行政書士 記述式の行政法|頻出パターン10選
行政書士試験の記述式・行政法で頻出のパターン10選を具体的な40字解答例とともに解説。取消訴訟、処分性、義務付け訴訟、国家賠償法など出題可能性の高いテーマの模範解答を紹介し、記述式の得点力を高めます。
はじめに|行政法の記述式は「パターン」で攻略する
行政書士試験の記述式・問題44は行政法から出題されます。配点は20点であり、取消訴訟の要件や国家賠償法の論点など、出題パターンにはある程度の傾向があります。
記述式は1問20点(45・46問は民法で各20点)の合計60点を占めます。行政書士試験は300点満点中180点が合格ラインであり、記述式60点の出来が合否を大きく左右します。択一・多肢選択でボーダー前後の受験生は、記述式で10点伸ばせるかどうかが合格の分かれ目になります。逆に言えば、記述式は「捨て問」にしてはいけないパートです。
行政法の記述式で問われるのは、主に以下の能力です。
- 正しい訴訟類型を選択できるか
- 被告を正確に特定できるか
- 条文上の要件を漏れなく記述できるか
- 行政手続法・行政不服審査法の手続きを正確に理解しているか
採点の仕組みと部分点の考え方
記述式は「キーワード採点」が基本と言われます。模範解答に含まれるべき法的要素(キーワード)がいくつ盛り込まれているかで点数が決まる傾向があり、文章の美しさよりも「必要な法律用語・条文上の文言・主体・対象を漏れなく入れること」が重要です。
そのため、記述式対策では次の発想が有効です。
- 問題文から「何の制度・論点が問われているか」を特定する
- その論点で得点に直結するキーワード(通常2〜3個)を思い出す
- 「誰が・誰に・何を・どうする(できる)」の骨格に当てはめて40字前後でまとめる
完璧な答案を1問だけ書くより、複数のキーワードを確実に拾って部分点を積み上げるほうが、本番では現実的かつ効果的です。
字数感覚を身につける
「40字程度」は概ね35〜45字が許容範囲とされます。原稿用紙のマス目に書く形式のため、句読点も1字に数えます。日頃から「この論点なら○字」という体内時計を作っておくと、本番で字数オーバー・字数不足による減点を防げます。本記事の解答例にはすべて字数を付記していますので、目安にしてください。
本記事では、行政法の記述式で出題可能性の高いテーマを10個厳選し、それぞれの論点の解説と具体的な40字解答例を紹介します。条文番号は正確に引用していますので、学習の際に条文を参照しながら読み進めてください。記述式の全体戦略や勉強法は、行政書士の記述式 完全攻略ガイド|配点・採点・対策法もあわせて確認してください。
パターン1:取消訴訟の被告と訴訟要件
取消訴訟は行政事件訴訟法の最重要テーマです。記述式では特に「被告は誰か」「出訴期間」が問われやすいです。
論点の解説
取消訴訟は「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」の取消しを求める訴訟です(行政事件訴訟法3条2項)。
行政事件訴訟法第11条第1項
「処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、当該処分又は裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体を被告として提起しなければならない。」
出訴期間は、処分があったことを知った日から6か月以内(同法14条1項)、処分の日から1年以内(同条2項)です。
被告適格の改正趣旨を理解する
かつて取消訴訟は「処分をした行政庁」を被告とする行政庁主義でしたが、平成16年の行政事件訴訟法改正により、現在は「行政庁の所属する国又は公共団体」を被告とする行政主体主義に変わりました。改正の趣旨は、原告となる国民が「どの行政庁を被告とすべきか」を誤って訴えが却下されるリスクを減らし、救済の門戸を広げることにあります。
ただし、被告は国・公共団体(例:国、A県、B市)であっても、訴状には「処分をした行政庁」を記載する必要があり、被告は訴訟において「処分をした行政庁」を明らかにしなければなりません(同法11条4項)。記述式では「被告=国又は公共団体」を答えさせる出題が中心ですが、「被告を明らかにして」と問われたら必ず具体的な団体名(X市、A県など)を書くことが得点の鍵です。
取消訴訟の訴訟要件の整理
取消訴訟が適法に審理されるためには、次の訴訟要件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると本案審理に入らず却下されます。
このうち処分性・原告適格は本記事のパターン2・3で個別に扱います。
解答例
