年齢十八歳をもって、成年とする。
1未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
1一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
2前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
この条文の過去問 1肢
結論:この肢は「誤り」。設問は「妥当なもの」を選ばせるものですから、この肢は正解肢ではありません。
民法370条は、抵当権はその目的である不動産に付加して一体となっている物に及ぶと定めます。また民法87条2項は、従物は主物の処分に従うと規定しています。判例(最判昭和44年3月28日)は、宅地に対する抵当権の効力は、抵当権設定当時に存在した石灯籠や取外し可能な庭石といった従物にも及ぶとし、さらに、抵当権の設定登記によって従物についても第三者に対する対抗力が備わると判断しました。従物は主物の処分に従う以上、主物である抵当不動産について登記がされていれば、それによって従物に対する抵当権の効力も公示されているとみるのが取引の実情に合致するからです。したがって、従物について別個に対抗要件を具備しなければ対抗できないとするこの肢は誤りです。
理由づけを補足します。従物は、主物の経済的効用を助けるために付属させられた独立の物であり、主物と一体として利用されることが予定されています。抵当権は目的物の交換価値を把握する権利ですから、その交換価値を実質的に構成している従物を切り離して扱うと、担保価値が不当に減少します。そのため、法は主物の処分に従物が従うという原則を置き、抵当権についても同様の帰結を認めているのです。実務上も、工場やガソリンスタンドの設備など、建物の従物に抵当権の効力が及ぶかが繰り返し争われており、判例(最判平成2年4月19日)は、ガソリンスタンドの地下タンクや洗車機などについて建物の従物として抵当権の効力が及ぶとしています。
ひっかけポイントは、「従物にも効力が及ぶ」という前半が正しいために、後半の対抗要件の部分まで正しいように読めてしまうことです。前半と後半で正誤が分かれる複合肢は、抵当権分野の頻出パターンです。また関連論点として、抵当権設定後に付加された従物にも効力が及ぶかという問題があり、370条の「付加一体物」の解釈として、原則として及ぶと解する見解が有力です。さらに、抵当不動産の果実については、民法371条により、被担保債権について債務不履行があった後に生じた果実に抵当権の効力が及びます。従物・付合物・果実の扱いを整理して覚えましょう。
後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。設問は「妥当なもの」を選ばせるものですから、この肢は正解肢ではありません。
判例(最判昭和40年5月4日)は、借地上の建物に設定された抵当権の効力は、特段の事情がない限り、その建物の敷地の利用権である借地権にも及ぶと判示しています。借地権は建物の従たる権利であり、民法87条2項の類推適用により主物である建物の処分に従うと解されるからです。したがって、特段の合意がなければ借地権に及ばないとするこの肢は、判例と逆の結論であり誤りです。
理由づけの核心は、建物と敷地利用権の不可分性にあります。他人の土地を借りて建てられた建物は、敷地を利用する権原がなければ存立できません。借地権を伴わない建物だけを競売で買い受けても、買受人は土地所有者から建物収去・土地明渡しを求められるだけで、経済的価値はほとんどありません。抵当権者が把握しているのは、あくまで「借地権付き建物」としての交換価値ですから、抵当権の効力が借地権にも及ぶと解さなければ、担保の実効性が失われてしまいます。競売手続においても、建物の買受人は借地権を建物とともに取得するものとして扱われます。
ひっかけポイントは、「借地権は建物とは別個の権利だから、抵当権の目的として明示しなければ及ばないのではないか」と考えてしまうことです。従たる権利にも87条2項が類推適用されるという発想を押さえてください。関連知識として重要なのが、建物の買受人が借地権を取得しても、借地権が賃借権である場合には、その譲渡について土地賃貸人の承諾が必要になる点です(民法612条1項)。この点については借地借家法20条が救済規定を置いており、賃貸人が承諾しないときは、建物の競売による買受人は裁判所に対して賃貸人の承諾に代わる許可を求めることができます。抵当権の効力が借地権に及ぶことと、その借地権を実際に移転させる手続とは別問題である、と整理しておくと理解が深まります。
結論:この肢は「正しい」。設問は「妥当なもの」を選ばせるものですから、この肢が正解肢です。
判例(最判平成11年11月30日)は、買戻特約付売買の買主から目的不動産に抵当権の設定を受けた者は、売主が買戻権を行使した場合に買主が取得する買戻代金債権について、民法372条が準用する304条により物上代位権を行使することができる、と判示しました。この肢はその判示内容をそのまま述べたものです。
仕組みを整理します。買戻特約(民法579条以下)付きで不動産を売却した場合、売主が期間内に買戻権を行使すると、売買は解除され、目的不動産の所有権は売主に復帰します。その結果、買主から設定を受けていた抵当権は、原則として効力を維持できなくなります。一方で、買主は売主に対し、支払った代金および契約費用の返還を受ける権利、すなわち買戻代金債権を取得します。この買戻代金債権は、目的不動産の価値が形を変えたもの、いわば価値の変形物とみることができます。物上代位は、担保目的物の交換価値が別の財産権に変じたときに、担保権者がその上に優先権を及ぼすことを認める制度ですから、買戻代金債権にもこれを認めるのが制度趣旨に合致します。もしこれを否定すると、抵当権者は買戻権の行使という自らが関与できない事由によって一方的に担保を失い、他方で買主は無担保の代金債権を丸取りできることになり、著しく不公平です。
