この法律は、昭和二十四年一月一日から施行する。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。設問は「妥当でないもの」を選ばせるものですから、この肢が正解肢です。
民法489条1項は、債務者が一個または数個の債務について元本のほか利息および費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息、元本に充当しなければならない、と定めています。この順序は法律が定めたものであり、弁済をする者が一方的な指定によって変更することはできません。この肢は「債務者による充当の指定がない限り」という留保を付けており、あたかも債務者が指定すれば元本から先に充当できるかのように述べていますが、これが誤りです。
理由づけは、債権者の利益保護にあります。もし債務者の一存で元本から充当できるとすると、債務者は元本だけを減らして利息や費用の負担を後回しにし、あるいは利息の発生を抑えることができてしまいます。費用は債権保全のために債権者が現実に支出したもの、利息は元本の使用の対価であって、いずれも元本より先に回収されるべきだというのが法の価値判断です。そこで、費用・利息・元本という順序を法定し、当事者の一方的意思では動かせないものとしたのです。
重要な例外は、合意による充当です。民法490条は、弁済をする者と弁済を受領する者との間に充当の順序に関する合意があるときは、その順序に従って充当すると定めています。つまり、債権者と債務者の合意があれば元本から充当することも可能ですが、債務者の一方的指定では動かせません。この「一方的指定は不可、合意なら可」という対比が本肢の核心です。
ひっかけポイントは、指定充当の規定(民法488条)との混同です。488条は、同一債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合に、どの債務に充当するかを弁済者や受領者が指定できるという規律であり、複数の債務相互間の充当先を決めるルールです。これに対し489条は、一個の債務の内部における費用・利息・元本という充当順序のルールであって、指定の余地がありません。次元の違う二つの制度を区別してください。なお、これらの規定は2017年の債権法改正によって条文の位置と表現が整理されたもので、改正前の民法491条が現在の489条に相当します。順序自体は改正前後で変わっていません。
結論:この肢は「正しい」。設問は「妥当でないもの」を選ばせるものですから、この肢は正解肢ではありません。
民法488条1項は、債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができると定めます。第一次的な指定権は弁済者(債務者側)にあるということです。そして同条2項は、弁済をする者が指定をしないときは、弁済を受領する者が、その受領の時に、充当すべき債務を指定することができるとしつつ、ただし書で、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときはこの限りでない、と定めています。この肢は、この2項の内容を条文どおりに述べたものであり、妥当です。
理由づけを補足します。どの債務に充当されるかは、担保の有無、保証人の存在、利率、遅延損害金の発生などを通じて債務者に大きな影響を与えます。そこで法は、まず弁済者に指定権を与えました。弁済者が指定しない場合には、受領者に指定権が移りますが、受領者は自分に有利な債務(たとえば無担保で回収が難しい債務)に充当しようとするおそれがあります。そこで、債務者が直ちに異議を述べれば受領者の指定は効力を失い、法定充当(民法489条・488条4項)によって処理されることになります。
ここでの「直ちに」という時的限定は重要で、後になってから異議を述べても指定を覆すことはできません。また、法定充当のルールは民法488条4項に定められており、弁済期にあるものを先に、いずれも弁済期にあるとき等は債務者のために弁済の利益が多いものを先に、利益が相等しいときは弁済期が先に到来したものまたは先に到来すべきものを先に、それでも決まらないときは各債務の額に応じて按分して充当します。
ひっかけポイントは、指定権の順序を逆に覚えてしまうことです。第一次的指定権者は弁済者であり、受領者ではありません。また、費用・利息・元本の充当順序(民法489条1項)については指定の余地がないことも、前肢1と併せて整理しておきましょう。なお、これらの規定は2017年の債権法改正で整理されたものですが、改正前の民法488条と実質的な内容は同じです。