問題例:X市の建築主事が建築確認を拒否した場合、申請者Aはどのような訴訟を提起すべきか。被告を明らかにして40字程度で記述しなさい。
解答例(38字):
「AはX市を被告として、建築確認の拒否処分の取消しを求める取消訴訟を提起すべきである。」
キーワード:X市(被告)、拒否処分、取消訴訟
よくある誤解と出題ポイント
- 誤解1:「被告は建築主事である」 → 誤り。被告は行政庁ではなく、行政庁が所属する国・公共団体(X市)です。
- 誤解2:出訴期間の起算日 → 取消訴訟は「処分があったことを知った日」から6か月、これとは別に「処分の日」から1年という二重の期間制限がある点に注意。いずれか早く到来したほうで出訴できなくなります。
- 出題角度:出訴期間は「正当な理由があるとき」は例外的に徒過しても訴えられる(行訴法14条1項・2項ただし書)という点も問われ得ます。
パターン2:処分性
処分性は「その行為が取消訴訟の対象となるか」という入口の問題です。記述式では処分性の定義を正確に書けるかが問われます。
論点の解説
判例(最判昭39.10.29)は処分性を次のように定義しています。
「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」
― 最判昭和39年10月29日(大田区ごみ焼却場事件)
この定義に含まれるキーワードは4つです。
- 公権力の主体たる国又は公共団体の行為
- 直接
- 国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する
- 法律上認められている
処分性が争われた重要判例
処分性は、定義の暗記だけでなく「どのような行為に処分性が認められた/否定されたか」という具体例の知識が問われます。近年は判例が処分性を柔軟に認める傾向があり、択一・記述ともに頻出です。
浜松市土地区画整理事業計画事件(最大判平20.9.10)
事案:土地区画整理事業の事業計画の決定について、従来の判例(最大判昭41.2.23=青写真判決)は処分性を否定していたが、住民がその取消しを求めて争った。
判旨:事業計画の決定がされると、施行地区内の宅地所有者等は建築制限等の規制を受ける地位に立たされ、その法的地位に直接的な影響が生じる。実効的な権利救済を図る観点からも、事業計画の決定は処分に当たると判断し、青写真判決を変更した。
意義:「実効的な権利救済」という観点を重視し、計画段階の行為にも処分性を広く認める方向を示したリーディングケース。
解答例
問題例:行政事件訴訟法における「処分」の意味について40字程度で記述しなさい。
解答例(40字):
「公権力の主体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものをいう。」
キーワード:公権力の主体、直接、権利義務を形成し又はその範囲を確定
出題ポイント
- 定義のキーワードのうち、特に「直接」「権利義務を形成し又はその範囲を確定」が採点上の核です。この2要素を落とさないこと。
- 「法律上認められている」は字数の都合で省かれることもありますが、入れられれば加点が見込めます。
- 行政指導(勧告・要綱に基づく行為)は原則として処分性が否定されますが、病院開設中止勧告のように後続の不利益と結びつく場合は例外的に肯定された点が頻出です。
パターン3:原告適格
取消訴訟は「法律上の利益を有する者」に限り提起できます(行政事件訴訟法9条1項)。記述式では第三者の原告適格が問われることがあります。
論点の解説
行政事件訴訟法第9条第1項
「処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えは、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。」
― 行政事件訴訟法 第9条第1項
同条第2項
「裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たっては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。」
― 行政事件訴訟法 第9条第2項
9条2項の考慮要素(平成16年改正の核心)
9条2項は平成16年改正で新設され、第三者(処分の名あて人以外の者)の原告適格を判断する際の考慮要素を明文化しました。これは小田急高架訴訟など過去の判例法理を取り込んだものです。判断にあたって考慮すべき要素は次のとおりです。
- 法令の規定の文言のみによらないこと
- 当該法令の趣旨及び目的
- 当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質
