許諾したときは、その使用以後に生じた債務について営業者と連帯して弁済する責任を負います(商法537条。名板貸し類似の外観責任)。本肢はこのような外観作出の事情ではなく、単に「債権者が当事者であることを知っていた」というだけなので、537条の例外にも当たりません。
なお、匿名組合員は営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することもできません(商法536条3項)。「業務執行・代表ができない」のが3項、「第三者に対し権利義務を有しない(=対外的な責任を負わない)」のが4項であり、本肢の根拠は4項です。
1書面による議決権の行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し、法務省令で定める時までに当該議決権行使書面を発起人に提出して行う。
2前項の規定により書面によって行使した議決権の数は、出席した設立時株主の議決権の数に算入する。
3発起人は、創立総会の日から三箇月間、第一項の規定により提出された議決権行使書面を発起人が定めた場所に備え置かなければならない。
4設立時株主は、発起人が定めた時間内は、いつでも、第一項の規定により提出された議決権行使書面の閲覧又は謄写の請求をすることができる。
結論:この肢は「妥当」(記述は正しい)。本問は「誤っているもの」を選ばせる問題なので、正解肢ではありません。
出資が損失によって減少したときは、その損失をてん補した後でなければ、匿名組合員は利益の配当を請求することができません(商法538条)。本肢は条文をほぼそのまま述べたもので妥当です。
趣旨は、匿名組合では損益が出資に反映されるという性質に基づきます。過去の営業損失で出資額が目減りしている状態で当期に利益が出ても、その利益はまず過去の損失の穴埋め(てん補)に充てられ、出資が当初の額まで回復するまでは匿名組合員は配当を請求できません。
ここでの「損失のてん補」は、匿名組合員が追加で出資をしなければならないという意味ではない点に注意が必要です。あくまで営業者の営業活動によって生じた利益で過去の損失を回復することを指します。匿名組合員が出資額を超えて損失を負担する義務がないことは、出資額を限度とする有限責任的な地位とも整合します。
結論:この肢は「妥当」(記述は正しい)。本問は「誤っているもの」を選ばせる問題なので、正解肢ではありません。
匿名組合員は、営業年度の終了時において、営業者の営業時間内に、会計帳簿・貸借対照表その他の業務及び財産の状況を検査することができます(商法539条1項。会社法第7編第2章第3節〔検査役等〕の一部規定を準用)。本肢はこの検査権を述べたもので妥当です。
匿名組合員は営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することができない(商法536条3項)一方で、出資者として営業の実態や財務の健全性を把握する必要があります。そこで法は、原則として「営業年度の終了時に、営業者の営業時間内に」という限定された範囲で検査権を認めています。重要な事由があるときは、匿名組合員はいつでも、裁判所の許可を得て検査をすることができます(商法539条2項)。
ひっかけポイントは、検査権が認められても経営そのものへの関与は認められないという点です。匿名組合員は経営判断や業務執行に口を出すことはできず、あくまで情報取得という限定的な範囲での権利にとどまります。「経営に関与しない代わりに最低限のチェックはできる」というバランスが図られています。
1電磁的方法による議決権の行使は、政令で定めるところにより、発起人の承諾を得て、法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を、電磁的方法により当該発起人に提供して行う。
2設立時株主が第六十八条第三項の承諾をした者である場合には、発起人は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。
3第一項の規定により電磁的方法によって行使した議決権の数は、出席した設立時株主の議決権の数に算入する。
4発起人は、創立総会の日から三箇月間、第一項の規定により提供された事項を記録した電磁的記録を発起人が定めた場所に備え置かなければならない。
5設立時株主は、発起人が定めた時間内は、いつでも、前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求をすることができる。
結論:この肢は「妥当」(記述は正しい)。本問は「誤っているもの」を選ばせる問題なので、正解肢ではありません。
商法541条は匿名組合契約の終了事由を列挙しており、その3号で「営業者又は匿名組合員が破産手続開始の決定を受けたこと」を掲げています。したがって、匿名組合員が破産手続開始の決定を受けた場合には匿名組合契約は終了します。本肢は妥当です。
趣旨は、匿名組合が営業者と匿名組合員との信頼関係を基礎とし、出資・損益分配という継続的関係を前提とする契約だからです。いずれかの当事者が破産すると、その継続が困難となるため、当然に契約終了とされます。
