公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
この条文の過去問 4肢
結論:この肢は「正しい」。
根拠は民法838条1号です。同号は、未成年後見の開始原因として「未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき」の二つを挙げています。肢の記述はこのうち後者をそのまま述べたものであり、条文どおりです。
理由づけを補っておきます。未成年者の保護は、第一次的には親権者による監護教育(民法820条)と財産管理(民法824条)によって行われます。ところが、親権者が死亡・行方不明で存在しない場合のほか、親権者は存在するけれども財産管理権だけを失っている場合があります。具体的には、父または母による管理権の行使が困難または不適当であることにより子の利益を害するとして家庭裁判所が管理権喪失の審判をした場合(民法835条)や、親権者がやむを得ない事由により家庭裁判所の許可を得て管理権を辞した場合(民法837条1項)です。この場合、身上監護の面は親権者が担い続けるものの、財産管理を担う者が誰もいなくなってしまいます。そこで民法は、管理権を欠くときも未成年後見を開始させ、未成年後見人に財産管理を委ねることにしたのです。この場合の未成年後見人の権限は財産管理に関する事項に限られると解されています。
ひっかけポイントです。第一に、未成年後見は「後見開始の審判」によって始まるのではありません。審判が必要なのは成年後見(民法7条・8条)であり、未成年後見は838条1号の事由が生じたときに法律上当然に開始します。家庭裁判所が関与するのは、遺言による指定後見人がいない場合の後見人の選任(民法840条1項)の場面です。第二に、未成年後見人の指定は、最後に親権を行う者が遺言によって行うことができますが、管理権を有しない者は指定できません(民法839条1項ただし書)。第三に、平成23年改正により未成年後見人は複数選任でき、法人も選任できるようになっています(民法840条2項・3項、857条の2)。条文の細部まで押さえておきましょう。
結論:この肢は「正しい」。
根拠は民法13条1項および民法876条の4第1項です。保佐人には、まず法律上当然に同意権が与えられています。すなわち、被保佐人が民法13条1項各号に列挙された行為(元本の領収または利用、借財または保証、不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為、訴訟行為、贈与・和解・仲裁合意、相続の承認・放棄または遺産分割、贈与の申込みの拒絶や遺贈の放棄など、新築・改築・増築または大修繕、民法602条の期間を超える賃貸借、制限行為能力者の法定代理人としてこれらの行為をすること)をするには保佐人の同意を得なければならず、同意を欠く行為は取り消すことができます(民法13条4項)。さらに家庭裁判所は、請求により13条1項所定以外の行為についても同意を要する旨の審判をすることができます(民法13条2項)。
他方、保佐人には代理権が当然には与えられていません。被保佐人は事理弁識能力が著しく不十分ではあっても、自ら法律行為をする能力自体は残しているからです。そこで民法876条の4第1項は、家庭裁判所が本人・配偶者・四親等内の親族・保佐人などの請求により、特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができると定めました。したがって、審判があってはじめて保佐人は代理権を持つことになり、肢の記述はこの仕組みを正確に述べています。
ひっかけポイントです。第一に、本人以外の者の請求によって代理権付与の審判をするには、本人の同意が必要です(民法876条の4第2項)。残存能力の尊重と自己決定権への配慮です。同様の規律は補助開始の審判(民法15条2項)や補助人への代理権付与(民法876条の9第2項)にもあります。第二に、成年後見人は法律上当然に包括的な代理権を持つ(民法859条1項)点で保佐人と対照的です。第三に、日用品の購入その他日常生活に関する行為(民法9条ただし書)は、被保佐人についても保佐人の同意の対象から明文で除外されています(民法13条1項ただし書)。家庭裁判所が同意を要する行為を追加する審判の対象ともなりません(民法13条2項ただし書)。
結論:この肢は「正しい」。設問は「妥当でないもの」を選ばせるものですから、この肢は正解肢ではありません。