- 当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的
- 利益が害される態様及び程度
判例は、第三者の原告適格を認めるためには、その利益が「一般的公益に吸収・解消されるにとどまらず、個々人の個別的利益としても保護されている」ことが必要だとしています。これが「個別的利益」というキーワードです。
小田急高架訴訟(最大判平17.12.7)
事案:小田急線の連続立体交差事業(高架化)の認可をめぐり、周辺住民が騒音等を理由に取消訴訟を提起。原告適格が争われた。
判旨:事業地の周辺に居住し、騒音・振動等によって健康・生活環境に著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は、原告適格を有する。最高裁は、それまで原告適格を狭く解していた立場を改めた。
意義:9条2項の考慮要素に沿って原告適格を実質的に判断する枠組みを示した代表的判例。
解答例
問題例:処分の相手方ではない近隣住民Bが取消訴訟を提起するためには、どのような利益を有する必要があるか。40字程度で記述しなさい。
解答例(40字):
「Bは、当該処分の根拠法令により個別的に保護された利益、すなわち法律上の利益を有する必要がある。」
キーワード:法律上の利益、根拠法令、個別的に保護された利益
よくある誤解
- 「法律上の利益」と「事実上の利益」の混同 → 単なる経済的・反射的利益(反射的利益論)では原告適格は認められません。根拠法令が個別的に保護していると解釈できる利益でなければなりません。
- 第三者の原告適格は、9条2項の考慮要素を意識した記述ができると差がつきます。字数の都合で「根拠法令の趣旨・目的」に触れられると加点が期待できます。
パターン4:義務付け訴訟
義務付け訴訟には「申請型」と「非申請型(直接型)」の2種類があります。記述式では両者の区別と要件が問われます。
論点の解説
行政事件訴訟法第3条第6項
「この法律において『義務付けの訴え』とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。」
― 行政事件訴訟法 第3条第6項
申請型義務付け訴訟(同項2号):法令に基づく申請がされた場合に、行政庁がすべき処分をしないとき
- 要件:申請型は取消訴訟又は不作為の違法確認の訴えを併合提起する必要がある(同法37条の3第3項)
非申請型義務付け訴訟(同項1号):一定の処分がなされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあるとき
- 要件:重大な損害を生ずるおそれ+他に適当な方法がないこと(同法37条の2第1項)
2類型の要件を表で整理する
申請型と非申請型はどちらも記述式の定番です。両者の違いを正確に区別できるかが得点を分けます。
申請型は「申請権がある人が自分への処分を求める」場面、非申請型は「申請の仕組みがない場面で、行政庁の権限行使を求める」場面、という対比でイメージすると区別しやすくなります。非申請型でだけ「重大な損害」「補充性」が要件となる点が頻出の引っかけポイントです。
解答例
問題例:Aが行政庁Bに営業許可を申請したが拒否処分を受けた場合、Aはどのような訴訟を提起すべきか。40字程度で記述しなさい。
解答例(40字):
「Aは拒否処分の取消訴訟と、Bに許可処分をすべき旨の申請型義務付け訴訟を併合提起すべきである。」
キーワード:取消訴訟、申請型義務付け訴訟、併合提起
問題例2:Aが行政庁Bに許可申請をしたが何ら応答がない場合、Aはどのような訴訟を提起すべきか。40字程度で記述しなさい。
解答例(42字):
「Aは不作為の違法確認の訴えと、Bに許可処分をすべき旨の申請型義務付け訴訟を併合提起すべきである。」
キーワード:不作為の違法確認の訴え、申請型義務付け訴訟、併合提起
出題ポイントとよくある誤解
- 申請型では「拒否されたか/応答がないか」で併合する訴えが変わります。拒否処分→取消訴訟(または無効等確認訴訟)、不作為→不作為の違法確認訴訟を正確に対応させること。
- 申請型に「重大な損害」要件を書いてしまうのは典型的な誤りです。重大な損害・補充性は非申請型のみの要件です。
- 仮の義務付け(37条の5)は、「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要がある」ことなどを要件とする点もあわせて押さえておくと万全です。
パターン5:差止訴訟
差止訴訟は、行政庁が一定の処分をすべきでないのにしようとしている場合に、その差止めを求める訴訟です。