商法541条が定める終了事由は、(1)匿名組合の目的である事業の成功又はその成功の不能(1号)、(2)営業者の死亡又は営業者が後見開始の審判を受けたこと(2号)、(3)営業者又は匿名組合員が破産手続開始の決定を受けたこと(3号)です。死亡・後見開始は「営業者」についてのみ終了事由とされ、匿名組合員の死亡・後見開始は終了事由でない点が比較のポイントです。さらに商法540条には、契約期間の定めの有無に応じた任意解除(解除=告知)の規定があり、541条の当然終了事由と混同しないよう整理しておくとよいでしょう。
1設立時株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができる。この場合においては、創立総会の日の三日前までに、発起人に対してその旨及びその理由を通知しなければならない。
2発起人は、前項の設立時株主が他人のために設立時発行株式を引き受けた者でないときは、当該設立時株主が同項の規定によりその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。
発起人は、創立総会において、設立時株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が創立総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより設立時株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない。
1創立総会の議長は、当該創立総会の秩序を維持し、議事を整理する。
2創立総会の議長は、その命令に従わない者その他当該創立総会の秩序を乱す者を退場させることができる。
結論:この肢は「妥当」。設問は「誤っているもの」を選ばせる問いなので、本肢は正解肢ではない。
会社法361条2項は、監査等委員会設置会社における取締役の報酬等について、同条1項各号に掲げる事項を、「監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別して」定款の定めまたは株主総会の決議により定めなければならないと規定する。本肢はこの条文の内容と一致しており、妥当である。
監査等委員である取締役は、業務執行を行う取締役を監督・監査する立場にある。仮にその報酬を業務執行取締役と一体で(区別せずに)決めてしまうと、被監督者である業務執行側の意向で監査等委員の報酬が左右され、監督機能の独立性が損なわれかねない。そこで会社法は両者の報酬枠を区別して定めることを義務づけ、監査等委員の独立性を制度的に担保している。
ひっかけポイントとして、ここでいう「区別」とは2つの区分(監査等委員である取締役の枠/それ以外の取締役の枠)に分けて報酬等を定めるという意味であり、各取締役ごとに個別額まで株主総会で必ず定めることまでは要求していない点に注意したい。各人への個別配分は肢4・肢5で問われる別の規律の問題である。
結論:この肢は「妥当」。正解肢ではない。
会社法361条5項は、監査等委員である取締役は、株主総会において、監査等委員である取締役の報酬等について意見を述べることができると定める。本肢はこの条文どおりであり、妥当である。
趣旨は、監査等委員の独立性・中立性の確保にある。報酬は取締役の地位の根幹に関わるため、その当事者である監査等委員自身に株主総会での意見陳述権を認めることで、業務執行側からの不当な圧力を牽制し、監督機能の実効性を高めている。なお本項の意見陳述権は、各監査等委員が個人として行使できるものである(機関としての監査等委員会の意見を選定者が述べる肢3の場面とは主体が異なる)。
関連知識として、同じく監査等委員である取締役の地位の独立性を担保する規定に、その選任・解任・辞任に関する意見陳述権(会社法342条の2第1項)があり、解任には株主総会の特別決議が必要とされる(会社法309条2項7号)。報酬についての意見陳述権と併せて、監査等委員の地位の保護というセットで押さえておきたい。
創立総会においてその延期又は続行について決議があった場合には、第六十七条及び第六十八条の規定は、適用しない。
結論:この肢は「妥当」。正解肢ではない。
会社法361条6項は、監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について監査等委員会の意見を述べることができると規定する。本肢はこの条文どおりであり、妥当である。
肢2が「自分(監査等委員)自身の報酬」についての各監査等委員個人の意見陳述権であったのに対し、本肢は「監査等委員でない取締役(=業務執行取締役)の報酬」について、監査等委員会という機関の意見を、選定された監査等委員が代表して述べる場面である。報酬の対象者(誰の報酬か)と意見の主体(個人か、選定された監査等委員か)が異なる点をきちんと区別して読む必要がある。