注意点として、物上代位権を行使するには、払渡しまたは引渡しの前に差押えをしなければなりません(民法304条1項ただし書)。この差押えは、優先権の保全と、第三債務者の二重弁済の危険回避のために要求されるものです。判例(最判平成10年1月30日)は、抵当権の物上代位について、抵当権設定登記後に債権が譲渡され対抗要件が備えられた場合でも、抵当権者は自ら差し押さえて物上代位できるとしており、抵当権の登記による公示を重視しています。
ひっかけポイントは、買戻しによって抵当権が消滅するのだから抵当権者はもはや何も主張できない、と早合点することです。目的物そのものへの権利は失われても、価値の変形物に対する優先権は残る、という物上代位の発想を思い出してください。なお、2017年の債権法改正により、買戻代金は当事者が別段の合意をすればその額によることとされ(民法579条)、また買戻期間や果実と利息の扱いなどが整理されましたが、本判例の結論は現行法(2026年時点)でも維持されています。
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。設問は「妥当なもの」を選ばせるものですから、この肢は正解肢ではありません。
判例(最決平成12年4月14日)は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、抵当権者は転貸賃料債権について物上代位権を行使することはできない、と判示しました。したがって、「原則として……行使することができる」とするこの肢は、原則と例外が逆転しており誤りです。
理由づけの中心は、物上代位の対象となる債権は、抵当不動産の所有者が取得する債権に限られるという点にあります。民法372条が準用する304条1項は、「その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物」に対して権利を行使できると定めており、あくまで抵当不動産の所有者(債務者・物上保証人)が受け取るべき金銭が対象です。転貸賃料は、賃借人が転借人から受け取るものであって、所有者が受け取るものではありません。賃借人は、自らの計算とリスクで転貸事業を営み、その対価として転貸料を得ているのであり、この債権にまで抵当権者の優先権を及ぼすことは、抵当権と無関係な第三者の財産を担保に取り込むに等しく、正当化できないのです。
もっとも、法人格を濫用して形式的に賃借人を介在させ、実質的には所有者が自ら賃貸しているのと変わらないといった場合には、賃借人を所有者と同視して転貸賃料への物上代位が認められます。これが「所有者と同視することを相当とする場合」という例外です。
ひっかけポイントは、賃料債権への物上代位が原則として認められること(最判平成元年10月27日)を知っていると、その延長で転貸賃料も当然に対象になると考えてしまうことです。所有者が受け取る賃料と、賃借人が受け取る転貸賃料とを厳密に区別してください。関連知識として、民法371条は、被担保債権に不履行があった後は抵当権の効力が果実に及ぶと定めており、賃料債権への物上代位はこの規律と整合的に理解されます。また、抵当権に基づく物上代位と、賃料債権の譲渡・差押えとの優劣は、抵当権設定登記の先後によって決まるのが判例の立場です。
結論:この肢は「誤り」。設問は「妥当なもの」を選ばせるものですから、この肢は正解肢ではありません。
民法375条1項は、抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の2年分についてのみ抵当権を行使することができると定めています。また同条2項は、債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利、すなわち遅延損害金についても、最後の2年分に限って抵当権を行使できるとし、利息その他の定期金と通算して2年分を超えることはできないとしています。したがって、利息および遅延損害金の全額について優先弁済を受けられるとするこの肢は誤りです。
理由づけは、後順位抵当権者や一般債権者の保護にあります。利息や遅延損害金は時の経過とともに際限なく膨らんでいきます。もしその全額に優先弁済権を認めると、後順位抵当権者は、自分が担保を取得した時点では十分な余剰価値があると計算していたのに、時間が経つほど先順位の被担保債権額が膨張し、配当を受けられなくなってしまいます。登記簿には元本額や利率が記載されますが、いつまで延滞が続くかは第三者には予測できません。そこで、後順位者が計算できるように、優先弁済の範囲を最後の2年分という明確な枠に限定したのです。
重要な例外として、この制限は他の債権者との配当の場面で意味を持つものであり、後順位抵当権者その他の利害関係者が存在しない場合には、抵当権者は2年分に限られず全額について優先弁済を受けられると解されています。制度趣旨が第三者保護にある以上、保護すべき第三者がいなければ制限を及ぼす必要がないからです。また、民法375条1項ただし書は、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をすれば、その登記の時から抵当権を行使できるとしており、登記による公示があれば範囲を拡張できます。
