数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「正しい」。
本問は「妥当でないもの」を選ぶ問題ですので、正しい記述であるこの肢は正解になりません。
前段について。質権設定契約は要物契約であり、債権者にその目的物を引き渡すことによって効力を生じます(民法344条)。この規定は動産質・不動産質・権利質を通じた質権全般の成立要件を定めたものですから、不動産質権も目的不動産を債権者に引き渡すことによって成立します。実際、不動産質権者は目的不動産を占有し、使用収益することが予定されています(民法356条)。
後段について。不動産質権については、民法361条が「この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、次章(抵当権)の規定を準用する」と定めており、また不動産に関する物権変動である以上、対抗要件は登記です(民法177条)。不動産登記法上も質権は登記できる権利とされています。したがって、不動産質権者は質権設定登記をしなければ第三者に対抗できません。後段も正しい記述です。
ここでの理解の要点は、「効力発生要件」と「対抗要件」を区別することです。引渡しは質権が成立するための要件、登記は成立した質権を第三者に主張するための要件であり、両者は別物です。動産質では占有の継続がそのまま対抗要件になる(民法352条)のに対し、不動産質では登記が対抗要件になる、という違いを押さえてください。
ひっかけポイントは、「引渡しが対抗要件である」「登記が効力発生要件である」と入れ替える出題です。また、不動産質権の存続期間は10年を超えることができず、これより長い期間を定めたときは10年に短縮されます(民法360条1項)。更新は可能ですが、更新の時から10年を超えることはできません(同条2項)。実務上、不動産質権はほとんど使われず抵当権が用いられますが、試験では抵当権との対比で頻出のテーマです。
結論:この肢は「正しい」。
本問は「妥当でないもの」を選ぶ問題ですので、正しい記述であるこの肢は正解になりません。
民法192条は、「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」と定めています。条文が「その動産について行使する権利」と表現している点が重要です。これは所有権に限定されておらず、質権のように動産の上に成立する物権も含まれると解されています。判例・通説も、動産質権の即時取得を認めています。
理由づけとしては、即時取得制度の趣旨が動産取引の安全の保護にある点が挙げられます。占有に公信力を与えて、占有を信頼して取引に入った者を保護するのですから、所有権を取得する取引だけでなく、担保権の設定を受ける取引についても同様に保護すべきです。質権者は目的物の占有を取得するため、占有という外形を信頼した点で所有権の譲受人と変わりません。
ひっかけポイントは、質権の即時取得における占有取得の方法です。質権設定は要物契約であり(民法344条)、しかも質権者は設定者に自己に代わって占有させることができません(民法345条)。したがって、占有改定による質権設定はそもそも認められず、この点でも即時取得の成否が問題になる余地はありません。判例(最判昭和35年2月11日)が占有改定では即時取得は成立しないとしている点と併せて理解しておきましょう。
もう一つの注意点は要件の充足です。即時取得には、①有効な取引行為(本肢では質権設定契約)、②前主に処分権限がないこと、③平穏・公然・善意・無過失、④占有の取得が必要です。平穏・公然・善意は民法186条1項により推定され、無過失も民法188条により占有者の権利適法の推定を通じて推定されるとするのが判例(最判昭和41年6月9日)です。また、盗品・遺失物については2年間の回復請求の特則(民法193条・194条)がある点も忘れないでください。