この規定は、監査等委員会設置会社において、業務執行取締役の報酬という「お手盛り」が生じやすい領域に対しても監督機能を及ぼすための仕組みである。選定された監査等委員を通じて監査等委員会の見解を株主総会に届けることで、報酬決定の適正化を図っている。
結論:この肢は「誤り」。設問は「誤っているもの」を選ばせる問いなので、本肢が正解肢である。
会社法361条3項は、監査等委員である各取締役の報酬等について定款の定めまたは株主総会の決議がない(=各人ごとの配分が定まっていない)ときは、当該報酬等は、同条1項の報酬等の範囲内において、「監査等委員である取締役の協議」によって定めると規定する。本肢は決定方法を「多数決によって定める」としている点が条文と異なり、誤りである。
「協議」とは、原則として当事者全員の合意(全員一致)による決定を意味し、多数決とは異なる。報酬という各取締役の利害に直接関わる事項について、監督機能を担う監査等委員相互の地位の独立性・対等性を尊重するため、多数決で押し切るのではなく協議による合意を求めているのである。
ひっかけポイントは、会社法では機関の意思決定を「決議(多数決)」とするものと「協議(合意)」とするものが条文ごとに使い分けられている点である。本肢のように「多数決」という一見もっともらしい語に置き換えるのは典型的な出題パターンであり、条文が『協議』としていることを正確に記憶しているかが問われている。なお、配分が定款や株主総会の決議で個別に定められていればその定めに従うことになり、本項が適用されるのはそうした定めがない場合に限られる。
1創立総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。
2発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社。次条第二項において同じ。)は、創立総会の日から十年間、前項の議事録を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店。同条第二項において同じ。)に備え置かなければならない。
3設立時株主(株式会社の成立後にあっては、その株主及び債権者。次条第三項において同じ。)は、発起人が定めた時間(株式会社の成立後にあっては、その営業時間。同項において同じ。)内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 第一項の議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 第一項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
4株式会社の成立後において、当該株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、第一項の議事録について前項各号に掲げる請求をすることができる。
結論:この肢は「妥当」。正解肢ではない。
会社法361条7項は、一定の会社の取締役会は、取締役(監査等委員である取締役を除く)の個人別の報酬等の内容が定款または株主総会の決議により定められていない場合には、その個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を取締役会で定めなければならないと規定する。対象となるのは、監査役会設置会社で公開会社かつ大会社であって有価証券報告書提出会社であるもの(同項1号)と、監査等委員会設置会社(同項2号)である。本問の監査等委員会設置会社は同項2号に該当するため、本肢の内容は妥当である。
この報酬決定方針の策定義務は、令和元年改正会社法で新設された規律であり、取締役報酬の「お手盛り」を防ぎ、報酬決定プロセスの透明性とコーポレート・ガバナンスを強化することを目的とする。個人別の額そのものを定款・株主総会で決めていないのなら、せめてどのような考え方・手続で配分を決めるのかという方針だけは取締役会で明確にしておけ、という趣旨である。
注意点として、本肢が対象とするのは「監査等委員である取締役を除く取締役」(=業務執行側)の個人別報酬の決定方針である。監査等委員である取締役については、肢4で見たとおり協議によって個別配分を決める仕組みが別途用意されており、両者の決定構造が異なることを整理しておきたい。
結論:この肢は「誤り」。本問は「正しいものはどれか」を問うており、本肢は正しい記述ではない。
株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう(会社法2条31号)。定義規定そのものが取得する側を「株式会社又は合同会社」としており、完全親会社になれるのは株式会社に限られない。株式交換契約の規律を定める会社法767条も、完全子会社の株式を取得する側を「株式会社又は合同会社(以下「株式交換完全親会社」という。)」とかっこ書きで定義している。
したがって、合同会社も株式交換完全親会社となることができ、「株式会社でなければならない」とする本肢は誤りである。