ひっかけポイントは、「原則として」という語に引きずられることです。原則は2年分の制限であり、全額請求できるのがむしろ例外です。関連して、根抵当権では極度額の枠内であれば利息・損害金の全部について優先弁済を受けられ(民法398条の3第1項)、375条の制限は適用されません。普通抵当権と根抵当権の違いとして押さえておきましょう。
第七条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。設問は「妥当でないもの」を選ばせるものですから、この肢が正解肢です。
民法489条1項は、債務者が一個または数個の債務について元本のほか利息および費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息、元本に充当しなければならない、と定めています。この順序は法律が定めたものであり、弁済をする者が一方的な指定によって変更することはできません。この肢は「債務者による充当の指定がない限り」という留保を付けており、あたかも債務者が指定すれば元本から先に充当できるかのように述べていますが、これが誤りです。
理由づけは、債権者の利益保護にあります。もし債務者の一存で元本から充当できるとすると、債務者は元本だけを減らして利息や費用の負担を後回しにし、あるいは利息の発生を抑えることができてしまいます。費用は債権保全のために債権者が現実に支出したもの、利息は元本の使用の対価であって、いずれも元本より先に回収されるべきだというのが法の価値判断です。そこで、費用・利息・元本という順序を法定し、当事者の一方的意思では動かせないものとしたのです。
重要な例外は、合意による充当です。民法490条は、弁済をする者と弁済を受領する者との間に充当の順序に関する合意があるときは、その順序に従って充当すると定めています。つまり、債権者と債務者の合意があれば元本から充当することも可能ですが、債務者の一方的指定では動かせません。この「一方的指定は不可、合意なら可」という対比が本肢の核心です。
ひっかけポイントは、指定充当の規定(民法488条)との混同です。488条は、同一債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合に、どの債務に充当するかを弁済者や受領者が指定できるという規律であり、複数の債務相互間の充当先を決めるルールです。これに対し489条は、一個の債務の内部における費用・利息・元本という充当順序のルールであって、指定の余地がありません。次元の違う二つの制度を区別してください。なお、これらの規定は2017年の債権法改正によって条文の位置と表現が整理されたもので、改正前の民法491条が現在の489条に相当します。順序自体は改正前後で変わっていません。
結論:この肢は「正しい」。設問は「妥当でないもの」を選ばせるものですから、この肢は正解肢ではありません。
民法488条1項は、債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができると定めます。第一次的な指定権は弁済者(債務者側)にあるということです。そして同条2項は、弁済をする者が指定をしないときは、弁済を受領する者が、その受領の時に、充当すべき債務を指定することができるとしつつ、ただし書で、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときはこの限りでない、と定めています。この肢は、この2項の内容を条文どおりに述べたものであり、妥当です。
理由づけを補足します。どの債務に充当されるかは、担保の有無、保証人の存在、利率、遅延損害金の発生などを通じて債務者に大きな影響を与えます。そこで法は、まず弁済者に指定権を与えました。弁済者が指定しない場合には、受領者に指定権が移りますが、受領者は自分に有利な債務(たとえば無担保で回収が難しい債務)に充当しようとするおそれがあります。そこで、債務者が直ちに異議を述べれば受領者の指定は効力を失い、法定充当(民法489条・488条4項)によって処理されることになります。
ここでの「直ちに」という時的限定は重要で、後になってから異議を述べても指定を覆すことはできません。また、法定充当のルールは民法488条4項に定められており、弁済期にあるものを先に、いずれも弁済期にあるとき等は債務者のために弁済の利益が多いものを先に、利益が相等しいときは弁済期が先に到来したものまたは先に到来すべきものを先に、それでも決まらないときは各債務の額に応じて按分して充当します。
ひっかけポイントは、指定権の順序を逆に覚えてしまうことです。第一次的指定権者は弁済者であり、受領者ではありません。また、費用・利息・元本の充当順序(民法489条1項)については指定の余地がないことも、前肢1と併せて整理しておきましょう。なお、これらの規定は2017年の債権法改正で整理されたものですが、改正前の民法488条と実質的な内容は同じです。
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「正しい」。設問は「妥当でないもの」を選ばせるものですから、この肢は正解肢ではありません。
民法482条は、弁済をすることができる者が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は弁済と同一の効力を有する、と定めています。ポイントは、契約をしただけでは債務は消滅せず、現実に「他の給付をしたとき」にはじめて弁済と同一の効力が生じるという点です。