論点の解説
行政事件訴訟法第3条第7項
「この法律において『差止めの訴え』とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。」
― 行政事件訴訟法 第3条第7項
差止訴訟の要件(同法37条の4第1項)は以下の2つです。
- 一定の処分がされることにより重大な損害を生ずるおそれがあること
- 他に適当な方法がないこと(補充性)
非申請型義務付け訴訟との対称性
差止訴訟は「処分をしてはならない」と命じる点で、「処分をせよ」と命じる非申請型義務付け訴訟と表裏の関係にあります。要件も「重大な損害+補充性」で共通しており、セットで覚えると効率的です。
「重大な損害を生ずるおそれ」の判断にあたっては、損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質・程度・処分の内容・性質をも勘案するとされています(37条の4第2項)。
解答例
問題例:行政庁Aが違法な営業停止処分をしようとしている場合、Xはどのような訴訟を提起できるか。その要件とともに40字程度で記述しなさい。
解答例(41字):
「Xは重大な損害を生ずるおそれがあり他に適当な方法がないときに、差止めの訴えを提起できる。」
キーワード:重大な損害、他に適当な方法がない、差止めの訴え
出題ポイント
- 差止訴訟は「処分がされる前」に争う点が特徴です。すでに処分がされた後なら取消訴訟、される前なら差止訴訟という時系列の整理が問われます。
- 仮の差止め(37条の5第2項)も、義務付け訴訟の仮の義務付けと並んで仮の救済として用意されています。
パターン6:国家賠償法1条(公務員の不法行為)
国家賠償法1条は、公務員の違法な行為による損害の賠償責任を定めるものです。記述式では要件の正確な記述が求められます。
論点の解説
国家賠償法第1条第1項
「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」
― 国家賠償法 第1条第1項
要件は以下の5つです。
- 国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員
- その職務を行うについて
- 故意又は過失
- 違法に
- 他人に損害を加えた
賠償責任を負うのは公務員個人ではなく、国又は公共団体です。
「公権力の行使」の広義説と外形標準説
国賠法1条の「公権力の行使」は、純粋な私経済作用(民法で処理)と公の営造物の管理(2条で処理)を除く、行政活動全般を広く含むと解されています(広義説)。学校教育・行政指導・不作為なども含まれる点が頻出です。
また「その職務を行うについて」は、実際に職務執行であったか否かにかかわらず、客観的に職務執行の外形を備える行為であれば足りるとされます(外形標準説、最判昭31.11.30)。たとえば非番の警察官が制服を着て職務を装い行った行為も対象となり得ます。
求償権と公務員個人の責任
国・公共団体が賠償した場合、当該公務員に故意又は重大な過失があったときに限り、国・公共団体は公務員に求償できます(国賠法1条2項)。軽過失では求償できない点に注意が必要です。
国家賠償法第1条第2項
「前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。」
― 国家賠償法 第1条第2項
解答例
問題例:A市の職員Bが、職務として行った違法な処分によりCに損害を与えた場合、Cは誰に対して何を請求できるか。40字程度で記述しなさい。
解答例(37字):
「CはA市に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を請求することができる。」
キーワード:A市(国又は公共団体)、国家賠償法1条1項、損害賠償
注意:被告は公務員B個人ではなくA市です。判例(最判昭30.4.19)は、公務員個人に対する直接の損害賠償請求を否定しています。
よくある誤解
- 「Cは職員B個人に賠償請求できる」 → 判例は公務員個人への直接請求を否定します。請求先はあくまで国・公共団体(A市)です。
- 求償の要件を「過失」とする誤り → 求償は「故意又は重大な過失」が必要です。
- 国家賠償法1条のより詳しい解説は、国家賠償法1条|公権力の行使と要件を判例で攻略を参照してください。
パターン7:国家賠償法2条(営造物の瑕疵)
国家賠償法2条は、道路・河川などの公の営造物の設置又は管理の瑕疵による損害の賠償責任を定めます。
論点の解説
国家賠償法第2条第1項
「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」
