行政書士 記述式の行政法|頻出パターン10選
行政書士試験の記述式・行政法で頻出のパターン10選を具体的な40字解答例とともに解説。取消訴訟、処分性、義務付け訴訟、国家賠償法など出題可能性の高いテーマの模範解答を紹介し、記述式の得点力を高めます。
はじめに|行政法の記述式は「パターン」で攻略する
行政書士試験の記述式・問題44は行政法から出題されます。配点は20点であり、取消訴訟の要件や国家賠償法の論点など、出題パターンにはある程度の傾向があります。
行政法の記述式で問われるのは、主に以下の能力です。
- 正しい訴訟類型を選択できるか
- 被告を正確に特定できるか
- 条文上の要件を漏れなく記述できるか
- 行政手続法・行政不服審査法の手続きを正確に理解しているか
本記事では、行政法の記述式で出題可能性の高いテーマを10個厳選し、それぞれの論点の解説と具体的な40字解答例を紹介します。条文番号は正確に引用していますので、学習の際に条文を参照しながら読み進めてください。
パターン1:取消訴訟の被告と訴訟要件
取消訴訟は行政事件訴訟法の最重要テーマです。記述式では特に「被告は誰か」「出訴期間」が問われやすいです。
論点の解説
取消訴訟は「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」の取消しを求める訴訟です(行政事件訴訟法3条2項)。
行政事件訴訟法第11条第1項
「処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、当該処分又は裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体を被告として提起しなければならない。」
出訴期間は、処分があったことを知った日から6か月以内(同法14条1項)、処分の日から1年以内(同条2項)です。
解答例
問題例:X市の建築主事が建築確認を拒否した場合、申請者Aはどのような訴訟を提起すべきか。被告を明らかにして40字程度で記述しなさい。
解答例(38字):
「AはX市を被告として、建築確認の拒否処分の取消しを求める取消訴訟を提起すべきである。」
キーワード:X市(被告)、拒否処分、取消訴訟
パターン2:処分性
処分性は「その行為が取消訴訟の対象となるか」という入口の問題です。記述式では処分性の定義を正確に書けるかが問われます。
論点の解説
判例(最判昭39.10.29)は処分性を次のように定義しています。
「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」
この定義に含まれるキーワードは4つです。
- 公権力の主体たる国又は公共団体の行為
- 直接
- 国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する
- 法律上認められている
解答例
問題例:行政事件訴訟法における「処分」の意味について40字程度で記述しなさい。
解答例(40字):
「公権力の主体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものをいう。」
キーワード:公権力の主体、直接、権利義務を形成し又はその範囲を確定
パターン3:原告適格
取消訴訟は「法律上の利益を有する者」に限り提起できます(行政事件訴訟法9条1項)。記述式では第三者の原告適格が問われることがあります。
論点の解説
行政事件訴訟法第9条第1項
「処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えは、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。」
同条第2項
「裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たっては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。」
解答例
問題例:処分の相手方ではない近隣住民Bが取消訴訟を提起するためには、どのような利益を有する必要があるか。40字程度で記述しなさい。
解答例(40字):
「Bは、当該処分の根拠法令により個別的に保護された利益、すなわち法律上の利益を有する必要がある。」
キーワード:法律上の利益、根拠法令、個別的に保護された利益
パターン4:義務付け訴訟
義務付け訴訟には「申請型」と「非申請型(直接型)」の2種類があります。記述式では両者の区別と要件が問われます。
論点の解説
行政事件訴訟法第3条第6項
「この法律において『義務付けの訴え』とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。」
申請型義務付け訴訟(同項2号):法令に基づく申請がされた場合に、行政庁がすべき処分をしないとき
- 要件:申請型は取消訴訟又は不作為の違法確認の訴えを併合提起する必要がある(同法37条の3第3項)
非申請型義務付け訴訟(同項1号):一定の処分がなされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあるとき
- 要件:重大な損害を生ずるおそれ+他に適当な方法がないこと(同法37条の2第1項)
解答例