不動産をもって代物弁済する場合に「給付をした」といえるためには何が必要かについて、判例(最判昭和40年4月30日)は、代物弁済による債務消滅の効果は、単に所有権移転の意思表示をするだけでは足りず、所有権移転登記手続が完了したときに生じると判示しています。不動産に関する物権変動は登記をしなければ第三者に対抗できないため(民法177条)、登記が移転していない段階では、債権者は取得した不動産を確実に自分のものとして保持できず、実質的に給付を受けたとはいえないからです。したがってこの肢は妥当です。
もっとも、注意が必要なのは、代物弁済の合意によって当事者間で所有権そのものは移転しうる、という点です。判例(最判昭和57年6月4日)は、代物弁済による所有権移転の効果は当事者の意思表示によって生じるが、債務消滅の効果は登記の完了によって生じる、として両者を区別しています。物権変動の時期と債務消滅の時期がずれるという、やや技巧的な整理です。
ひっかけポイントは、この二つを混同して「所有権は登記まで移転しない」と述べる肢や、逆に「意思表示だけで債務は消滅する」と述べる肢です。所有権移転は意思表示、債務消滅は登記完了、と対で覚えてください。関連知識として、代物弁済は要物契約ではなく諾成契約であることが2017年の債権法改正で明確にされました。改正前は「給付をしたとき」に契約が成立する要物契約と解する見解が有力でしたが、現行法(2026年時点)の482条は、代物弁済契約自体は合意のみで成立し、給付が債務消滅の要件になるという構造を採っています。この改正によっても、登記が必要という判例の結論は維持されています。
結論:この肢は「正しい」。設問は「妥当でないもの」を選ばせるものですから、この肢は正解肢ではありません。
民法493条は、弁済の提供は債務の本旨に従って現実にしなければならないと定めつつ、ただし書で、債権者があらかじめその受領を拒み、または債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる、としています。これがいわゆる口頭の提供です。そして民法492条は、債務者は弁済の提供の時から債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れると定めていますから、口頭の提供によって債務不履行責任を免れることができます。この肢の前半はこのとおりです。
後半について、判例(最大判昭和32年6月5日)は、債権者が契約の存在自体を否定するなど、弁済を受領しない意思が明確と認められる場合には、債務者は口頭の提供をしなくても債務不履行責任を免れる、と判示しました。この肢の後半は、この判例をそのまま述べたものであり妥当です。
理由づけは、無意味な行為を強いない、という発想にあります。弁済の提供は、債権者に受領の機会を与えることによって、債務者を履行遅滞の責任から解放する制度です。ところが、債権者が契約そのものを否定して受領する意思がまったくないことが明白であれば、債務者が準備を通知しても受領されないことは初めから分かっており、その通知には何の実益もありません。にもかかわらず形式的な行為を要求するのは、信義則に照らして相当ではないのです。
ひっかけポイントは二つあります。第一に、口頭の提供すら不要となるのは、「受領しない意思が明確」という高いハードルを超えた場合に限られる点です。単に一度受領を拒んだというだけでは、口頭の提供は必要です。第二に、口頭の提供が不要とされる場合でも、債務そのものが消滅するわけではなく、債務者が免れるのは債務不履行責任にとどまる点です。債務を消滅させるには、弁済か供託などが必要になります。関連知識として、弁済の提供の効果には、債務不履行責任からの解放のほか、同時履行の抗弁権を封じる効果、約定利息の発生停止、そして債権者を受領遅滞に陥らせる効果(民法413条。保存義務の軽減、増加費用の負担、危険の移転)があります。
保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。
この条文の過去問 1肢
結論:この肢は「正しい」。設問は「妥当でないもの」を選ばせるものですから、この肢は正解肢ではありません。
民法494条1項1号は、弁済者が弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだときは、弁済者は債権者のために弁済の目的物を供託することができ、この場合において、弁済者が供託をした時に、その債権は消滅すると定めています。ここで前提となる「弁済の提供」は、債権者があらかじめ受領を拒んでいるときには口頭の提供で足ります(民法493条ただし書)。したがって、あらかじめ受領を拒んでいる債権者に対しては、口頭の提供をしたうえで供託すれば、債権を消滅させることができます。この肢は妥当です。
理由づけを整理します。弁済の提供だけでは、債務者は債務不履行責任を免れるにとどまり(民法492条)、債務そのものは残ったままです。利息の発生は止まっても、目的物を保管し続ける負担や、履行の煩わしさから完全に解放されるわけではありません。そこで法は、供託という制度によって、債務者が一方的に債務を消滅させる道を用意しました。供託所という中立の機関に目的物を預けることで、債権者はいつでもそれを受け取ることができ(民法498条)、不利益を受けません。だからこそ債務者の一方的行為による債務消滅が正当化されるのです。
注意点として、受領拒絶を理由とする供託には、原則として弁済の提供が先行していなければなりません。提供もせずにいきなり供託することは、原則として認められません。ただし、前肢4で見たように、債権者が受領しない意思が明確である場合には、提供なしに供託できると解されています。