― 国家賠償法 第2条第1項
国家賠償法2条は無過失責任です。1条と異なり「故意又は過失」は要件ではありません。
要件は以下の3つです。
- 公の営造物の設置又は管理に瑕疵がある
- 他人に損害を生じた
- 瑕疵と損害の間に因果関係がある
「瑕疵」の意味と道路・河川の区別
「設置又は管理の瑕疵」とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいうとされます(最判昭45.8.20=高知落石事件)。財政的な制約は原則として免責事由になりません。
道路と河川では瑕疵の判断基準が異なる点が頻出です。
河川については、もともと洪水等の危険を内包する自然公物であり、改修には時間を要することから、「同種・同規模の河川管理の一般水準に照らして相当か」という相対的・過渡的な安全性で判断されます。
解答例
問題例:A県が管理する県道に大きな穴があり、歩行者Bが転倒して負傷した。Bは誰に対して何を請求できるか。40字程度で記述しなさい。
解答例(40字):
「Bは、A県に対し、国家賠償法2条1項に基づき、道路の管理の瑕疵による損害賠償を請求できる。」
キーワード:A県、国家賠償法2条1項、管理の瑕疵、損害賠償
出題ポイント
- 1条と2条の最大の違いは「故意・過失の要否」です。2条は無過失責任なので、「過失」を書くと減点リスクがあります。
- 「営造物」は不動産に限らず、公用車・公務用拳銃などの動産も含まれます。
- 国家賠償法2条の詳細は、国家賠償法2条|営造物責任と無過失責任を判例で理解で深掘りしています。
パターン8:行政手続法の手続的瑕疵
行政手続法に基づく手続きの瑕疵は、記述式で問われやすいテーマです。
論点の解説
行政手続法は、申請に対する処分と不利益処分について、それぞれ手続きを定めています。
申請に対する処分
- 審査基準の設定・公表義務(行政手続法5条)
- 標準処理期間の設定努力義務・公表義務(同法6条)
- 拒否処分の場合の理由の提示(同法8条)
不利益処分
- 処分基準の設定・公表の努力義務(同法12条)
- 不利益処分の理由の提示(同法14条)
- 聴聞又は弁明の機会の付与(同法13条)
行政手続法第8条第1項
「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。」
― 行政手続法 第8条第1項
行政手続法第14条第1項
「行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。」
― 行政手続法 第14条第1項
聴聞と弁明の機会の付与の使い分け
不利益処分の事前手続には「聴聞」と「弁明の機会の付与」の2種類があり、どちらが適用されるかは処分の重大性で決まります(行手法13条1項)。
「許可の取消し」「免許の取消し」など、相手方の地位を根本から奪う重い処分は聴聞、というイメージを持つと判断しやすくなります。
理由提示の程度に関する判例
理由提示は、単に根拠条文を示すだけでは足りず、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用したかを、相手方が了知し得る程度に示す必要があるとされます(最判平23.6.7=一級建築士免許取消事件)。理由提示が不十分な場合、その処分は手続的瑕疵により違法となり得ます。
解答例
問題例:行政庁Aが申請者Bの許可申請を拒否する場合、行政手続法上どのような手続きが必要か。40字程度で記述しなさい。
解答例(36字):
「Aは、Bに対し、行政手続法8条1項に基づき、拒否処分と同時に理由を示さなければならない。」
キーワード:行政手続法8条1項、同時に、理由を示す
問題例2:行政庁Aが営業者Bに対して営業許可の取消処分をしようとする場合、どのような手続きが必要か。40字程度で記述しなさい。
解答例(37字):
「Aは、Bに対し、行政手続法13条1項1号に基づき、聴聞の手続きを執らなければならない。」
キーワード:行政手続法13条1項1号、聴聞
出題ポイントとよくある誤解
- 「許可の取消し」は重大な不利益処分なので聴聞、「営業停止」程度なら弁明の機会の付与、という線引きが頻出の判断ポイントです。
- 理由提示は「同時に」行う必要があります。後から理由を補充すればよいわけではない点が問われます。
- 申請に対する処分の不利益処分との手続の違いは、申請に対する処分|審査基準・標準処理期間・理由提示や不利益処分と聴聞・弁明の機会で体系的に整理できます。意見公述の手続は聴聞・弁明の機会の付与|不利益処分の事前手続も参考になります。
パターン9:審査請求
