1私権の享有は、出生に始まる。
2外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。
この条文の過去問 1肢
結論:この肢は「正しい」。設問は「妥当でないもの」を選ばせるものですから、この肢は正解肢ではありません。
これは有名な日産自動車事件(最判昭和56年3月24日)の判示内容です。男子の定年を60歳、女子の定年を55歳と定めた就業規則の効力が争われた事案で、最高裁は、企業経営上、女子従業員に男子と異なる取扱いをしなければならない合理的な理由は認められないとしたうえで、当該就業規則の定めは、専ら女子であることのみを理由として差別したものであって、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条により無効であると判断しました。この肢は、「合理的理由が認められない場合」という限定を付したうえで無効と述べており、判例に忠実です。
理由づけとしては、憲法14条1項が定める法の下の平等の趣旨が、私人間においては民法90条という一般条項を通じて実現される、という構造を理解しておくことが重要です。憲法の人権規定は原則として私人間に直接適用されませんが(間接適用説。三菱樹脂事件・最大判昭和48年12月12日)、公序良俗や不法行為といった私法の一般条項を解釈する際の指針として働きます。定年年齢に5年もの差を設けることは、女性労働者の雇用の機会と賃金に決定的な不利益をもたらすものであり、これを正当化する経営上の必要性が示されない以上、社会的に許容される限度を超えていると評価されるのです。
ひっかけポイントは、就業規則という労働法上の制度が問題になっているために、民法90条ではなく労働法上の規定だけで処理されると考えてしまうことです。本判決当時は男女雇用機会均等法が未整備であったため、民法90条が正面から用いられました。現行法(2026年時点)では、男女雇用機会均等法6条が定年・退職・解雇についての性別を理由とする差別的取扱いを禁止しており、同様の就業規則は同法違反として端的に無効となります。また、労働契約法12条により、法令に反する就業規則の定めは効力を有しません。もっとも、そうした個別法があっても、民法90条による無効という判断枠組み自体が失われるわけではなく、行政書士試験では引き続き90条の適用例として問われます。「合理的理由が認められない場合」という条件付きの表現が付いている点も、判例の言い回しどおりであり、これを不正確と誤解しないよう注意してください。