供託原因は494条に列挙されており、受領拒絶(1項1号)、受領不能(1項2号)、そして弁済者が過失なく債権者を確知することができないとき(2項)の三つです。債権者不確知の典型例は、債権譲渡の効力が争われていて誰が真の債権者か分からない場合です。また、民法496条1項により、債権者が供託を受諾せず、または供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は供託物を取り戻すことができ、この場合には供託をしなかったものとみなされます。
ひっかけポイントは、供託によって免れるのが債務不履行責任にとどまるかのように述べる肢や、提供なしに常に供託できるとする肢です。提供は責任の免除、供託は債務の消滅、という効果の違いを明確に区別してください。
1被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。
2家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
1第十一条本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。
2家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第二項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。
1精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
2本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
使用者から被用者への求償を「故意または重大な過失があったときに限る」と限定する点が誤りです。
【根拠条文・判例】民法715条3項は「前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない」と定めるだけで、求償の要件を故意・重過失に限定していません。もっとも、条文どおりに全額求償を認めると、被用者を使って利益を上げている使用者が損害というコストだけを被用者に転嫁できてしまい不当です。そこで判例は、最判昭和51年7月8日(茨城石炭商事事件)において、使用者は「その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」被用者に対し損害賠償または求償の請求ができると判示しました。同事件では、実際に求償できる範囲を損害額の4分の1に制限しています。
【理由づけ】報償責任(利益の帰するところに損失も帰する)および危険責任の考え方から、使用者は事業活動に内在する損害を一定程度自ら負担すべきだ、というのが求償制限の根拠です。裏を返せば、制限されるのは求償の「額」であって、求償が認められる「場面」を故意・重過失の事案に絞っているわけではありません。軽過失の事故でも、諸事情を考慮した上で信義則上相当と認められる限度で求償は可能です。
【ひっかけポイント・関連知識】「故意または重過失に限る」という限定は、失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)や国家賠償法1条2項の公務員への求償など、別の制度の要件です。これらと混同させるのが本肢の狙いです。
また、本問出題後の重要判例として、最判令和2年2月28日(福山通運事件)があります。同判決は、被用者が第三者に損害を賠償した場合に、被用者から使用者に対して求償すること(いわゆる逆求償)を認め、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について請求できるとしました。使用者責任における求償は、715条3項の一方通行ではなく双方向で調整されるものだ、という理解を押さえておきましょう。
結論:この肢は「誤り」。
使用者Aが被害者Dに全額を賠償した場合、Aは他の共同不法行為者Cに対して求償できますが、その範囲は「均等の割合」ではなく、被用者Bと第三者Cの過失割合に従って定まるCの負担部分です。
【根拠条文・判例】共同不法行為者は被害者に対して連帯して責任を負い(民法719条1項)、使用者は被用者と同一内容の責任を負担します(715条1項)。この関係はいわゆる不真正連帯債務と理解され、内部的には各自の負担部分に応じた求償が認められます(442条1項参照)。判例は、最判昭和41年11月18日において、被用者と第三者の共同不法行為により被害者に損害が生じた場合に、使用者が損害の全額を賠償したときは、使用者は第三者に対して、被用者と第三者との過失割合に従って定められる第三者の負担部分について求償することができると判示しました。
【理由づけ】そもそも使用者責任は、被用者が負う責任を使用者に肩代わりさせる制度です。したがって使用者は、外部との関係では被用者と同じ地位に立ちます。共同不法行為者間の内部負担は各人の帰責性、すなわち過失の割合によって決まるのが公平ですから、使用者が全額を支払った場合の求償も、被用者Bの過失割合に対応する部分は自らが引き受け、Cの過失割合に対応する部分をCに請求する、という形になります。過失が1対9であるのに5割しか求償できないとすれば、かえって不公平です。
【ひっかけポイント・関連知識】「損害の公平な分担という見地から」という判例でよく使われる言い回しを添えて、いかにも正しそうに見せている点が本肢の巧妙なところです。しかし「公平な分担」の帰結は均等割ではなく、寄与度・過失割合に応じた分担です。均等の割合が原則となるのは、連帯債務で各自の負担部分が定まっていない場合の処理などであって、共同不法行為者間の求償の場面ではありません。なお、被害者Dとの関係ではA・B・Cのいずれに対しても全額を請求できる点(719条1項)も併せて確認しておきましょう。