行政不服審査法に基づく審査請求は、取消訴訟と並ぶ権利救済手段です。記述式では審査請求先や期間が問われることがあります。
論点の解説
行政不服審査法第4条
「審査請求は、法律(条例に基づく処分については、条例)に特別の定めがある場合を除くほか、処分庁等の最上級行政庁に対してするものとする。」
― 行政不服審査法 第4条
審査請求期間は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内(同法18条1項)、処分があった日の翌日から起算して1年以内(同条2項)です。
行政不服審査法第18条第1項
「処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月を経過したときは、することができない。」
― 行政不服審査法 第18条第1項
審査請求をすべき行政庁の整理
行手法4条は原則として「最上級行政庁」を審査請求先としますが、処分庁に上級行政庁があるかどうかで結論が変わります。
「最上級行政庁」とは、処分庁の上に立つ行政庁のうち最も上位のものを指します。たとえば大臣の下の外局の長がした処分なら、最上級行政庁である当該大臣に審査請求します。
平成26年改正の重要ポイント
平成26年(施行は平成28年)の行政不服審査法の全部改正により、以下の点が変わりました。記述式・択一ともに頻出です。
- 不服申立ての種類が審査請求に一元化された(旧法の異議申立てが原則廃止)
- 審理の公正性を高めるため、処分に関与しない審理員が審理を行う制度を導入
- 第三者機関である行政不服審査会への諮問手続を新設
- 不服申立期間が「60日」から「3か月」に延長された
解答例
問題例:A大臣の所轄するB庁の長官が行った処分に不服がある場合、審査請求はどこに対して行うべきか。40字程度で記述しなさい。
解答例(38字):
「処分庁の最上級行政庁であるA大臣に対して審査請求をすべきである。」
キーワード:最上級行政庁、A大臣、審査請求
よくある誤解と出題ポイント
- 審査請求期間「3か月」と取消訴訟の出訴期間「6か月」の混同が最頻出の引っかけです。表裏で必ずセット暗記してください。
- 審査請求期間は「処分があったことを知った日の翌日から起算して」3か月です。「翌日から」という起算点も問われます。
- 審査請求の全体像は、行政不服審査法の基本|審査請求の仕組みと流れで確認できます。取消訴訟との比較は行政事件訴訟法の基礎|訴訟類型と要件が役立ちます。
パターン10:教示制度
教示制度は行政事件訴訟法と行政不服審査法の両方に規定があり、記述式でも出題されるテーマです。
論点の解説
行政不服審査法の教示
行政不服審査法第82条第1項
「行政庁は、審査請求若しくは再調査の請求又は他の法令に基づく不服申立て(以下この条において「不服申立て」と総称する。)をすることができる処分をする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければならない。」
― 行政不服審査法 第82条第1項
教示すべき事項は3つです。
- 不服申立てをすることができる旨
- 不服申立てをすべき行政庁
- 不服申立てをすることができる期間
行政事件訴訟法の教示
行政事件訴訟法第46条第1項
「行政庁は、取消訴訟を提起することができる処分又は裁決をする場合には、当該処分又は裁決の相手方に対し、次に掲げる事項を書面で教示しなければならない。」
― 行政事件訴訟法 第46条第1項
教示すべき事項は4つです。
- 取消訴訟の被告とすべき者
- 取消訴訟の出訴期間
- 審査請求前置の場合はその旨
- 裁決についての訴訟の場合はその旨
教示を怠った場合・誤った場合の救済
教示制度は「行政庁の親切義務」ではなく、誤れば国民の救済が図られる制度です。次の救済規定が頻出です。
これらの規定の趣旨は、行政庁の教示の誤りや懈怠の不利益を国民に負わせない点にあります。
解答例
問題例:行政庁が不利益処分をする場合に行政不服審査法に基づいて教示すべき事項を40字程度で記述しなさい。
解答例(41字):
「不服申立てをすることができる旨、不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てができる期間である。」
キーワード:不服申立てをすることができる旨、不服申立てをすべき行政庁、期間
問題例2:行政庁が教示をしなかった場合、処分の相手方はどのような措置をとることができるか。40字程度で記述しなさい。
解答例(39字):
「処分の相手方は、処分庁に対し、不服申立先等につき書面による教示を求めることができる。」
行政不服審査法第82条第2項