問題例:Aが行政庁Bに営業許可を申請したが拒否処分を受けた場合、Aはどのような訴訟を提起すべきか。40字程度で記述しなさい。
解答例(40字):
「Aは拒否処分の取消訴訟と、Bに許可処分をすべき旨の申請型義務付け訴訟を併合提起すべきである。」
キーワード:取消訴訟、申請型義務付け訴訟、併合提起
問題例2:Aが行政庁Bに許可申請をしたが何ら応答がない場合、Aはどのような訴訟を提起すべきか。40字程度で記述しなさい。
解答例(42字):
「Aは不作為の違法確認の訴えと、Bに許可処分をすべき旨の申請型義務付け訴訟を併合提起すべきである。」
キーワード:不作為の違法確認の訴え、申請型義務付け訴訟、併合提起
パターン5:差止訴訟
差止訴訟は、行政庁が一定の処分をすべきでないのにしようとしている場合に、その差止めを求める訴訟です。
論点の解説
行政事件訴訟法第3条第7項
「この法律において『差止めの訴え』とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。」
差止訴訟の要件(同法37条の4第1項)は以下の2つです。
- 一定の処分がされることにより重大な損害を生ずるおそれがあること
- 他に適当な方法がないこと(補充性)
解答例
問題例:行政庁Aが違法な営業停止処分をしようとしている場合、Xはどのような訴訟を提起できるか。その要件とともに40字程度で記述しなさい。
解答例(41字):
「Xは重大な損害を生ずるおそれがあり他に適当な方法がないときに、差止めの訴えを提起できる。」
キーワード:重大な損害、他に適当な方法がない、差止めの訴え
パターン6:国家賠償法1条(公務員の不法行為)
国家賠償法1条は、公務員の違法な行為による損害の賠償責任を定めるものです。記述式では要件の正確な記述が求められます。
論点の解説
国家賠償法第1条第1項
「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」
要件は以下の5つです。
- 国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員
- その職務を行うについて
- 故意又は過失
- 違法に
- 他人に損害を加えた
賠償責任を負うのは公務員個人ではなく、国又は公共団体です。
解答例
問題例:A市の職員Bが、職務として行った違法な処分によりCに損害を与えた場合、Cは誰に対して何を請求できるか。40字程度で記述しなさい。
解答例(37字):
「CはA市に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を請求することができる。」
キーワード:A市(国又は公共団体)、国家賠償法1条1項、損害賠償
注意:被告は公務員B個人ではなくA市です。判例(最判昭30.4.19)は、公務員個人に対する直接の損害賠償請求を否定しています。
パターン7:国家賠償法2条(営造物の瑕疵)
国家賠償法2条は、道路・河川などの公の営造物の設置又は管理の瑕疵による損害の賠償責任を定めます。
論点の解説
国家賠償法第2条第1項
「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」
国家賠償法2条は無過失責任です。1条と異なり「故意又は過失」は要件ではありません。
要件は以下の3つです。
- 公の営造物の設置又は管理に瑕疵がある
- 他人に損害を生じた
- 瑕疵と損害の間に因果関係がある
解答例
問題例:A県が管理する県道に大きな穴があり、歩行者Bが転倒して負傷した。Bは誰に対して何を請求できるか。40字程度で記述しなさい。
解答例(40字):
「Bは、A県に対し、国家賠償法2条1項に基づき、道路の管理の瑕疵による損害賠償を請求できる。」
キーワード:A県、国家賠償法2条1項、管理の瑕疵、損害賠償
パターン8:行政手続法の手続的瑕疵
行政手続法に基づく手続きの瑕疵は、記述式で問われやすいテーマです。
論点の解説
行政手続法は、申請に対する処分と不利益処分について、それぞれ手続きを定めています。
申請に対する処分
- 審査基準の設定・公表義務(行政手続法5条)
- 標準処理期間の設定努力義務・公表義務(同法6条)
- 拒否処分の場合の理由の提示(同法8条)
不利益処分
- 処分基準の設定・公表の努力義務(同法12条)
- 不利益処分の理由の提示(同法14条)
- 聴聞又は弁明の機会の付与(同法13条)
行政手続法第8条第1項
「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。」
行政手続法第14条第1項
「行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。」
解答例
問題例:行政庁Aが申請者Bの許可申請を拒否する場合、行政手続法上どのような手続きが必要か。40字程度で記述しなさい。
解答例(36字):
「Aは、Bに対し、行政手続法8条1項に基づき、拒否処分と同時に理由を示さなければならない。」
キーワード:行政手続法8条1項、同時に、理由を示す
問題例2:行政庁Aが営業者Bに対して営業許可の取消処分をしようとする場合、どのような手続きが必要か。40字程度で記述しなさい。
解答例(37字):
「Aは、Bに対し、行政手続法13条1項1号に基づき、聴聞の手続きを執らなければならない。」