補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
前半(CはBに対してB・C間の過失割合によるBの負担部分について求償できる)は正しいのですが、後半の「共同不法行為者でないAに対しては求償することができない」という部分が誤りです。判例は、第三者Cが全額を賠償した場合、Cは被用者Bだけでなく、その使用者Aに対しても求償できるとしています。
【根拠条文・判例】民法715条1項の使用者責任は、被用者が負う不法行為責任と同一内容の責任を使用者に負わせる制度であり、被害者に対する関係では使用者と被用者は不真正連帯の関係に立ちます。共同不法行為者間の求償は各自の負担部分に応じて認められますが(719条、442条1項参照)、被用者Bの負担部分については、使用者Aもまたこれを分担すべき地位にあります。判例(最判昭和63年7月1日など、共同不法行為と使用者責任の交錯を扱った一連の判例)は、使用者は被用者と一体のものとして評価され、被用者の負担部分について求償に応じる立場にあることを前提としています。したがってCはA・Bのいずれに対しても、Bの負担部分について求償することができます。
【理由づけ】もしAに求償できないとすると、Cは資力の乏しいBからしか回収できず、他方でAは被用者を使って利益を上げながら損害の分担を免れることになります。これは報償責任の考え方に反し、また、被害者DがAに請求していれば結果的にAが負担していたはずの部分を、Dがたまたま誰に請求したかという偶然によってAが免れることになり、不合理です。
【ひっかけポイント・関連知識】「Aは共同不法行為者ではない」という理由づけは、形式的には正しいものの結論を導きません。使用者責任は他人の行為について負う代位責任であり、被用者の責任と同一内容の責任を負うからこそ、共同不法行為の内部関係にも被用者と同じ立場で組み込まれるのです。この理屈は、使用者から第三者への求償(肢2)、使用者相互間の求償(肢4)にも一貫して現れます。求償の場面では、まず「使用者は被用者の位置に立つ」と置き換えて考えると、正誤の判断がしやすくなります。
結論:この肢は「正しい」。
複数の加害者の共同不法行為について、それぞれの加害者を指揮監督する使用者が別々に使用者責任を負う場合、一方の使用者が被害者に全額を賠償したときは、他方の使用者に対して、被用者らの過失割合に従って定まる相手方被用者の負担部分について求償することができます。本肢はこの判例法理をそのまま述べたものです。
【根拠条文・判例】被用者B・Cは共同不法行為者として連帯して責任を負い(民法719条1項)、A・Eはそれぞれの被用者について使用者責任を負います(715条1項)。判例は、最判平成3年10月25日において、複数の加害者の共同不法行為につき各加害者を指揮監督する使用者がそれぞれ使用者責任を負う場合、一方の加害者の使用者は、当該加害者の過失割合に従って定められる負担部分を超えて損害を賠償したときは、他方の加害者の使用者に対し、その加害者の過失割合に従って定められる負担部分について求償することができると判示しました。
【理由づけ】使用者責任は被用者の責任を肩代わりする代位責任ですから、使用者は求償の内部関係においても被用者と同じ位置に立ちます。そうすると、A対Eの求償関係は、実質的にはB対Cの求償関係をそのまま写し取ったものになります。B・C間の負担割合は両者の過失割合で決まりますから、A・E間の求償割合も被用者B・Cの過失割合によることになるのです。使用者自身に過失があるかどうかを問題にするのではない点に注意してください。
【ひっかけポイント・関連知識】本肢のような事案では「使用者E自身は不法行為をしていないのだからAはEに求償できない」と考えたくなりますが、それは誤りです(肢3と同じ発想の誤り)。また、求償の割合を「均等」とする選択肢(肢2・肢5)も定番のひっかけですが、共同不法行為者間の内部分担は過失割合によるのが原則です。
なお、被害者Dの側から見れば、B・C・A・Eのいずれに対しても損害の全額を請求できます(719条1項、715条1項)。誰が支払ったかによって最終的な負担割合が変わってはならないため、支払った者から他の責任主体への求償によって公平な分担が実現される、という構造を押さえておきましょう。
1家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
2本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
この条文の過去問 1肢
結論:この肢は「誤り」。
同一の被用者Bの行為について複数の使用者A・Fがともに使用者責任を負う場合、一方の使用者が全額を賠償したときは他方の使用者に求償できます。しかしその割合は「均等」に限られるわけではなく、諸般の事情を考慮して定まる各使用者の負担部分に従います。
【根拠条文・判例】民法715条1項は「ある事業のために他人を使用する者」に責任を負わせており、被用者が複数の者の指揮監督に服している場合には、それぞれが使用者責任を負うことがあります(元請と下請、出向元と出向先などが典型です)。判例(最判平成3年10月25日)は、被用者の同一の加害行為につき複数の使用者が使用者責任を負う場合において、一方の使用者が被害者に損害を賠償したときは、加害行為の態様およびこれと各使用者の事業の執行との関連性の程度、加害行為の予防や損失の分散についての各使用者の配慮の程度、被用者に対する指揮監督の強弱などを考慮して定められる各使用者の負担部分に従って、他方の使用者に対し求償することができると判示しています。