ひっかけ・関連知識:完全子会社となれるのは「株式会社」に限られる点に注意したい(会社法2条31号は完全子会社を株式会社に限定している)。すなわち、子会社側は株式会社限定だが、親会社側は株式会社のほか合同会社も可、という非対称な構造になっている。なお、合名会社・合資会社は完全親会社になれない。新設型である株式移転の場合は完全親会社が必ず株式会社になる点(会社法2条32号、773条)とも区別して整理しておくとよい。
1発起人が創立総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき設立時株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の創立総会の決議があったものとみなす。
2発起人は、前項の規定により創立総会の決議があったものとみなされた日から十年間、同項の書面又は電磁的記録を発起人が定めた場所に備え置かなければならない。
3設立時株主は、発起人が定めた時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 前項の書面の閲覧又は謄写の請求
二 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
4株式会社の成立後において、当該株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、第二項の書面又は電磁的記録について前項各号に掲げる請求をすることができる。
結論:この肢は「誤り」。本問は「正しいものはどれか」を問うており、本肢は正しい記述ではない。
株式交換は、完全子会社となる株式会社がその「発行済株式の全部」を完全親会社に取得させる制度である(会社法2条31号)。会社法769条1項も、株式交換完全親会社は効力発生日に完全子会社の「発行済株式(株式交換完全親会社が有する完全子会社の株式を除く。)の全部を取得する」と規定している。
したがって、株式交換は全部取得が前提であり、発行済株式の「一部のみ」を取得することとなる株式交換は認められない。本肢は誤りである。
ひっかけ・関連知識:完全子会社化を目的とする制度であるから、100%の支配関係を作り出すのが趣旨である。一部取得で足りるとすると「完全」子会社という制度の前提が崩れる。なお、令和元年改正で新設された「株式交付」(会社法2条32号の2、774条の2以下)は、対象会社を子会社(議決権の過半数支配等)とするために株式の一部を取得すれば足り、全部取得を要しない点で株式交換と決定的に異なる。両者の違いは頻出論点なので区別して押さえておきたい。
結論:この肢は「正しい」。本問の正解肢である。
株式交換完全親会社が株式会社である場合、完全子会社の株主に対して交付する対価は、必ずしも完全親会社の株式である必要はない。会社法768条1項2号は、完全子会社の株主に対して「その株式に代わる金銭等」を交付するときは、当該金銭等の内容(株式、社債、新株予約権、新株予約権付社債、これら以外の財産の別など)を株式交換契約で定めると規定しており、株式以外の金銭等を交付することを正面から認めている。
このように対価として株式以外の財産(金銭、社債、親会社の親会社株式=いわゆる三角株式交換など)を交付できることを「対価の柔軟化」という。これにより、完全子会社の少数株主を金銭で締め出すキャッシュ・アウト型の株式交換も可能となっている。
ひっかけ・関連知識:「対価の柔軟化」は会社法(平成17年制定・平成18年施行)で導入されたものであり、合併等の他の組織再編にも共通する制度である(平成29年改正によるものではない点に注意)。合同会社が完全親会社となる場合は、社員に持分を割り当てる関係上、交付できる対価の範囲が異なる(会社法770条参照)。本肢は「株式に代わる金銭等を交付することができる」と可能性を述べているにすぎず、対価の柔軟化が認められている以上、正しい記述である。
発起人が設立時株主の全員に対して創立総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を創立総会に報告することを要しないことにつき設立時株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の創立総会への報告があったものとみなす。
結論:この肢は「誤り」。本問は「正しいものはどれか」を問うており、本肢は正しい記述ではない。
株式交換は、原則として両当事会社の株主総会の特別決議(会社法309条2項12号、議決権の3分の2以上)により承認されれば、反対する株主がいても実行できる。そこで、決議に反対した少数株主を保護するため、反対株主に株式買取請求権が認められている。
株式交換完全親会社(条文上は「存続株式会社等」に含まれる)の株主についても、会社法797条1項が、吸収合併等をする場合には反対株主は存続株式会社等に対し自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる旨を規定している。したがって、完全親会社の反対株主も買取請求が可能であり、「請求することはできない」とする本肢は誤りである。