根拠となるのは民法90条(公の秩序または善良の風俗に反する法律行為は無効)と、いわゆる有毒あられ事件の判例(最判昭和39年1月23日)です。この事件では、有害性のある添加物が混入したあられを、食品衛生法に違反することを知りながら製造販売していた業者と、その事情を知る相手方との取引の効力が争われました。最高裁は、食品衛生法の規定はそれ自体としては取締法規であって、同法に違反したからといって当然に売買の私法上の効力まで否定されるわけではないとしつつ、本件のように、有害物質の混入を知りながら、あえて製造販売して取引を継続していたという事情のもとでは、当該取引は民法90条により無効になると判断しました。
理由づけとして押さえるべきは、行政上の取締りを目的とする規定(取締法規)と、私法上の効力そのものを否定する規定(効力規定)とを区別する、という発想です。取締法規に違反しても、罰則や行政処分の対象となるだけで契約は有効というのが出発点になります。しかし、違反の態様が悪質で、国民の生命・健康という重大な法益を害することを認識しながら反復継続して取引していたという場合には、もはや法秩序全体として容認できません。そこで、取締法規違反という事実を公序良俗違反の判断における一要素として取り込み、90条によって無効とするわけです。取締法規違反が直ちに無効を導くのではなく、悪質性という上乗せの事情があってはじめて90条違反になる、という二段構えの理解が正確です。
ひっかけポイントは、「取締法規違反でも私法上の契約は有効」という原則だけを機械的に当てはめて、この肢を誤りと判断してしまうことです。この肢には「食品衛生法に抵触するものであることを知りながら」「あえて」「取引を継続していた」という悪質性を示す事情が丁寧に書き込まれており、これが90条を発動させる決め手になっています。条文の当てはめでは、事案に付された修飾語をきちんと拾う姿勢が求められます。関連知識として、同じく取締法規違反が問題となる典型例に、無免許・無資格営業に基づく契約や、証券取引の損失補填契約などがあり、いずれも違反の重大性・反社会性の程度に応じて個別に判断されます。
結論:この肢は「正しい」。設問は「妥当でないもの」を選ばせるものですから、この肢は正解肢ではありません。
弁護士法28条は、弁護士が係争権利を譲り受けることを禁じています。これは、弁護士が自ら紛争の当事者となって利益を追求し、いたずらに訴訟を助長することを防ぐ趣旨の規定です。もっとも、この規定に違反した場合に、譲渡(債権譲渡)という私法上の行為の効力までが当然に失われるのかは別問題です。判例(最判平成14年1月22日)は、債権の管理・回収の委託を受けた弁護士が、その手段として訴訟提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受けた事案について、仮に弁護士法28条に違反するとしても、当該譲受けが司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われるなど、公序良俗に反すると評価される特段の事情がない限り、その私法上の効力は否定されないと判示しました。この肢は、この判断枠組みをそのまま述べたものです。
理由づけの中心は、やはり取締法規と効力規定の区別にあります。弁護士法28条は、弁護士の職務規律を確保するための規定であり、違反があれば懲戒の対象となります。しかし、その違反を理由に債権譲渡自体を一律に無効としてしまうと、譲渡人・債務者・第三者を巻き込んだ法律関係が不安定になり、かえって取引の安全を害します。そこで、原則として私法上の効力は維持しつつ、「司法機関を利用して不当な利益を追求する目的」といった強い反社会性がある場合に限って民法90条によって無効とする、という調整が図られているのです。
ひっかけポイントは、「弁護士法に違反する行為なのだから無効に決まっている」と即断してしまうことです。強行法規違反イコール無効ではなく、その法規が私法上の効力まで否定する趣旨かどうかを検討するのが正しい思考手順です。また、関連知識として、信託法10条(旧法11条)が訴訟行為をさせることを主たる目的とする信託を禁止しており、これに該当する債権譲渡は無効となる点も押さえておきましょう。この肢の判例も、訴訟信託の禁止に触れるかどうかが併せて問題となった事案です。前肢1と対比すると、同じ「法令違反+私法上の効力」という土俵で、悪質性の有無によって結論が分かれることがよく分かります。