【理由づけ】使用者責任の根拠は報償責任・危険責任にありますから、複数の使用者がいる場合の内部分担も、誰がその事業から利益を得ていたか、誰がより強く被用者を指揮監督し事故を防止できる立場にあったか、という実質に応じて決めるのが公平です。形式的に頭数で割る均等分担は、こうした実質的な差異を無視することになり、判例の立場と相容れません。
【ひっかけポイント・関連知識】本肢は「損害の公平な分担という見地から」という判例特有のフレーズを使いつつ、そこから「均等の割合に限って」という誤った帰結を導いています。判例用語が出てくると正しそうに見えますが、公平な分担の内容は事案ごとの寄与度による分担であって、常に均等ではありません。肢2でも同じ手口が使われており、本問は「均等の割合」と書いてあれば誤り、と割り切って処理できる出題になっています。
なお、AがBに対して求償する場合には、最判昭和51年7月8日(茨城石炭商事事件)により、信義則上相当と認められる限度に制限される点も併せて確認しておきましょう。
1第十五条第一項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。
2家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第一項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。
3前条第一項の審判及び第八百七十六条の九第一項の審判をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならない。
1後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。
2前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用する。
1制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
2制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。
3特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
4制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
未成年後見の開始事由は「親権を行う者がないとき」だけではありません。「限り」と限定している点が誤りです。
【根拠条文】民法838条1号は、後見は「未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき」に開始すると定めています。つまり開始事由は二つあります。第一が、親権者の死亡・親権喪失(834条)・親権停止(834条の2)・親権辞任(837条1項)などにより親権を行う者が存在しない場合、第二が、親権者はいるがその者が財産管理権を有しない場合です。後者は、親権者が管理権喪失の審判を受けたとき(835条)や、家庭裁判所の許可を得て管理権を辞したとき(837条1項)に生じます。
【理由づけ】親権の内容は、身上監護(820条)と財産管理・法定代理(824条)に大きく分かれます。親権者が身上監護は行えても財産管理ができない状態では、未成年者の財産が保護されず、法律行為の代理・同意もできません。そこで民法は、親権者が全くいない場合だけでなく、管理権を欠く場合にも後見を開始させ、後見人に財産管理を担わせることにしたのです。この場合の未成年後見人の職務は財産に関する権限に限られます(868条参照)。
【ひっかけポイント・関連知識】「〜に限り」「〜のときに限って」といった限定表現は、条文が複数の事由を並べている箇所で誤りを作る定番の手口です。838条は1号(未成年後見)と2号(後見開始の審判があったとき=成年後見)の二本立てであり、1号の中がさらに二つに分かれている、という構造をそのまま押さえてください。
なお、未成年後見人の選任については、最後に親権を行う者が遺言で指定できるほか(839条)、指定がないときは未成年被後見人またはその親族その他の利害関係人の請求により家庭裁判所が選任します(840条1項)。平成23年改正により未成年後見人は複数選任することも可能となり(840条2項参照)、法人を選任することもできます(840条3項)。また、令和4年4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられたため、未成年後見の対象は18歳未満の者となっている点も現行法の前提として確認しておきましょう。
結論:この肢は「誤り」。
未成年後見人には法人を選任することができます。「自然人でなければならない」とする点が誤りです。
【根拠条文】民法840条3項は、家庭裁判所が未成年後見人を選任するにあたって考慮すべき事情を列挙する中で、「未成年後見人となる者の職業及び経歴並びに未成年被後見人との利害関係の有無(未成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と未成年被後見人との利害関係の有無)」を挙げています。条文自体が「未成年後見人となる者が法人であるとき」を明示的に想定しており、法人の就任が可能であることは条文上明らかです。