ひっかけ・関連知識:完全子会社の反対株主についても会社法785条で同様の買取請求権が認められている。注意すべきは、いわゆる簡易株式交換(会社法796条2項、交付対価の額が完全親会社の純資産額の5分の1以下)の要件を満たす場合には完全親会社側の株主総会決議が省略され、これに伴って完全親会社株主の買取請求権が認められない(会社法797条1項ただし書)点、また略式株式交換における特別支配会社も買取請求権を有しない点である。原則は買取請求できるという結論を押さえつつ、例外も整理しておきたい。
結論:この肢は「誤り」。本問は「正しいものはどれか」を問うており、本肢は正しい記述ではない。
株式交換契約新株予約権(株式交換契約により完全親会社の新株予約権が交付される完全子会社の新株予約権)が新株予約権付社債に付されている場合、その社債部分の債務が完全子会社から完全親会社へと承継され、社債権者にとっては債務者が交替する。これは弁済の引当てとなる責任財産が変わることを意味し、社債権者の利害に重大な影響を及ぼすため、債権者保護手続として異議申述の機会が保障されている。
会社法789条1項3号は、株式交換契約新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合における当該新株予約権付社債についての社債権者は、株式交換完全子会社に対して株式交換について異議を述べることができる旨を定めている。したがって「異議を述べることはできない」とする本肢は誤りである。
ひっかけ・関連知識:株式交換では、完全子会社の資産・負債は原則として変動しないため、通常の債権者には債権者保護手続を要しない。例外として、新株予約権付社債の社債部分が完全親会社に承継され債務者が変わる本号のケースで社債権者の異議申述が認められる。会社法789条1項各号(吸収合併・吸収分割・株式交換における債権者異議手続)は対象範囲が混乱しやすいので、「誰の」「どの債務について」異議を述べられるのかを意識して整理しておくとよい。
設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、その設立に際して発行するある種類の株式の内容として、株主総会において決議すべき事項について、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする旨の定めがあるときは、当該事項は、その定款の定めの例に従い、創立総会の決議のほか、当該種類の設立時発行株式の設立時種類株主(ある種類の設立時発行株式の設立時株主をいう。以下この節において同じ。)を構成員とする種類創立総会(ある種類の設立時発行株式の設立時種類株主の総会をいう。以下同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類創立総会において議決権を行使することができる設立時種類株主が存しない場合は、この限りでない。
結論:本肢は「誤り」であり、設問(誤っているものを選ぶ)の正解肢です。
株主総会の決議の内容が法令に違反する場合、その決議は当然に無効であって、取消しの対象ではありません(会社法830条2項は「決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認」を求める訴えを定めています)。無効である以上、本肢のように「決議の日から3か月以内」という出訴期間の制限も、「訴えをもってのみ取消しを請求する」という方法の限定もありません。無効はいつでも・誰でも・訴えによるか否かを問わず主張できます(決議無効確認の訴えは無効を主張する一手段にすぎません)。
本肢は、決議取消しの訴え(会社法831条1項)の規律、すなわち「決議の日から3か月以内に訴えをもってのみ」という枠組みを、内容の法令違反のケースに当てはめている点で誤っています。会社法上の整理は次のとおりです。①招集手続・決議方法の法令定款違反、決議内容の定款違反、特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議は「決議取消しの訴え」(会社法831条1項各号。1号=手続・方法の法令定款違反、2号=内容の定款違反、3号=特別利害関係人による著しく不当な決議。決議の日から3か月以内・原告適格限定)。②決議内容の法令違反は「決議無効確認の訴え」(会社法830条2項。期間制限なし)。③決議が物理的・法的に存在しない場合は「決議不存在確認の訴え」(会社法830条1項)。
ひっかけポイント:「3か月以内」「訴えをもってのみ取消し」というフレーズ自体は決議取消しの訴えの正しい説明なので一見もっともらしく見えますが、本肢の前提は「内容が法令に違反するとき」です。内容の法令違反は無効事由であって取消事由ではない、という対応関係を押さえれば誤りと判断できます。なお、取消事由のうち「決議の定款違反」と「決議内容の法令違反(無効)」は紛らわしいので、定款違反は取消し、法令違反は無効、と区別して記憶しておきましょう。