キーワード:行政手続法13条1項1号、聴聞
パターン9:審査請求
行政不服審査法に基づく審査請求は、取消訴訟と並ぶ権利救済手段です。記述式では審査請求先や期間が問われることがあります。
論点の解説
行政不服審査法第4条
「審査請求は、法律(条例に基づく処分については、条例)に特別の定めがある場合を除くほか、処分庁等の最上級行政庁に対してするものとする。」
審査請求期間は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内(同法18条1項)、処分があった日の翌日から起算して1年以内(同条2項)です。
行政不服審査法第18条第1項
「処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月を経過したときは、することができない。」
解答例
問題例:A大臣の所轄するB庁の長官が行った処分に不服がある場合、審査請求はどこに対して行うべきか。40字程度で記述しなさい。
解答例(38字):
「処分庁の最上級行政庁であるA大臣に対して審査請求をすべきである。」
キーワード:最上級行政庁、A大臣、審査請求
パターン10:教示制度
教示制度は行政事件訴訟法と行政不服審査法の両方に規定があり、記述式でも出題されるテーマです。
論点の解説
行政不服審査法の教示
行政不服審査法第82条第1項
「行政庁は、審査請求若しくは再調査の請求又は他の法令に基づく不服申立て(以下この条において「不服申立て」と総称する。)をすることができる処分をする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければならない。」
教示すべき事項は3つです。
- 不服申立てをすることができる旨
- 不服申立てをすべき行政庁
- 不服申立てをすることができる期間
行政事件訴訟法の教示
行政事件訴訟法第46条第1項
「行政庁は、取消訴訟を提起することができる処分又は裁決をする場合には、当該処分又は裁決の相手方に対し、次に掲げる事項を書面で教示しなければならない。」
教示すべき事項は4つです。
- 取消訴訟の被告とすべき者
- 取消訴訟の出訴期間
- 審査請求前置の場合はその旨
- 裁決についての訴訟の場合はその旨
解答例
問題例:行政庁が不利益処分をする場合に行政不服審査法に基づいて教示すべき事項を40字程度で記述しなさい。
解答例(41字):
「不服申立てをすることができる旨、不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てができる期間である。」
キーワード:不服申立てをすることができる旨、不服申立てをすべき行政庁、期間
問題例2:行政庁が教示をしなかった場合、処分の相手方はどのような措置をとることができるか。40字程度で記述しなさい。
解答例(39字):
「処分の相手方は、処分庁に対し、不服申立先等につき書面による教示を求めることができる。」
行政不服審査法第82条第2項
「行政庁は、利害関係人から、当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうか並びに当該処分が不服申立てをすることができるものである場合における不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間につき教示を求められたときは、当該事項を教示しなければならない。」
行政法の記述式で高得点を取るための総合演習
ここまで学んだ10パターンを組み合わせた応用問題を解いてみましょう。
応用問題
問題:A県知事が、B社に対して産業廃棄物処理業の許可を取り消す不利益処分をしようとしている。この場合、A県知事が行政手続法上とるべき手続きは何か。また、B社がこの処分に不服がある場合にとることができる法的手段を1つ挙げよ。合わせて40字程度で記述しなさい。
解答例(42字):
「A県知事は聴聞の手続きを執るべきであり、B社は処分後にA県知事に対し審査請求をすることができる。」
キーワード:聴聞、審査請求
この問題では、行政手続法13条1項1号(許可の取消し→聴聞)と行政不服審査法4条(審査請求)の2つの知識を組み合わせる必要があります。
確認問題
国家賠償法2条に基づく損害賠償請求では、公務員の故意又は過失が要件となる。
申請型義務付け訴訟を提起する場合、取消訴訟又は不作為の違法確認の訴えを併合提起する必要がある。
行政不服審査法に基づく審査請求期間は、処分があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内である。
まとめ
行政法の記述式で頻出のパターン10選を、具体的な解答例とともに解説しました。
10パターンの一覧
学習のポイント
- 各パターンの模範解答を何度も書いて手に覚え込ませる
- 条文番号を正確に暗記する(特に行政事件訴訟法3条・9条・11条・14条・37条の2〜4)
- 取消訴訟の出訴期間(6か月)と審査請求期間(3か月)の違いを確実に区別する
- 被告は行政庁ではなく国又は公共団体であることを常に意識する
記述式の行政法は、パターンを押さえて繰り返し書く練習をすれば、安定して高得点が狙えるパートです。本記事の解答例を参考に、自分の手で書く練習を重ねてください。