【理由づけ・沿革】かつての民法は、未成年後見人は一人でなければならず、法人は就任できないという建前を採っていました。しかし、親族による後見の担い手が不足し、また虐待事案など専門的な対応が必要なケースが増えたことを受けて、平成23年の民法改正(親権制限制度の見直しと同時に行われたもの、平成24年4月1日施行)により、未成年後見人の複数選任および法人の選任が認められました。児童福祉に取り組む社会福祉法人やNPO法人、弁護士法人などが後見の受け皿となることで、身上監護と財産管理を安定的・継続的に担えるようにする趣旨です。
【ひっかけポイント・関連知識】成年後見人については、もともと民法843条4項が「成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無」を考慮事項として掲げており、法人の就任が認められていました。「成年後見は法人可、未成年後見は法人不可」という古い知識のまま覚えていると本肢に引っかかります。現行法では成年後見・未成年後見のいずれについても、複数選任も法人選任も可能です。
なお、後見人の欠格事由は民法847条に定められており、未成年者、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人、破産者、被後見人に対して訴訟をし、またはした者およびその配偶者・直系血族、行方の知れない者が挙げられています。ここに「法人」は含まれていません。
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
「事理を弁識する能力が著しく不十分である者」は保佐開始の要件であって、後見開始の要件ではありません。程度を一段取り違えている点が誤りです。
【根拠条文】民法7条は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる」と定めています。すなわち後見の要件は「事理弁識能力を欠く常況」です。これに対し、11条は「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」について保佐開始の審判を、15条1項は「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」について補助開始の審判を、それぞれ定めています。
【理由づけ】法定後見制度は、判断能力の低下の程度に応じて、後見(欠く常況)・保佐(著しく不十分)・補助(不十分)の三類型を設け、保護の強さと本人の自己決定の尊重とのバランスを段階的に調整しています。後見は最も重い類型で、成年後見人に包括的な代理権が与えられ(859条1項)、成年被後見人の法律行為は日用品の購入その他日常生活に関する行為を除いて取り消すことができます(9条)。保佐では13条1項所定の重要な行為に同意権・取消権が及び、補助では審判で定めた特定の行為についてのみ同意権・取消権が生じます(17条)。
【ひっかけポイント・関連知識】三類型の要件文言は、行政書士試験で繰り返し問われる最重要事項です。「欠く常況=後見」「著しく不十分=保佐」「不十分=補助」とセットで正確に暗記してください。また、補助開始の審判は本人以外の請求による場合には本人の同意が必要である(15条2項)のに対し、後見・保佐にはその要件がない点、保佐人・補助人に代理権を付与するには本人の同意が必要である点(876条の4第2項、876条の9第2項)も頻出です。
なお、「家庭裁判所の審判によって開始する」という部分自体は正しく(838条2号、7条)、成年後見は保護者が当然に就くのではなく審判によって初めて開始します。
結論:この肢は「誤り」。
前半(成年被後見人の生活、療養看護および財産の管理に関する事務を行う義務)は正しいのですが、後半の「当然に法定の監督義務者として責任を負う」という部分が誤りです。
【根拠条文・判例】民法858条は「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない」と定めています(いわゆる身上配慮義務)。他方、714条1項は、責任無能力者が責任を負わない場合に「その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」が損害賠償責任を負うと定めます。
最高裁は、最判平成28年3月1日(認知症高齢者が線路に立ち入り列車事故を生じさせた事案、いわゆるJR東海事件)において、平成11年改正後の民法858条が成年後見人に定める身上配慮義務は、成年後見人の事務を行うにあたっての善管注意義務の内容を明らかにしたものであって、成年後見人に対し事実行為としての現実の介護や被後見人の行動を監督することを求めるものではないと述べ、成年後見人であることだけによって当然に714条1項の法定の監督義務者に該当するということはできないと判示しました。
【理由づけ】成年後見制度の中核は財産管理と法律行為の支援であり、24時間の行動監視を後見人に義務づける制度ではありません。仮に就任するだけで無過失に近い重い賠償責任を負わされるとすれば、後見人の引受け手がいなくなり、制度そのものが機能しなくなってしまいます。
【ひっかけポイント・関連知識】同判決は、法定の監督義務者に該当しない場合でも、その者が責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が現に監督しているなど、衡平の見地から法定の監督義務を負う者と同視できる特段の事情があるときは、「法定の監督義務者に準ずべき者」として714条1項が類推適用されるという枠組みも示しました。「当然に責任を負う」わけではないが、「絶対に責任を負わない」わけでもない、という二段構えを正確に押さえてください。なお、同事件では配偶者・長男いずれについても監督義務者に準ずべき者に当たらないとされ、請求は棄却されています。