結論:本肢は「妥当(正しい)」であり、設問(誤っているものを選ぶ)の正解肢ではありません。
会社の設立に瑕疵があっても、いったん成立した会社をめぐっては多数の利害関係人との法律関係が積み重なります。これを一般原則どおり「いつでも・誰でも・どのような方法でも」無効主張できるとすると、法律関係が著しく不安定になります。そこで会社法は、設立無効の主張を訴えによってのみ認め、提訴期間を会社の成立の日から2年以内に限定しています(会社法828条1項1号)。提訴できる者も、設立する株式会社の株主・取締役・監査役・執行役・清算人に限定されています(同条2項1号)。本肢は「成立の日から2年以内・訴えをもってのみ」と述べており、条文と合致します。
このように、会社の組織に関する行為の無効・取消しは「会社の組織に関する訴え」(会社法828条以下)として、訴えの方法・出訴期間・原告適格を法定し、判決の効力も対世効(会社法838条)・将来効(会社法839条)とすることで、画一的かつ安定的に処理する仕組みになっています。
ひっかけポイント:会社の組織に関する訴えは行為ごとに提訴期間が異なります。株式会社の設立無効は2年ですが、新株発行(募集株式の発行等)無効の訴えは公開会社で6か月以内・非公開会社で1年以内(会社法828条1項2号)、合併無効の訴えは効力発生日から6か月以内(同項7号・8号)です。対象行為ごとに期間を区別して覚えましょう。また「設立無効」と紛らわしい「会社不成立」(そもそも会社が成立に至らなかった場合)は828条の訴えの対象ではない点も押さえておくとよいでしょう。
1前条、第九十条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)、第九十二条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第百条第一項又は第百一条第一項の規定により種類創立総会の決議をする場合には、発起人は、種類創立総会を招集しなければならない。
2種類創立総会の決議は、当該種類創立総会において議決権を行使することができる設立時種類株主の議決権の過半数であって、出席した当該設立時種類株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行う。
3前項の規定にかかわらず、第百条第一項の決議は、同項に規定する種類創立総会において議決権を行使することができる設立時種類株主の半数以上であって、当該設立時種類株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行わなければならない。
結論:本肢は「妥当(正しい)」であり、設問(誤っているものを選ぶ)の正解肢ではありません。
新株発行(募集株式の発行等)無効の訴え(会社法828条1項2号)について請求を認容する判決が確定した場合、その効力は将来に向かってのみ生じ、過去に遡って効力を失わせること(遡及効)はありません(会社法839条)。会社法839条は、828条1項各号に掲げる組織に関する行為(設立・新株発行・合併等)の無効・取消しの請求を認容する確定判決について、当該行為が「将来に向かってその効力を失う」と明文で定めています。本肢はこれに合致します。
将来効とされる理由は、いったん発行された新株について、その株式を取得した者や、その間になされた剰余金配当・議決権行使などの法律関係を遡及的に覆すと、取引の安全と法的安定性を害するためです。無効判決確定後の処理として、会社は払込みを受けた金額(給付財産の価額)に相当する金銭を株主に返還するなどの清算的処理を行います(会社法840条)。
ひっかけポイント:通常の私法上の無効は遡及効が原則ですが、会社の組織に関する訴えの無効判決は将来効である点が大きな例外です。また、無効判決には当事者以外の第三者にも効力が及ぶ対世効(会社法838条)がある点も合わせて押さえましょう。「遡及して効力を失う」「初めから無効であったものとみなす」と書かれていれば誤り、と判断できるようにしておくと得点につながります。
結論:本肢は「妥当(正しい)」であり、設問(誤っているものを選ぶ)の正解肢ではありません。
役員等が会社に損害を与えた場合、本来はその責任を会社自身が追及すべきですが、役員同士の馴れ合いにより責任追及がなされないおそれがあります。そこで会社法は、株主が会社のために役員等の責任を追及する訴え(株主代表訴訟)を提起する前提として、まず会社に対して訴えの提起を請求する「提訴請求権」を株主に認めています(会社法847条1項)。
公開会社の場合、この提訴請求ができるのは6か月(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)前から引き続き株式を有する株主です(会社法847条1項本文)。本肢は「6か月前から引き続き株式を有する株主」が「公開会社に対し」請求できるとしており、条文の要件と合致します。会社が請求の日から60日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該株主は自ら責任追及の訴え(株主代表訴訟)を提起することができます(会社法847条3項)。