「行政庁は、利害関係人から、当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうか並びに当該処分が不服申立てをすることができるものである場合における不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間につき教示を求められたときは、当該事項を教示しなければならない。」
― 行政不服審査法 第82条第2項
出題ポイント
- 行審法の教示事項は3つ、行訴法の教示事項は4つで内容が異なります。混同しないこと。
- いずれも「書面で」教示するのが原則です(口頭による処分の場合を除く)。
- 教示しなかった場合(83条)と、誤って教示した場合(22条)で救済の規定が分かれている点も問われます。
行政法の記述式で高得点を取るための総合演習
ここまで学んだ10パターンを組み合わせた応用問題を解いてみましょう。
応用問題
問題:A県知事が、B社に対して産業廃棄物処理業の許可を取り消す不利益処分をしようとしている。この場合、A県知事が行政手続法上とるべき手続きは何か。また、B社がこの処分に不服がある場合にとることができる法的手段を1つ挙げよ。合わせて40字程度で記述しなさい。
解答例(42字):
「A県知事は聴聞の手続きを執るべきであり、B社は処分後にA県知事に対し審査請求をすることができる。」
キーワード:聴聞、審査請求
この問題では、行政手続法13条1項1号(許可の取消し→聴聞)と行政不服審査法4条(審査請求)の2つの知識を組み合わせる必要があります。
答案を書くときの3ステップ
本番で迷わないために、答案作成を次の3ステップに分解して練習しましょう。
- 論点の特定:問題文のキーワード(「拒否」「取り消す」「申請」「営造物」など)から、どのパターンかを判定する
- キーワードの抽出:そのパターンで得点に直結する法律用語・条文番号・主体を思い出す
- 骨格への当てはめ:「誰が・誰に・何を・どうする(できる)」の型に流し込み、字数を調整する
問題文中の固有名詞(X市、A県知事、B社など)は、解答に必ず反映させましょう。被告や処分庁を抽象的に「行政庁」と書くより、具体名を書くほうが採点上有利になる出題が多くあります。
失点を防ぐチェックリスト
- 主体(被告・処分庁)を国・公共団体で正確に書いたか
- 訴訟類型・手続の名称を正式名称で書いたか(例:「不作為の違法確認の訴え」を「不作為訴訟」と略していないか)
- 1条と2条、申請型と非申請型、3か月と6か月など、混同しやすいペアを取り違えていないか
- 字数が35〜45字の範囲に収まっているか
- 設問が複数の事項を要求していないか(「手続と救済手段」「訴訟類型と被告」など、2点要求は頻出)
確認問題
国家賠償法2条に基づく損害賠償請求では、公務員の故意又は過失が要件となる。
申請型義務付け訴訟を提起する場合、取消訴訟又は不作為の違法確認の訴えを併合提起する必要がある。
行政不服審査法に基づく審査請求期間は、処分があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内である。
取消訴訟の被告は、処分をした行政庁ではなく、その行政庁が所属する国又は公共団体である。
非申請型(直接型)義務付け訴訟では、重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ他に適当な方法がないことが要件となる。
まとめ
行政法の記述式で頻出のパターン10選を、具体的な解答例とともに解説しました。
10パターンの一覧
混同しやすいペアの整理表
学習のポイント
- 各パターンの模範解答を何度も書いて手に覚え込ませる
- 条文番号を正確に暗記する(特に行政事件訴訟法3条・9条・11条・14条・37条の2〜4)
- 取消訴訟の出訴期間(6か月)と審査請求期間(3か月)の違いを確実に区別する
- 被告は行政庁ではなく国又は公共団体であることを常に意識する
- 重要判例は「事案→判旨→意義」で理解し、記述のキーワードに落とし込む
記述式の行政法は、パターンを押さえて繰り返し書く練習をすれば、安定して高得点が狙えるパートです。本記事の解答例を参考に、自分の手で書く練習を重ねてください。
なお、記述式の全体戦略・採点・時間配分は行政書士の記述式 完全攻略ガイド|配点・採点・対策法で、民法の記述式頻出パターンは行政書士 記述式の民法|頻出パターン10選で扱っています。択一・多肢選択を含めた行政法全体の学習法は行政法の全体像と学習戦略|行政書士試験の得点源もあわせて活用してください。記述式の演習量を確保したい方は行政書士ブートラボ アプリの活用法も参考になります。