ひっかけポイント:6か月の継続保有要件は公開会社に課されるものであり、非公開会社(株式の全部に譲渡制限が付された会社)では保有期間の要件はなく、株式を有していれば直ちに請求できます(会社法847条2項)。「6か月」を一律の要件と思い込むと非公開会社の事例で誤りますので、公開・非公開の区別を意識しましょう。なお、60日の経過を待つと会社に回復できない損害が生ずるおそれがある場合は、提訴請求を経ずに直ちに代表訴訟を提起できます(会社法847条5項)。
第六十七条から第七十一条まで、第七十二条第一項及び第七十四条から第八十二条までの規定は、種類創立総会について準用する。この場合において、第六十七条第一項第三号及び第四号並びに第二項、第六十八条第一項及び第三項、第六十九条から第七十一条まで、第七十二条第一項、第七十四条第一項、第三項及び第四項、第七十五条第二項、第七十六条第二項及び第三項、第七十七条、第七十八条本文並びに第八十二条第一項中「設立時株主」とあるのは、「設立時種類株主(ある種類の設立時発行株式の設立時株主をいう。)」と読み替えるものとする。
結論:この肢は「誤り」。本問は「誤っているものはどれか」を問う問題なので、この肢が正解肢になります。
根拠条文は商法529条です。同条は「交互計算は、商人間又は商人と商人でない者との間で平常取引をする場合において、一定の期間内の取引から生ずる債権及び債務の総額について相殺をし、その残額の支払をすることを約することによって、その効力を生ずる」と定めています。条文が「商人間又は商人と商人でない者との間で」と明記しているとおり、交互計算は当事者双方が商人である場合に限られません。したがって、この肢の前半(交互計算の定義部分)は条文どおりで正しいのですが、後半の「商人と商人でない者との間での平常取引では、交互計算を約することはできない」という部分が条文に真正面から反しており、記述としては誤りとなります。
理由づけとして、交互計算の制度趣旨を押さえておきましょう。継続的に取引を繰り返す当事者間で、一件ごとに現金決済をしていたのでは手間もコストもかかり、現金輸送の危険も生じます。そこで一定期間の債権債務をひとまとめにして相殺し、差額だけを支払えばよいことにしたのが交互計算です。この「決済の簡易化」と「相殺までの間の事実上の信用授与」という機能は、商人どうしの取引に限らず、商人が非商人である顧客と継続的に取引する場面でも同じように必要になります。商法は当事者の一方が商人であればその行為を商行為として扱う建て付け(商法3条1項の一方的商行為)を採っており、交互計算についても少なくとも一方が商人であれば足りるとしたわけです。逆に、当事者双方が商人でない場合には商法529条の交互計算にはなりません(民法上の相殺予約等として処理されます)。
ひっかけポイントは、主体の限定の付け替えです。529条の「商人間又は商人と商人でない者との間」を本肢のように「商人間」に限定する改変のほか、逆に「商人でない者どうしの間でも交互計算を約することができる」とする改変も考えられます。少なくとも一方が商人であれば足りるが、双方が商人でない場合は商法上の交互計算にならない、という線引きを正確に押さえてください。あわせて、交互計算に組み入れられた個々の債権は独立性を失い、当事者は組入れ後の個別債権を単独で行使したり譲渡したりすることができなくなる(交互計算不可分の原則)という理解も、記述式・多肢択一の双方で問われうる基本知識です。
結論:本肢は「妥当(正しい)」であり、設問(誤っているものを選ぶ)の正解肢ではありません。
役員(取締役・会計参与・監査役)の職務の執行に関し不正の行為または法令定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、株主総会で解任の議案が否決されたとき等は、一定の少数株主(総株主の議決権または発行済株式の100分の3以上を、公開会社では6か月前から引き続き有する株主)が、当該株主総会の日から30日以内に、裁判所に対し役員解任の訴えを提起することができます(会社法854条1項)。
この役員解任の訴えの被告は、当該株式会社および当該解任を請求された役員(解任の対象とされる役員)の双方です(会社法855条)。役員の地位の存否という点で役員本人が当事者であると同時に、会社の機関構成に直接影響する争いであるため、会社も当事者とする必要があるからです(会社と役員の双方を被告とする固有必要的共同訴訟)。本肢はこの被告適格を正しく述べています。
ひっかけポイント:株主代表訴訟(責任追及の訴え)では被告は原則として役員等本人のみであるのに対し、役員解任の訴えでは会社と役員の双方が被告となる点が異なります。訴えの類型ごとに「被告が誰か」を整理しておきましょう。また、提訴要件として株主総会で解任が否決された等の日から30日以内という出訴期間がある点(会社法854条1項柱書)も併せて確認しておくとよいでしょう。